救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

非主体的農業で北朝鮮の食糧は常に不足
掘ス駭機関の報告は水増し−北朝鮮の食糧生産



3.国連機関の報告は毎回基準が異なる



「レポート2012」は、2012/13農業年度(2012.11.01〜2013.10.31)の収穫について報告したものである。2012年秋作は確定値だが、その後の冬春作は予測値を含み、予測値については毎年、翌年度途中で確定値が発表される。

 FAOとWFPは、1995年以降原則として毎年北朝鮮に食糧支援等を続けてきた。最新の「報告」は、2012年9月24日から10月8日までの現地調査を踏まえて、11月12日に報告されたものである。



 国連機関は、2012/13年度の穀物収穫量は、国連機関が支援に入って以来の最高値で492.2万トンと報告した(表16)。
 表16は各年度の特別報告から筆者が作成したものであるが、国連機関の報告基準が毎年異なっている。国連機関の報告基準が毎年異なっていることは「収穫後ロス」のところでも既に述べた。
 まず、対象となる作物が年度で異なり、精米・製粉値も異なる。食糧以外に必需品となる種子、加工用の量が年度により異なり、家畜数の推移と必要な飼料の量がまったく比例しない。さらに、収穫後ロスの算定基準が異なる。毎年の需要は人口の増減を反映していない。
このような異なった毎年のデータを元に、各年度の不足量が算定され、国際社会への支援が求められてきた。そのためのデータも提供されたが、その基準が全く異なるのである。
以下に、国連機関が国際社会に訴えた、変更の激しい過去の異様なデータを見てみたい。



表17に明らかなように、国連機関が報告する北朝鮮の食糧生産量は毎年基準が異なるデータとなっている。国連機関が北朝鮮の食糧事情の調査に入った1995年、支援を開始した96年と翌年の97年は、米とメイズの合計値だけで、他の作物は含まれていなかった。
国連機関は毎年のように統計の項目を増やしている。そのため見た目の生産量が増加し、その分、国際社会に支援を訴える量が少なくなる。

1998年報告からじゃが芋を穀物換算25%重として報告するようになった。この時、麦類と雑穀も統計に追加した。追加した分、国際社会に訴える支援量が少なくなった。これらも統計に計上するのは当然のことであるが、基準の異なる生産量を並べて増減を比較し続けるのは問題である。
さらに、2002年度報告から自留地における食糧生産を100%換算で追加し、2003年報告では、傾斜地における食糧生産を追加した。傾斜地の反収は一般農地の25%とした。これらは、不足量を産出するには不可欠な数値であるが、政府の配給の対象にはならないので、別枠で計上し、不足量の算定には加えている。

特に異様なのは、同じ基準で統計を見ると、「レポート2000」の生産量257.3万トンは、麦類、雑穀、じゃが芋を除くと、餓死者が多発した90年代後半よりも生産量が少ないことである。国連機関は、2000/01年度には餓死がほとんどなくなったのにこの報告をおかしいと思わなかったのだろうか。
なお、米の精米値を75%から65%に落としたのは1997年で、これは調査団に米の専門家がいないことを示すと同時に、2年間の調査の学習効果による訂正と考えられる。しかし、2012年に66%に変更したが、実態はもっと落とすべきで、北朝鮮に対する何らかの不満の表明ではないかと思われる。

また、国連機関の報告は、毎回収穫量の表の形式が一定しておらず、よほど過去の経緯を細かく見てきた者しか分からないように作られている。

 精米値は、日本では72%程度であるが、国連は「機械の劣化」等の理由で7%少なくし65%に設定してきた。これが「レポート2012」から66%に変更された。その理由は精米機に若干の改善がみられたため、他の東南アジア諸国の精米値と同じにしたと報告している。

自留地は宅地前の農地で家族が自由に栽培できる平均20坪程度の農地(法律では30坪)。実は北朝鮮では自留地の畑作の反収が協同農場の反収よりどの作物も高いが、そのことを国連機関は理解していない。傾斜地は栽培が禁止されている山腹の歴史的な隠し畑で中央集権制による収奪への対抗栽培の一つとなってきた。



 「レポート2012」は、冒頭の総括報告で、2012/13年度の食糧生産は約580万トン(精米前)で、前年比10.1%の増収であったと報告した。また、不足量は50.7万トンで、政府が30万トン輸入するため、約20万トンが不足する、と報告した。

 また、じゃが芋は穀物ではないがカロリー換算値を重量の25%として報告してきたが、「レポート2011」から大豆はカロリーが高いからと、重量より20%多い数値を報告するようになった(表18)。つまり実際の重量を20%水増ししたのである。

なお、国連機関はこれまで一人当たり年167kg、1日当たり1600kcalの食糧を基準として、国際社会に支援を訴えてきたが、「レポート2011」から、大豆分として追加7kgが必要と増加し174kg(1日当たり1670 kcal)に変更した。また増加の言い訳として、北朝鮮が176kgを基準としており、それよりは低いので妥当と説明している。これにより国際支援を訴える際の不足量を多くしたことになる。増やしたり、減らしたりが国連機関の毎回の匙加減である。
なお、国連機関のWHO(世界保健機構)は、一人一日当たり2,130kcal(穀物換算222kg/年)を推奨している。北朝鮮における当初の一人年167kgはその75%相当(一人1日1600kcal)としていた。その他に畜産物、海産物、野菜、果樹等を加えると、実際のカロリーはその分増えることになる。

 米以外の作物は現物重であるが、穀物は必ずしも現物重100%を食べられるわけではなく、例えばメイズは粉末化しないと食べられない作物で、粉末化する際にロスが出るが、これは無視されている。
米は普通玄米重で国際取引されるが、FAOとWFPの「レポート」は、人間が食べられる量を重視し精米重を別途報告してきた。しかし、メイズは100%食用にはならないのに、現物重としてきた。
 なお例外として「レポート2008」は、製粉値として、メイズ85%、雑穀と小麦92%、自留地のメイズとじゃが芋75%と低めの生産量で報告したことがある。それ以前の3年間、北朝鮮に調査と支援を拒否されてきたので、北朝鮮に迎合してこの年は生産量を低めにして、多めの支援を訴えたとの印象があった。製粉値はその後戻したが、その傾向は今も続いている。

傾斜地は「レポート2004」で初めて登場し、7.5万ha、5.5万トン(メイズとじゃが芋のみ)、反収73.3kg/10aであったが、「レポート2008」で30万haに急増させ、この年のみ製粉値75%を摘要して11.3万トンとした(反収37.6kg/10a)。さらに、「レポート2012」で50万haに急増させた。この製粉値は「レポート2009」で100%に戻した。さらに、「レポート2012」では、反収は55万haに急増させ22万トンとした(反収40 kg/10a)。これは、EU食料安全保障局がグーグルアースを使って傾斜地は約550,000haとしたのを受けて変更したものである。「レポート2004」の5.5万トンが、いつのまにか22万トンに化けてしまったのであるが、このようないい加減なデータを元に支援を訴えてきたということになる。
 要するにFAOとWFPの「レポート」は、国際社会の支援を訴えるためだけに作られるものであり、作成側のさじ加減でいかようにも変更できるということである。つまり、調査基準が毎回異なり、支援される側の実態を正確に報告したデータではない。

◆飼料が激減したのに家畜が増加
表19は、国連機関が国際社会に食糧支援を訴えるのに必要な、各年度の不足量を算出する根拠となる数値である。



食糧生産量については、年度ごとに様々な要因で変化があるのが当然であるが、需要は人口増に比例して変化するのが普通であろう。しかし、国連機関の報告では、需要に大きな変化がある。
表の需要の項目の中の食糧は、人口増に比例して変化するはずである。しかし、国連機関は1994年に始まり、95年から98年まで餓死者が大量に発生したことはこの表では全く考慮に入れていない。
そして、需要の中の食糧以外の項目では年度により大きな変化がある。まず、1995、96年度は飼料の量が140万トン、60万トンと、あまりに過大に報告された。これは北朝鮮当局がなるべく不足量を大きく見せようとしたためであろう。しかし、国連機関はそれを受け入れて、自ら需給バランスを計算したとして国際社会に支援を求めた。そして1997年には、これはおかしいと判断して適当な数値を北朝鮮に求めたと見られる。その結果、北朝鮮は丸めた数値で30万トンと報告し直したのであろう。
以後5年間は30万トンで推移したが、飢餓の90年代後半は、穀物を飼料にする余裕はなかった筈なのに飼料の量は30万トンと変わらず、しかも家畜数が1997年から2001年までにほぼ倍増している。これはもう公表するに価しない滅茶苦茶な統計といえよう。というより、食糧支援を得るために北朝鮮の当局者が勝手に作ったデータにすぎないのである。
また、3年ぶりに国連機関が入った2008年には飼料が増加したのに家畜数が急減したことになっている。
飼料に関しては1995年の140万トンから2011年には7.5万トンまで減少している。しかも、1995年のデータはないので1996年と比較すると、豚は約7%、鶏は90%増えているのに飼料は約19分の1に急減している(表20)。これは虚偽の数値だと誰でも分かるだろう。
飼料の部分は、国連機関と北朝鮮が協議した結果決めた数値で、本来の需要とは関係がない。



2001年には飼料30万トン、種子14.4万トンと種子を独立させたにも関わらず、その他は63.8万トン(収穫後ロスを含む)とわずかに減らし、計108.2万トンと増加させた。
さらに2002年には、飼料17.8万トンと激減、種子16万トン、その他69.1万トン(収穫後ロスを含む)とそれぞれ増加、計102.9万トンと報告された。2003年には、飼料は17.8万トンと変わらず、種子は23万トンに増加、その他74.8万トン(収穫後ロスを含む)、計115.6万トンと報告された。

2004年は、飼料18.1万トン、種子は23万トンに増加、その他76.2万トン(収穫後ロスを含む)、計117.3万トン。以後3年間報告はなく、2008年は、飼料22.4万トン、種子16.4万トンとした上で収穫後ロスを独立させ67.8万トンとし、その他2万トン、レストランなどの公共サービス1.3万トンが入り、計約109.9万トンとした。
2009年は調査がなく、2010年調査で事後報告したが食糧以外の報告はなく、2010年は、飼料15万トン、種子21.9万トン、収穫後ロス55.4万トンとし、その他とレストランなどの公共サービスの項目を削除し、新たに備蓄を項目に追加して17.7万トンとし、計約110万トンとした。2011年は、飼料を7.5万トンまで減らし、種子24.3万トン、収穫後ロス62.4万トン、備蓄17.8万トン、計約112万トンとした。
このように国連報告には、客観性、統一性はまったくない。

本来、飼料需要は家畜数の増減で異なるのが当然だが、国連機関の報告は家畜数の増減に対し、飼料の増減はまったく比例していない。それならば、韓国政府の統計数値のように、飼料、種子、加工用、その他利用を一貫して100万トンとする方が、正確ではなくても客観的な比較を行うにはよりましな表記と言えよう。
国連機関の報告は匙加減が多すぎて全く信用できない。このような国連報告に基づいて安易に生産量の増減を論ずるのは問題がある。しかし、国連機関の報告だからと各国、専門家は信用し、それをもとに論文等を書いてきた。

また、飼料の他、「その他」として食用以外に必要な種子等を含む項目の数量と内容が年々変化しているがこれにも疑問を表明していない。「レポート2012」ではこれまでになかった備蓄用13.7万トンも入れている。
さらに、1998年報告で初めて収穫後ロスに着目したが、これも収穫量と比較して増減に整合性がない。

1995年に北朝鮮は、米とメイズだけで407.7万トンの生産があったと報告し、かつ食糧以外に飼料140万トン、その他90万トン、計230万トンが必要と報告した(表20)。これは食糧不足を強調するためにでたらめな数値を作ったものである。国連機関の国際社会へのアピールは当初からずさんなものだった。

そもそも北朝鮮が国際支援を受けるきっかけとなったのは、たまたまFAOの本部(ローマ)に北朝鮮のスタッフが派遣されており、「WFPから無償支援を受けることができる」、「国連機関に提出するデータは簡単なものでよい」ということを本国の上司に報告したことに始まる。その結果北朝鮮は大量の食糧支援を得ることができ、彼は北朝鮮当局から高く評価された。彼は現在脱北して韓国に居住しているためこのような証言が得られたのである。
北朝鮮では、国連機関が支援に入っても、1997年頃までは自力更生が強調されており、国際社会に支援を要請したり、緊急支援を受けること自体、するべきでないと否定的に考えられてきた。また対外的に、自国の弱みを見せることをタブーとする国家であった。
しかし、北朝鮮は「適当な」データを国連機関に提出すれば国際社会から支援が得られると学習した。国連機関は提出されたデータを微調整しているだけなのである。そして、一旦食糧難に耐え切れず支援を求め始めると、いかにしてより多くの食糧を国際社会から引き出せるかに努力し始めたのである。そして1997年から飢餓でやせこけた子どもの写真を積極的に出したり、政府監視のもとでのことだが、支援団体に民家の現状も視察させる、取材にも応じるようになった。これは実はどのように答えるべきか農民に予め演技指導した上でのことであった。

◆基準の異なる数値をグラフ化

FAOとWFPは、上記の調査基準の異なるデータをそのまま毎年報告してきただけでなく、驚くべきことに、北朝鮮当局が提供した過去の虚偽のデータを今も使い続けている。
1993年に、500万トン弱の米がとれたというようなデータを信じ、掲載し続けているのは、ジョークではありえても、国連機関の報告ではあってはならないことである。当時の北朝鮮の水田面積は58万ha。500万トンなら反収は籾付きで8.62トン、玄米で6.9t/haになる。
土壌が劣化し、肥料も農薬もなく、品種改良もなされていない世界最低レベルの北朝鮮で、温帯ジャポニカ米で世界最高レベルの日本の反収5.4 t/ha(玄米、2012年度)よりはるかに高い収穫を上げていたという報告を今も信じ続けているからこそ、下記のグラフを毎年出し続けているのである。



北朝鮮当局のデータは協同農場等での収穫時に相当水増しされた計量値を合算しただけのものである。これを見ると、いかにも従来は生産量が多かったのが急減したかのように見える。国連機関はこのグラフを悪用して支援を訴えた。しかし、90年代後半の極端な食糧不足の時期を別とすれば、北朝鮮の食糧事情は昔からそれほど変わっておらず、生きているのがやっとというレベルが続いていたのである。
それは、北朝鮮の全世代の人々の身長が低く、あのファミリー以外に太った人がほとんどいないのを見るだけでも明らかではないか。

しかも、国連機関は、「グラフに明らかなように(2000年代の)生産量は450万トン前後に低迷しており、1980年代に経験した600万トン台の潜在能力に挑むべき」などと、北朝鮮提供の数値を今も能天気に引用している(「レポート2010」)。
ということは、国連機関は北朝鮮当局が提供した過去の数値も現在の数値も疑っていないということになる。調査団は一体何を調査してきたのか。

筆者が1995年12月に、北朝鮮農業省の農政局長から直接取材した数値では、「豊作時の米のha当たりの反収は7トン(籾付き)、メイズ(とうもろこし)は6トン」とのことであった。籾付きでha当たり7トンというのは、玄米では約5.6トンである。10a当たりの反収で見ると9.3俵(1俵は60kg)となり、様々なロスで実際の収穫値がそれより減少するとはいえ、北朝鮮で、日本の平均収穫量(8.5俵強)以上の収穫をあげたという報告は到底信用に値しない。

このグラフは、国連機関の人道支援は、人道が目的ではなく高給を取り続ける手段に成り下がっているのではないかとも思わせるものである。

以下は、米農務省のデータである。まず、精米、メイズ、麦類のみのデータであることで、より客観性がある。また、90年代後半に麦類や雑穀を含まなくても300万トン強程度としているのは国連機関の報告とかなり異なり、比較的実態を反映したものとなっている。また、コメだけで300万トンとれたというような報告はしておらず、最大でも100万トン台後半となっている。しかし、全体としてまだ多目である。韓国政府や専門機関の報告も未だに多めに報告している。






目次


※ 北朝鮮食糧問題最新事情(2015.03.26)

はじめに

機ァ嵋鳴鮮の食糧事情は安定」報告と北朝鮮から伝わる多くの悲鳴
 1.北朝鮮の食糧事情は安定したのか
 2.不足しているから聞こえてくる悲鳴

供ス駭機関の報告は約300万人水増し−北朝鮮の人口
 1.「2008年人口調査」は虚偽調査
 2.おかしな報告の数々−北朝鮮人口調査
 3.人口は300万人水増し

掘ス駭機関の報告は水増し−北朝鮮の食糧生産
 1.米は10a当たり180kg程度
 2.メイズは約100万トン水増し
 3.国連機関の報告は毎回基準が異なる
 4.飢餓を無視して核・ミサイルを開発

検タ總し統計を発表し続ける理由
 1.個人独裁の責任が問われる
 2.人口の水増しで国際支援を訴え
 3.国連による食糧支援の問題点
 4.独裁国家への「人道支援」は非人道
 5.米よりご飯を(配給のモニターより消費のモニターを)
 6.国連は家族農業を認めない国家には人道支援を行うな

資料: FAO/WFP「北朝鮮の穀物および食糧安全保障調査団特別報告」
 1995年〜2012年(英文)
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2013
  
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国民大集会「もう我慢できない。今年こそ結果を!」
「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
東京都
千代田区
日比谷公園1-3