救う会全国協議会

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
TEL:03-3946-5780 FAX:03-3946-5784 info@sukuukai.jp

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

非主体的農業で北朝鮮の食糧は常に不足
掘ス駭機関の報告は水増し−北朝鮮の食糧生産



2.メイズは約100万トン水増し



メイズはとうもろこしの品種で、一般には飼料用穀物である。食用のスイートコーンより収穫量が多いデントコーン種であるが、北朝鮮では反収が多いことから食用に採用されたものと思われる。粘り気が強く、食べられなくはないが、おいしいとはいえないものである。
今期のメイズは、3.8t/haの収穫で、収量が204万トンと報告された。この数値も、日本の約4.5トン t/haと比較し、到底信用できない数値である。なお、世界のとうもろこしの平均反収は5.2トン(2010年)。



とうもろこしは比較的連作障害が起きにくい作物であるが、同じ土地に何十年も同じ作物を植えれば当然問題が起きる。しかし、「主体農業」では許可なく輪作できない。メイズに必要な肥料や微量元素が集中的に失われ、生産量が極端に悪くなる。
北朝鮮が1995年に「大洪水」による被害を訴え、国際社会に初めて支援を訴えた年、筆者は北朝鮮に入り、黄海北道銀波郡の銀波橋が崩壊したのを目撃した。その2年後に再び銀波橋を訪れた際、橋のたもと付近は護岸工事が行われており、その脇に植えられていたメイズは穂軸が40cmもあった。これは客土による効果と考えられる。メイズは普通穂軸が40cm程度になる品種だが、北朝鮮の畑に植えられているメイズは、どこで見ても、25cm程度であった。連作の結果、収量が極端に落ちるのである。

日本で普通に食べられるとうもろこしはスイートコーンで、穂軸が25cmくらいになる。もしこれを北朝鮮で植えていたら、収量はさらに少なくなるので、北朝鮮がメイズのデントコーン種を使ってきた理由はそこにあるだろう。
さらに、北朝鮮ではコメだけでなく、メイズも3倍密植している。同じ土地に3倍もの苗を植えれば風通し、日照、虫害など問題が起きる。土への日当たりがよくないとかびがはえたり、また肥料も多く与えなければならない。加えて、種子6.2万トンの内4万トン程度は植える必要のない無駄になる。

収穫後、生のメイズの皮をはぎ、吊るして自然乾燥すると、65〜75%ある水分を10%台まで少なくすることができる。日本では機械的に乾燥するので、粉末化する際、水分をほぼ0%にできるが、北朝鮮では乾燥機はほとんどなく、あっても電気が不足し機械的な乾燥はできない。
また、北朝鮮では、農場に計量器はなく、メイズは収穫後あまり乾燥せずに一袋何kgと計量する。そうしないとノルマが達成できないからである。
北朝鮮の農業科学院出身の脱北者イ・ミンボク氏は、「北朝鮮は想像を超えた閉鎖的な国であるため、どんな専門機関であっても食糧問題に関しては正確な数値を予測できない。明確な分析がなされないまま、北朝鮮の統計に頼って数値を予測することは、北朝鮮の意図に巻き込まれる危険性がある」(「デイリーNK」2012.11.15)と指摘している。

脱穀して袋に詰め、倉庫で自然乾燥させるのが北朝鮮での一般的な乾燥法だが、この方法では、生産量は半分にもならないだろう。なぜなら水分を除くと、実際の重量は25〜35%になってしまうからである。65〜75%ある水分を15〜25%程度に不十分に乾燥させて計量すれば、重量は約半分に、それ以上乾燥すると倍以上の水増しになる。メイズは北朝鮮で水増しが最も多い作物である。
また、コーン類はそのまま茹でて食べると消化がよくないので、製粉化することが必要であるが、その過程で皮膜の除外と加工上のロスが出る。「レポート2008」では、製粉値を85%としているが、その後100%に戻した。これは国連機関による水増しである。
さらに貯蔵時に、水分を含んだメイズは、倉庫内で蒸れてカビが発生し、虫害やねずみ等の害でロスも出る。
なお、メイズの芯は、飼料としては栄養価がほとんどないものの、動物に満腹感を与えられるのでスライスして混ぜるのが一般的だが、人間の食糧にはならない。筆者は全量の約20%を占める芯も含めて計量していると脱北者から聞いたことがある。

さらに深刻なことは、北朝鮮では2012年4月26日以降、5月を経て、6月末まで日照りの影響を受けた。5月開花期の麦類だけでなく、作付け期間が日照り時期と重なる米、メイズも影響を受けたことは確実である。大量動員で水遣りをしたとしても、とうてい行きわたらない農地が多くあった筈で、そこは枯れた苗を抜いて植え替えざるをえなかったと考えられる。
「レポート2012」は、「灌漑用ポンプ、および利用可能な電力は十分あるので、5、6月の日照りの影響はわずか」、「メイズの収量は農業省報告より1.5%の減とした」とし、メイズは前年比10%収穫増と報告したが、これは北朝鮮当局の水増し報告をほとんどそのまま受け取った数値である。ポンプや電力があっても水がなければ意味がない。実はそのポンプや電力も不足している。
北朝鮮の灌漑用ポンプを筆者も見たことがあるが、「ガッタン、ゴットン」という音とともに10リットルくらいの水が水路から水田へ流される旧式のもので、しばらく間があってまた「ガッタン、ゴットン」と音がする。水田でもポンプは極めて稀で、傾斜地のメイズ畑は、大量動員に頼るしかない。国連機関もそのような風景を見ているはずで、「ポンプや電力が十分」と報告しているのが不思議である。
これらのことを考え合わせると、どう考えても実際の収穫量は報告値204万トンの半分以下、約100万トンの水増しになる。

◆じゃが芋は5、6倍の水増し
じゃが芋のメインシーズンの収穫では、2011/12年度は反収3.6トン、2012/13年度は推定3.2トンと報告している。国連機関は、じゃが芋は穀物ではないが、カロリーベースで重量の1/4換算としているので、実質の反収はそれぞれ14.4t/ha、12.8t/haとなる。土壌が豊かで肥料もあり、ウィルスがない日本の本州でさえ7.5 t/ha程度、北海道でようやく10 t/haという日本の状況と比べれば、ウィルスが蔓延している北朝鮮で10トン以上など夢の報告としか思えない。
筆者は、北朝鮮のじゃが芋を専門とする農業試験場の担当者から、全国に広がる土壌ウィルスのため、国連機関が提供する種芋は大きいが、収穫は小さいものしかできず、結果としての収穫は約2.5トン/haと聞いた。じゃが芋は5、6倍の水増しなのである。
筆者は元山で、大量のじゃが芋がコンクリートの上に積み上げられた現場を見たことがあるが、下の芋はそうとうつぶれているだろうと思われた。北朝鮮では他人のものにしかならない食糧の管理はきわめてずさんである。収穫後ロスを加えると収量はさらに少なくなる。

国連機関は、北朝鮮で餓死が大量に発生した時期の内、95〜97年にはじゃが芋を統計にのせていなかったが98/99年度に42.5万トンとした。以後増減はあるが、2010/11年度は58.5万トンと報告された。じゃが芋は特に国連機関が二毛作を奨励し、種芋を持ち込み、生産を奨励したものであるので、計上したものと思われる。
また、当時、金正日は、「じゃが芋は白米と同じである」、「われわれは、すぐに白米と同時にじゃが芋を主食とする人民となる」と言った。しかし、人民は「米を食べたい」と言っている。

2001年の春に100日間の旱魃があった。そのため、コメやメイズだけでなく、国連機関が薦めた二毛作のじゃが芋や麦に大きな被害があった。メイズの畑をじゃが芋や麦に変えたのだが、二毛作に挑戦して失敗したのである。二毛作には当然肥料も多く必要となる。韓国で簡単にできることが北朝鮮ではできないことが多い。農業技術的にもできないし、農業基盤が整備されていない。少しの天候異変にも対応できないという弱点がある。つまり、リスクが高い地域で、国連機関がチャレンジをしてしまったのである。

なお、国連機関が推奨したじゃが芋は、原産地は中南米の3,000m以上の耕地で、北朝鮮にとっては飢饉の時の荒救作物ではあっても、北朝鮮人民の主食とすべきものではない。またじゃが芋はナス科で連作障害が起きるため輪作が必要だが、北朝鮮では上が命じた作付けしかできないので勝手に輪作はできない。
実はメイズも南北アメリカが原産地で、人民は米を食べたいと熱望しているが、国連機関は米の増産には全く意欲がなく、専門家も送っていない。人道支援であっても、その地域の人々が求める食糧に留意すべだ。

◆2006年には40%の水増しで多数の幹部を処罰
2006年には、過大な食糧生産報告の結果、多数の幹部が処罰された(「中央日報」2006.12.04)。この報告は、高麗大北朝鮮学科ナム・ソンウク教授が独占提供した「朝鮮労働党中央委員会秘書局決定第122号」(2006.11.03)に基づくものである。
「北朝鮮労働党中央委員会が最近、農業現況を集中検閲、13人の党と農業委員会所属幹部たちを含め、多数を処罰するよう指示したことがわかった。2006年秋穀生産量が210万トンだが、これを350万トンと虚偽報告した疑いだ」(中略)、「少なくない農業部門関係者らは農業生産実積を虚偽で作成して報告し、個人搾取した」、「結果、今年度農業生産実積210万トンを350万トンに虚偽操作…人民経済計画樹立に混乱を造成した」。これにより、黄海南道・平安南道の道党農業秘書、黄海南道・平安北道の農村経理委員会委員長、咸鏡南道道党経済秘書ら計13人を離党、撤直(職位解除)、革命化(教育)させることにした」という。40%の水増しである。

労働党の報告では、「虚偽報告した」とあるが、北朝鮮には食糧を虚偽報告せざるをえない仕組がある。北朝鮮ではみな知っていることだ。それはノルマを達成しないと処罰されるということである。しかも、食糧に関わる部署では、水増し報告とともに、自分への役得分や他への賄賂分も確保しなければならない。そして秋作分として350万トンの収穫があったことを前提に、特権階級から順に配分する。すると実態は210万トンしかないのだから、下層階級に配分する時点で極端な差が出る。この独裁の構造が、北朝鮮の「主体農業」と言われる非主体的農業である。

「2006年秋穀生産量が210万トンだが、これを350万トンと虚偽報告した」ということは秋作だけで140万トンの水増しとなる。北朝鮮の精米・製粉値は国連機関のそれより甘いので、実際の収穫量は210万トンよりさらに少なくなる。

冬春作の食糧生産量(じゃが芋、麦類)は全体の概ね12.5%程度なので、2006/07年度の北朝鮮の精米・製粉値に基づく全生産量は約240万トンになる。年間の虚偽報告としては400万トンとされていた筈で、少なくとも160万トンもの水増し報告がなされたわけである。
2006年の食糧生産についてFAOは調査を実施していないが、推計値を発表し、「全生産量は380万トンで100万トン不足」と公表している(「読売新聞」2007.02.10)。その後洪水があり、生産量を300万トンに修正したが、非主体的な北朝鮮農業の構造が全く分かっていないと思われる。
北朝鮮は2006年のミサイル発射と核実験で国際制裁を受けており、国連機関の調査を拒否しつつ食糧支援は訴え、国連機関もこれに応じた。しかし2006年11月以降の輸入実績は国際支援を含めても1万トンにも達していなかった。また、2006/07年度は国連機関が設定した需要480万トンに対し供給は240万トンで、需要の半分またはそれ以下しか生産できていなかったのである。

210万トンを350万トンに水増ししたということは、収穫の実態は北朝鮮の精米・製粉値換算で60%相当になる。40%が水増しされている。これを「レポート2011(2011.11.25発表)」と比較すると表15のようになる。約190万トン弱の水増しである。
また、コメで見ると、水田の面積は57.1万haなので、精米の反収は1.7t/ha、玄米なら1.9 t/ha程度(3俵強/10a)になる。



農業関連機関に勤め2000年に脱北した男性は、餓死者が発生した「苦難の行軍」中の90年代後半の1ha当たりの田畑の平均生産量は1.5t/haと証言した(「連合通信」2008.06.17)。10a当りなら150kg(2俵半)で、この時期はさらに少ない収量だったようである。

水増しは、製品を製造する工場でも同じように起きていた。「機械工場の責任者は7月、生産高を水増しして党に報告。ある朝鮮労働党幹部は同筋に対して、『生産目標を達成できなければ、ただちに職を退けという雰囲気なので虚偽報告は避けられない』と述べた」という(「朝鮮日報」2009.11.25)。北朝鮮ではノルマ達成のためにあらゆる経済分野で生産量が水増しされているのである。また、それぞれの立場の監督責任者が賄賂を受け取り、ノルマが達成されたように報告してきたのである。

「中央日報」(2011.03.28)によると、「世界食糧計画(WFP)がこのほど実施した北朝鮮の食糧実態調査結果の報告を受けた韓国と日米など西側諸国は北朝鮮の食糧難が深刻だとは判断しがたいという評価を下した」、「北朝鮮当局が(食糧状況が厳しいように見せようと)わざと配給量を減らした可能性が大きく、北朝鮮住民たちは市場などを通じて食糧を確保したりもし、配給量が減少したということだけでは食糧事情が悪くなったとは判断しにくい」と話したという。「連合通信(2011.03.30)」は、「韓国政府では、『北朝鮮の食糧事情が最悪の状況ではなく、2012年強成大国建設を控え食糧を備蓄する狙いがあるのではないかという強い疑念を抱いている」との見方が強い』」と報じた。
北朝鮮は国際社会を騙してきたが、ここに至って、逆に国際社会に実態を誤解され、困っているというのが現状であろう。

国連機関が報告した2011/12農業年度の収穫量の結果、様々な悲鳴が伝わってきている。以下はその一部である。

◆北朝鮮の穀倉地帯で餓死者−脱北者が証言
 「北朝鮮の穀倉地帯とされる黄海南道で、毎年数千人の住民が餓死しているとの証言が出ている」、「山奥の村なら焼き畑でもできるが、農地が共同農場しかない平野では、里(行政区域)ごとに毎年30〜40人が餓死している。収穫した穀物は全て取り上げられるからだ」と証言した(「朝鮮日報」2012.06.19)。

 北朝鮮での餓死は、1995年以降の「苦難の大行進」以後も続いている。穀倉地帯は軍の食糧の指定地域になっており、軍が収奪するからだ。
 同紙によると、黄海道の農民は1ha当たり6トンの穀物生産を指示されているが、実際には2〜4トンしかとれない。従って軍に全量を持ち去られる。また、特殊機関(護衛総局、対南工作機関)等が最初に穀物を持ち去り、次に軍が師団ごとに協同農場から穀物を収奪する。農民も収穫の際に穀物を盗む(1.5〜2トン)。これは当局に検査し回収されるが、回収される割合が30%なら、5,000〜7,000人が餓死する、と報告している。
 2011年に脱北者したこの人物は、「農民は収穫期に穀物を盗まなければ、餓死する以外にない。これが黄海南道の現実だ」とも話している。

※穀物の「実際の収穫量は1町歩当たり2トンから4トン」というのは精米・製粉前の数値で、2トンというのは劣化した土地、4トンはましな土地の収穫値であろう。これを精米・製粉すると1.5〜3トンになる。平均は2.25トン。これを乾燥すると実態はさらに少なくなる。筆者は米で1.8トン前後と見ている。「レポート2012」では、米の反収(精米)は3.1トン、メイズは3.8トン(製粉前)となっているが、これは過大な数値である。



目次


※ 北朝鮮食糧問題最新事情(2015.03.26)

はじめに

機ァ嵋鳴鮮の食糧事情は安定」報告と北朝鮮から伝わる多くの悲鳴
 1.北朝鮮の食糧事情は安定したのか
 2.不足しているから聞こえてくる悲鳴

供ス駭機関の報告は約300万人水増し−北朝鮮の人口
 1.「2008年人口調査」は虚偽調査
 2.おかしな報告の数々−北朝鮮人口調査
 3.人口は300万人水増し

掘ス駭機関の報告は水増し−北朝鮮の食糧生産
 1.米は10a当たり180kg程度
 2.メイズは約100万トン水増し
 3.国連機関の報告は毎回基準が異なる
 4.飢餓を無視して核・ミサイルを開発

検タ總し統計を発表し続ける理由
 1.個人独裁の責任が問われる
 2.人口の水増しで国際支援を訴え
 3.国連による食糧支援の問題点
 4.独裁国家への「人道支援」は非人道
 5.米よりご飯を(配給のモニターより消費のモニターを)
 6.国連は家族農業を認めない国家には人道支援を行うな

資料: FAO/WFP「北朝鮮の穀物および食糧安全保障調査団特別報告」
 1995年〜2012年(英文)
資料: FAO/WFP北朝鮮食糧事情合同調査報告書2013
  
■ サイト内検索 ■


■あなたにも出来る救出運動■
あなたにもできること

 ■ 映画「めぐみ」 ■ 

映画「めぐみ」

■ 書 籍 ■

国民大集会「もう我慢できない。今年こそ結果を!」
「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
東京都
千代田区
日比谷公園1-3