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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

民族統一を否定?北朝鮮の大変化と拉致問題2(2024/07/24)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.07.24)

◆風船のUSBが北朝鮮の若者の心を捕えた

久保田るり子

 統一政策の最大の変更は、南北関係で起きています。今、「壁」を作っていま
す。38度線という軍事境界線が朝鮮半島にはあります。それは休戦ラインとも
言って、1953年に国連軍と朝鮮人民軍との間で決められたものですが、休戦
ラインの北側に2km、南側に2kmの非武装地帯があります。

 その非武装地帯の北側の部分に今、「壁」が作られています。高さ5メートル
で今4か所確認されています。長いところでは100メートルの突貫工事を行っ
ています。

 何のためにしているのか。韓国が「敵国」になったので、国境を強化していま
す。脱北者を阻止したい、あるいは兵士の脱北を阻止したい、という狙いでしょ
う。

 さらに南北が融和的だった文在寅(ムン・ジェイン)大統領の時と比べて、新
たな時代になっています。「敵国」であるということで、金正恩は軍事施設の視
察を急激に増やしていて、「戦争準備」の指令を出しています。

 これはおそらく内部引締めの側面が大きいと思いますが、こういうことが行わ
れています。「ゴミ風船」は今まで7回飛ばしています。中には、切り刻んだ紙
のようなものや動物の糞が入っています。人間の便は入っていません。なぜなら
便は肥料として使っているからです。

 韓国では、脱北者の方々が2000年くらいから風船を飛ばしています、その
中には、USBも入っています。金正恩体制の真実の姿を書いたもので、北朝鮮は
どういう統治をしてきたか、人民は搾取されている等のことが書かれています。
また我々はこういう世界にいるということも書かれています。韓国のドラマや歌
の動画も入っています。

 既に20年以上送り込んできました。使い捨てのUSBを集め、中国経由でも送
り続けてきました。文在寅政権の時、風船を飛ばすことを禁止する法律を作りま
したが、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権になって、その法律を破棄し、風船飛
ばしは今年5月に再開しました。

 その報復として今北朝鮮から飛んできています。風船と言うとのどかな気もし
ますが、とても歴史のある風船を使った心理戦が朝鮮半島にはあるのです。

 朝鮮戦争が1950年から53年までありましたが、この時米韓が飛ばした風
船ビラが3年間で40億枚でした。ものすごい量のビラを北朝鮮に撒きました。
つまり、一般住民に情報を伝えるために、今とは違ってUSBはありませんから、
情報戦でした。中には北朝鮮の人民がいかにひどいことをさせられているかとか、
我々は自由な世界に住んでいることを知らしめるには、ビラしかなかったのです。

 北朝鮮も負けてはおらず、朝鮮戦争では3億枚のビラを撒いていますが、10
倍以上の差です。アメリカと韓国には、ビラを撒くという歴史があります。実は、
第二次世界大戦の際に、アメリカは欧州で80億枚ものビラを撒いたという記録
が残っています。

 情報を伝えるということは、かつてから共産圏と戦う時の有力な手段でした。
そして脱北者は北朝鮮の同胞に真実を伝えるためにやってきたのです。それが北
朝鮮の若者の心を捕えたのが、北朝鮮の統治政策変更の大きな要因になっていま
す。

 北朝鮮の若者は2000年代前後ですから金日成や金正恩のことはそれほど知
りません。なぜこの首領に従わなければならいのか。一体南はどうなっているの
かということについて、直接見ることで心を揺さぶられ、動かされ、魅了されて
いくわけです。

 それによって何が起きるかというと、最近の若者は北朝鮮の経済困窮のために、
金正恩がチャンマダン(農民市場)を閉鎖させたのです。それまで商品がいっぱ
い並んでいました。中国に行って、ポッタリチャンサという担ぎ屋が商品を持ち
込んでいたのです。そして商品を売っていたのです。当時住民たちは自立更生し
ようとして生きていたので、朝鮮労働党への忠誠心はほとんど消えていたのです。
そしてUSBで見る韓国へのあこがれが広まってしまった。それが拡散して、もう
収拾がつかなくなったのがこの数年間のことです。

 そのため金正恩政権は、「韓国を切り捨て」たのです。そして韓国文化を流入
させないよう法律を作り、法律を犯した人は最高刑で死刑としました。韓国の動
画を見たかについて告げ口をさせます。10代の少年たちを公開処刑するような
ことをして、「これは敵の悪い作戦だ」と宣伝し、彼らの心を何とか変えようと
しました。

 そういう厳しい状況の中で、韓国文化の流入が、「統一政策の放棄」の大きな
要因になったわけです。

 そして国際情勢から見ると、北朝鮮の流動化、つまり忠誠心が離れていくこと
で治安も悪くなり、一部では反政府の動きも出ました。若者たちは現政権にもの
すごく懐疑心を持っており、そういう流動化が高まってきたのとほぼ同時期に始
まったのがロシアのウクライナ侵攻だったわけです。

◆北朝鮮が「先制核使用」を法制化

 ロシアのウクライナ侵攻は2022年2月24日に始まりましたが、金正恩は
これを好機、すばらしいチャンスだと捕えたと思います。プーチンは2月27日
に早くも「核兵器を使うぞ」と、欧米各国に対して脅しをかけました。

 「具体的に核兵器を使う」と言ったわけではないのですが、戦略核兵器部隊に
特別警戒態勢をとらせました。核兵器を持つ部隊に、「いつでも撃てるようにし
ろ」と国防長官を通じて命令しました。

 これまでの世界では、第二次世界大戦以降の戦後ですが、「如何に戦争を起こ
さないか」、「如何に核兵器を使わないか」に苦労してきた時代でした。そこで
はルールが確立されています。もちろんベストではないですが、ベターなルール
ができました。

 第二次世界大戦の戦勝国、英米仏中露の5か国の核は認めるけれど、その他は
持ってはいけないことになりました。その代わり、核を持っている国は、核を持っ
ていない国が、例えば脅かされたら助ける。そして必ず軍縮をやる。そして国連
で会議をするという体制でした。最小限の核で平和を維持しようと努力してきた
のです。

 ところが、ロシアのウクライナ侵攻というのは、世界第一の核保有国であるロ
シアが、核兵器を放棄して非核兵器国となったウクライナに侵攻したのです。こ
れが、ウクライナ侵攻の世界史的な意味です。

 これを見た金正恩は、チャンスだと思った。2022年4月25日、侵攻から
約2か月後ですが、朝鮮人民軍創設90周年という記念日ですが、この日の演説
の中で金正恩は、「わが国の利益が侵害されるなら、われわれの核戦力はその第
二の使命を果たさざるを得ない」と述べました。

 それまでの北朝鮮の核戦力というのは、「アメリカから自国を守る自衛兵器だ。
絶対に他国には使わない」、「使う時は攻撃された時に使う」と言ってきました。
ところが、「ウクライナにおける核の恫喝を使うかもしれない」と言うだけで、
アメリカもそうですし、ヨーロッパもそうですが、はっきり言えば、「これから
核を使うかもしれない」と。

 プーチンが2014年にウクライナのクリミアに侵攻した後、アメリカのCIA
のインタビューを見ると、「あなたはロシアのクリミア侵攻の時核兵器を使うつ
もりはありましたか」と聞かれて、「あった」と答えたのです。

 プーチンが近年、広島型の大きな核兵器ではなく、小さな戦術核を開発し、そ
れを戦争で使うことに非常に前向きな考え方を持っていたのですが、しかし今ま
で本当に使うということは、言葉に出して言ったことはなかったけれど、クリミ
アの時にそう言ったのです。そして今回、ウクライナで戦争を始めるや否や、核
戦力部隊に命令し、「準備しろ」と言った。

 それを見ていた金正恩が2か月後に、「わが国の利益が侵害されるなら、核兵
器を使うかもしれない」と初めて言及しました。プーチンを見ながら、欧米を脅
迫するやり方を、今も毎日学習しているのだと思います。

 そして2022年9月に、ロシアとそっくりな核ドクトリンを制定しました。
どのような時に核を使うかについて、金正恩の核ドクトリンを作り、最高人民会
議という国会で採択しました。

 核を使う時の条件として、「自分が脅されると脅威を感じたら核兵器を使う」
として、非常に恣意的に先制攻撃ができるものを作りました。今までの朝鮮半島
の安全保障環境と、ウクライナ侵攻始めた後、プーチンと金正恩が急接近してい
る今の状況は、かなり環境が変わりました。

 北朝鮮は最近核兵器の数を縮小しているけれど、それは悪い方に縮小している
と言えます。アメリカに対峙するには核兵器の選択も辞さずという方向に向かっ
ていると言えると思います。

 そして今年の6月19日に、プーチンが北朝鮮を訪問しました。ここで「包括
的戦略パートナーシップ条約」に署名しました。一般的には軍事同盟と言われま
すが、「他方が攻撃されたら、自分も攻撃に参加する」というもので、日米同盟
もそうです。

 この2年半の間に朝ロがどんどん近づいて、同盟関係を思わせるような条約を
結ぶところまできてしまったと言えると思います。すると、韓国はどうするのか。
朝鮮半島の緊張下でどのように対処するのか。

 韓国の尹錫悦さんは、内政では今も混乱しているところがありますが、安全保
障あるいは北朝鮮に対する態度は一貫しています。「力を持って対抗しなければ
我々は負ける」と。

 特に、核兵器をここまで発展させた北朝鮮に対峙するためには、アメリカと核
戦力の共有もする、あるいは場合によっては韓国の中に、「核兵器を置くくらい
なことをしなければ、核戦力を抑止できない。我々の独立は守れない」というく
らい信念の固い人です。

 前の文在寅政権は左派ですから、アメリカとの関係も問題があったのですが、
2022年5月に尹錫悦政権になってまず、同盟関係の立て直しの努力をしまし
た。

 まず取り組んだのは核戦力を米韓同盟の中に組み込もうということでした。ア
メリカは同盟国であっても、核戦力については、大統領が最高権限を持っている
ので、「核の傘によって同盟国を守る」とは言いますが、核戦略については他国
には関与させないのです。

 それでは本当に起きた時にどのような作戦ができるか分からないという不安が
尹錫悦政権内で高まった。尹さんは去年の正月の演説で、「アメリカの〈核の傘〉
がどう使われるか分からないならば、韓国で独自の核を持つ」と言いました、

 日本の首相でそこまで覚悟のある人は、私は知りません。「そのくらいの覚悟
がなければ、自分の国は守れない」と尹さんは言ったわけです。その発言があっ
て、安倍さんが慌てましたね。

 そしてすぐに、「我々は〈核の傘〉で守られている」と言ったのです。やはり
韓国は非核でなければならないということですが、やはり大統領の一言は非常に
強いですね。どうなったかというと、それから4か月後に米韓首脳会談があり、
そこで、「今までの〈核の傘〉ではない、もっと新しい形で米韓の戦略を立て直
すための取組みを始めましょう」という宣言を出したのです。

 やはり、「打てば響く」と言いますが、「撃たないと響かない」いい例だと思
います。そして核協力という全く新しい仕組みを作り、米韓でこれまで何度も会
談をしてきました。

 しかし、それにも増してロ朝が軍事同盟を強化して、さらに強い軍事支援、北
朝鮮が持っていない様々な軍事技術、例えば偵察衛星の技術とか、原子力潜水艦
の技術とかを貰おうとしています。

 それをプーチンが簡単に出すとは思えませんが、今までとは違う軍事協力が始
まったと言っていいと思います。尹錫悦さんはもっとアメリカのお尻を叩いた方
がいいと思います。

 今年の7月11日に、ワシントンでNATOの首脳会議がありました。そこで米韓
首脳会談も行われたのですが、ここでアメリカにねじ込んで「朝鮮半島の新しい
核指針」というグレードアップして取り決めを行いました。

◆北の核に備え、韓国周辺に米原潜が配備されたが日本の戦略は

 この「取り決め」はさらに一歩踏み込みました。ヨーロッパではアメリカの戦
術核が5か所に置いてあるんですが、戦略核兵器やICBMを積んだアメリカの原子
力潜水艦を常時韓国周辺に置いて、水面上では見えませんが何かあった時に、そ
ういう核兵器で守ることになりました。「核の傘」ではなく、具体的に守る戦略
をこれから実施するとの指針を出しました。

 なので朝鮮半島はすごく緊張していると思います。片やロ朝で軍事同盟ができ
ている。片や米韓が、核戦力を含めた軍事演習を始めるような時代になりました。
それはウクライナ戦争があり、金正恩が統一政策を放棄して、韓国を「敵国」だ
と言ったこともこの流れの一環です。

 今後の朝鮮半島はこれまでのものとは違いますので、日本も真剣に考えなけれ
ばならないと思います。

 つい最近韓国の高位の外交官と話す機会がありました。私は日本の拉致問題に
ついてお話しました。彼は、「北朝鮮は大変危険な状況である。韓国を敵国化し
て軍事的な圧力をロシアと共同して、何をし出すか分からない状況にある。今韓
国は大変なんだ。米大統領選でトランプ氏が大統領になると、あの人は米韓同盟
に非常に厳しい見方をしていて、韓国が応分の駐留費を払わなければ在韓米軍を
撤退すると言った」と。

 もう一つ気になっているのは、韓国は片方が米韓関係、片方が日韓関係と強い
絆で結ばれれているのが韓国の強みだ。米韓は今切れないような絆になっている。
日韓は尹錫悦政権で回復したが、やはりぜい弱だ。次の政権で尹錫悦政権のよう
な政権が出てくるか分からないからだ」と。

 「それで、北朝鮮が〈日韓〉を切ってくる可能性がある。なぜかと言えば、金
正恩が岸田さんに呼びかけて、拉致問題を動かす可能性がある」と言っていまし
た。

 つまり北朝鮮はあらゆる手段を使って自分たちの目標を達成しようとしている。
最終的には韓国をアメリカから引き離して、あるいは日本から引き離して、自分
の傘下に収めたいと。「統一は放棄する」と言っていますが、その野望を捨てて
いりわけではないと思います。

 その時に日本は利用される可能性もあるわけです。今動いていないからといっ
て我々は油断してはならないのです。岸田さんが北朝鮮から連絡があった時に、
どのように対処していくのかという戦略を立てておかなければならないと私は思
います。以上です(拍手)。

(3につづく)



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