救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

動くか北朝鮮-最新報告1(2023/07/24)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.07.24)

 拉致問題が動き始めたのか。5月27日の国民大集会で岸田総理が「首脳会談
を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と言ったら、
2日後の朝に「会えない理由はない」という北朝鮮の外務次官談話が出た。金正
恩委員長の決済がわずか1日半で下りたことになる。

 ハイレベル協議は進んでいるのか。そこで主張すべきことは何か。その時全拉
致被害者を一括帰国されるには何をすべきか。西岡救う会会長が7月20日の東
京連続集会124で最新報告を行った。家族会から横田哲也さんも参加した。

■動くか北朝鮮-最新報告1

◆初めて岸田総理の挨拶に対し、肯定的な反応が出た

西岡力(救う会会長)

 みなさん、今晩は。お暑い中ありがとうございます。

 前回の連続集会は5月の国民大集会の前に開かれています。6月は特別集会と
して金聖●(王へんに文、キム・ソンミン)さんたちに来てもらい、北朝鮮内部
の話を聞きました。5月27日の国民大集会で岸田総理が挨拶をされ、そのあと
北朝鮮がすぐに応えてきた。しかし、その後表立った動きは今見えません。その
ことをまずおさらいします。

 もちろん交渉事ですから私たち民間には知らされていませんし、それでいいと
思っていますが、私が聞いている限りの情報で今どうなっているかについてお話
します。最終的に日朝の対立点がどこにあるのか、岸田政権の交渉の中で何を主
張してほしいと私たちが思っているかについてお話します。

 配布資料の「月間WiLL」8月号の「月報朝鮮半島」は私が毎月連載しているも
のですが、5月27日の国民大集会、5月29日の北朝鮮外務次官の談話につい
て詳しく書きました。今の情勢を考える場合、この挨拶と談話が基礎になります
ので、また東京集会ではまだ話していませんのでそれをもう一度確認したいと思
います。

 岸田総理が国民大集会で、「首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベ
ルで協議を行っていきたい」と述べたところ、僅か2日後の29日に北朝鮮は朴尚
吉(パク・サンギル)外務次官の談話を出して「朝日両国が互いに会えない理由
がない」と答えたのです。

 国民大集会は実は1999年から実施してきましたし、2002年以降は総理
が出席してくださることが大変多くなりました。安倍政権以降はほとんどすべて
総理が出席されています。しかし、総理の挨拶に対し北朝鮮から答えが返ってき
たのは初めてです。

 北朝鮮は建前として、「拉致はもう終わった」と言っていますが、国民大集会
は終わっていないという集会なんです。北朝鮮は、「有象無象がけしからんこと
を言っている」というようなものはたくさんありました。

 しかし、私たちが主催し、来賓として岸田総理が来てくださった集会の挨拶に
対し、「両国が互いに会えない理由がない」との肯定的な返事が来たのは今まで
になかったことです。だからこそこの挨拶と談話が基礎になっているわけです。

 岸田首相の挨拶は27日午後2時半近くに行われました。もちろん日本語で話
しただけで文書を配ったわけではない。北朝鮮側はすぐ文字起こしをして朝鮮語
にして金正恩に見せ、談話を出せとの指示を受けて談話案を作成して、再度決済
を受けたはずだ。そのプロセスがわずか1日半で行われた。

 正確な記録を作るには、音をテープに採ってそれを文字起こししなければなり
ません。北朝鮮側の誰かが会場にいて、あるいはインターネットの中継を見て、
文字起こしし、それを朝鮮語にしかなければならない。そして金正恩委員長に見
せたのでしょう。

◆岸田総理の挨拶に注目しろとの命令があった

 外務次官の談話であっても、大臣であっても、北朝鮮は唯一指導体制ですから
首領様が決定することになっています。幹部はそれを実行する。これが北朝鮮の
政治システムです。それまで日本が「拉致は解決していない」と言ったら、「解
決済み」と言えいわれていますので、そういう場合はトップの決済なしでも言え
ますが、新しいこと、特に対外関係で新しいことをいう場合は、新しい決済がな
いと絶対にできないのです。

 その決済をもらう期間が1日半だった。土曜日の午後2時半ころから日曜日を
経て、月曜日の朝には出ています。週末は基本的に北朝鮮では休みです。実は金
正恩委員長の決済をもらいたい人がたくさんいるのです。その順番を取るのが大
変なわけです。これは明らかに特別扱いです。

 金正恩委員長が事前に、「岸田さんが何か言ったらすぐに報告に来い」と命令
していた。国民大集会があることは分かっていました。岸田総理が来ることもほ
ぼ分かっていた。そういう中で、「注目して報告しろ」という命令がなければこ
んな早い決裁にはなりません。

 報告の窓口は書記室がやっていますが、この書記室を握っているのは(妹の)
金与正です。金与正さんが何を上げるかあげないかの権限をもっているのですが、
彼女も早く上げたほうがいいと判断したわけです。

 これは去年の10月に岸田総理が、「拉致と核・ミサイルを包括的に解決し、
不幸な過去を清算して国交正常化をめざしますが」と言いました。ここまでは安
倍総理、須賀総理と同じ内容ですが、「が」に続けて、「拉致被害者御家族も御
高齢となる中で、拉致問題は時間的制約のある人権問題です」と言って、拉致問
題だけに「時間的制約」という言葉をつけたのです。

 それが北朝鮮に届いていたわけです。だから5月の国民大集会で何を言うかを
北朝鮮も強い関心を持って、内容を取ろうとしていた。救う会のホームページの
動画は聞きにくいという話もあったので、誰か会場に来て録音していたと思われ
ます。岸田さんの挨拶が終わったらすぐに会場から出て文字起こしをしたのでは
ないかと思います。

 日本が拉致と核・ミサイルを切り離して、人道問題、人権問題として交渉しよ
うとしている。家族会は2月に新しい運動方針を決めて、「親の世代の被害者家
族が存命のうちにすべての拉致被害者の即時一括帰国が実現すれば、日本政府が
人道支援をするのに反対しない」としていました。

 そして今年5月にその運動方針を持ってアメリカに行ったら、国務省の副長官
以下国務省関係者、NSC(国家安全保障会議)、両院の共和党民主党の議員が
理解を示した。それを受けて岸田総理が5月27日に何を言うか、北朝鮮は大変
注目していた。そうでなければこんな早い反応はありえないということだと思い
ます。

 ひょっとしたらもう裏交渉が始まっていて、岸田さんが強いことを言うから聞
いてくれと北朝鮮に言っていたのか。そういうことまで私は考えてしまいます。

 とにかく私たちの集会での岸田総理の挨拶に対し、肯定的な反応が出たのも初
めてのことですし、反応した時間もものすごく短かったのもかつてないことです。
これは今までと違うことが起きているのではないかと、長く北朝鮮問題、拉致問
題をやってきた私としては強く思っています。

◆岸田総理が何度も踏み込んだ発言

 岸田総理の挨拶に戻って少し検討したいと思います。私も壇上ですぐ側にいた
のですが、私も息を?む思いで、「岸田さんは何を言うのだろうか」と思って一
生懸命聞いていました。そして、「あ、踏み込んだな。また踏み込んだな」と思っ
ていましたが、その主要部分が配布資料にあります。

「北朝鮮については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸
案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指しま
す」。ここまでは去年の10月と同じで、安倍さんや菅さんの挨拶とも同じです。

 そのあと、「(目指しますが)が」とつけて、「とりわけ、拉致被害者御家族
も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにでき
ない人権問題です。全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現すべく、全力で
果断に取り組んでまいります」。

 前回は「拉致問題は時間的制約のある人権問題」と言ったのですが、今回は
「時間的制約のある拉致問題」として、「ひとときもゆるがせにできない人権問
題」としました。「ひとときもゆるがせにできない」という言葉を新たに加えま
した。「時間的制約」というのも切迫しているということですが、「ひとときも
ゆるがせにできない」というのも切迫しているということです。切迫していると
いう意味が2つになった。

 横田早紀江さんが3月に緊急入院して手術を受けたことはニュースにもなって
いますので、当然北朝鮮も知っていると思います。「親の世代が存命の内に」と
私たちは繰り返し言っていますが、岸田総理もそういうことを背景にしながら
「切迫している」という意味のことを2回言いました。

 次に、「日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致する
とともに、地域の平和と安定に大きく寄与いたします」と。これは去年10月に
もあったのですが、「双方の利益に合致」と言って、北朝鮮にとっても利益があ
ると言っています。

 日本にとっても拉致被害者が帰ってくるということは重大な「国政の最優先課
題」というわけですから両方にとって利益があるわけです。

 さらに、「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝が新しい関係を築こうとし
ても、その実現は困難なものになってしまいかねません」と。これも現場で聞い
ていて、「あ、踏み込んだな」思いました。こういうのは聞いたことがなかった
のです。「このままでは日朝が新しい関係を築こうとしても困難になる」という
ことは、現状維持はなく、時間が経てば経つほど困難になるということです。

 これは岸田総理も被害者家族が高齢になっていることを踏まえた発言です。有
本嘉代子さんが亡くなり、横田滋さんがなくなり、飯塚繁雄さんが亡くなって
いくということが、時間が経てば経つほど困難になるということです。

 現在の状況が長引けば、親世代の87歳の早紀江さん、94歳の有本明弘さん
に何か起きるもしれない。そうしたら日朝が新しい関係を築こうとしても、その
実現は困難なってしまいかねません、と総理がおっしゃった。総理の言葉として
のようにも取れることをおっしゃったわけで、「あ、ここも踏み込んだな」と思
いました。

 その上で、「日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り開いていく
という観点からの私の決意を、あらゆる機会を逃さず金正恩委員長に伝え続ける
とともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行ってい
きたいと考えております」とおっしゃった。

 これを聞いて私は、「えっ」と思いました。総理は原稿を読んでいるわけです。
みんなで検討して色々な部署の人たちが原稿を作るわけです。協議が始まって
いない段階で、「行っていきたいと考えております」と言うのか。

 来週にも北朝鮮が、「拉致は解決済みだから協議する意思がない」と言ったら
恥をかくような言葉ですね。「拉致問題は時間的制約のある人権問題」というの
は拉致問題の性格を言うわけですから、北朝鮮が「解決済み」と言っても、「北
朝鮮の姿勢を変えようとしているんだ」と言えるのですが、「行っていきたいと
考えております」というのは相手あることです。

 私は、「協議を行うためのチームを作ります」という意味なのかとも思いまし
た。そうしたら自分のことだけですから言ってもいいのですが、「行っていきた
いと考えております」と言って大丈夫なのか、と思いました。

 現場におられた方はこの部分についてコメントしなかったのですが、文章を持っ
ていなかったのでよく分からなかったのです。その前の「長引けば長引くほど、
日朝が新しい関係を築こうとしても、その実現は困難なものになってしまいます」
とか、「ひとときもゆるがせにできない」というのは踏み込んだ発言だなと思っ
たのですが、この部分ついては意味が分からなかったのですが、その後すぐ政府
のホームページを見たら「行っていきたいと考えております」とありますので、
「ずいぶん踏み込んだな」と思いました。

◆拉致は解決済みと言いつつ、「互いに会えない理由がない」とも

 最後に、「私は大局観に基づき、あらゆる障害を乗り越え、地域や国際社会の
平和と安定、日朝双方のため、自ら決断してまいります」とおっしゃいました。
「大局観」と「決断」という言葉ですが、北朝鮮の外務次官の談話にも同じ言葉
があります。

「27日、日本の岸田首相がある集会で朝日首脳間の関係を築いていくことが大
変重要であると発言し、朝日首脳会談の早期実現のために高位級協議を行おうと
する意思を明らかにしたという」。この中の「ある集会」とは、「全拉致被害者
の即時一括帰国を求める国民大集会」のことです。また、これは土曜日の岸田さ
んの発言を聞いていなければ書けない言葉です。岸田さんの発言を引用している
のですから。こういうことを書いてはならないのですが、事前に金正恩委員長の
決裁をもらっていたから書けたのです。最初から岸田さんが言ったことを引用し
ているのです。

「われわれは、岸田首相が執権後、機会あるたびに「前提条件のない日朝首脳会
談」を望むという立場を表明してきたことについて知っているが、彼がこれを通
じて実際に何を得ようとするのか見当がつかない。

 21世紀に入って、2回にわたる朝日首脳の対面と会談が行われたが、なぜ両
国の関係が悪化一路だけをたどっているのかを冷徹に振り返ってみる必要がある。

 現在、日本は「前提条件のない首脳会談」について言っているが、実際におい
てはすでに解決済みの拉致問題とわが国家の自衛権について何らかの問題解決を
うんぬんし、朝日関係改善の前提条件として持ち出している」。ここまでは岸田
首相の言葉を前提に批判的に書いている。

 ここで「解決済みの拉致問題」という言葉が出てきます。岸田首相は「前提条
件のない日朝首脳会談」と言っているが、事実上条件を付けているじゃないかと
批判しています。前提条件とは拉致問題と「わが国家の自衛権」というのは核・
ミサイルのことだと思います。

 次に、「日本が何をしようとするのか、何を要求しようとするのかはよく分か
らないが、もし他の対案と歴史を変えてみる勇断がなく先行の政権の方式で実現
不可能な欲望を解決してみようと試みるのなら、それは誤算であり、無駄な時間
の浪費になるであろう。

 過ぎ去った過去にあくまで執着していては、未来に向かって前進することがで
きない」。ここでも批判していますが、どっちが過去に執着しているのかですよ
ね。

 そしてその次に、「もし、日本が過去に縛られず、変化した国際的流れと時代
にふさわしく相手をありのまま認める大局的姿勢で新しい決断を下し、関係改善
の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由がないというの
が、共和国政府の立場である。

 日本は、言葉ではなく実践の行動で問題解決の意志を示さなければならない」

「過ぎ去った過去にあくまで執着していては、未来に向かって前進することがで
きない」で終わっていれば今まで通りですが、最後に「会えない理由がない」と
して、「日本が意思を示せ」で終わっています。

「やらない」とは言っていないのです。「朝日両国が互いに会えない理由がない」
ですから。前提条件を付けていると延々と言っているのに、「会えない理由がな
い」は唐突ですね。

 そして見てほしいのですが、「大局的姿勢で新しい決断を下」す、と言ってい
ます。岸田総理は、「大局観に基づき決断する」と言っています。「大局」と
「決断」と2つ同じ言葉を使っています。1つなら偶然の一致があるかもしれま
せんが、この短い言葉の中で岸田さんと同じ言葉を2つ使うだろうか。これも私
が注目したところです。

 日本を批判しておきながら、「岸田は会おうと言ったが会えない理由がある」
の方が、話が通るのです。なぜ最後に「会えない理由はない」と言うのか。明ら
かに土曜日の岸田さんの挨拶を聞いてからある程度歩調を合わせて書いています。

 こういうことは今まで、韓国の大統領に対して言ったり、「バイデン大統領は
ぼけている」と批判したのとは大きな違いです。

◆北朝鮮は、岸田総理の挨拶を徹底的に読み込んでいる

 もちろん外務次官というのはそれほど大きな立場ではありません。日本の批判
をする時いつも出てくるのは外務部の日本研究所の研究員です。これはずっと位
が下です。政策に関係していない。しかし、外務次官は政策に関係しています。
その人がわざわざ、すばやく「会えない理由はない」という言葉を含む談話を出
した。

 明らかに岸田総理の挨拶を徹底的に読み込んでいます。表向きは北朝鮮の立場
を変えたことはないような文章構成になっていますが、それなら「会わない」と
言えばいいのに、なぜ「会えない理由はない」と言ったのか。そこに、「会えな
い理由はないと言え」という金正恩氏の意思があるというふうに私は思っていま
す。

(2につづく)



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首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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