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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致問題の現場から36(2026/08/03)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2026.08.03)

■拉致問題の現場から36

 下記は、西岡力・救う会会長が、「産経新聞」の「拉致問題の現場から」に連
載しているものです。参考情報として送ります。

<参考情報>

 私たちは7月2日、元北朝鮮外交官の李日奎(イ・イルギュ)氏を韓国から東京
都内に招き、特別集会を開いた。1999年に北朝鮮外務省に入省、2023年11月に家
族とともに韓国に亡命するまでの約25年にわたり、北朝鮮内部にいた人物だ。

◆人情は通じない
 講演には、横田めぐみさん(61)=拉致当時(13)=の母である早紀江さん
(90)も姿を見せた。李氏は冒頭、「長年、北朝鮮政権に所属していた者として
謝罪する」と述べ、一番の前の席に座っていた早紀江さんに頭を下げた。その後、
当時、自身が所属した北朝鮮外務省が、日朝関係の改善を望んでいるとの見方を
示した。

 李氏によると、中国は北朝鮮を助ける「意志」がなく、ロシアと韓国は北朝鮮
を助ける「経済能力」がない。アメリカは北朝鮮に「関心」がない。そのため、
「自分たちを豊かにする能力があるのは日本だけだと、北朝鮮外務省は認識して
いる」と指摘した。そうであるならば、外務省に拉致問題をテコにして突破口を
開いてもらいたいところなのだが、同省は拉致関連の情報を持っておらず、上層
部に政策提言をする権限も有していないのだという。

 当時の金正日(キム・ジョンイル)総書記は1990年代後半、日本との接近に備
えて外務省に「日本課」を作ったが、わずか6人の小規模な組織。2002年の小泉
純一郎首相の訪朝を含め、対日関係を巡る実務に同課は全く関与しておらず、情
報機関の「国家安全保衛部」が担った。

 正日氏は11年12月に死去し、息子の正恩(ジョンウン)氏がトップに就く。正
恩体制に移行後も10年以上、外務省に勤務した李氏は、正恩氏の人柄について、
「人情が通じる相手ではない」と強調。自己の利益になるか否かのみをシビアに
判断して行動する性格のため、日本からの大規模経済支援そのものには興味があ
るはずだとの見方を示した。

◆50億円を横領、進む大規模粛清

 ここからは、最近、北朝鮮内部で発覚した大事件の経緯を説明したい。軍隊組
織「朝鮮人民軍」の実質的な最高実力者である朴熙哲(パク・フィチョル)少将
が多額の資金を横領し、それを軍幹部らにばらまいて私的な派閥を作ったという
のだ。

 これにより、組織内で大規模な粛清が進行しているという。

 公式発表などによると、平壌で7月10日、正恩氏のほか党・政府・軍の要職に
いる計500人が集まって開催された連合会議の場で、朴氏は「想像を絶する特大
犯罪に手を染めた」として激しく糾弾されたという。

 朴氏は人民軍の「総政治局組織部」のリーダー。全軍人の人事権を握り、「生
活総和」(国民が週1回、少人数のグループに分かれて相互批判する強制参加の
政治集会)を統括するという、重要な立場だった。

 私が入手した情報では、朴氏は22年からの4年の在任期間で、3000万ドル(約
50億円)を横領。その資金を使って総政治局だけでなく、秘密警察組織の「保衛
局」や軍事行動全体を統括する「総参謀部」などのメンバーも手なずけ、勢力を
拡大した。

 朴氏の着任時期と同じ22年に始まったロシアのウクライナ侵略戦争で、総政治
局は、北朝鮮からの武器輸出や北朝鮮兵士の派遣、ロシアからの支払金の管理な
どに関与していた。朴氏は、総政治局幹部らと共謀して帳簿を変造し、横領した
とみられるという。

 今年4月に不正が発覚し、6月までに朴氏の関与が浮上した。これまでに朴氏や
海軍司令官など将軍14人を含む約170人の軍幹部が逮捕され、うち約80人が銃殺
された。朴氏は7月時点では処刑されず、事件の全貌や背後の勢力について激し
い拷問を伴う取り調べを受けているとされる。

◆国家情報局に期待

 私はこの事件の背景に、外貨不足で軍が疲弊しているという事情があるとみて
いる。17年に発動された国連制裁の結果、北朝鮮の主要輸出品である石炭、鉄鉱
石、繊維製品などの輸出の道が閉ざされた。制裁前に20億ドル程度だった輸出額
は約90%減った。

 20年ごろからの新型コロナウイルス禍以降は、「国家による貿易の完全な一元
化」を実施。正恩氏の統治資金を扱う「党39号室」などにだけ貿易を許可し、こ
れまでは認められてきた軍の傘下にある貿易会社などは排除された。

 朴氏は外貨稼ぎの手段を奪われたため、ウクライナ戦争を機に活発化したロシ
アとの取引に介入して多額の横領を行ったとみられる。今回の前代未聞レベルの
不祥事は、本をただせば国連制裁の効果だともいえる。

 この件により、正恩氏は米国との交渉で制裁を解除させ、日本から経済支援を
得ることに、さらに必要性を感じたに違いない。その意味で拉致問題解決に向け
たチャンスは続いている。

 日本は長かった特別国会が閉幕した。問題解決に寄与する動きとしては、内閣
情報調査室を改編・格上げし、インテリジェンス(情報収集・分析)の司令塔と
なる「国家情報局」が設置された。北朝鮮工作船の電波傍受記録をはじめ、政府
内の各機関には拉致問題に関する多くの情報が存在する。それらを組織の壁を越
えて集約する作業を国家情報局はすぐに本格化させてほしい。



■木村かほるさん巡る目撃情報、「80%似ている」証言

 李日奎氏の講演には、他にも注目点があるのでさらに報告する。前回の本欄で
予告していた、北朝鮮工作船が発していた「電波」については、次回に改めて述
べる。

 産経新聞は今年3月、李氏が、拉致の疑いを排除できない「特定失踪者」の木
村かほるさん(87)=失踪当時(21)=に似た女性を1990年代に複数回、平壌市
内の商店で見たと証言したと報じた。

 今回の講演では、李氏はより詳細に当時の状況を回顧。94年に平壌市内にある
日本製品を専門に扱う「北塞(プッセ)商店」で、木村さん似の販売員女性と言
葉を交わしたと明かした。女性と顔を合わせたのは、このときを含め96年までに
計3回。木村さんの写真と比較し、この女性がどのくらい似ていたかを数値化す
ると、「80%」と言及した。

 李氏がそもそもこの商店を訪れたのは、木村さん似の女性とは別の販売員の女
に会うためだった。李氏が大学生当時、北朝鮮工作機関に所属していた父の業務
の関係でキューバで暮らしていたとき、この女が工作員としてキューバに来た。
面識があったのだ。

 李氏は女の素性を詳しくは把握していなかった。だが、2023年に韓国に亡命し
たのち、関係者から示された写真などを見て、女がよど号乗っ取り犯メンバーの
妻、若林佐喜子容疑者であると確信したという。

 若林容疑者は、欧州にいた石岡亨さん(69)=拉致当時(22)=と松木薫さん
(73)=同(26)=を拉致したとして国際手配されている。現在も北朝鮮で暮ら
している。

 商店は、北朝鮮工作機関の「統一戦線部」がよど号犯の妻らを使って運営して
いたので、若林容疑者が働いていても疑問はない。ただ、同じ職場で、木村さん
のようなよど号と無関係の人が働くことがあり得るのかは、私も判断がつかない。

 また、政府認定の拉致被害者のうち、被害時期が最も早いのは、久米裕さん
(101)=同(52)=の昭和52(1977)年だが、木村さんの失踪時期はこれより
20年近く前の35(1960)年だ。あまりにも早い。

 木村さんを巡っては、大韓航空機爆破事件の実行犯の金賢姫(ヒョンヒ)・元
工作員が私の取材に対し、1979年ごろに平壌外国語大学で日本語を習った日本人
教員について、「木村さんと似ているが、別人だ」と証言している。

 李氏が面会した販売員女性が木村さんなのかどうか、現時点では断定できない。
日本で暮らしているよど号関係者もおり、真相を把握している可能性がある。継
続して調査したい。

以上



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