北朝鮮に異変、「内部崩壊」指摘も 真冬に思う被害者たちの辛苦、来年こそ局面打開に期待(2025/12/22)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2025.12.22)
■北朝鮮に異変、「内部崩壊」指摘も 真冬に思う被害者たちの辛苦、来年こそ局面打開に期待
以下は、西岡力会長の原稿が、12/20「産経新聞」の、「拉致問題の現場から
(第28回)」に掲載されたものです。参考情報として送ります。
<参考情報>
今年も「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(毎年12月10?16日)を迎え、国内で
は多数の関連行事が実施された。家族会、救う会、拉致議連は12日、被害者奪還
の方策を考える国際セミナーを東京都内で開催。昨年に続き、北朝鮮向けラジオ
放送「自由北韓放送」(韓国)の李始瀛(イシヨン)代表を招いて、最新の北朝
鮮内部情勢を報告してもらった。
◆中国国境で餓死者、「苦難の行軍」でも未確認
報告によると、中朝関係の悪化を背景に中国からのコメの輸入量が減り、チャ
ンマダン(闇市場)で価格が1キロ2万ウォンまで高騰。住民の平均月給は2万?4
万5000ウォンであり、食料事情が逼迫(ひっぱく)している。結果、中国との国
境に面した金正淑(キムジョンスク)郡で、今秋に餓死者が出たという。
中国国境地域は従来、物資などが比較的豊富に出回る。李氏は、配給制度が崩
壊したため300万人以上が餓死したとされる大飢饉(ききん)「苦難の行軍」の
時期(1994?99年ごろ)でも、「国境地域で餓死者はあまり出なかった」と指摘。
こうした経緯から、「内陸地域ではより多くの人が死んでいる」との見方を示し
た。
その後、私を含む専門家による討論を行った。
国学院大客員教授の久保田るり子氏は、北朝鮮で「内部崩壊が始まっている」
と主張した。具体的には、金正恩(キムジョンウン)体制下で韓国の習慣や歌、
言葉遣い、ドラマの流入などを徹底的に取り締まる法律を3つ作り、住民を次々
と摘発している実態を例示。「こうした締め付けは人々の反発を生み、反体制グ
ループが組織された。社会安全部(警察)など、取り締まる側の人間が夜間に襲
われて殺されている」とし、「体制崩壊が始まっているとみていい」と訴えた。
久保田氏によると、2021年以降、公開処刑の数は8倍に増え、半数が反動思想
(韓国文化への接触)を理由としたものだという。
◆軍と大学に反体制組織、若者たちが決起
私も大規模な反体制事件を紹介した。朝鮮人民軍内と、名門大学内を舞台とし
た2件だ。
北朝鮮南西部の海州(ヘジュ)に本部を置く朝鮮人民軍「第4軍団」では約3年
前、若手の中尉らが反体制の秘密組織を結成した。平壌などに生まれ、学歴も優
れた、いわゆる成分の良い若者たちだ。
組織は、人民軍内の政治警察である保衛局によって今年10月初めに摘発された
のだが、銃撃戦に発展し、30人近くが死亡した。関係者によると、国家を革命す
る計画も立てていたという。
軍団の駐屯地が韓国に近く、電波の関係で同国のテレビなどを視聴できたこと
が、こうした行動に影響したとみられる。
大学のケースは、平壌にある名門の「金策工業総合大学」だ。約2年前、同大
電子工学部の学生が中心となり秘密組織を立ち上げた。金日成総合大学、平壌外
国語大学などの学生も合流した。
これまでも小規模の大学生反体制組織はあったが、今回は100人以上が参加し
ており、この規模は史上最大だという。
韓国ドラマを見たことで身柄を拘束されたメンバーが当局から激しい拷問を受
け、組織の存在を自白。9月ごろに主要メンバーの3人が銃殺され、最終的に計10
人が殺された。残りの大半は政治犯収容所に送られた。
◆高市・木原コンビに期待感、時間はない
このように、北朝鮮内部は今、かなり揺れている。私はセミナーで、正恩政権
が、現状の危機を乗り越える手段として、米国と日本との連携を考えていると指
摘した。
本欄でも繰り返し述べてきたが、正恩政権が中国の求める改革開放政策をとら
ず人民生活を犠牲にして核開発に集中した結果、中朝関係は悪化し、現状も改善
には向かっていない。ウクライナ戦争への派兵によるロシアからの見返りも大半
が軍事分野に限定され、いつまで続くかも不透明。韓国とは一切交流しない方針
を決めている。
苦しい国際情勢の中で正恩氏はまずトランプ米大統領を平壌に呼び、核・ミサ
イル問題で一定の取引を成立。高市早苗首相と会い、拉致問題をカードに大規模
な経済支援を得ようとしている。
高市氏がどれだけ正確な拉致被害者の生存情報と所在情報を持ち、最後の勝負
に臨めるのかが、大きな鍵となる。
今年もあと10日ほどで終わる。振り返れば、政治の動きは目まぐるしかった。
日朝連絡事務所の設置を巡って家族会と亀裂が生じていた石破茂首相が10月、
就任約1年で辞職。高市氏が憲政史上初の女性首相に就いた。
高市氏は「(拉致問題の解決に向けて)手段を選ぶつもりはない」、「私の代
で何としても突破口を開く」と決意を口にし、木原稔官房長官兼拉致問題担当相
は「自分が最後の担当大臣になる」と言い切った。期待できるコンビだ。
有本恵子さん(65)=拉致当時(23)=の父、明弘さんが2月に96歳で亡くな
り、親世代の家族会メンバーは横田めぐみさん(61)=同(13)=の母、早紀江
さん(89)だけとなった。
早紀江さんは来年、90歳になる。私たちは親世代が存命中の全被害者の奪還を
求めている。残り時間は本当にわずかだ。
毎年、この時期になると、日本よりも寒い北朝鮮で厳しい生活を強いられてい
るであろう被害者たちを思い、胸が痛む。
チャンスはある。来年こそ、大きな喜びの瞬間が訪れることを願っているし、
そのときまで自分にできることを続けていく覚悟だ。
◇
◆現地化1期生の金賢姫氏 「めぐみさん拉致は工作員化が目的」
1976年に金正日(キムジョンイル)総書記が出した北朝鮮工作員の「現地化指
令」に基づき、日本人化と中国人化の教育を受けたのが、大韓航空機爆破事件
(87年)の実行犯である金賢姫(ヒョンヒ)元工作員だ。私は彼女に2012年11月
にソウルで面会し、詳しい経緯を聞いた。今回はそれを紹介しよう。
賢姫氏は1980年、平壌外国語大学の日本語学科在学中に、スパイ養成所である
金星政治軍事大学(後の金正日政治軍事大学)に召喚された。現地化教育の1期
生であり、同期生は6人ほどいたという。
面会で賢姫氏は、正日氏が現地化達成のために、外国人を利用する方針を立て
たと説明。工作機関である朝鮮労働党調査部の課長ら幹部から、「70年代後半に
中国や東南アジア、欧州など全世界で外国人拉致を実行した。特に日本人が多かっ
た。地理的に近く、北朝鮮人と顔つきが似ているからだ」などと聞かされていた
ことを明かした。
賢姫氏によると、外国人拉致には、1.身分の盗用、2.主体思想で洗脳し工
作員にする、3.工作員の現地化教官にする?という目的があった。
13歳だった77(昭和52)年に拉致された横田めぐみさんについては、「子供な
ので、洗脳して工作員として使おうとしていたと思う」と指摘。また、当時、工
作員たちは1.?3.の目的に適する対象を事前に選んで拉致していたが、次第
に成果を競うようになり、「無差別に連れ去るようになった」と語った。
ここでの「無差別」とは、まったくの無条件という意味ではなく、若い女性や
男女カップルなど、一定の要件には合致するものの、事前には狙いを定めず、出
合い頭に拉致していたことを指すとみられる。
ただ、賢姫氏が金星大に入る直前の79年、洗脳や工作員教育を強要された4人
のレバノン人女性のうち2人が、実習先のユーゴスラビアで隙を見てレバノン大
使館へ逃げ込む事案が発生。レバノン政府の抗議で残り2人も解放された。これ
により外国人の工作員化計画は頓挫したとみられる。
80年代初め、同大で学んでいた賢姫氏に対し、幹部は「外国人を工作員として
海外に出したが、裏切った。やはり信頼できない。北朝鮮の若者を教育するしか
ない」と打ち明けたという。
以上
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■高市首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 高市早苗殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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■北朝鮮に異変、「内部崩壊」指摘も 真冬に思う被害者たちの辛苦、来年こそ局面打開に期待
以下は、西岡力会長の原稿が、12/20「産経新聞」の、「拉致問題の現場から
(第28回)」に掲載されたものです。参考情報として送ります。
<参考情報>
今年も「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」(毎年12月10?16日)を迎え、国内で
は多数の関連行事が実施された。家族会、救う会、拉致議連は12日、被害者奪還
の方策を考える国際セミナーを東京都内で開催。昨年に続き、北朝鮮向けラジオ
放送「自由北韓放送」(韓国)の李始瀛(イシヨン)代表を招いて、最新の北朝
鮮内部情勢を報告してもらった。
◆中国国境で餓死者、「苦難の行軍」でも未確認
報告によると、中朝関係の悪化を背景に中国からのコメの輸入量が減り、チャ
ンマダン(闇市場)で価格が1キロ2万ウォンまで高騰。住民の平均月給は2万?4
万5000ウォンであり、食料事情が逼迫(ひっぱく)している。結果、中国との国
境に面した金正淑(キムジョンスク)郡で、今秋に餓死者が出たという。
中国国境地域は従来、物資などが比較的豊富に出回る。李氏は、配給制度が崩
壊したため300万人以上が餓死したとされる大飢饉(ききん)「苦難の行軍」の
時期(1994?99年ごろ)でも、「国境地域で餓死者はあまり出なかった」と指摘。
こうした経緯から、「内陸地域ではより多くの人が死んでいる」との見方を示し
た。
その後、私を含む専門家による討論を行った。
国学院大客員教授の久保田るり子氏は、北朝鮮で「内部崩壊が始まっている」
と主張した。具体的には、金正恩(キムジョンウン)体制下で韓国の習慣や歌、
言葉遣い、ドラマの流入などを徹底的に取り締まる法律を3つ作り、住民を次々
と摘発している実態を例示。「こうした締め付けは人々の反発を生み、反体制グ
ループが組織された。社会安全部(警察)など、取り締まる側の人間が夜間に襲
われて殺されている」とし、「体制崩壊が始まっているとみていい」と訴えた。
久保田氏によると、2021年以降、公開処刑の数は8倍に増え、半数が反動思想
(韓国文化への接触)を理由としたものだという。
◆軍と大学に反体制組織、若者たちが決起
私も大規模な反体制事件を紹介した。朝鮮人民軍内と、名門大学内を舞台とし
た2件だ。
北朝鮮南西部の海州(ヘジュ)に本部を置く朝鮮人民軍「第4軍団」では約3年
前、若手の中尉らが反体制の秘密組織を結成した。平壌などに生まれ、学歴も優
れた、いわゆる成分の良い若者たちだ。
組織は、人民軍内の政治警察である保衛局によって今年10月初めに摘発された
のだが、銃撃戦に発展し、30人近くが死亡した。関係者によると、国家を革命す
る計画も立てていたという。
軍団の駐屯地が韓国に近く、電波の関係で同国のテレビなどを視聴できたこと
が、こうした行動に影響したとみられる。
大学のケースは、平壌にある名門の「金策工業総合大学」だ。約2年前、同大
電子工学部の学生が中心となり秘密組織を立ち上げた。金日成総合大学、平壌外
国語大学などの学生も合流した。
これまでも小規模の大学生反体制組織はあったが、今回は100人以上が参加し
ており、この規模は史上最大だという。
韓国ドラマを見たことで身柄を拘束されたメンバーが当局から激しい拷問を受
け、組織の存在を自白。9月ごろに主要メンバーの3人が銃殺され、最終的に計10
人が殺された。残りの大半は政治犯収容所に送られた。
◆高市・木原コンビに期待感、時間はない
このように、北朝鮮内部は今、かなり揺れている。私はセミナーで、正恩政権
が、現状の危機を乗り越える手段として、米国と日本との連携を考えていると指
摘した。
本欄でも繰り返し述べてきたが、正恩政権が中国の求める改革開放政策をとら
ず人民生活を犠牲にして核開発に集中した結果、中朝関係は悪化し、現状も改善
には向かっていない。ウクライナ戦争への派兵によるロシアからの見返りも大半
が軍事分野に限定され、いつまで続くかも不透明。韓国とは一切交流しない方針
を決めている。
苦しい国際情勢の中で正恩氏はまずトランプ米大統領を平壌に呼び、核・ミサ
イル問題で一定の取引を成立。高市早苗首相と会い、拉致問題をカードに大規模
な経済支援を得ようとしている。
高市氏がどれだけ正確な拉致被害者の生存情報と所在情報を持ち、最後の勝負
に臨めるのかが、大きな鍵となる。
今年もあと10日ほどで終わる。振り返れば、政治の動きは目まぐるしかった。
日朝連絡事務所の設置を巡って家族会と亀裂が生じていた石破茂首相が10月、
就任約1年で辞職。高市氏が憲政史上初の女性首相に就いた。
高市氏は「(拉致問題の解決に向けて)手段を選ぶつもりはない」、「私の代
で何としても突破口を開く」と決意を口にし、木原稔官房長官兼拉致問題担当相
は「自分が最後の担当大臣になる」と言い切った。期待できるコンビだ。
有本恵子さん(65)=拉致当時(23)=の父、明弘さんが2月に96歳で亡くな
り、親世代の家族会メンバーは横田めぐみさん(61)=同(13)=の母、早紀江
さん(89)だけとなった。
早紀江さんは来年、90歳になる。私たちは親世代が存命中の全被害者の奪還を
求めている。残り時間は本当にわずかだ。
毎年、この時期になると、日本よりも寒い北朝鮮で厳しい生活を強いられてい
るであろう被害者たちを思い、胸が痛む。
チャンスはある。来年こそ、大きな喜びの瞬間が訪れることを願っているし、
そのときまで自分にできることを続けていく覚悟だ。
◇
◆現地化1期生の金賢姫氏 「めぐみさん拉致は工作員化が目的」
1976年に金正日(キムジョンイル)総書記が出した北朝鮮工作員の「現地化指
令」に基づき、日本人化と中国人化の教育を受けたのが、大韓航空機爆破事件
(87年)の実行犯である金賢姫(ヒョンヒ)元工作員だ。私は彼女に2012年11月
にソウルで面会し、詳しい経緯を聞いた。今回はそれを紹介しよう。
賢姫氏は1980年、平壌外国語大学の日本語学科在学中に、スパイ養成所である
金星政治軍事大学(後の金正日政治軍事大学)に召喚された。現地化教育の1期
生であり、同期生は6人ほどいたという。
面会で賢姫氏は、正日氏が現地化達成のために、外国人を利用する方針を立て
たと説明。工作機関である朝鮮労働党調査部の課長ら幹部から、「70年代後半に
中国や東南アジア、欧州など全世界で外国人拉致を実行した。特に日本人が多かっ
た。地理的に近く、北朝鮮人と顔つきが似ているからだ」などと聞かされていた
ことを明かした。
賢姫氏によると、外国人拉致には、1.身分の盗用、2.主体思想で洗脳し工
作員にする、3.工作員の現地化教官にする?という目的があった。
13歳だった77(昭和52)年に拉致された横田めぐみさんについては、「子供な
ので、洗脳して工作員として使おうとしていたと思う」と指摘。また、当時、工
作員たちは1.?3.の目的に適する対象を事前に選んで拉致していたが、次第
に成果を競うようになり、「無差別に連れ去るようになった」と語った。
ここでの「無差別」とは、まったくの無条件という意味ではなく、若い女性や
男女カップルなど、一定の要件には合致するものの、事前には狙いを定めず、出
合い頭に拉致していたことを指すとみられる。
ただ、賢姫氏が金星大に入る直前の79年、洗脳や工作員教育を強要された4人
のレバノン人女性のうち2人が、実習先のユーゴスラビアで隙を見てレバノン大
使館へ逃げ込む事案が発生。レバノン政府の抗議で残り2人も解放された。これ
により外国人の工作員化計画は頓挫したとみられる。
80年代初め、同大で学んでいた賢姫氏に対し、幹部は「外国人を工作員として
海外に出したが、裏切った。やはり信頼できない。北朝鮮の若者を教育するしか
ない」と打ち明けたという。
以上
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■高市首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 高市早苗殿
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担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
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カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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