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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

動くか北朝鮮-最新報告2(2023/07/25)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.07.25)

■動くか北朝鮮-最新報告2

◆表立った動きは何もない

 ここまでのコミュニケーションが公開的にできたのですから、何かがもう始まっ
ているのか、すぐに始まるのかと思ったのです。しかし今のところ、「どこかで
局長級の交渉が行われる」との発表は一切ない。

 7月3日に、韓国の「東亜日報」が、「中国とシンガポールで6月中に、日朝
の実務協議があった。しかし、拉致問題などで立場の開きが大きかったことが確
認された」と報じています。

 そうした次の日に松野官房長官が、「そのような事実はありません」と全面否
定しました。

 通常は交渉内容については、「応えられません」と言ってもいいのですが、
「そのような事実はありません」と。私が取材してみたところでは、接触はあっ
たのかもしれませんが、首脳会談実現のための接触ではなかった。

 岸田さんの挨拶があったずっと前から、北朝鮮の大使館があるところでは、色
々なところで外交官同士がお茶を飲んだり、東南アジアの国では食事ができる関
係ができているところもありました。

 そこでは向こうは公式的なこと以外言わない。「会えない理由はない」という
線に基づいて何か発言することはない。そういうことがどこかで目撃されて記事
になったのか。

「東亜日報」の東京特派員とかワシントン特派員の記事では、「日本は事前にア
メリカに通報していた」と書いてあるのですが、書いたのは政治部の記者で韓国
政府関係者、韓国の政治家からリークされたと書いている。よく分からないので
すが、日本政府は全面否定し、その後も何の表立った動きはありません。

 かなり期待が上がったのですが動きがないので、若干いらいらする気持ちもあ
ります。落ち着いて考えてみると、まずは秘密交渉が先行しなければだめなので
す。その段階かもしれないなあと思っています。

◆軍事偵察衛星失敗に金正恩氏の頭がいっぱいか

 そして私が入手した北朝鮮内部情報によると、外務次官談話が出た5月29日
の翌日、北朝鮮は軍事偵察衛星を発射しました。金正恩氏は自信満々で発射した
わけです。事前にその製作工場まで行って、見て、そして自分の命令で発射しし
た。事前に日本に通報があった。しかし、失敗した。

 そしてすぐに失敗を認めたのですが、「近く再度発射する」と。金正恩氏はか
なり怒ったようです。「100%成功すると言っていたじゃないか。どういうこ
とだ」と。そして、「そのことで頭がいっぱいになっていて、なかなか別の案件
を上にあげることができないでいる」という情報があります。

 しかし再度撃てないのです。軍事専門家によると、普通2機を一緒にあげるそ
うです。1機を回しているわけですが、時々故障したりします。しかしスペアが
あるので、それで運用する。

 また発射台が2つ立っていたという情報もあります。だからすぐに再発射でき
るのではないか。金正恩も金与正(ヨジョン)もそういう談話を出した。しかし
まだ発射はない。内部情報によると、「外貨不足で1機しか作れなかった」そう
です。だからすぐには撃てないという情報もある。

 その代わり「火星18」を撃って成功したので金正恩氏の機嫌が少しなおった
そうです。軍事偵察衛星のことで交渉が停滞しているのなら、また進むかもしれ
ません。

◆総理直轄の秘密交渉とは

 よく考えてみると岸田総理は、「私直轄のハイレベル協議を行いたい」と。と
なると金正恩氏直轄の人間とやらなければならない。局長と局長がどこかで会う
というのは岸田さん直轄ではない。外務大臣が入っている。そうではなく水面下
で特使同士が会う。

 田中均アジア大洋州局長は、「小泉総理の訪朝の前に約20回秘密交渉をした」
と本人が言っています。一切それが漏れていません。安倍晋三さんも知らなかっ
た。当時官房副長官で、政府の中で一番拉致問題に関心があったのですが、教え
られていなかった。

 そのくらい限られた人数で、まさに小泉総理直轄で動いていたわけです。彼の
相手?という人は、私の取材では柳京(ユ・ギョン)という国家保衛部の第一副
部長です。彼は金正日に大変近い人だった。お互いが直轄だということをまず確
認しあったそうです。

 当時「日本経済新聞」の記者が、取材活動ではなく観光旅行で行って、写真を
いっぱい撮るのが趣味の人で、スパイ容疑で捕まっていたのですが、「あなたが
本当に金正日とつながっているということを示すのだったら、金正日のところに
行って、その人を釈放してほしい。金正日氏にはその権限があるでしょう」と言っ
たら、「分かった」と言って、実際釈放された。

 北朝鮮側が、「あなたがつながっている証拠は何か」と聞いたら田中さんは、
ある所で本人が言っているのですが、「『総理動静』を見てほしい」と。「総理
動静」を見ると田中さんが何回か入っていた。それでお互いが直轄だということ
を確認し合って秘密交渉をした。

 そこで「平常宣言」の案文も作って総理が平壌に行ったわけです。「平常宣言」
には拉致についても、拉致という言葉は使っていませんが、「再発防止を約束し
た」ということが書いてあって、裏交渉の中で「拉致は認める」というところま
で取っていたのです。

 何人生きていて何人死んだかについて田中さんは事前に知っていたのではない
かという説もありますが、そこは分かりません。少なくとも2002年9月17
日以前は、北朝鮮は「拉致はない」と言っていたのです。

 表向きの局長級の交渉では建前は崩せないのです。それを崩せる権限は金正日
しか持っていなかったのです。直轄の特使は、金正日総書記から、「交渉の中で
これは言ってもいい」という権限を与えられるのです。

 しかし表向き「拉致はありました」と言えるのは金正日総書記だけですから、
内容が外に出るような形ではできないのです。そうでないと安心して交渉ができ
ない。

 自分が党の方針、国家の方針と違うことを言ったことが外に出てしまったら、
その交渉に来ている北朝鮮側の人の立場がなくなるのです。決断したのはあくま
でも金正日総書記だという形式をとらなければならない。そうでないと北朝鮮の
社会では生きていけないのです。

 だからこそトップ会談が絶対必要だということになるのです。しかしトップ会
談実現のためには、直轄の特使が秘密裏に会う。それもハイレベルの交渉が必要
です。岸田総理の提案は理にかなっている。

◆世論で私たちは1回勝ったが、北朝鮮は別の嘘をついた

 当時北朝鮮は、「拉致はない」と言っていた。金正日総書記は決断して、「拉
致は認める」と言った。しかし全員返す決断はしなかった。だから今も私たちは、
「拉致問題を解決しろ」と言っているわけです。

 私たちは2002年9月までは、「拉致がある」と言っていたのです。「産経
新聞」を除く日本のマスコミは「拉致は疑惑だ」と言っていた。しかし、金正日
総書記が認めたので、私たちは1回勝ったのです。「拉致があるかないか」とい
う戦いに勝ったと思っています。

 私たちが運動をしなければ、「拉致はない」という北朝鮮の姿勢は変わらなかっ
たのです。90年に金丸訪朝がありました。その直前まで田中均さんは北東アジ
ア課長で、対北朝鮮外交をやっていました。しかし、金丸さんは拉致問題を出し
ませんでした。

 国会で梶山答弁があり、「北朝鮮による拉致の疑いは十分濃厚だ」という答弁
があったのに日本側が出さなかったのです。それは家族会・救う会の運動がなく、
国民の世論がなかったからです。

 しかし、小泉訪朝の5年前に横田滋さんが名前と写真を出して世論に訴えよう
という決断をして、それに他の家族の人たちが続いて家族会ができ、私たちが救
う会を作って、西村眞悟さんや安倍晋三さん等ごく少数の国会議員が協力してく
れて、5年間運動した結果世論を一定程度作ることに成功した。

 北朝鮮が日本に接近しなければならない理由ができた時に、拉致問題を抜きに
しては日朝が先に進めないという、日本が世論状況を作ることに成功していたの
で、拉致が議題になったのです。

 国会答弁があれば拉致が議題になるかといえばそうではなく、金丸訪朝では議
題にならなかった。その後8回外務省が行った、「日朝国交正常化交渉」でも、
正式の交渉で拉致が議題に出されたのは3回目の交渉だけで、それも田口八重子
さんだけでした。

 梶山答弁で「拉致の疑いが濃厚」とされた蓮池さん、市川さん、増元さん、原
さん、久米さんについては出してないのです。世論があったかなかったかで変わっ
た面がありますが。

 私たちは1回勝ったのですが、北朝鮮がその後もう1回別の嘘をついた。金正
日総書記が認めたのは、「拉致したのは13人だけ」で、「5人は返す。8人は
死亡した。それ以外は未入境でいない」でした。

 だから私たちは「2つの嘘」と言ったのですが、「13人じゃない。日本政府
は17人認定しているじゃないか。4人違いがある。それ以外にも可能性のある
人たちがたくさんいると。

 2つ目は「8人死亡」と言うけど、「死亡の証拠は一人も出ていない。だから
解決済みとは言えない」と。

 今の北朝鮮と日本の対立点は、「拉致があったかなかったか」ではなく、「拉
致が解決したか、してないか」です。私たちから言うと、「新しい2つの嘘との
戦い」でした。「13人しかいないは嘘だ。8人死亡も嘘だ」ということです。

◆金正日総書記が拉致を認め謝罪

 今2002年のことを言いましたが、そのことを前提にして秘密交渉で北朝鮮
にどういう追及をしてほしいのか。交渉の中味を公開したらつぶれますから、公
開しなくていいと思います。

 最終的に総理が行って全被害者を取り戻してくだされば、私たちは人道支援に
反対しないということです。そこで政府に何を言ってほしいのかについて、今日
は頭の整理をしたいと思います。

 配布資料を見てください。これは私が2002年に書いた「金正日が仕掛けた
『対日大謀略』拉致の真実」の付録につけた資料です。「8人死亡は嘘だ」と必
死で書いた本です。

 まず安倍総理も生前おっしゃっていたのですが、「交渉の中で北朝鮮の面子を
つぶしてはならない」と。残念ながら、こちらが上位に立って相手に犯罪を認め
させる交渉では取り戻すことはできないのです。

 ではどうするか。彼らに出口を開けておかなければならない。実は金正日総書
記も拉致を認めた時に、「自分も知らなかった」と言いました。その資料がお手
元にあります。

 これは日本側が平壌でブリーフィングした内容を「朝日新聞」が報道したもの
を引用しました。

小泉首相
「直前の事務レベル準備会合において、情報提供がなされたことには留意するが、
日本国民の利益と安全に責任をもつものとして大きなショックであり、強く抗議
する。家族の気持ちを思うといたたまれない。

 継続調査、生存者の帰国、再びこのような遺憾な事案が生じないよう適切な措
置をとることを求める」。

 これは首脳会談が始まる前の事務レベル準備会合があり、それが田中局長と、
北朝鮮の馬局長が会った。その時に北朝鮮赤十字が調査したという結果(紙)が
渡されました。そこで「8人死亡」が告げられたわけです。

 それを受けて、午前中のセッションで小泉総理が以上のことを言いました。金
正日総書記はそれを黙って聞いていたそうです。

 当時平壌にいた張真晟 (チャン・ジンソン)さんという統一戦線部の元幹部
で、後で亡命してその時の状況を話してくれたのです。北朝鮮側としては、拉致
問題は赤十字の調査で終わりにして、首脳会談では取り上げないのが当初のシナ
リオだったそうです。

「金正日総書記に謝罪などさせられない」。個人独裁国家ですから彼らはそう考
えるわけです。小泉総理は、拉致問題の消息を聞くために行くということで、に
こにこして金正日総書記と一緒に食事などできないから別々に食べた。弁当持ち
日帰りの予定で、別室で弁当を食べた。

 そこで安倍副長官が、「金正日総書記が拉致を認めて謝罪しないなら平常宣言
にサインしないで帰りましょう」と言った。安倍さんも言ったと言っています。
「大きな声で言ったのですか」と聞いたら、「そんな大きな声で言ってない」と
言っていましたが、張真晟さんの証言によると、北朝鮮の工作機関が隠しマイク
をつけていた。

 その報告がすぐに上げられた。そうしたら当初のシナリオになかったのに、金
正日総書記は午後のセッションで下記のように謝罪した。

金正日総書記

「拉致の問題について説明をしたい。調査を進め、内部の調査も行った。この背
景には数十年の敵対関係があるけれども、誠にいまわしい出来事である。率直に
お話し申し上げたい。

 我々としては特別コミッションをつくって調査をした結果が、お伝えしたよう
な報告である。自分としては70年代、80年代初めまで特殊機関の一部が妄動
主義、英雄主義に走ってこういうことを行ってきた、というふうに考えている」。

 つまり自分は知らなかったということです。今回調べて分かった、と。

「私がこういうことを承知するにいたり、これらの関連で責任ある人々は処罰を
された。これからは絶対にない。この場で、遺憾なことであったことを率直にお
わびしたい。二度と許すことはない」と拉致を認めてお詫びしたのです。

 安倍副長官が言ったことが果たされたのですが、当時統一戦線部の中では、
「当初のシナリオと違うことを突然言った」ということになったのです。自分た
ちは「拉致を認めるべきではない」と言っていたが、結局外務省主導で拉致を認
めることになった。当時統一戦線部の幹部たちがそういう話をしていたそうです。

 一方外務省はこの後、拉致問題が浮上し、結局国交正常化がうまくいかなくて
お金が日本からこなかった。今韓国で国会議員をしている太永浩(テ・ヨンホ)
さんという北朝鮮の英国大使館の公使だった人がいるのですが、その人が200
2年9月に、平壌にいた。

 外務省の中で、金正日総書記が謝罪したので動揺する声が出たことがあり、当
時外務省にいた人を全員集めて、日朝首脳会談に陪席した姜錫柱(カン・ソクジュ)
という第一次官が講演をした。

 「金正日総書記が謝罪したが、日本の首相から過去の謝罪をとったのは初めて
だ。そして日本から100億ドルの過去清算金が来る。だからこの外交は失敗じゃ
ない」と講演したそうです。

 しかし、北朝鮮の中では謝罪したことについて一定の動揺が走ったわけです。
トップに謝罪をさせてしまった。それでも「知らなかった」と言ったことについ
て日本側は追及しなかった。本当は金正日総書記が命令しなければできないわけ
です。

(3につづく)


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