救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

令和5年 拉致被害者救出への展望4(2023/02/06)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.02.06)

■令和5年 拉致被害者救出への展望4

◆アメリカまで届く火星17成功に対するアメリカの反応はにぶい

 火星17が成功したにも関わらず、アメリカの反応が大変にぶいのです。アメ
リカで、「北朝鮮が核を持ってしまったのは大変なことだ」ということを誰も言
わない。トランプ大統領は「あいつはロケットマンだ」と言って、金正恩のこと
を「許さない」、「すべての手段を使う」とずっと言っていました。

 火星17が成功したというのはそれくらいなことなのです。しかし、アメリカ
の中でほとんど議論がない。それはまず今ウクライナで戦争をしているというこ
とです。それから今アメリカの一番の関心事は中国です。5年以内に中国が台湾
に軍事侵略する可能性はかなりあるとアメリカは見ています。

 だからこそ、日本に対しても「同盟国として、一緒に戦う準備をしてほしい」
と言っています。そういうことがあり、もちろんアメリカに届く核・ミサイルを
持ってしまうというのは大変なことなのに議論がない。そして野党の共和党側か
らも、「バイデン政権の失策だ」、「なぜ持たせてしまったのか」という議論が
ほとんどないんです。

 だから近く米朝首脳会談が起きるということはないのか。金正恩は緊張を高め
てアメリカを交渉に引出し、核保有国として認めさせようとしていた兆候がある
ので、肩透かしになっていると思われる。

◆北朝鮮「韓国は明白な敵だ」、「核兵器を幾何級数的に増やす」

 しかし今、南北の間の緊張が高まっています。バイデン政権はだまっています
が、尹錫悦(ユン・ソギョル)政権が強い態度で北朝鮮に対し出ています。昨日
発売された「月刊WILL」に私が書いたのですが、昨年12月25日から31日ま
で、北朝鮮は労働党中央委員会総会という会議をひらきました。そこで1年間に
あったことを総括して、新しい方針を決める会議をしたですが、そこには金正恩
委員長も出ました。

 そして、「韓国は明白な敵だ」と位置づけ、「核兵器を幾何級数的に増やす」
という方針を決めました。尹大統領が、北朝鮮が「核兵器を幾何級数的に増やす」
と言っていた12月28日、「北のいかなる挑発にも確実に報復すべきだ。それ
が挑発を抑止できる最も強力な手段だ。北に核があるからといって恐れたり躊躇
したりしてはならない」と言い、1月1日には、「一戦を辞さない構えで、敵の
あらゆる挑発に対し確実に報復しなければならない」と。

 そして文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮と決めた南北軍事合意を破棄す
る検討をし始め、その合意で禁止された軍事境界線での心理戦を再開する、具体
的には休戦ラインの所に大きなスピーカーがあるんですが、「今日俺たちは何を
食ったぞ」というようなことを放送しています。

 「ワールドカップで韓国の選手がゴールを入れました」と放送すると、北朝鮮
から拍手が来たりしています。食べ物の話では、北朝鮮では肉も食べられないし、
寒いし、たくさんの韓流スターが出て行って歌を歌ったりすると、かなり北朝鮮
は動揺するんです。

 北朝鮮は兵役が長いですから10年ですから、兵士が韓国の歌を口ずさむよう
になってきたりする。影響は結構あるんです。だから金正恩は文在寅大統領に、
「止めてくれ」と言っている。そうした文在寅大統領は辞めてしまった。その当
時のスピーカーをすぐ使えるように点検が始まっています。

◆「自前の核を保有することもできる」と尹大統領

 そして1月11日に、外交部と国防部を呼んで、「(北朝鮮核問題が)より深
刻化したならば、大韓民国に戦術核配置をするとか、われわれ自身が自前の核を
保有することもできる」と。アメリカの核をもう1回韓国に持ってくる。そして
韓国が核武装するということを大統領が言ったのです。

 もしもそうなったら、「長い時間をかけて我々の科学技術で我々が保有できる」
と。韓国の北朝鮮に対する核の抑止は、3つの要素があります。それを彼らは
「3軸対決」と言っています。

 第1の軸は、発射の兆候を察知して、発射される前に移動式を含むミサイル発
射基地と制御施設を攻撃する。これは今日本で議論されている反撃能力のことで
す。あるいは敵基地攻撃能力です。それも「兆候を察知」ですから、1発目が来
てから2発目を撃たせないためにやるのではなく(1発目が来る前に撃つのです)。

 2つ目は、発射されたら迎撃する。これは日本も今やっている。3つ目が、着
弾したら大規模な報復攻撃をする。尹錫悦大統領は、この3を強調しているわけ
です。北朝鮮の核に対する最も効果的で現実的な対策は、韓国版大量報復体系だ
と言っているわけです。

 「我々が攻撃をわれわれが攻撃を受けるならば百倍、千倍の報復が出来る韓国
版大量報復体系能力を確固として構築することが攻撃を防ぐ最も重要な方法だ。
確実な韓国版大量報復体系だけが挑発を抑制し、それだけがわれわれの正統で効
果的な自衛権行使になる」と。そして大量報復手段として、核武装するとまで大
統領が言っています。

 北朝鮮では金正恩が韓国を「明白な敵」と規定した上で、「核兵器を幾何級数
的に増やす」と宣言しています。「核を持っていても恐れず報復しろ」と。韓国
大統領は、「報復こそが自衛だ」と。「百倍、千倍報復だ」と。2017年のト
ランプ・金正恩のやり取りを思わせるようなやり取りが南北で行われています。

◆アメリカはニューヨークやロサンゼルスを犠牲にしてまでソウルを守るか

 なぜ尹大統領がここまで強いことを言い始めたのか。アメリカは慌てて、アメ
リカの核の傘、拡大抑止というのですが、「同盟国が攻撃されたらアメリカが核
報復する」つまり、韓国は持たなくていいですよということです。核兵器が拡散
することを防ぐ。そういうことをすぐバイデン政権は言いました。

 しかしなぜ尹大統領がここまで言うのか。先ほど言いましたが北朝鮮では年末
に会議をしています。12月31日の夜、日本では「ゆく年くる年」をやる時間、
深夜11時から午前1時ころに、平壌の「51スタジアム」、5月1日に作られ
たものですが観客席が10万人あります。フィールドにも人がいっぱいいました
から20万人近くを集めて、「金正恩を称賛する歌と踊り」の大祝宴が開かれた。

 野外です。寒い中、みんなマスクはしていなかった。多分それでまたコロナが
流行して、しばらく平壌は閉鎖になりました。その映像を見ました。アイスショー
があったり、オペラみたいなものがあったりしたのですが、歌手が出てきて、1
年間金正恩委員長のおかげでこんないいことがあったということを振り返る映像
が出ながら、大きな声でせりふを読むのです。

 その中に次の一節がありました。「11月18日の歴史的大勝利! 朝鮮労働
党の不変の対敵意志を満天下に響かせた絶対的力の宣言、核には核で、正面対決
には正面対決で! 忘れるな! 絶対に忘れてはならない11月18日を」と。
11月18日の歴史的大勝利は金正恩委員長の業績だ、と。

◆アメリカまで届く火星17成功に、「歴史的大勝利」

 11月18日に何があったか。火星17の発射実験があったのです。アメリカ
まで届く核・ミサイルを持ったことが、「歴史的大勝利」なんです。ワシントン
やニューヨーク、ロサンゼルスを攻撃できる核・ミサイルを持ったから、韓国に
対して核攻撃して、それに対し報復したら、今度はアメリカを攻撃できる。アメ
リカはニューヨークやロサンゼルスを犠牲にしてまでソウルを守るだろうか。ア
メリカの世論が韓国を守るのは反対と言うのではないか。

 金日成が1953年、朝鮮戦争の休戦直後から核開発をした理由はそれなんで
す。朝鮮戦争で勝てなかったのは、在日米軍基地から米軍が来たことです。米軍
の介入を遅らせる。そうすれば奇襲で勝つ、と。実際に朝鮮戦争では、(韓半島
南部の)釜山市以外はすべて北が押さえていたのです。でも日本に米軍基地があっ
たから負けた。

 だから東京とニューヨークを攻撃できる力を持って、「アメリカが介入したら
東京とニューヨークを核攻撃するぞ」と言えば、アメリカの世論は、「なぜ韓国
のためにアメリカが犠牲になるのだ」と言って、アメリカの介入が遅くなる。そ
うしたら勝てる、というのが金日成の戦略だったのです。

 ついにそれが成功したのが、11月18日だったから「歴史的大勝利」と言っ
ているんです。

 実は日米韓の軍事当局は、11月18日以前は、「北朝鮮の大陸間弾道ミサイ
ルは完成していない」と思っていたのです。飛ばす力はあるのですが、一度宇宙
に出てもう一度戻ってきて大気圏に入ると空気抵抗がある。ものすごい熱になり
ます。それに耐えて、地上近くまで来て核爆発しなければならない。核物質が焼
き切れたらおしまいなんです。

 2017年11月に発射された「火星15」は、大気圏に再突入した後、3つ
に割れて、弾頭の制御に失敗したのです。だから弾頭再突入技術はまだ検証され
ていないという見方をしていたのです。11月18日の「火星17」は、どうも
成功したようだ、と。それも報道はないんですが、北朝鮮が「大勝利だ」と言っ
ている。

 そして尹錫悦大統領が突然核武装を言い始めた。この発言の変化は、北朝鮮が
アメリカまで届く核を持ってしまったという見解から起きているのではないか。
そう考えると全部つじつまが合うんです。

 私が関係している、日本とアメリカの軍事筋につながっている人から間接的に
聞いたところ、「11月18日の火星17は再突入に成功した」と。そして北朝
鮮の金与正(キム・ヨジョン)が権力ナンバー2が、12月20日に談話を出し
て、「韓国の奴らが再突入技術はまだないとか言っているけど、そんなことはな
いんだ」と、韓国のことをものすごい汚い言葉でののしりました。

 そして、「われわれの大陸間弾道ミサイルが大気圏再突入について認められな
かっただの、検証されなかっただの、常にそんなことに食い下がってきたのだが、
私は今まで生きながらいらぬ心配をしてくれるざまを見ている。とても非常識な
言葉だけを選んで言いふらす一味であるので、一つだけ分かりやすく話してやる
が、もし大気圏再突入技術が不十分であったなら、コントロール戦闘部のリモー
トデータを着弾瞬間まで受け取れなくなる」と言いました。

 この「コントロール戦闘部のリモートデータを受け取る」と言うことは、弾頭
部分から電波を出しているんです。それが正常に動いていることを示していまし
た。後で着水したわけですが、そこまで正常だったことが分かるわけです。

 青森沖に落ちていますから、絶対日本も電波を傍受しています。金与正は、
「コントロール戦闘部のリモートデータを着弾瞬間まで受け取った」と言ってい
るわけです。もちろん嘘をつくこともありますが、これは日米韓の何人かの軍事
情報を取ることができる人は分かっているわけです。尹大統領ももちろんその報
告を受けています。そして先ほどの独自核武装の話となるわけです。

◆尹大統領は日本の今の国家安保戦略に「理解」

 もう一つ、尹大統領の発言で注目すべきは、日本の今の安保政策の転換、国家
安保戦略について理解を示しています。「日本もいまや頭の上をIPBM(中距離弾
道ミサイル)が飛んでいったから防衛費を増額し、いわゆる反撃概念というもの
を国防計画に入れることにしたのではないか。それを誰が何か言うのか。平和憲
法を採択する国がどうしてそんなことが出来るのかというけれど、頭の上にミサ
イルが飛んでいき、核が来るかもしれないのだからそれを防ぐことは簡単ではな
い」と言ったことです。

 また「日本も日本が核攻撃されることが心配だから反撃能力を持とうとしてい
る。それは韓国だって同じ心配をしているのだから理解できる」と。韓国はこれ
まで、「日本は平和憲法を守れ」とか、そういうことをたくさん言ってきたので
す。世論が反日だから保守政権でも日本の防衛力強化について、ここまで歓迎す
るとか理解すると言った人は初めてです。

 でもそれは、「北朝鮮がアメリカまで届く核・ミサイルを持ってしまったら、
アメリカの拡大抑止が一部効かなくなるかもしれないと岸田総理も思っているの
ではないか」という理解です。自分もそう思っているからです。

◆北から無人機が飛んできた、韓国軍も無人機を飛ばした

 2017年は米朝が緊張して、その後米朝の話し合いになって、安倍・トラン
プの関係からそこで拉致解決を迫ることができた。今は、当時よりもっと北朝鮮
の核開発が深刻で、アメリカに届くものが完成してしまったのに米朝の緊張は見
かけ上大きくはないが、南北の緊張が高まっています。

 これが拉致問題に一体どういう影響を与えるのか。それはこの原稿を書いてい
る時は読めなかったのです。アメリカは軍事的圧力を加えるだろうと予測したの
ですが、今の所ウクライナと台湾で精一杯で、それが起きてない。

 韓国は自分のことですから、強い姿勢を見せている。それだけでなく皆さんも
ニュースで知っていると思いますが、北朝鮮のドローンが12月26日に5機韓
国に入ってきました。尹大統領は、「報復しろ」と言っています。5機の内1機
は、尹大統領がいる大統領府の飛行禁止区域に入ってきて、写真を撮っています。

 これに対しヘリコプター等を出して銃撃したのですが撃ち落とせなくて、5機
とも帰ってしまった、ということが起きました。実は北朝鮮のドローンが入って
きたことが確認された12月26日に、韓国も2機無人偵察機を北朝鮮に送りま
した。ここまでは確認された事実です。

 どこまで送ったのか。あまり情報がないのですが、私が北朝鮮につながる筋に
聞いた所、平壌まで行ったということです。向こうがソウルならこっちは平壌と、
平壌の方が遠いのですが。韓国の技術がすぐれているんですね。

 実は12月31日に、北朝鮮の軍のトップが解任されました。朴正天(パク・
ジョンチョン)という元帥です。それも党の会議で、彼を解任するという議題が
出て、彼が壇上にいるのに彼だけは手を挙げないでうつむいていたが、みんな賛
成だと手を挙げ、さらしものにされて解任された。

 その理由は説明されてないのですが、私が聞いたある筋からの情報では、情報
ですから絶対正しいとは言えないのですが、「韓国の無人機に対応できなかった
から」です。そして北朝鮮は12月31日にまた短距離ミサイルを撃った。言葉
だけで、「敵だ」とか「報復する」とトップ同士が言っているのではなく、無人
機が飛んできた韓国軍も無人機を飛ばした、というようなことが起きています。
これがどこまで続くか。

(5につづく)





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