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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

家族会・救う会の新運動方針と北朝鮮の内部状況2?東京連続集会113(2021/04/15)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2021.04.15)

■家族会・救う会の新運動方針と北朝鮮の内部状況2

西岡力(救う会会長)

◆「拉致があるかないか」の戦いから「拉致は解決したかしてないか」の戦いへ

 今話があったように4月3日に合同会議を開いて運動方針を決めました。

 何度もお話ししましたが、頭の整理も兼ねて、運動方針を決めた背景からお話
ししたいと思います。

 拉致は40年以上前に起きたわけです。そして私たちは平成9年から被害者を
助ける運動をしてきました。2002年には一度勝ったと思います。

 2002年以前の戦いは、「拉致があるかないか」という戦いでした。日本の
中にも「拉致はない」という人たちがかなりいたのです。「ある」と言う方が少
数派だったのです。

 2002年に金正日委員長が拉致を認めた。謝罪までしたわけで、これは大き
な勝利だったと思います。1997年から2002年までの運動がなければ、そ
こまでいけなかったと思います。運動だけではないですが、運動したことが一つ
の大きな要素だったことは間違いないと思います。

 しかし、そこで解決しなかった。2002年からの戦いは何かというと、北朝
鮮は「拉致は解決した」と言っていますし、我々は、「まだ解決していない」と言っ
ていますので、今度は「解決したのかしていないのか」の戦いに論点が移ったわ
けです。北朝鮮は拉致を認めたと言っても、大変部分的にしか拉致を認めなかっ
た。彼らは13人しか認めなかったわけです。そして5人を返した。8人は「死
亡した」と。

◆「認定の有無に関わらずすべての被害者を救出」

「死亡の証拠を出し、説明を十分した」、「日本は死んだ人を生き返らせようと
いう無理なことを言っている」と。これが北朝鮮の公式的な立場です。

 それに対して日本政府は今17人認定しています。4人違いがある。そこだけ
で基本的に違っている。だから本当に部分的にしか認定しなかったということが
そこでも分かるわけです。

 そして日本政府は、「認定の有無に関わらずすべての被害者を救出する」と言っ
ています。これはなかなか難しいことで、認定していない人も助けると政府が言っ
ているんです。認定していない人をどう助けるのか。僕が担当者なら夜も眠れな
いくらい難しい問題だと思います。

 しかし日本は主権国家ですから、自国民がさらわれている状態は正常じゃない。
主権国家の責任として、一人でもさらわれている人がいるのなら、問題の解決に
はならない。日本政府の姿勢は正しいと思います。

 前から口頭ではいろんな話が政府関係者からありましたが、この「認定の有無
に関わらず全員」という方針が明文化されたのは、第二次安倍政権ができて古谷
圭司大臣の時に書き込まれたのです。

◆拉致 3つのカテゴリー

 話が戻りますが、北朝鮮は「13人しか拉致をしていない」と言っている。日
本政府は「17人だ」と。5人については帰ってきたのですから意見は一致して
います。その家族も帰ってきました。

 問題は8人と4人、そしてそれ以外の人。この3つのカテゴリーの人が帰って
こなければ解決じゃない。これが私たちの立場ですし、日本政府の立場でもあり
ます。ただ3つのカテゴリーの人が何人いるかということは残念ながら今我々は
正確な名簿を持っていません。

 800人とか900人と言われる数字は、家族が拉致の疑いがあると言って捜
査を依頼した数字です。それがイコールではないんです。

 一方、家族がいない人を狙って拉致する事例があります。身分を奪ってしまう、
背乗りというのです。原敕晁さんのようなケースもありますが、800人に入っ
ていない被害者がいる可能性もあるわけです。それは分かっていないのですが、
少なくとも8人、4人、それ以外の人たちという3つのカテゴリーの人たちが帰っ
てこなければならないというふうに思っています。

◆まずは帰国、後で実行犯の引き渡しと真相究明

 日本政府のパンフレットや政策のペーパーを見ると、拉致問題の解決の条件を
3つ挙げています。まず、認定の有無に関わらず全員の安全確保と早期帰還が1
つめ。2つ目が実行犯の引き渡し。3つ目に真相究明です。

 主権国家ですから本来ならば4つ目に補償が入ると思います。それで国際法的
な解決になるかもしれませんが、実行犯の引き渡しと真相究明も入れています。
我々もそれに賛成ですが、家族会・救う会の立場からすると、すべての拉致被害
者の帰国が先です。2番目と3番目は一緒でなくていい。時差があってもいい。

 それを諦めるということはありませんが、一緒に3つ行わなければ制裁を緩め
るなとか、国交正常化交渉をするなとか、そういう立場ではありません。但し1
つ目の、「認定の有無に関わらず全員」ということについては、私たちは条件を
つけます。それは、「全拉致被害者の即時一括帰国」です。
ばらばらと帰ってきてもらっては困る。「一括」という条件をつけています。

◆北朝鮮が拉致を隠す動機

 話を元に戻しますが、北朝鮮は「解決した」と言っている。しかし、日本は
「解決していない」と言っている。

 ではなぜ北朝鮮は拉致を認めたのに部分的にしか認めなかったのか。その動機
を明らかにしない限り、進まないわけです。「拉致がない」と言っていたのは動
機が分かります。自分たちの国家犯罪を隠したい。やった側としてはそう言うで
しょう。認めるわけではありませんが動機は分かる。

 しかし、拉致を認めて謝罪したにも関わらず、なぜ「8人死亡した」と言った
のか。「4人は拉致していない」と言ったのか。「それ以外の人もいない」と言っ
たのか。このことについて一定の仮説あるいは理由、北朝鮮の内部から情報を取
ることも含めて、一定のものを我々が持たないと解決策を出すことができないの
です。

 そこで強調して、繰り返し繰り返し言っているのですが、「死亡」と言った8
人について、「死んでいるのか生きているのか分からない」のではないんです。
死んでいる証拠が一人もないのです。

 日本政府が大変いいパンフレットを作って下さったんですけども、「北朝鮮の
主張の問題点」という副題がついたものですが、白いパンフレットです。拉致問
題対策本部のホームページからもダウンロードできますが、8人の内3人くらい
は死亡の証拠があり、5人は死亡の証拠がないというようなことではないんです。

 北朝鮮が拉致して厳しく管理していたのに、いつどこで死んだということを通
報してきているのに、一人についても客観的な死亡の証拠を出せなかったのです。

 8分の0なんです。これはおかしいことだと日本政府が言っている。写真入り
の大変いいパンフレットです。

 日本政府は死んだ人を生き返らせろという無理を言っているわけではない。彼
らが出してきた死亡の証拠は一切認められないものだったと冒頭に書いてありま
す。だから「全被害者が生存していることを前提に助ける」と言っています。

◆北朝鮮は拉致被害者をすべて把握している

 曽我さんたちの話を聞くと、拉致被害者も北朝鮮住民扱いされています。確か
に平壌市民200万人の住民登録のデータが出てきました。私も買ったんですが、
USBに入ってますけど、それに曽我ひとみという名前があったのです。ちゃん
と番号がついています。北朝鮮住民は「公民」と言うのですが、公民に番号がつ
いていて、党員かどうかとか生年月日とか色々書いています。

 そして北朝鮮の公民は、通常一週間に1回、全公民が政治活動を受ける。これ
を「生活総和」と言います。日本赤軍総は総括と言っています。北朝鮮では毎週
土曜日、全員が党員だったら所属する組織の細胞になります。

 職場にいる人は職場の職業同盟という組織があり、そこでやる。女性同盟とい
う組織もあります。そして、そういうところに入ってない人、家庭の主婦等は
「人民班」という組織があり、そこで政治学習をし、それからこの一週間、主体
思想と党規約の上に党の10大原則というのがあるのですが、これにもとづいて
一週間、政治的に正しい生活できたかどうか、自己批判して相互批判するのです。

 北朝鮮から逃げてきた人の手記を読むと、「相互批判が嫌だった」と。親しい
人間の悪口を見言わなくてはならない。そして事前に、悪口は言うけれど政治犯
にならない程度の準備をしておいて、「俺はこれを言うからお前はこれを言え」
というような取引をしたとか書いてあります。

(帰国した)5人の人たちに聞いたら、やっていたそうです。そしてこの生活総
和の記録は党の中に組織指導部があり、そこから来た人が上に報告する。北朝鮮
の組織は党の責任者がいて、行政の責任者がいるのですが、例えば工場長がいて
党の書記がいるというように。そしてもう一人、組織指導部から来た組織担当秘
書がいます。この人が週末の生活総和を仕切ります。

 その時は、工場長も党の書記も党員として組織担当秘書の下に入る。そして組
織担当秘書から組織指導部に報告が上がります。そういうファイルがあるんです。
どこに誰がいるかということが分かっていなかったら、組織活動ができないんで
す。

 もちろん配給制ですから、主食も帳簿に基づいて出すのです。職業は党が決め
るのです。結婚だけは本人たちの意思もありますが、党が許可するのです。住宅
も党が渡すのです。全部帳簿があるんです。

 それだけ厳しく管理していて、特に拉致被害者のめぐみさんや八重子さんたち
は、工作機関の中にいたわけです。徹底的に管理されていた人の死亡の証拠が一
人分もない。交通事故にあいましたというけれど、交通事故の写真もない。それ
どころか、交通事故の証拠だといって出てきた書類を見ると、名前などがホワイ
トで消してあるんです。

 偽造するなら名前くらいちゃんと入れたのを作れと言いたくなるくらいです。
紙がないのかもしれませんが。でも誰がどこにいるか全部分かっているんです。
日本のように自由な社会で、家出して失踪なんてありえないんです。

◆選挙の時は脱北者も帰国する

「苦難の行軍」といって、人口の15%が餓死した時は、どこかに行って亡くなっ
た行方不明者がいました。その時何をやったかというと選挙をしました。選挙を
やるとみんな出てこなければならない。候補者は一人で得票率100%ですから。

 この時、中国に数十万人逃げていたのですが、出てきた

 私は選挙なんかできるわけがない。100万人以上の人が餓死しているのに選
挙なんかできるわけはないと思っていたのですが、中国に脱北者していた数十万
人が帰るというそうです。選挙の時に公民証を更新するそうです。だから脱北者
下ことがばれてしまうので、安全な中国にいるのに帰るそうです。そして本当に
選挙をやったのです。それくらい統制されているのです。

 それくらい統制されている中で、「死亡の原因が分かりません」とか、「これ
から調査します」というのはありえないんです。それなのに「死亡」と言いなが
ら、死亡の証拠を一人も出せなかった。意図的に、「死んだと言え」という命令
が出たとしか考えられない。

 あの時めぐみさんや八重子さんを返していたら、日本人は「よかったよかった」
となって、もしかしたら国交正常化になっていたかもしれないんです。しかし、
嘘をついたからこうなってしまったのです。

◆金ファミリーの秘密を知っているから返せない

「拉致を認める」という危険まで冒しているのに、なぜ全員返さなかったのか。
ここが鍵なんです。分からなかったのではないということです。分かっていたの
に返さなかった。

 そこで色々情報も整理し、北朝鮮内部のことも調べ、脱北者の意見を聞いて考
えると、やはり秘密をたくさん知っている人を返さなかったのだろうと思います。
秘密を知っているということで、金正日が「この人は死んだと言え」という判断
を下したと思います。

 そして一度金正日が「この人は死んだと言え」と言った人を返すというのは、
最高指導者の決定について何か文句や反対意見を言うことは下の者はできないん
です。最高指導者しか決定できないのです。

 ただ金正恩政権になったので、まだ金正恩が新たな判断をしてないので、1回
チャンスはあるだろうと思っています。でも金正恩時代にもう1回、「この人は
死んだと言え」と言ってしまうと、最高指導者は神様と同じですから間違わない
というシステムになっているのです。最高指導者の命令に間違いはない。

 だから本人が変えると言わない限り変えられないのですが、本人が変えると、
他の命令にも間違いがあるのかとなってしまいます。前例ができてしまいます。
でも金正恩は新たな命令を出していないというところにチャンスがあるからこそ、
菅総理は、「自分が金正恩委員長と向き合う」と言っている。これは正しいと私
は思っています。

 もう一度戻って、秘密を知っているから死んだと言ったのではないかというこ
とですが、ではその秘密とは何なのか。これも繰り返し話していることですが、
整理すると、ヒントになるのが金賢姫(キム・ヒョンヒ)さんの本です。金賢姫
さんと田口八重子さんは20か月同じ招待所で暮らしたのですが、田口八重子さ
んから聞いた話として、日本語だけでなく日本人化教育をしており、日本人の化
粧の仕方とか、お酒の注ぎ方とかそういうのを全部教えたというんです。

 ある時テレビを見てたら、北朝鮮の歌手が出てきた。「あの人知っている。実
は金正日の秘密パーティに私も呼ばれ、あの人もいた。南朝鮮の歌を歌っていた。
あの人は性的にひどいことをされてかわいそうだ」と田口さんが言って突然、
「あ、これは言ってはいけないことだ。忘れて」と言った。

 そこに日本人の夫婦もいたと田口さんが金賢姫に言った。市川修一さんと増元
るみ子さんかもしれない。それを金賢姫さんが本に書いた。

 今北朝鮮の中でタブーの一つは、金正恩委員長のお母さん、高英姫(コ・ヨン
ヒ)という人は在日出身の踊り子だということを我々は知っていますが、北朝鮮
の人は知らない。秘密にしている。

 金正恩氏がトップになって10年近くになるのに、「革命の家系」と言いなが
ら、母親が誰かを一切公開しない。在日出身でなおかつ踊り子だというのは、彼
にとって隠したいことなんです。

 その踊り子というのは秘密パーティに出ていた踊り子です。高英姫さんが金正
日に好かれたのは、そのパーティで気に入られたからです。そして男女関係になっ
て生まれたのが金正日、金正哲(ジョンチョル)、金与正(ヨジョン)だったわ
けです。父親の金日成には言っていなかったから元山の招待所でずっと暮らして
いたそうです。

 その秘密パーティで何があったのか、どういう女性たちがいたのか、そしてそ
こに日本人被害者もいたかもしれない。田口さんはいたことが明らかになった。
そして他に日本人の夫婦がいたということが一つあるわけです。

 そしてめぐみさんは金正恩か金正哲(ジョンチョル、金正恩弟)のどちらかの
日本語の家庭教師だったという情報があります。情報だから裏が取れているわけ
ではありませんが。

 そういうことも含めて、ロイヤルファミリーについて、少なくとも何人かの拉
致被害者が秘密パーティに出て、ロイヤルファミリーのことを知っているわけで
す。

 マカオから拉致された孔令?(コウ・レイイン)さんと韓国人の映画俳優で映
画監督と一緒に拉致されて、東ヨーロッパで映画撮影した時自分で逃げてきた崔
銀姫(チェ・ウニ)さんは、実はかなり親しくて、同じ招待所にいたので、昼ご
飯の後の散歩の時にいつも会って、林の中で話をしていたのです。

 私は崔銀姫さんの自宅まで行って、長いインタビューをしたのですが、「孔さ
んは今どういう生活をしていると思いますか」と言ったら、「秘密パーティに孔
さんも呼ばれて、金正日が『いい旦那さんを紹介してやる』と言っていたから、
結婚したのではないか」と崔銀姫さんは言っていました。

 マカオ人の拉致被害者も秘密パーティに呼ばれていた。拉致被害者を秘密パー
ティに呼んで、見せて自慢するみたいな悪い癖が、もしかしたらあるのかもしれ
ない。でもそういう秘密を知っている人だということがあります。そして蓮池さ
んや地村さんたちは呼ばれなかったから帰ってこられた。

◆工作機関の中の秘密を知っている

 もう一つは、当然のことながら工作機関の中の秘密を知っていることです。田
口さんは金賢姫という工作員に教えたわけです。そしてその後も日本人化教育は
続いていたはずなんです。その次誰を教えたのかは明らかでない。

 めぐみさんは金賢姫の同僚の金淑姫(キム・スッキ)という工作員に教えてい
た。これは明らかになっています。しかし、金淑姫という名前が出てしまったか
ら、金淑姫はもう秘密活動ができなくなっていると思われる。しかし、めぐみさ
んは次に誰に教えたのかは明らかになっていない。

 あるいは他の「死んだ」と言われた被害者は誰に教えていたか。市川さんは工
作機関で日本人化教育の教師だったという目撃証言がありますが、誰に教えてい
たかは分からない。

 そしてその教えられた工作員が日本人のパスポートを持って、金賢姫のように
何か活動をしているかどうか。テロをやったら捕まるということではない。北朝
鮮の半潜水艇はそんなに深く沈まないのですが、北朝鮮のスパイがその半潜水艇
に乗って南に入ったり、北に帰ったりするわけです。

 それを韓国の海軍が見つけて、撃沈して、引き揚げてみたら、何と、ソウルで
マレーシア人として登録していた男が乗っていた。調べてみたらマレーシア料理
店で働いていた。マレーシア人になりすました北のスパイだったのです。もしか
したら、日本人なりすまして日本料理店をやっている人が、めぐみさんや八重子
さんの教え子かもしれない。

 そういうことは絶対の秘密で、工作機関としては絶対守らなければいけないこ
とです。

 そういうことが、まだ確実の裏が取れてるわけじゃないし、全体の状況から言っ
てるんですが、とにかく秘密をたくさん知ってる場合、そしてロイヤルファミリー
の私生活に関わることが北朝鮮としては問題です。

 金賢姫さんの手記を読んでも、誰かが捕まっても横の人間のことわからないよ
うにしている。授業を受ける時もついたてがある。金賢姫がつかまっても、金淑
姫とはペアを組んでいたから金淑姫のことは分かっていても、それ以外の人は分
からないそうです。お互いに話をしてはいけないことになっている。すれ違う時
はカバーで顔を隠すことになっている。

 しかし、先生は知っているわけです。だから秘密を知ってるということではな
いかと考えられる、ということが前提にあるわけです。

(3につづく)






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