東京連続集会2(2025/08/04)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2025.08.04-2)
◆被害者救出の2つの条件
西岡力(救う会会長)
今日のテーマは、「拉致被害者救出の好機とそれを妨げるもの」です。好機は
チャンスです。
私たちの救出戦略をまずお話して、その枠組みから見て今の状況はどうなのか
を考え、いくつかのテーマについて江崎さんと討論したいと思います。
被害者救出には2つの条件があります。1つ目は世論を背景にして、日本政府
が全員救出の体制をつくることです。本来拉致問題は、主権侵害、人権侵害です
から世論があろうがなかろうが、全員救出の体制があるべきですが、経験則から
言って、世論がない時に政府が動かないことがあった。逆に世論があると政府が
動いたこともあったので世論が大切だということです。
2つ目は、北朝鮮が困って日本に接近せざるをえなくなることです。これは向
こう側の事です。
まずこちら側に条件が来ていなければならない。そして向こう側にも条件が来
ていなければならない。この2つが揃って、初めて交渉による帰国ができる。
北朝鮮に大混乱が起きたり、あるいは戦争が起きた時には、話し合いでない方
法を考えておかなければならない。
交渉で解決することになると、日本に全員救出の体制がなければならない。そ
れは話し合い以外の時も同じです。最優先で全員を助ける体制が日本になければ
ならないのです。
そして北朝鮮が困って、日本と話し合いをしようという状況にならなければな
らない。そこに制裁や国際連帯が関係してきます。
過去に北朝鮮が困って日本に接近してきた。首脳会談に準ずるような会談は2
回ありました。1990年に金丸・田辺訪朝団が行った時は金日成が出てきた。
実はその2年前にソウルオリンピックが成功し、中国、ソ連、東欧も韓国に来て、
北朝鮮は外交的に孤立し、経済でも完全に韓国に抜かれた。
中国、ソ連、東欧が急速にソウルに接近する中で、日本とアメリカに北朝鮮は
接近せざるをえなくなった。そこで与党の最高実力者とされた金丸さんが呼ばれ
たわけです。
しかしその時、金丸さんは拉致問題を出さなかった。1988年の3月の参議
院予算委員会で梶山静六国家公安委員長が、3組6人のアベックや田口八重子さ
ん、原敕晁(ただあき)さんについて、「北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚で
ある」という歴史的答弁をしていたにも関わらず、その2年後に、北朝鮮の最高
責任者に日本の政治家が会ったにも関わらず、こちらから拉致を出さなかった。
だから向こうは何もしません。
その時曽我ひとみさんはテレビでそれを見ていて、「日本の政治家が来たのだ
から私のことが議題になるだろう」と内心期待していたと、帰国後に聞きました。
第1条件がないと、第2条件があってもだめなんです。2002年の小泉訪朝
の時は拉致が議題になりました。梶山答弁は金丸訪朝の前にありました。小泉訪
朝の5年前に家族会・救う会ができた。世論に訴えようという運動をした。
小泉さんが平壌に行く時に、マスコミは拉致問題がどうなるかと連日報道しま
した。それでもその時は拉致「疑惑」と言っていました。マスコミがこちらに押
し掛けて、「記者会見してくれ」と言われました。世論があると政府は世論を無
視できなくなる。そして議題になった。
◆家族会・救う会は政府に「拉致問題を専門にする部署を作れ」と
しかし今拉致問題担当大臣がいて、拉致問題対策本部があり、総理大臣はブルー
リボンバッジを付けていますが、そういう体制が2002年にはなかった。
「全員救出の体制」はその4年後の2006年にできた。第一次安倍政権の時で
す。総理大臣が本部長になり、拉致担当大臣を置き、専属の事務局を作った。同
じ年に北朝鮮人権法という法律もでき、「政府と地方公共団体は拉致問題をはじ
めとする北朝鮮人権問題について、啓発活動をしなければならない」と法律に書
かれた。
私たちは運動を始めた時から政府に、「拉致問題を専門にする部署を作れ」と
いうことを運動の目標にしてきました。最初に国民大集会をやったのは1999
年です。日比谷公会堂でやりましたが、その時のタイトルは、「拉致問題を国政
の最優先課題にする国民大集会」でした。
今、「国政の最優先課題」になったのですが、それも自動的になったわけでは
ない。世論があってそういう政策になったのです。2006年から対策本部がで
き、人権法ができ、政府が色々な集会をやっています。それまでは我々の集会し
かなかったのです。今は、一定程度体制ができています。
◆北朝鮮が困って日本に接近した日朝首脳会談
2つ目の北朝鮮が困って日本に接近せざるを得ない状況をどう作るか。金丸訪
朝の時の話をしましたが、では2002年になぜ小泉訪朝があったのか。様々な
分析があると思いますが、私の分析をお話します。
アメリカの強い圧力が背景にあったことです。2002年に小泉訪朝がありま
したが、その1年前の2001年に「同時多発テロ」があった。ブッシュ政権は、
「テロとの戦争」を表明しました。これは後で江崎さんにも解説してもらいます。
新しい戦争が生まれました。それまでテロは犯罪でした。FBIが犯人を捕まえ
ます。戦争となると軍が出ます。戦時国際法が適用されます。相手に三審制の裁
判の権利を与えない。
本来戦争は、戦争をしているもの同士でするものですが、あまりにも被害が大
きかったので、テロリストに対して、「戦争をする」と言って、軍隊を使ってテ
ロリストの基地を攻撃しました。国家ではない存在に対して軍隊が出た。それを
大統領が、「テロとの戦争」と言った。
アフガニスタンとの戦争で、「アルカイダ」の基地を攻撃しましたが、その後、
2002年1月にブッシュ大統領は、「まだテロとの戦争は終わっていない」と
言って、「テロとの戦争のターゲットは2つある」と言った。
1つはテロリストに正義の審判を下すことで、もう1つは「テロ支援国家」が
大量破壊兵器を持ち、それをテロリストに渡したり、「テロ支援国家」がアメリ
カや同盟国に脅威を与えることを止めさせることです。その「テロ支援国家」の
代表として、北朝鮮、イラク、イランを名指しした。
「悪の枢軸」という言葉も出ましたが、ただこの国が悪いと言ったのではなく、
この3か国が大量破壊兵器を持つことを、「戦争をして止めさせる」と言った。
そうしないと大量破壊兵器でテロが起きる。あの時は、アルカイダが核を持って、
ニューヨークで核のテロをやるかもしれないと、本気でアメリカは心配したので
す。
調べたら、イランはウラン濃縮をしている。誰に教わったか。パキスタンです。
パキスタンのカーン博士がウラン濃縮を持っています。同じカーン博士が北朝鮮
にもウラン濃縮技術を教えていた。
今年イランの複数のウラン濃縮施設をアメリカが地中貫通弾で爆破しました。
2001年からアメリカは危険だと思っていたのです。イランはテロリストを支
えています。そのテロリストに核が渡ったらどうなるかという強い危機感を持っ
ていました。
同じウラン濃縮施設を北朝鮮も持っている。金正日氏は核問題でアメリカと協
定を結んだ。ジュネーブ合意です。北朝鮮は核開発を凍結する。その代わりに無
料で原子力発電所2基を作る。原子力発電所ができるまでの間、アメリカが重油
を毎年50万トン出す。原子力発電所の費用は日本と韓国が出す。
こういう枠組みでしたが、北朝鮮は支援を貰いながら、一方でウラン濃縮をし
ていた。その情報をアメリカはパキスタンから取った。ジョン・ボルトンさんが
第一次トランプ政権の時、安保補佐官をやっていましたが、彼は拉致問題にもの
すごく同情的で、私たちは何回も会いました。
2001年02年は、彼は国務省の軍縮担当次官でした。軍縮には核兵器も入っ
ています。ボルトンさんはパキスタンに行って、カーン博士に会っています。
「誰に教えたのか」と。あの時アメリカは必死だったのです。もしかしたらアル
カイダに教えていないかとも心配した。ニューヨークの貿易センターが核を使っ
て攻撃されるかもしれないと本気で思っていたのです。必死で調べたところ、ア
ルカイダには渡っていなかった。
しかし、リビアと北朝鮮とイランに渡っていたことが分かった。リビアのカダ
フィ大佐は怖くなった。アメリカがその秘密を知ってしまったからです。爆撃さ
れるかもしれない。そこで、「まだ完成していません」として見せた。それで
「悪の枢軸」には入らなかった。
金正日からすると、アメリカの強い圧力があって、もしかしたらバクダッドの
前に平壌が爆撃されるかもしれない。強い圧力がかかった時、日本は北朝鮮と裏
交渉をしていた。「テロとの戦争」をやっていた時、田中均(当時外務省アジア
大洋州局長)さんが裏交渉をしていたのですが、
アメリカが北朝鮮と戦争をする時は在日米軍基地を使うわけです。日本が協力
しないとできない。その日本を北朝鮮が引き寄せようとした。国交正常化までや
ろうとした。そういう枠組みがあって小泉さんが訪朝した。
その時に、「核と拉致」を全部解決させるには、アメリカと腹を割って話し合
いをし、戦略を立ててやるべきだったのに、小泉訪朝は直前までアメリカに秘密
にしていたのです。8月の終わりにアーミテージ国務副長官が日本に来た時、初
めて伝えた。
◆全員救出の体制があるか、北朝鮮が困っているか
今どうなっているかですが、北朝鮮が困っているか、アメリカがどれだけ圧力
をかけているか。北朝鮮が困る条件は日朝関係だけじゃない。中国が支えている
かどうか。韓国が金大中・廬武鉉、文在寅政権の時は左派政権で、北朝鮮を支え
てきたが、今はどうか。日本の中で全員救出の体制ができているかどうか。この
2つのことが重要です。
国際情勢がどうなっているかは後でお話しますが、第1は、日本の中で全員救
出の体制ができているかですが、形式的には拉致問題対策本部があり、歴代総理
も石破総理も最優先課題と言います。私たちに会ってくれますし、年2回の国民
大集会に来てくれます。
しかし、今回の参議院選挙の結果、政権が安定性を欠いたように平壌には見え
ている。そういう国と首脳会談をしようと思うだろうか。日本の与野党が一致し
て取り戻す体制ができているかどうか。そこが完全に満たされているかどうかが
鍵になります。
そのことについて江崎さんに、今の政治情勢を拉致問題の観点からどう見てい
るかについてお話ください。
◆「創生日本」が安倍政権で残された課題を整理
江崎道朗(救う会副会長、麗澤大学客員教授)
今年2月に、長年救う会副会長をやっていた島田洋一先生が日本保守党の衆議
院議員になられて空席になりました。私は長年拉致問題をやってきた衛藤晟一先
生、平沼赳夫先生、石原慎太郎先生のスタッフだった関係で、拉致のことについ
ては永田町でやってきたので、今回救う会の副会長をさせていただくことになり
ました。
先ほど安倍さんの時は熱意がありましたが、今はどうなんだろうかという言い
方をされていたと思います。自民党という所は大所帯で色んな勢力があり、温度
差がある所です。
安倍さんに近い、「創生日本」という派閥横断型の勉強会があります。以前は
安倍さんが会長で、今は空席で、会長代理が中曽根弘文先生、幹事長が衛藤晟一
先生、事務局長は木原稔先生で前防衛大臣です。約100名の自民党議員が参加
しています。
「創生日本」の幹部の皆さんが、去年の衆議院選挙で負けたことを踏まえて、
なぜ自民党がこんなに支持を失ったのかということを深刻に受け止めたんですね。
そして幹部の方たちが、安倍さんがやってきたことを自分たちが見失っているか
らではないか。だから第2次安倍政権で成し遂げたことと、残された課題をちゃ
んと整理して、そして自民党の基本的な政策、国家観を含めたものを立て直しす
べきではないかと考えた。
そして今年5月から2か月、毎週1回やっていました。私も少しお付き合いを
しましたが、最終的には6月29日に、「創生日本」として、「日本が目指すべ
き道」という3枚物の基本政策を作り直したんです。
このペーパーを作っていく時に、第2次安倍政権でやり残した課題とは何なの
かという論点整理をしました。そこには高市早苗先生もいるし、小林鷹之先生も
いるし、麻生さん側近もいるし、衛藤さんも、木原さん、西村さんもいる。保守
系の幹部たちですね。
その中で皆さんが言ったことの一つは憲法改正です。もう一つでてきたのは拉
致問題です。この拉致問題が安倍政権で成し遂げられなかった大きな課題である。
これにきちんと取り組んでいないように見える。野党がどうこうではなく、自民
党としてこの問題を本当に最優先課題でやらなければならないのではないか。そ
ういう議論がなされ、最終的にペーパーとして救う会の方針を入れて、「即時一
括帰国を何としても実現する」という文言が入りました。
今石破政権なので石破さんたちだけが自民党を代表しているかのように見える
わけですが、自民党は幅広い政党で、そういう人たちが去年の衆議院選挙、都議
会選挙、参議院選挙の反省を踏まえて、もう一度原点回帰していこうと考えてい
ることをまずご報告したいと思います。
(3につづく)
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
■石破首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html
葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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◆被害者救出の2つの条件
西岡力(救う会会長)
今日のテーマは、「拉致被害者救出の好機とそれを妨げるもの」です。好機は
チャンスです。
私たちの救出戦略をまずお話して、その枠組みから見て今の状況はどうなのか
を考え、いくつかのテーマについて江崎さんと討論したいと思います。
被害者救出には2つの条件があります。1つ目は世論を背景にして、日本政府
が全員救出の体制をつくることです。本来拉致問題は、主権侵害、人権侵害です
から世論があろうがなかろうが、全員救出の体制があるべきですが、経験則から
言って、世論がない時に政府が動かないことがあった。逆に世論があると政府が
動いたこともあったので世論が大切だということです。
2つ目は、北朝鮮が困って日本に接近せざるをえなくなることです。これは向
こう側の事です。
まずこちら側に条件が来ていなければならない。そして向こう側にも条件が来
ていなければならない。この2つが揃って、初めて交渉による帰国ができる。
北朝鮮に大混乱が起きたり、あるいは戦争が起きた時には、話し合いでない方
法を考えておかなければならない。
交渉で解決することになると、日本に全員救出の体制がなければならない。そ
れは話し合い以外の時も同じです。最優先で全員を助ける体制が日本になければ
ならないのです。
そして北朝鮮が困って、日本と話し合いをしようという状況にならなければな
らない。そこに制裁や国際連帯が関係してきます。
過去に北朝鮮が困って日本に接近してきた。首脳会談に準ずるような会談は2
回ありました。1990年に金丸・田辺訪朝団が行った時は金日成が出てきた。
実はその2年前にソウルオリンピックが成功し、中国、ソ連、東欧も韓国に来て、
北朝鮮は外交的に孤立し、経済でも完全に韓国に抜かれた。
中国、ソ連、東欧が急速にソウルに接近する中で、日本とアメリカに北朝鮮は
接近せざるをえなくなった。そこで与党の最高実力者とされた金丸さんが呼ばれ
たわけです。
しかしその時、金丸さんは拉致問題を出さなかった。1988年の3月の参議
院予算委員会で梶山静六国家公安委員長が、3組6人のアベックや田口八重子さ
ん、原敕晁(ただあき)さんについて、「北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚で
ある」という歴史的答弁をしていたにも関わらず、その2年後に、北朝鮮の最高
責任者に日本の政治家が会ったにも関わらず、こちらから拉致を出さなかった。
だから向こうは何もしません。
その時曽我ひとみさんはテレビでそれを見ていて、「日本の政治家が来たのだ
から私のことが議題になるだろう」と内心期待していたと、帰国後に聞きました。
第1条件がないと、第2条件があってもだめなんです。2002年の小泉訪朝
の時は拉致が議題になりました。梶山答弁は金丸訪朝の前にありました。小泉訪
朝の5年前に家族会・救う会ができた。世論に訴えようという運動をした。
小泉さんが平壌に行く時に、マスコミは拉致問題がどうなるかと連日報道しま
した。それでもその時は拉致「疑惑」と言っていました。マスコミがこちらに押
し掛けて、「記者会見してくれ」と言われました。世論があると政府は世論を無
視できなくなる。そして議題になった。
◆家族会・救う会は政府に「拉致問題を専門にする部署を作れ」と
しかし今拉致問題担当大臣がいて、拉致問題対策本部があり、総理大臣はブルー
リボンバッジを付けていますが、そういう体制が2002年にはなかった。
「全員救出の体制」はその4年後の2006年にできた。第一次安倍政権の時で
す。総理大臣が本部長になり、拉致担当大臣を置き、専属の事務局を作った。同
じ年に北朝鮮人権法という法律もでき、「政府と地方公共団体は拉致問題をはじ
めとする北朝鮮人権問題について、啓発活動をしなければならない」と法律に書
かれた。
私たちは運動を始めた時から政府に、「拉致問題を専門にする部署を作れ」と
いうことを運動の目標にしてきました。最初に国民大集会をやったのは1999
年です。日比谷公会堂でやりましたが、その時のタイトルは、「拉致問題を国政
の最優先課題にする国民大集会」でした。
今、「国政の最優先課題」になったのですが、それも自動的になったわけでは
ない。世論があってそういう政策になったのです。2006年から対策本部がで
き、人権法ができ、政府が色々な集会をやっています。それまでは我々の集会し
かなかったのです。今は、一定程度体制ができています。
◆北朝鮮が困って日本に接近した日朝首脳会談
2つ目の北朝鮮が困って日本に接近せざるを得ない状況をどう作るか。金丸訪
朝の時の話をしましたが、では2002年になぜ小泉訪朝があったのか。様々な
分析があると思いますが、私の分析をお話します。
アメリカの強い圧力が背景にあったことです。2002年に小泉訪朝がありま
したが、その1年前の2001年に「同時多発テロ」があった。ブッシュ政権は、
「テロとの戦争」を表明しました。これは後で江崎さんにも解説してもらいます。
新しい戦争が生まれました。それまでテロは犯罪でした。FBIが犯人を捕まえ
ます。戦争となると軍が出ます。戦時国際法が適用されます。相手に三審制の裁
判の権利を与えない。
本来戦争は、戦争をしているもの同士でするものですが、あまりにも被害が大
きかったので、テロリストに対して、「戦争をする」と言って、軍隊を使ってテ
ロリストの基地を攻撃しました。国家ではない存在に対して軍隊が出た。それを
大統領が、「テロとの戦争」と言った。
アフガニスタンとの戦争で、「アルカイダ」の基地を攻撃しましたが、その後、
2002年1月にブッシュ大統領は、「まだテロとの戦争は終わっていない」と
言って、「テロとの戦争のターゲットは2つある」と言った。
1つはテロリストに正義の審判を下すことで、もう1つは「テロ支援国家」が
大量破壊兵器を持ち、それをテロリストに渡したり、「テロ支援国家」がアメリ
カや同盟国に脅威を与えることを止めさせることです。その「テロ支援国家」の
代表として、北朝鮮、イラク、イランを名指しした。
「悪の枢軸」という言葉も出ましたが、ただこの国が悪いと言ったのではなく、
この3か国が大量破壊兵器を持つことを、「戦争をして止めさせる」と言った。
そうしないと大量破壊兵器でテロが起きる。あの時は、アルカイダが核を持って、
ニューヨークで核のテロをやるかもしれないと、本気でアメリカは心配したので
す。
調べたら、イランはウラン濃縮をしている。誰に教わったか。パキスタンです。
パキスタンのカーン博士がウラン濃縮を持っています。同じカーン博士が北朝鮮
にもウラン濃縮技術を教えていた。
今年イランの複数のウラン濃縮施設をアメリカが地中貫通弾で爆破しました。
2001年からアメリカは危険だと思っていたのです。イランはテロリストを支
えています。そのテロリストに核が渡ったらどうなるかという強い危機感を持っ
ていました。
同じウラン濃縮施設を北朝鮮も持っている。金正日氏は核問題でアメリカと協
定を結んだ。ジュネーブ合意です。北朝鮮は核開発を凍結する。その代わりに無
料で原子力発電所2基を作る。原子力発電所ができるまでの間、アメリカが重油
を毎年50万トン出す。原子力発電所の費用は日本と韓国が出す。
こういう枠組みでしたが、北朝鮮は支援を貰いながら、一方でウラン濃縮をし
ていた。その情報をアメリカはパキスタンから取った。ジョン・ボルトンさんが
第一次トランプ政権の時、安保補佐官をやっていましたが、彼は拉致問題にもの
すごく同情的で、私たちは何回も会いました。
2001年02年は、彼は国務省の軍縮担当次官でした。軍縮には核兵器も入っ
ています。ボルトンさんはパキスタンに行って、カーン博士に会っています。
「誰に教えたのか」と。あの時アメリカは必死だったのです。もしかしたらアル
カイダに教えていないかとも心配した。ニューヨークの貿易センターが核を使っ
て攻撃されるかもしれないと本気で思っていたのです。必死で調べたところ、ア
ルカイダには渡っていなかった。
しかし、リビアと北朝鮮とイランに渡っていたことが分かった。リビアのカダ
フィ大佐は怖くなった。アメリカがその秘密を知ってしまったからです。爆撃さ
れるかもしれない。そこで、「まだ完成していません」として見せた。それで
「悪の枢軸」には入らなかった。
金正日からすると、アメリカの強い圧力があって、もしかしたらバクダッドの
前に平壌が爆撃されるかもしれない。強い圧力がかかった時、日本は北朝鮮と裏
交渉をしていた。「テロとの戦争」をやっていた時、田中均(当時外務省アジア
大洋州局長)さんが裏交渉をしていたのですが、
アメリカが北朝鮮と戦争をする時は在日米軍基地を使うわけです。日本が協力
しないとできない。その日本を北朝鮮が引き寄せようとした。国交正常化までや
ろうとした。そういう枠組みがあって小泉さんが訪朝した。
その時に、「核と拉致」を全部解決させるには、アメリカと腹を割って話し合
いをし、戦略を立ててやるべきだったのに、小泉訪朝は直前までアメリカに秘密
にしていたのです。8月の終わりにアーミテージ国務副長官が日本に来た時、初
めて伝えた。
◆全員救出の体制があるか、北朝鮮が困っているか
今どうなっているかですが、北朝鮮が困っているか、アメリカがどれだけ圧力
をかけているか。北朝鮮が困る条件は日朝関係だけじゃない。中国が支えている
かどうか。韓国が金大中・廬武鉉、文在寅政権の時は左派政権で、北朝鮮を支え
てきたが、今はどうか。日本の中で全員救出の体制ができているかどうか。この
2つのことが重要です。
国際情勢がどうなっているかは後でお話しますが、第1は、日本の中で全員救
出の体制ができているかですが、形式的には拉致問題対策本部があり、歴代総理
も石破総理も最優先課題と言います。私たちに会ってくれますし、年2回の国民
大集会に来てくれます。
しかし、今回の参議院選挙の結果、政権が安定性を欠いたように平壌には見え
ている。そういう国と首脳会談をしようと思うだろうか。日本の与野党が一致し
て取り戻す体制ができているかどうか。そこが完全に満たされているかどうかが
鍵になります。
そのことについて江崎さんに、今の政治情勢を拉致問題の観点からどう見てい
るかについてお話ください。
◆「創生日本」が安倍政権で残された課題を整理
江崎道朗(救う会副会長、麗澤大学客員教授)
今年2月に、長年救う会副会長をやっていた島田洋一先生が日本保守党の衆議
院議員になられて空席になりました。私は長年拉致問題をやってきた衛藤晟一先
生、平沼赳夫先生、石原慎太郎先生のスタッフだった関係で、拉致のことについ
ては永田町でやってきたので、今回救う会の副会長をさせていただくことになり
ました。
先ほど安倍さんの時は熱意がありましたが、今はどうなんだろうかという言い
方をされていたと思います。自民党という所は大所帯で色んな勢力があり、温度
差がある所です。
安倍さんに近い、「創生日本」という派閥横断型の勉強会があります。以前は
安倍さんが会長で、今は空席で、会長代理が中曽根弘文先生、幹事長が衛藤晟一
先生、事務局長は木原稔先生で前防衛大臣です。約100名の自民党議員が参加
しています。
「創生日本」の幹部の皆さんが、去年の衆議院選挙で負けたことを踏まえて、
なぜ自民党がこんなに支持を失ったのかということを深刻に受け止めたんですね。
そして幹部の方たちが、安倍さんがやってきたことを自分たちが見失っているか
らではないか。だから第2次安倍政権で成し遂げたことと、残された課題をちゃ
んと整理して、そして自民党の基本的な政策、国家観を含めたものを立て直しす
べきではないかと考えた。
そして今年5月から2か月、毎週1回やっていました。私も少しお付き合いを
しましたが、最終的には6月29日に、「創生日本」として、「日本が目指すべ
き道」という3枚物の基本政策を作り直したんです。
このペーパーを作っていく時に、第2次安倍政権でやり残した課題とは何なの
かという論点整理をしました。そこには高市早苗先生もいるし、小林鷹之先生も
いるし、麻生さん側近もいるし、衛藤さんも、木原さん、西村さんもいる。保守
系の幹部たちですね。
その中で皆さんが言ったことの一つは憲法改正です。もう一つでてきたのは拉
致問題です。この拉致問題が安倍政権で成し遂げられなかった大きな課題である。
これにきちんと取り組んでいないように見える。野党がどうこうではなく、自民
党としてこの問題を本当に最優先課題でやらなければならないのではないか。そ
ういう議論がなされ、最終的にペーパーとして救う会の方針を入れて、「即時一
括帰国を何としても実現する」という文言が入りました。
今石破政権なので石破さんたちだけが自民党を代表しているかのように見える
わけですが、自民党は幅広い政党で、そういう人たちが去年の衆議院選挙、都議
会選挙、参議院選挙の反省を踏まえて、もう一度原点回帰していこうと考えてい
ることをまずご報告したいと思います。
(3につづく)
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■石破首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 石破茂殿
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