救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

令和5年 拉致被害者救出への展望1(2023/01/30)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.01.30)

■令和5年 拉致被害者救出への展望1

 令和5年1月27日、東京・文京区民センターにおいて第121回東京連続集
会が開催されました。冒頭横田拓也家族会代表が挨拶、その後「令和5年 拉致
被害者救出への展望」のテーマで、西岡力救う会会長が講演しました。概要以下
の通り。

◆岸田首相の踏み込んだ発言、「時間的制約」、「日朝両国に利益」

横田拓也(家族会代表、横田めぐみさん弟)

 皆様こんばんは。お寒い中、お忙しい中、お越しいただき誠にありがとうござ
います。

 母は元気ですが、歳のこともあり、疲れていることもあり、今日はお休みをさ
せていただいています。弟の哲也は業務の関係で本日来れないとのことでした。

 私の母、早紀江は来月2月4日に87歳の誕生日を迎えます。私の父滋が亡く
なったのが87歳ですから、まさに同じ歳を迎えることになるわけです。母は毎
日元気で過ごしていますが、やはり年齢の現実には勝てなくて、毎日口癖のよう
に「疲れた」と言っていますから、元気ではあるものの、時間がないという現実
は変わりがないわけで、必ず姉めぐみとこの日本の地で再会させたい。

 日本政府は真剣にこの問題に向き合って解決するように取り組んでほしいと改
めてお願いします。

 昨年10月23日に、家族会、救う会、拉致議連が主催して国民大集会を開催
しました。その中で、オーストラリア外遊があり、大変ご多忙にも関わらず岸田
首相が会場に駆けつけてくださいました。

 岸田首相のご挨拶の中で、これまで発言されなかった、一歩踏み込んだ発言を
されたことにすぐ気づきました。2点あります。1つ目は、「拉致問題は時間的
制約のある人権問題」という発言で、「時間的制約」という言葉を目的と意思を
持って使われました。

 2つ目は「拉致問題が解決すれば日朝両国に利益がある」という発言です。
「日朝両国」というところがポイントです。

 これは家族会・救う会がこれまで、集会や講演の場で同じことを繰り返し言っ
てきたもので、運動方針の中にも盛り込まれています。私たち日本だけが明るい
未来を描けて、北朝鮮は明るい未来を描けないことを求めるのではなく、拉致問
題を解決すれば日朝両国に利益があるということを私たちは常々言ってきたわけ
ですが、これまで歴代の総理はそこまでは具体的に踏み込んで言及されてこなかっ
たわけです。

 しかし、10月23日の国民大集会で、目的を持って、意思を込めて岸田総理
はその2点に言及されました。ようやく私たちの重要な運動方針の意味が政府に
伝わったということを感じましたし、岸田総理が目的と意思を持って発言された
ということは、必ず金正恩委員長に届けるためであろうとその場で感じました。
正恩委員長が、その意味を真剣に考えてほしいなと思っています。

◆金正恩委員長に、勇気ある英断を行ってほしい

 2022年は、北朝鮮が度重なる弾道ミサイルの発射をしました。人々の人権
や生活水準、医療環境を無視した上で「先軍政治」を行ってきました。核実験も
時間の問題と言われています。

 一方、極限を越えた食糧不足は餓死者を生み出し、想像を絶する人権侵害が続
いているのも事実です。また最近では大寒波が朝鮮半島を襲い、平壌が氷点下1
9度になるというような情報もあります。

 日本も先週大寒波があり、今日も寒いですし、大変な思いを全国的にしたわけ
ですが、その寒さをはるかに越え、しかも暖もとれない、医療環境もない中で、
2500万人の北朝鮮国民の方、そして私たちの家族や兄弟が過酷な毎日を強い
られているわけです。こうしたことを国際社会は絶対に黙認してはならないと思っ
ています。

 また平壌では新型コロナが感染拡大しており、5日間都市封鎖されたとの情報
もあります。今月開催された最高人民会議に金正恩委員長は欠席したとされてい
ます。本人が罹患しているのではという情報もあります。拉致被害者が罹患して
もおかしくないわけで、医療の提供を受けられないことを考えれば、この点にお
いても看過することはできません。

 幾度も発言しましたが、北朝鮮当局は人々に対する人権侵害のもとで「先軍政
治」を強行しています。つまり、人権問題と拉致問題は表裏一体であることを、
私たちは理解する必要があると思います。

 金正恩委員長に改めて伝えたいと思います。「勇気ある英断を行ってほしい」
と。拉致問題を解決できれば、日朝両国が明るい未来を描けるということを改め
て理解をしてほしいと思います。

 また、日朝関係が良好化すれば、米朝関係にも進展が期待できるのではないか
と私は考えています。それこそが金正恩委員長が一番望んでいる「体制の保証」
になるのではないかと考えられ、このことをよく考えてほしいと思います。

 私たち家族会の親世代が健全な内に拉致問題の解決ができなければ、日本の世
論は2002年9月の時と同じように、北朝鮮に対して態度を硬化させることは
間違いありません。日朝国交正常化交渉はできなくなると思います。その点を北
朝鮮当局、金正恩委員長は理解してほしいと思います。拉致問題をすみやかに解
決してほしい。そのことを伝えたいと思います。ありがとうございました(拍手)。

◆岸田総理は「拉致問題」と「核・ミサイル問題」は別次元の問題と事実上切り
離した

西岡力(救う会会長)

 寒い中ありがとうございます。今の横田代表の理路整然とした発言を聞いてい
て、あまり付け加えることはないな、もう帰ろうかなと思いましたが、そういう
わけにはいきませんので、今の国際情勢、そして北朝鮮の中で何が起きているの
かということと、岸田首相の先ほどの発言等についてお話をしたいと思います。

 何とか今年勝負をかけたいという私たちの考えをお話ししたいと思います。配
布資料は、2023年1月号の「WILL」ですが、昨年11月26日に出たもので
す。私が11月初めに書いたものです。

 私も10月23日の国民大集会での岸田総理の発言を聞いて、「これは一歩進
んだな」と思って解説を書いたのです。その発言を読みます。

 「北朝鮮については、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸
懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指し
ますが、とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間的制
約のある人権問題です。全ての拉致被害者の方の一日も早い御帰国を実現すべく、
全力で果断に取り組んでまいります。

 日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致するとともに、
地域の平和と安定に大きく寄与いたします。そのためには、私自身が、我が国自
身が主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことが極めて重要であると
考えております。私自身、条件を付けずにいつでも金正恩委員長と直接向き合う
決意であると申し上げているゆえんでありますし、全力で行動してまいります」。

 岸田総理が国民大集会に出たのは3回目でした。一昨年の9月の自民党総裁選
挙で総裁になり、その後国会で総理大臣に指名されたわけです。そして一昨年の
11月、そして昨年の5月と10月に国民大集会を開催しましたが、過去の2回
では「諸懸案を包括的に解決」ということはずっと言っています。

 そのことは、2回目の2022年5月29日には、「私は、条件を付けずに金
正恩委員長と直接向き合う決意です。日朝平壌宣言に基づき、日朝間の諸懸案を
解決し、不幸な過去を清算し、北朝鮮との国交正常化を目指します。そのために、
あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいります。

 本日、この集会を通じて、日本国民の一致団結した強い意思が示されることは、
拉致問題の解決に向けた力強い後押しとなります。その声こそが、国際社会を動
かし、北朝鮮を動かすことにつながっていくと信じております。

 私自身、全ての拉致被害者の一日も早い帰国実現に向け、皆様と心を一つにし、
総理大臣として自らが先頭に立ち、政府を挙げて、全力で取り組んでまいります」
と述べています。

 1回目もほとんど同じでした。「諸懸案を解決し」と言っています。他方、拓
也さんや耕一郎さんが国民大集会で繰り返し強調してきたのは、「拉致問題と核
・ミサイル問題を切り離すことができないのか」ということでした。

 「核・ミサイル問題は様々な要素が関係している解決が難しい問題だ。拉致問
題は解決が急がれる。時間がないという問題だ。だから切り離すことができない
のか」と。

 もちろん、国交正常化して大規模な経済援助をするためには、拉致問題はもと
より、核・ミサイル問題も解決しなければならないわけです。核・ミサイル開発
が進んでいる中で日本が大規模経済支援をすると、それが核開発に使われてしま
い、日本の安全をも脅かすことになるからできません。

 日本も積極的に外交活動で動いて、国連安保理事会で制裁をかけているわけで
す。それに違反することを日本はできないわけです。だから核・ミサイル問題が
解決しない限り大規模な経済支援は難しい。

 しかし、人道支援は国連制裁違反ではないのです。国連制裁違反ではない部分
を使って交渉することはできるのではないか。それが「切り離し」ということに
つながるのではないかということを何回か提案し、私も提案してきました。

 しかし、安倍さんも菅さんも岸田さんも、2回の国民大集会では「一括して解
決する」という言い方以外はしていなかったのです。しかし初めて岸田総理が、
次のように発言したわけです。

 これまでの挨拶と同じように「日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルと
いった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現
を目指します」と言っているが、そこで終わらず、「が」と逆接の助詞を付け、
「とりわけ、拉致被害者御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間的制約のあ
る人権問題です。全ての拉致被害者の方の一日も早い御帰国を実現すべく、全力
で果断に取り組んでまいります」。

 「時間的制約」がかかっているのは拉致問題だけなんです。核・ミサイル問題
にはかかっていない。だから事実上切り離されたのです。

 この私の原稿が出た2023年1月号の「WILL」には、岸田首相のインタビュー
が出ています。インタビュアーは櫻井よしこさんです。10月23日に櫻井さん
が司会をしている国民大集会での発言ですから、櫻井さんもこのことに気づいて
いて、岸田さんに、「この発言の意味は何ですか」と聞いています。

 そうしたら、「金正恩委員長へのメッセージだ」と。「推敲に推敲を重ねてこ
のフレーズを作った」と。そこで櫻井さんが、「じゃあ核・ミサイルと拉致を切
り離すんですね」と質問したら、「別次元の問題です」と答えた。家族の年齢を
考えたら、一刻も猶予がない。「時間的制約のある問題だ」と。こういう言い方
を総理がするのは初めてです。総理自身が「推敲に推敲を重ねてメッセージを送
ろうと思ってこのフレーズを作った」と言っているのです。

(2につづく)




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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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