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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致問題セミナー報告5(2020/12/17)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2020.12.17-2)

■拉致問題セミナー報告5

櫻井 次に古森さんにアメリカの状況を踏まえてお話を伺いたいと思います。

◆日本人拉致事件は米政府の対北政策の一部になった

古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)

 北朝鮮政府による拉致事件についてアメリカはどう対処しているのか。この拉
致事件は国際的にどう位置付けされているのかということについてまず報告させ
ていただきます。

 わたしが関わりを持つようになったきっかけは、ワシントンのジャーナリスト
として駐在していた長い過程で、2001年2月でしたが、家族会・救う会の方
々が初めてアメリカにいらっしゃった。事前に、アメリカでどういう人に会えば
いいのかについて助言をさせていただく形で、舞台裏でのお手伝いをさせていた
だいたことからです。

 当時まだ日本の中では、「北朝鮮による日本人の拉致なんかない」というよう
な、いわゆる識者の人たちの声が多かったのに対し、ブッシュ政権はこの問題に
極めて前向きでした。横田滋さんや蓮池さんのお父さんがいらっしゃいました。
ワシントンの2月はものすごく寒いんですが、ほのぼのとした灯りが遠くに見え
たかなという感じで訪問を終えられたことを覚えています。

 西岡先生が話されたように、ブッシュ政権が登場してすぐに、「北朝鮮は『悪
の枢軸』であるので強硬な措置で対処する」ということを堂々と議会で語ってい
ました。これに対し北朝鮮は、「大変だ」ということになって、日本に経済支援
を頼ってきて、その一歩として拉致被害者を(5人)返したのです。

 それから約20年過ぎたのですが、今アメリカは拉致問題をどう見ているのか、
国際的にどう見られているのか。今お話しした状況については3つの特徴があり
ます。

 第1の特徴は、日本人拉致事件というのはアメリカ政府の北朝鮮に対する政策
の一部になったということです。アメリカの政権は、何らかの形で拉致事件の解
決に支援してくれましたが、決定的に支援してくれたのはトランプ政権でした。
トランプ大統領自身が金正恩委員長と会った時に3回も、「日本人拉致問題を解
決してくれ」と伝えました。このことに象徴されます。

 もう一つは、これは地味な動きでしたが、2019年6月にトランプ政権がイ
ンド・太平洋戦略という政策文書を発表しました。この中に拉致問題についての
はっきりとした文章がありました。

 「アメリカ政府は北朝鮮による日本人拉致問題を完全に解決しなけらばならな
いとする日本の立場を支援することを、継続して、実際に日本人拉致問題を北朝
鮮当局者に対して提起してきた」と書いてあります。ですからアメリカ自体の対
北政策の中に日本人拉致事件が組み込まれたと言えます。

◆拉致問題の国際化は営々と続けてきた努力の成果

 第2の特徴は、アメリカが認めたように完全に国際問題になってしまったこと
です。本来は日本と北朝鮮との二国間の問題ですが、同時に国際問題にもなって
しまった。

 トランプ大統領が2017年9月に国連総会で行った演説が拉致を証明してい
ます。ご存じのように、「北朝鮮工作員は日本の13歳の優しい少女を拉致した」、
ここで「やさしい」という言葉に英語で「スウィート」という言葉を使いました。
そして北朝鮮を非難しました。この瞬間に日本人拉致問題は一気に国際的な課題
となったと言えるのです。

 但し国連ではそれ以前から、日本人拉致問題に対する対応は継続していました。
この動きは昨年5月に、菅義偉首相、当時拉致問題担当大臣がニューヨークの国
連本部に行って国際会議をして、議長役を務めたのです。また国連全体として北
朝鮮を非難し、厳しい制裁措置を取ったと見ていいと思います。

 第3の特徴は、日本の拉致問題の行方は北朝鮮という国家の運命、もっと具体
的に言うと金正恩という独裁者の命運と一体だということです。当然核兵器はど
うかということになりますが、金正恩政権がどうなるかにかかっているわけです。

 今のままで北朝鮮が行くと、北朝鮮が普通に機能していれば拉致問題は解決し
ないということです。公式には「拉致問題はない」と言っているわけですから。
それを変えるには何か異変がなければならない。その異変というのは朝鮮民主主
義人民共和国という国家がもしかしたら終わりになる、あるいは終わりの始まり
になることと絡んでしまっています。

 北朝鮮は国家として今明らかに危機の状態にある。アメリカや国連による徹底
した経済制裁の効果は明白です。よく言う「対話と圧力」のアプローチではなく、
国際社会は圧力だけをまず徹底してかけている。その結果がどうなるかは分から
ないという状態です。

 こうなると拉致問題は日本と北朝鮮の問題と言うより、世界の重大な関心事に
なっています。もちろん二国間の問題であることは変わらないけれど、それだけ
ではなくなてしまったということです。

 このことが、「拉致被害者の全員の即時一括帰国」という日本側の要求の実現
にプラスとなるということは言えると思います。国際社会が日本側の主張を完全
に後押ししてくれているということです。

 拉致問題を国際化して国際支援を取り付けるというのは、ここにおられる家族
会、救う会、拉致議連の方々が長い年月をかけて営々と続けてきた努力の成果だ
と思います。ともかく階段を、どこが頂上か分かりませんが、とにかく上がって
きた。国際的なアピールをして上がってきたという状態です。

◆国内政策を優先するバイデン政権になるが米国内には拉致への共感がある

 今アメリカは大変な状態です。このままいけば、1月20日にはバイデン大統
領になる。その場合、拉致問題がどうなるのか。私は長くワシントンで色々な人
を見てきましたが、あまり批判的なことをこの段階で言ってしまうというのはフェ
アーではないかもしれない。

 やはり日本にとってはアメリカという同盟国の存在は極めて重要だから、まだ
スタートしていない新政権の在り方を今の時点でネガティブに語るのはよくない
と思います。やはり救う会とか家族会がバイデン政権をネガティブの語るのは避
けた方がいいと思います。

 しかし、私はジャーナリストですし、個人の意見は自由ですから、この時点で
バイデン政権の日本の拉致問題に対する姿勢はこうなるのではないかということ
を少し語らせていただきたいと思います。

 先程、拉致問題を国際化し国際社会の協力を取り付けるということを、階段を
上るようにして皆さんが押し上げてきたという表現をしましたが、ひょっとする
とこの会談の踊り場に辿りついてしまったというような感じがします。バイデン
政権が始まる前に。

 いくつか理由があります。まずバイデン氏は政策として国内政策を最優先しま
す。これをくどいほど言う。経済再建だけを見ても、対外戦略に投入するエネル
ギーや熱意が極めて限られているのではないかという感じがします。特に北朝鮮
問題全体に対してそういうことが言えるのではないかと思います。

 バイデンという人物が今年の4月にアメリカの大手の外交政策雑誌に論文を発
表しています。かなり長いもので、私はこういうことをしたいと書いている。こ
の中で北朝鮮に関する言及が極めて少ない。ほとんどない。むしろ、中南米のベ
ネズエラの誰をかくまうというようなことが多い。

 北朝鮮の非核化はバイデン政権にとっても重要であるけれど、「慎重に」とか
「時間をかけて」という感じで、よく言えば抑制が効いている。悪く言えば強さ
がないという感じ。

 さらに彼の上院議員、副大統領としての外交課題への取り組みで日本の拉致問
題に触れたという記憶は、私が知る限り全くありません。バイデン氏を支えてい
る側近たち、例えばブリンケンという国務長官候補、サリバンという国家安全保
障担当の大統領補佐官、この人たちを見ても拉致問題に対しての言及がない。

 トランプ政権の中堅クラスの人たちが非常に熱意を示したこと、これは実際に
接触した方々は実感があると思いますが、(次期バイデン政権では)そういう感
じがない。

 バイデンさんは副大統領だったし、上院外交委員会の枢要なメンバーであった
のです。そして拉致問題を解決するためにワシントンを訪れた人たちは何度も訪
問しているのですが、私の感じではバイデンさんはあまり関心を示してくれなかっ
たというコンセンサスに近い(訪問者の)反応があったと思います。

 その原因の一つは、これも私の感じですが、一人の人物がいて、この人が外交
問題に関してバイデン上院議員、あるいは副大統領の時も補佐をやっていたフラ
ンク・ジャヌージという人物がいます。会場にも接触した方がいるのですが、こ
の人は日本人拉致問題に関して非常に冷淡でした。この人がバイデン政権に戻っ
てくると、拉致問題はどなるかなという感じがありました。

 バイデン政権から離れたアメリカの専門家はどう見ているか。例えばワシント
ンのヘリテージ財団、これは保守系ですが、ここでずっと朝鮮半島問題を担当し
てきたブルース・クリンガーという人がいます。CIAにいた人ですが、この人に
最近聞いた評価では、「残念ながら日本人拉致事件というのは、やがては日本と
北朝鮮との間の二国間案件に戻るのでバイデン政権としてはそういう動きに従う
のではないか」と言っています。

 彼も、北朝鮮がアメリカにとって大きな問題であるのは間違いないが、その際
バイデン政権が何を重視するかといえば、必ずしも核兵器ではなく通常兵器でど
んどん新しいものがでてきているのでこれだろうということでした。

 バイデン政権にとっては、日本人拉致問題よりも、日本と韓国が仲たがいして
いることを何とかなおすことを優先するのではないか、ということまで言ってい
ました。

 こんな感じが今の所あります。とはいえ、アメリカ全体の中では、拉致問題に
関する理解と共感範に存在します。そこは強調しておかなければならない。

 その一つは、アメリカの連邦議会でデヴィッド・スネドンという北朝鮮により
平壌に連れていかれている形跡が強い人がおり、上下両院が全員一致でこれをな
んとかしようという決議案を通した。これには民主党のバイデンさんたちも賛成
しているわけです。

 ですから、北朝鮮というのは外国人を拉致する国で、その犠牲になっているの
は日本が一番多いということを含めての民主党議員の動きというのがありますか
ら、これはバイデン政権でもそれに動かされていくだろう。

 ちなみに、上下両院で議決されたこの決議案は、日本側で色々な働きかけをし
て、古屋圭司議員の動きが一番大きかった。彼は毎週のように訪米して色々な調
整をしていました。そういうことで、民主党議員でも日本人拉致問題への関心、
同情が健在なわけです。

 それからもう一つ。1週間前でしたが、アメリカ側で北朝鮮の人権弾圧を非難
してきた活動で、スーザン・ショルティという米ディフェンスフォーラム財団代
表ですが、これは超党派で非常に大きな財団ですが、先週セミナーを開きました。

 脱北して今アメリカに定住している李正浩(リ・ジョンホ)さん、彼は北朝鮮
で39号室で金正恩の資金を扱っていた人ですが、彼が出てきて、「北朝鮮は本
当に悪くなっている。もうちょっとで倒れる」と言っていました。その時には日
本人拉致問題を解決しなければならない。

◆拉致問題解決には軍事力も考えること

 だから全体としては、まだまだ拉致問題への関心は強い。とはいえ、二つのこ
とを強調したいんですが、アメリカに頼るということは、いつまでもアメリカの
支援があるわけではないかもしれない。これはバイデン政権が登場してくる場合
の、我々の教訓だと思います。結局は日本が独自でやらなければいけない。

 しかし、同盟国ですからアメリカの協力は大切にしなければならない。大切で
あることの一番大きな理由はやはり軍事力です。軍事力があるからこそ金正恩的
な政権が動く。やりたくないことを、しょうがないからやる。その灰家にあるの
は自分たちの存亡です。存亡が一番脅かされるのは軍事ですから。

 日本が軍事について言えないのでしょうが、こういうことから日本の本質を意
識した上で、新たな段階での日本人拉致事件の解決の機会にしたいと思います。
以上です(拍手)。

櫻井 ありがとうございました。アメリカの状況は日本にとって厳しいと思いま
すが、古森さんがおっしゃるように、やはり日本自身が必死にならなければいけ
ないことなんですね。

(6につづく)


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