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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

家族会・救う会の新運動方針について2(2024/03/14)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2024.03.14)

■家族会・救う会の新運動方針について2

◆北朝鮮が岸田首相に大変高い関心を持っている

西岡 力(救う会会長)

 では、運動方針とその背景となる北朝鮮の状況、そして日本政府の姿勢等につ
いてお話をしたいと思います。私がここで話したことと一部重なることもありま
すので、ご了解ください。

 3月になって、表向きの動きは見えないわけですが、北朝鮮が岸田首相に大変
高い関心を持っているのは間違いないと思います。

 昨年の5月の国民大集会で、岸田首相が、「ハイレベルの協議を行いたいと思
います」と言ったわけですが、二日後に北朝鮮の外務次官が、談話を出しました。
談話の中で、「岸田文雄首相がある集会で、『高いレベルでの協議を行いたい』
と言った」と。岸田首相という名前がそこにあった。

 そして1月5日の金正恩委員長の名前の能登地震へのお見舞いでは、「岸田文
雄閣下」となっていた。そして2月の金与正談話では、「岸田首相」あるいは、
ただの「首相」を含めると、紙一枚の中で5回、「岸田首相」に言及した。

 日本に関する関心の高さだけではなく、岸田政権、あるいは岸田首相に対する
関心の高さが以上のことから分かります。

 一体、なぜなのか。過去に松原仁さん(民主党政権時代の拉致問題担当大臣)
が雑誌の対談か何かで話したのですが、北朝鮮から激しくののしられた。その時、
野党だった安倍晋三さんにあったら、「あなたも一人前になったね」と言われた。

 安倍さんも激しくののしられたのです。過去、日本の拉致問題担当者は、のの
しられるとだいたい一人前だと言っていたのです。ところが岸田首相に対するの
のしりはなく、「会えない理由はない」とか、「平壌を訪問することがあるかも
しれない」とか、「閣下」とか、言っているんですね。

 明らかに対応が違うんです。悪口を言うのと無視するのとどっちがこちらにとっ
てよくないかと言えば、無視される場合です。悪口を言う場合は、強い制裁が効
いていて嫌だという現われです。

 しかし、繰り返し「閣下」とか、「平常に行ける」と言うのは、今までないこ
とです。

◆拉致被害者救出を核・ミサイル問題と切り離して取り組むことを表明した

 日本は今、国連制裁よりも高い制裁をしています。岸田総理が制裁を緩めたわ
けではない。北朝鮮にとって何か実質的にプラスになることを、岸田政権がやっ
たわけではないのです。

 岸田政権がやったことは一つあります。一昨年の10月23日の国民大集会で、
「拉致問題は時間的制約のある人権問題だ」と言ったのです。岸田総理が、「拉
致問題、核・ミサイル問題を包括的に解決して国交正常化をする」と言いました。
安倍総理も菅総理もそう言っていました。

 しかし、そこで文章が終わらないで、「人権問題だが」と言って、ご家族の高
齢化等もありと言った後で、「拉致問題は時間的制約のある人権問題だ」と言っ
たのです。拉致・核・ミサイルの3つの中で、拉致問題だけに時間的制約がある
と言ったのです。拉致だけに期限を付けたと読めます。

 その時、拓也さんも私も壇上にいて、「これは」と思ったのです。「拉致問題
と核問題を切り離してほしい」と代表以下言ってきて、飯塚耕一郎さんが一番強
くいったのです。核問題は簡単に解決しないと言っていたのです。

◆北朝鮮が核開発を続けていた時代は「包括的解決」が正しかった。

 しかし、菅さんも安倍さんも、「拉致・核・ミサイルを包括的に解決する」と
しか言わなかったのです。そういう中で有本嘉代子さんがいなくなり、横田滋さ
んがいなくなり、飯塚?雄さんが亡くなることがありました。それが一つ。

 もう一つは、北朝鮮が米朝関係を完全に動かさなくなった。無視して核開発を
続けるようになった。トランプ政権の時は核問題が動き出していたのです。その
時の我々の課題は、核だけが動いて拉致が置き去りにならないようにすることで
した。だから一緒にやりましょうと言う方が戦略的に正しかったのです。

 核問題で戦争直前まで軍事緊張が高まり、金正恩暗殺作戦の演習まで米軍がや
り、北朝鮮は2年間に3回核実験をし、40発のミサイルを撃った。そういう状
況の後に米朝首脳会談となったわけです。

 その中で安倍政権は、トランプ大統領と一緒に、「核問題を一緒に解決する」
と。しかし、「核だけでなく、拉致も解決しなければ困る」と言っていたのです。
米朝首脳会談は結局物別れに終わりました。

 ところが安倍さんが病気で総理を辞め、トランプ大統領が選挙で負けて退陣し、
菅政権になった。今でも覚えていますが、就任数日後に私が呼ばれて、ちょうど
この集会をやっている日で、島田洋一副会長につないでもらって遅れて参加しま
した。

 その時私は菅さんに、「まだ北朝鮮は核開発を止めていない。バイデン政権が
軍事力を使ってでも止めさせる局面が来るかもしれない。安倍政権の時は、拉致
も必ず言ってもらうことで成功した。しかし、バイデンがそれを言うかどうか分
からない。だから拉致が置き去り尾にならないように、アメリカに対してきちん
とやってほしい」とお願いしました。

◆国際情勢が変わった

 結果的に核は今全然動いていない。バイデン政権は事実上北朝鮮を無視してい
ます。北朝鮮側もバイデン政権との話し合いを無視しています。アメリカはウク
ライナの戦争があり、イスラエルに対しハマスというテロ集団の攻撃があり、そ
して中国が台湾にいつ侵攻するか分からないという緊張状態がある中で、北朝鮮
問題の比重が下がっています。

 去年の5月にワシントンDCに行った時、議会やマスコミはほとんど北朝鮮問題
を取り上げていないということでした。専門家だけが議論している。そういう状
況の中で、このまま行ったら、バイデン政権の間は一切何も起きない。

 「核も拉致も」と言っていたら、あとお二人になってしまった親の世代が被害
者に会えないまま、もしかしたらこの世を去るかもしれないという状況を見て、
一昨年の10月に岸田政権が舵を切ったのです。

◆北朝鮮が苦しくなった

 そうしたら半年経って5月に返事が来たわけです。それ以外、何か変わったこ
とはないのです。もう一つの要素は北朝鮮が苦しくなったことです。コロナとい
う要素もありますが、その前から厳しい国際制裁がかかった。

 2017年の3つの国連安保理制裁で、北朝鮮の外貨がほぼ絶たれました。北
朝鮮から物を買ってはいけないというリストを作って、北朝鮮の輸出が以前は年
間30億ドルあったのが、制裁の後は3億ドルになりました。90%の外貨がな
くなったのです。また北朝鮮の労働者を雇ってはいけないことになった。労働者
が送金するお金が遮断された。

 それで必死になって彼らが見つけたのがハッキングでした。ハッキングした仮
想通貨を現金化しなければならないのですが、現金化させないようアメリカが相
当動いた。

 外貨がほんとうになくなったところでコロナになって、完全に鎖国して中国と
の関係が絶たれました。北朝鮮の庶民の経済は事実上中国経済の一部になり、市
場では人民元が使われていましたが、それが遮断された。

 そして一昨年から食糧難が深刻化して、去年は餓死者が出るような状況になっ
た。北朝鮮が苦しくなり、特に食糧難が苦しくなった。兵士たちすら食べるもの
がなくなって、軍を維持するためにも食糧が必要だし、幹部たちの食糧も少なく
なってきた。一時期止まったりもしていた。

◆岸田首相、「拉致問題は核・ミサイル問題と別次元で扱う」

 そういうタイミングで岸田首相が、「拉致と核・ミサイルを切り離す」と言っ
た。多分平壌は、岸田首相が最初に国民大集会で言った時、一体どういうことだ
ろうかと思ったと思います。

 その時、「月刊WILL」で、櫻井よしこさんが岸田首相を単独インタビューする
ことになった。事前に私に電話がかかってきて、「拉致問題で何を聞いたらいい
か」と聞かれたので、是非これを聞いてくださいと頼んだ。

 「岸田首相が拉致問題に、『時間的制約』という言葉を付けた。核・ミサイル
にはつけなかった。この真意はなんですかと聞いてください」と頼んだ。そうし
たら岸田首相がまず、「金正恩委員長へのメッセージです」と。そして、「推敲
に推敲を重ねて作りました」と。

 偶然でてきた言葉ではなく、全体の状況を見て、「安倍さんや菅さんが言って
いないことをこのタイミングで言おうと準備してきた」。そして家族の高齢化等
もあって、「拉致問題は核・ミサイル問題と別次元で扱う」と、テープレコーダー
が回っている所で言った。

 平壌に分かってほしいと思って言ったのだと思います。それを私が色々な所で
言いまくった。「これは重大なことだ」と。国民大集会の時の言葉も首相の言葉
ですから重いですが、一昨年の年末には安保三文書が改定されたのです。

 その中で、「現憲法下でも敵基地反撃能力を持っていい」という方針転換や、
「GNPの1%ではなく2%程度まで防衛費を増やす」とか、日本の防衛政策を変
える等の様々な決定がその「安保三文書」に書かれたのですが、一番重たい文書
は国家安保戦略文書で、その中で「拉致問題は時間的制約のある人道問題」と書
かれました。

 私は拉致問題対策本部の幹部に、「人権問題とか人道問題という言葉を使って
いる」と。当時の松野長官はどこでも「人道問題」と言っていましたが、岸田総
理は時々、「人権問題」と言ったり、「人道問題」と言ったりします。「どっち
が正しいんですか」と聞いたら、「国際社会に対して人権問題をアピールする時
は人権問題で、平壌に対してはこちらにとっても人道問題、あなたにとっても人
道問題という枠組みで人道問題と言っている」ということでした。

 どちらにしても、国家安保戦略文書に「時間的制約」という言葉が書き込まれ
た。これは閣議決定されます。だいたい10年くらいかけて改定するものです。
拉致だけに「時間的制約」を付けた。

 安保戦略ですから核・ミサイルのことがたくさん書かれています。「日本にとっ
て危険だ」と書かれています。北朝鮮はすでに日本を射程に入れた核・ミサイル
を実戦配備したということも書いています。そういう中で拉致だけに「時間的制
約」を付けた。

◆3つの状況を見て、「人道支援に反対しない」という方針を昨年決めた

 それを見て私たちは、去年の2月に、「人道支援に反対しない」という運動方
針を決めたのです。岸田政権が初めて、事実上拉致と核を切り離すことを一昨年
の10月に決めたので、去年の2月に、「全被害者が一括帰国で帰ってくるなら」
と「親の世代が存命の内に」という2つの条件を付けて、「人道支援に反対しな
い」というカードを切ったのです。

 これまでは制裁をしてくれと言ってきましたが、制裁の解除とか支援という言
葉を使ったことはありませんでした。我々もタイミングを見たのです。

 生前安倍さんは、よくこう言っていました。「制裁は2回使える。かける時と
おろす時だ」と。人道支援を今止めているのは、直接的な理由は偽の遺骨が出て
きたことに対する制裁なんです。

 2度目の小泉訪朝の時、25万トンの食糧支援を約束して、12万5千トン送
りましたが、北朝鮮から「遺骨と称するもの」が来て、5人の家族も帰りました。
しかし、「遺骨と称するもの」等がでたらめな物だったので、「約束が履行され
ていない」として、残りの食糧支援は止めてしまった。

 だからある面で、我々が要求していた「遺骨」に対する、微々たるものではあ
りますが抗議だったのです。あの時私たちは、「制裁をかけてくれ」と座り込み
をしました。

 しかし、米朝が動かず米朝が先に動くことはないこと、親の世代が次々に亡く
なっていること、北朝鮮が困ってきたという3つの状況を見て、「人道支援に反
対しない」という方針を昨年決めたのです。

(3につづく)



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