救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際セミナー報告5(2023/12/25)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.12.25)

■国際セミナー報告5

■特別講演

金聖●(●王へんに文、キム・ソンミン)氏の報告は、メールニュースの「報告
1」をご参照ください。

◆「全員帰国」か「何人かでもいい」のか

太 永浩 (テ・ヨンホ)元北朝鮮英国駐在公使、韓国国会議員

 本日は、拉致問題に関心のある皆様の前でお話できることを光栄と思います。

 私は13日から日本に滞在していますが、8月のキャンプ・デービッド声明
(日米韓首脳共同声明)で拉致問題にも言及がありました。キャンプ・デービッ
ドプロセスの核心は北朝鮮の核問題に関してどのように対応すべきか、つまり安
保対応が中心でした。しかしキャンプ・デービッドプロセスでは三国が協力して
きました。

 しかし人権問題についてお話しますと、例えば拉致被害者問題とか北朝鮮によ
る強制的抑留問題、韓国軍捕虜問題についても、キャンプ・デービッドで話され
れば嬉しいと思います。しかし、声明には反映されていませんので、北朝鮮とす
ればこれからどのような方向性を持って動くかをお話します。

 今年に入って北朝鮮は、韓国やアメリカに対し外交的な反応を示したことはあ
りません。岸田総理が「条件をつけずに北朝鮮と向き合う」と言ったら、北朝鮮
は、「会えない理由はない」と反応しました。北朝鮮が前政権と同じ政策を続け
るか、あるいは柔軟性を発揮するかが関心事です。北朝鮮は新たなメッセージと
して受け入れるかもしれません。

 金正恩とすれば、キャンプ・デービッドプロセスにどのように対応していくか
が今の関心事です。岸田政権としては拉致問題を中心とすることも考えられます。
日本ならではの問題を強調すれば、アメリカと韓国がこれからどのような対応を
するかという新たな課題が発生します。

 北朝鮮としてはこれまで米朝会談に応じてきましたが、これからはまず岸田総
理、次にアメリカの次期大統領、次に韓国の順になる可能性もあります。そうなっ
た場合、日本の岸田政権がどのような立場をとるのかが極めて重要です。この問
題と関連して、韓国の原則的立場は、「北朝鮮は悪魔だ」ということです。北朝
鮮が抱えている核問題、拉致問題など人権問題を解決するのはいつかというと、
北朝鮮で体制が変わる時にだけ可能です。

 それでは、北朝鮮でこのようなレジーム・チェンジがなされるまでにはかなり
の時間がかかりますので、それまでの間に我々が拉致問題をどのように解決して
いくのかはとても重要な外交交渉の戦術問題となります。

 もし日朝首脳会談が実現するならば、大変細かく、ひとつひとつ行動対行動の
原則のもとで交渉を進めていかなければなりません。

 昨年は金正日と小泉の平壌宣言から20年を迎えた節目の年でした。岸田政権
にとって、平壌宣言20年の観点から、小泉・金正日平壌宣言からどのようにで
きて、その後なぜ進まなかったのかについて再度見直すことが、20年を迎える
この時点で考えることが大変必要です。

 平常宣言は、実現できない大変大きなグランドバーゲンでした。それを通じて
日本が北朝鮮で生存していた5人を取り戻すことができたのは外交的成果でした
が、その後実現できないグランドバーゲンであったために、動力を維持して継続
して拉致問題を解決していくことができませんでした。

 平壌宣言の核心は2つあります。第一は、北朝鮮に対し拉致をしたことを認め
させること、二つ目は生存者を帰国させることです。ところでこの問題で我々が
知らなければならないのは、首脳会談を実現させたのは北朝鮮の外交部ではなく、
国家保衛部だということでした。

 その案が示された時、北朝鮮では2つに意見が分かれました。その当時私は北
朝鮮の外務省にいましたが、外交官たちは「そのようなことは絶対受け入れては
ならない」と言いました。

 反対に国家保衛部はこれだけを乗り越えれば、日本から100億ドルの経済支
援を受けることができる、100億ドルが来るという意見でした。それで金正日
はどうするかとても迷いましたが、1回やってみようと決断し、小泉と会った時
に拉致を認めて謝り、生存者5人を帰国させましたが、100億ドルはきません
でした。

 アメリカや韓国、日本のような自由主義国においては、外交で合意しながらそ
れが守られなかった場合は悪くても懲戒処分されるだけです。北朝鮮では、「こ
れをすればこうなります」と最高指導者に案を出した人たちは、それが実現しな
ければ首が飛びます。昨年は平壌宣言から20年の年でしたが、当時の首脳会談
を実現させた保衛部の人たち皆いなくなりました。この世を去りました。

 今後岸田内閣が交渉をするならばグランドバーゲンではなく、短期間で実現で
きることを細かくサラミのように決めていかなければなりません。現在、北朝鮮
で日朝交渉の首席である宋日昊(ソン・イルホ)は、彼は外交官ではなく保衛部
の人です。彼は自分の先輩たちがどのように平壌宣言を作り、その後首が飛んだ
のかを横で目撃していた人物です。

 以上が、私が申し上げたいことです。そしてこれから日朝交渉をする際、岸田
政権は安倍政権のように「全員帰国」という原則を維持していくのかどうか、あ
るいは柔軟性を発揮するのかどうか、日本で多くの人たちから回答を聞くことが、
私が今回日本に来た目的です。ありがとうございました(拍手)。

■討論

西岡力 今の話の最後の所が重要なことです。岸田政権は、日朝首脳会談が実現
される時に、「全員帰国」という安倍政権の方針を維持するのか、あるいは何人
かの帰国という柔軟性を見せるのか、「そのことについて自分は日本に来て、色
々な人に聞いている」ということでした。

 山谷先生がおられますので、自民党の本部長として一言お話していただけると、
日韓の今後の協力のためになると思います。

◆拉致被害者救出が最大の目標

山谷えり子 平壌宣言の時に、あれは5人を帰国させたのではなく、また戻す
(一時帰国)ということだなと思って、安倍官房副長官が反対されました。北朝
鮮は安倍さんに対して、警戒感というか色々な思いを持っていました。従って、
原則を曲げるということはできないということだったのです。

 それに対して、岸田内閣は、「拉致・核・ミサイル」ではなく、拉致は時間が
限られた人権問題だとして(核・ミサイル問題と)切り離す決意をされました。
そういう柔軟性は持っておられますが、私は拉致問題の本部長ですので、拉致被
害者救出が最大の目標だと思っています。

◆重要な指摘がなされた

櫻井よしこ

 金聖●さんと太永浩さん、本当にありがとうございました。金聖●さんのお話
では、北朝鮮の中で金主愛(キム・ジュエ)さんという人を後継者として、経済
的等さまざまな繕いをしなければならないということで、様々なことが行われて
いる。

 経済が厳しくなり、国民の忠誠心が薄れる中で、日本からの人道支援を受け入
れ、国民をなだめざるを得なくなるという所が注目されました。

 太永浩さんは、日本は柔軟性を発揮するのかどうかという話がありました。非
常に重要で微妙な問題を指摘されました。拉致問題は46年という長い間日本国
民を虜にして、国家の主権が犯された重要な問題です。私はここで失礼せざるを
得ず、申し訳ありません。お二人とも、ありがとうございました(拍手)。

◆「全員帰国」でないと食糧支援のカードは切れない

西岡力

 金聖●さんから、北朝鮮の内部状況を話していただき、大変生活が苦しいとい
うことでした。苦しいということは今まで何回も言ってきましたが、一番の核心
はロシアからどれくらい食糧が入っているかです。今日は新しい事実として、
「今年の5月に10万トンの小麦粉が入った」ということです。それが今北朝鮮
の食糧販売所で売られているということで、写真の提供までありました。これは
世界の中でのスクープだと思います。どこにも出ていません。

 しかし、それがあっても食糧は去年並み、つまり住民への配給再開には至って
いないということです。

 一方何か大きなことをやらないと4代世襲の雰囲気ができないのではないかと
いうことで、人民の中では「配給が再開するのではないか」という期待が高まっ
ている。しかし、実行されていない。この部分は金聖●さんの話で一番新しいこ
とです。

 実は私は昨日の朝2時間くらい太永浩先生と話したのですが、そして太永浩先
生からは、核心をついた質問と状況の説明がありました。キャンプ・デービッド
宣言というのを、岸田総理と、バイデン大統領と、尹錫悦(ユン・ソンニョル)
大統領が出しています。

 3つの文章があるのですが、その中のキャンプ・デービッドプロセスの中に、
「三国の首脳は人権問題に取り組む」とあり、そこに「拉致問題」が入っていま
す。それから韓国軍捕虜の問題、抑留者、これは最近北朝鮮に入って捕まってい
る元牧師のような人たちです。その問題に取り組むと明記されています。

 一方、「北朝鮮の核問題に取り組む。そのために抑止力を高める。拡大抑止を
強める」とも書いています。「ではその2つのバランスをどうとるんですか」と
いう話を、脱北者出身の与党の国会議員として今話されたわけです。

 そして、その状況を北朝鮮から見ると、日米韓が人権問題と核問題で北朝鮮に
圧力をかけると言っている。「そこにくさびを打とうとしている」と解説をして
くださったのです。その場合に日本が最初に来るのではないか。なぜなら拉致を
先にやろうとしているから。

 だからトランプ政権の時の北朝鮮の対応は、先に文在寅(ムン・ジェイン)政
権と会って、トランプ大統領に会って、安倍さんが最後という順番だったが、今
度は岸田さんが先になるのではないか。「その場合に日本は拉致問題を先にする
と言っているけど、キャンプ・デービッドで考えた安全保障問題をどうするんで
すか」という問いかけを我々は今受けました。

 もう一つの重要なことは2002年の9月に何が起きていたのか、ということ
です。2002年の9月、太永浩さんは平壌におられた。北朝鮮の中では外交機
関と工作機関の対立があった。

 太永浩さんは、拉致を認めて生存者5人を返すことに反対した。工作機関の保
衛部は、「それをやれば100億ドル来る」と言って、その決断を金正日に迫っ
た時、金正日は工作機関の意見を取った。しかし100億ドルは来なかったので、
工作機関の人間が粛清された。

 その時の太永浩先生の総括は、「ビッグディール(大きな契約)をしても無理
だ」ということです。「岸田総理が次に平壌に行って会談をする時は、小さな合
意を重ねるべきだ」と。そして、「行動対行動でやるべきだ」と。

 「その延長線上で、柔軟性をどこまで持っているんですか」という質問があり
ました。私も昨日申し上げましたし、山谷先生も櫻井さんも、「柔軟性の部分は
核・ミサイルと拉致問題は切り離すという柔軟性を我々は持っている。但し、人
道問題として扱う。しかし、46年も帰ってこられない状況の中で、何人かの人
たちが帰ってきて、それで人道支援のカードを使ってしまえば、次の人たちは帰っ
てこれなくなるので、<全員>ということは譲れない」という今の我々の意見を
お伝えすることができたので、大変意義があったのではないかと思います。

 全体として、我々は今何をしなければならないかということを横田哲也さんと
話していきたのですが、哲也さんに、今までの議論を聞いてどんなことを感じた
のか、家族会の役員の立場から一言お願いします。

◆情報を北朝鮮への圧力にできないか

横田哲也

 北朝鮮との交渉には危ないところがあって、どれが正しいかは何とも言えない
のですが、我々はこれまで様々なことを考えてきた中で、「全員帰国」というこ
とこそが、取りこぼすことなく取り戻すことが結果的に正しいことだと思い、向
こうに投げかけているところです。

 日本には、「飴(あめ)と鞭(むち)」という言葉がありますが、人道支援が
飴に当たる方法ですが、一方鞭もちらつかせないと効果がないのではないかとも
思っています。もし日本政府と北朝鮮政府が交渉の場で会うのであれば、今の時
期に鞭をちらつかせるべきじゃないかもしれません。しかし、後ろに拳(こぶし)
を握っている姿をみせないと、北朝鮮は当分折れない。圧力に対してのみ北朝鮮
という国は折れる国であって、各党の先生方も政府を後押ししてほしいと思いま
す。

 今日の金聖●さんの話で、「『拉致被害者全員の帰国を前提とした、それに相
応する人道的支援』の規模と環境が整えば、北朝鮮の反応は過去と異なる可能性
があると判断される」というのがありました。これは飴と鞭でもあり、大変ため
になります。

 また飴だけでは折れてこない。折れるにしても時間が長くかかるのはだめなの
で、親世代の家族が存命の内に結果を出すのであれば、どうしても圧力が必要だ
ろうと考える時に、「では何ができるのか」と考えています。

 家族会の中で議論をして決めたわけではなく、私個人の考えですが、韓国に
「対北朝鮮ビラ禁止法」というのがありました。文在寅(ムン・ジェイン)政権
の時に、風船ビラ禁止が決まりました。しかし、憲法裁判所が、「表現の自由を
侵害する」としました。今の尹錫悦大統領時代は、民間レベルですが、北朝鮮に
対して情報を投げ入れることができるようになっています。

 ただ、いきなりミサイルを撃ってくる可能性がありますので、そうならないよ
うに、ここが「飴と鞭」で、「早急に拉致問題を解決しなければ、あなた方が一
番嫌う情報をバルーンに乗せて飛ばしますよ」ということを、韓国政府も日本政
府も北朝鮮に投げかけることはできないかと考えています。

 北朝鮮にとって何が一番嫌なのかを考えると、自由主義社会の開かれた情報で、
こんな正しいことがあるんだよという情報です。もっと嫌いなことは北朝鮮の血
筋、「白頭血統」の世襲を強調しているとのことでしたが、実は「白頭血統」と
いうのは嘘ですよね。金正恩の母親は在日朝鮮人ですから、「白頭血統」ではな
いですよね。そういう情報をバルーンで飛ばしますよと外交交渉を行って、それ
でも何もしなければ、本当にやればいいと思います。

 様々な方法はある筈です。日本国内でも朝鮮総連に圧力をかけるとか。日本外
交はスマート過ぎるんです。しかしそういうことも考えないと、北朝鮮は動かな
いのです(拍手)。

◆「絶対に取り戻す」という姿勢がなければ

横田哲也

 拉致被害者救出の方途を考えるのであれば、北朝鮮と交渉するのは政府で間違
いないのですが、「何もかも政府はだめだ」と政府のせいにするのはよくないと
思います。国民が、「絶対取り戻す」との覚悟をもたないと、やはりだめだと思
います。主権国家の主権が侵害され、国民の人権、人命が継続的に脅かされてい
ることに対して、怒りを持たなければだめだと思います。日本国中の怒りを持っ
て交渉することがないと、だめなんだろうなと思います。

 イスラエルの国民がハマスに拉致され、イスラエルがジュネーブの国連の前で、
「拉致被害者を返せ」と書かれた、ものすごく大きな看板を立てました。雑誌に
も載っています。日本ではそういう姿はいままでにない。

 イスラエルはまず軍隊を出動させて、「絶対に取り戻す」という姿勢があるの
で、取り戻せるのだと思っています。例えば姉が拉致され、これを「絶対に取り
戻す」という姿勢があることが解決につながると思っています。

 最後に、今回松野官房長官が林官房長官に代わりました。林官房長官は外務大
臣をしていましたので、各国に拉致問題について話されたと思いますが、今回は
拉致問題担当大臣tpなり、先頭で走らなければならない方だと思いますので、
継続的なアプローチをはかっていただきたいと思っています(拍手)。

西岡 お忙しいところ山谷先生を初め、多くの先生方が最後まで付き合っていた
だき、感謝いたします。本日はありがとうございました(拍手)。

以上

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■岸田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
https://www.kantei.go.jp/jp/iken.html

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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