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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

訪米報告3(2023/05/19)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2023.05.19)

■訪米報告3

◆94年の第一次核危機後の米朝協議

西岡 今二人から説明をしてもらいましたが、それを踏まえて、今拉致問題が全
体でどうなっていて、どうするかということについてお話します。

 配布資料に国家基本問題研究所の「JINF1037」の「『人道支援てこに拉致被害
者救出』方針を米は理解」というコピーがありますが、これは訪米報告を帰りの
飛行機の中で書いたものです。拓也さんも言われましたが、今回の目的は、私た
ちの運動方針をアメリカの政府、議会、専門家に説明し、理解してもらうことで
した。その目的は達成できたのではないかと思っています。

 島田さんから2019年のハノイでの米朝首脳会談についての話がありました
が、その時は安倍総理の時で、核問題と拉致問題を一緒に解決するということで
した。

 それは2016年、17年に北朝鮮が核実験を3回やり、弾道ミサイルを40
発撃って、米朝で軍事衝突が起きるかもと言われるくらい緊張が高まっていまし
た。その結果として米朝首脳会談があったわけです。

 そのプロセスの中で拉致問題が置いていかれないようにということでした。と
いうのは過去に似たような経験があったわけです。

 1993年、94年に第一次核危機が起きた。当時のクリントン政権も北朝鮮
の寧辺を爆撃すると言っていました。そこまで緊張が高まった結果、米朝で話し
合いが始まった。

 最終的にカーター氏が訪朝して、ジュネーブで交渉が始まったのですが、彼ら
は最終的に、「核を凍結する。だから爆撃しないでくれ」と言った。その見返り
に、これも茶番ですが、寧辺に5000キロワットの原子炉があるのですが、彼
らは、「この原子炉が止まったら電気が止まるので電気をくれ」と言った。送電
線も発電機もないのにです。プルトニウムを造るためだけの原子炉だったのです。

 それを凍結したからといって電気がなくなることはないのだけれど、向こうの
言うことに合わせて、核爆発物質が作りにくい原子力発電所を作ってやることに
なったのです。

 費用が45億ドルくらいかかる。それを韓国が30億ドル、日本が5億ドル、
EU等が5億ドルと割り振られたのです。アメリカは話をまとめるだけで出さない。
当時の村山政権はアメリカの要求を受け入れました。しかし、その時拉致は一切
条件に入っていなかった。

 核問題でアメリカが軍事攻撃のカードを切った時、北朝鮮は話し合いに応じて
きた。そして核凍結すると言った。見返りに請求書が来た。日本は払うことを約
束し、実際5億ドル払いました。しかし、払う条件に拉致問題は入っていなかっ
た。

◆北朝鮮は、「見返りを寄越せ」と言い、うそをつく

 それは世論がまだ全くなくて拉致があるかどうか分からないというのが日本の
状況だったのですが、その状況を見ていて私はこのままでは被害者が帰ってこな
いと思って、1991年に「拉致がある」という本を書いたのです。

 北朝鮮はただで原子力発電所を作ってもらうことになったのですが、それでは
足りないと、原子力発電所ができるまでの間の電気をどうしてくれるのだと言い
出した。そもそも電気は作っていなかったのに、アメリカは枠組みが壊れるのが
怖いから、「分かった」と言って、火力発電所で使う重油を出すことにした。1
年で50万トン。

 そういうことでやっと枠組みができた。しかし、北朝鮮は核開発をやめるとは
言わないで、「凍結」となった。それで核保有国にはならなかったのですが、実
は北朝鮮はパキスタンから濃縮ウラニウムを貰って核開発を続けていた。

 軍事的圧力をかけると話し合いが始まるんです。しかし、見返りを寄越せと言
い、そしてうそをつく。これが1994年の教訓です。その後小泉訪朝等があり
ましたが今日は省略します。

◆トランプ大統領の時の米朝協議では、拉致と核と両方解決を求めた

 だからトランプ大統領が北朝鮮と核問題で話し合いをすることになった時に、
日本の課題としては、絶対請求書が来るから、日本はアメリカに対し、拉致と核
と両方解決するように要求することです。

 今我々は拉致と核を切り離してと言っていますが、最悪のケースは核だけで拉
致が置いていかれることです。安倍さんはそうならないように、トランプ大統領
に、一緒に圧力をかけようと言った。軍事的圧力についても、日本は安保法制が
できたので、2017年に北朝鮮がアメリカまで届くミサイルを、通常軌道で2
回演習をしました。

 その時当時の安倍政権の小野寺防衛大臣は国会で、安保法制があるので日本が
イージス艦でグアムを狙ったミサイルを落とすことができるという答弁をしまし
た。

 一定の貢献をしたこともあって、トランプ大統領に繰り返し拉致問題の重要性
を打ち込むことができていたので、トランプ大統領はハノイで拉致を出しました。
その前のシンガポールでの首脳会談でも出しました。

 これも私たちが繰り返し訪米していたので、2019年のハノイでの米朝会談
の後、春に訪米しました。その時ホワイトハウスで状況を聞くことができました。
全体ではなく、拉致に関わることですが。

 ホワイトハウスが教えてくれたのは、「トランプ大統領はシンガポールとハノ
イで2回会談があった中で3回拉致問題を出しました。シンガポールでは金正恩
がほかの話題に移ってごまかした。ハノイでも1回目の会談ではごまかした」。

 そこでトランプ大統領は少人数の夕食会でもう一度出した。その時金金正恩が
「意味のある回答をした」と聞きました。「その具体的な言葉は外交問題だから
あなたたちには教えられないが、しかし安倍総理には全部教えてあります」と。

 当時安倍さんは2回の米朝会談もあったので我々を官邸に呼び、「今こうなっ
ている。トランプ大統領からこういう説明を受けた」と、その度に報告してくれ
ました。

◆核をやめても経済支援は日本に

 ハノイでの会談の後安倍さんが言っていたのは、「トランプ大統領がただ拉致
を解決しろと言ったのではなくて、日本の総理大臣である安倍晋三のメッセージ
を伝えてくれたのだ」と言っていました。

 トランプ大統領は金正恩に、「核をやめたら豊かな国になれるのですよ」と。
今島田さんの説明でもありましたが、ハノイを見せて、アメリカと仲良くなった
らこんな豊かな国になれるのだということを示すためにハノイを選んだというこ
とでしたが、トランプ大統領は分かりやすいことか好きだから、動画を作って、
このまま行ったら北朝鮮はこんな暗い国になるが、核をやめたらこんな明るい国
になるということを見せたのです。

 しかしアメリカは、「経済支援はしませんよ」と。アメリカの予算は議会が決
めるのですが、核をやめたからといって独裁国家にアメリカが経済協力をすると
いう枠組みはないわけです。

 制裁を緩めたり解除したりすることはできる。核をやめたら軍事攻撃をしない
ということもできる。しかし、それだけでは豊かな国にはなれない。「シンゾー
(安倍晋三)がお金を出すと言っている」と。

◆日朝国交正常化になったら100億ドル

 アメリカから日本に、「国交正常化になったら一体いくらお金を出せるのか」
という問い合わせが来たそうです。エバースタットさんの話を島田さんが話しま
したが、今北朝鮮の外務大臣をやっている崔善姫(チェ・ソンヒ)という女性が
います。

 ハノイでの会談の時は外務副大臣だった人で、英語ができて対米外交をやる人
ですが、その人が2011年にセカンド・トラックに出てきて、「日朝国交正常
化になったら100億ドル貰えると言っていましたよ」と言っていた、と。 
「100億ドルを目標にしているのだから人道支援では動かないのではないです
か」とエバースタットさんは言っていました。

 それについて私がある答えをしたのですが、ハノイでは100億ドルくらいの
多額な経済協力を日本ができる準備があるということがトランプ大統領の頭に入っ
ていたから、「核と拉致を一緒に解決しよう」という提案をトランプ大統領がし
て、それに対して金正恩が公的に反論した。

 当時は核と拉致の分離ではなく、一緒にやる、拉致が置いていかれないように
するというのが第一目標だったのです。その後、核自体が動かなくなってしまっ
たので、一緒に動かすという戦略は止まってしまった。

◆その後安倍総理が辞職、バイデン政権に

 あの時金正恩が、アメリカの情報収集能力やトランプ大統領の行動を見間違わ
ないで、寧辺とその近くに濃縮ウラニウムを作る施設があったのですが、寧辺と
言った場合にどこまでが寧辺なのかが多分議論になったのだと思います。

 ともかく彼はアメリカを見くびって、ここでアメリカが動いてくるのではない
かと思って、トランプを怒らせて帰してしまった結果、安倍訪朝はなくなったの
です。

 金正恩は1994年の時と同じように圧力をかけたら話し合いをするが、合意
をしたらお金をくれと言う。そのプロセスなら日本のお金が必要になる。199
4年の時の村山政権は日本の条件を何も出さないでお金を出しましたが、安倍政
権はそうじゃない。拉致が動かなければ、「絶対お金は出しません」と言う。も
しもアメリカと北朝鮮が核で一定程度ハノイで合意ができていれば、「だからあ
なたはシンゾーに会ってその話をしなさい」ということになっていたのです。

 しかし、その後安倍さんが病気で辞め、トランプ大統領が落選し、この枠組み
が中座し米朝で話し合いが進まない。そしてアメリカは民主党のバイデン政権に
なった。そういう状況がこの4年間に起きたわけです。

 バイデン政権にも拉致問題の重要性をどうやって打ち込むのかというのが菅政
権の課題だったわけです。菅さんは一昨年の4月に訪米しました。バイデン大統
領と対面で会ったわけです。その時実は、ブリンケン国務副長官とサリバン安保
補佐官、今回我々が会ったキャンベルさんはブルーリボンバッジを付けて菅さん
の前に現れた。

◆バイデン政権も「拉致問題の重要性を理解」

 今回は、キャンベルさんはバッジを付けてこなかったのですが、渡して、「付
けてくれ」と言ったら、その場で付けてくれました。国務省に行ったら面会する
人はもう付けてくれていたのです。国務省の中では、ブルーリボンバッジに何の
意味があるのかを我々が説明する必要がなく、国務省は買っていたのです。

 日本の政治家と会う時に、これを付けていた方が日本人は喜ぶ、それは拉致問
題が日本にとって重要課題だからだと分かっているのです。菅さんが一昨年それ
を見て帰ってきて、その直後の「産経新聞」のインタビューで、その話を自分か
ら紹介して、「バイデン政権は菅政権の研究をよくやっている」と言いました。

 菅政権は、最重要課題が拉致だということをアメリカに発信しろと総理が言っ
ていたのです。それを聞いた国務省は、菅さんをもてなすためにはこれを付けて
いけばいいということになったのです。

 残念ながら日本のマスコミは、菅総理の訪米の時は随行記者もいたのですが、
その意味があまり分かっていなくて、大きく報道しなかった。私は写真だけ見て
大騒ぎして、「これはすごい」と言っていたのですが。

 バイデン政権になっても、拉致問題の重要性が発信されていたのですが、バイ
デン政権には「同盟国重視」という方針があって、今中国の脅威に備えるために
は日米同盟で対処するしかない、と。

 菅さんの訪米の時にアメリカが一番言いたかったのは、「台湾海峡の安定」と
いう言葉を共同声明に書くことでした。1969年に書いて、それ以降なかった
のです。沖縄返還の前に、台湾海峡の安定が重要ということを共同声明に書いて、
沖縄は返しても沖縄の米軍基地は台湾が有事になった時に使えるという保証を当
時は取りかったのです。

 今回また台湾有事が近づいている時日本が何をするのかということを取りたかっ
たのですが、菅さんは、「拉致が重要だということは分かってくださいね」とい
うメッセージを発信したので、こちらが欲しい物を出すことができたのです。1
994年の核危機の時の村山政権の時に何も出さなかったのと比べて大きな違い
です。

 そして岸田政権になってバイデンさんが東京に来た時、岸田さんの配慮で家族
会との面会が実現したのです。バイデン政権は、「トランプがやったことは全部
否定する」のが基本方針です。

 トランプ大統領が2度金正恩に会っているわけですが、拉致問題だけは引き継
いでバイデン大統領も会ってくれました。バイデン政権にも、「日本にとって拉
致問題が重要だ。日本政府は拉致問題を重視している」というメッセージが通じ
ている。

 バイデン大統領と家族会との面会の時は私も驚いたのですが、あの時はクワッ
ド(Quad)の時、日米首脳会談を兼ねてバイデン大統領が東京に来たのです。ク
ワッドというのは、インド、オーストラリア、アメリカと日本の4か国の枠組み
で、安倍総理が作ったものです。中国をにらんだ自由民主陣営の枠組みです。

 日曜日に到着して、月曜日だけ日米で使えた、火曜日はクワッドだった。月曜
日にバイデン大統領は宮中を訪問して天皇陛下と会われた。その後日米首脳会談
で、午後の日程は家族会と会っただけでした。

 もちろん日本政府が、「拉致問題が重要でトランプ大統領が会ってくれたよう
にバイデン大統領にも会ってほしい」と強く言ってくれたのでしょうし、アメリ
カから見ると、日本人の最大関心事が拉致であるならば大統領が会いますという
ことが日米関係の中でできている。それが岸田総理の姿勢だと思っています。

◆実際に核攻撃をする演習をしている北朝鮮

 そういうことがあった中で、我々は今、逆の切り離しを考えているわけです。
トランプ大統領の時は、「拉致と核をいっしょにやってください」ということで
したが核が動かなかったので止まっています。

 今米朝が全く動かない。北朝鮮は核実験はしませんが、ミサイルをどんどん撃っ
ている。去年70発以上撃っています。今年に入って30発撃ちました。今年の
特徴は、軍が演習をしていることです。

 北朝鮮のミサイル発射には2種類あって、まだ実戦配備されていない時は試射
なんです。主体は国防科学院で軍ではない。完成したら軍に納品して、実戦配備
して演習をやります。今年はアメリカまで届くミサイルの演習をしました。

 それから核運用部隊の演習だと言って、短距離ミサイル等を撃ちました。実際
に核攻撃をする演習をしているのです。そう発表しています。開発の段階ではな
いのです。まだ開発段階なのは、固体燃料の「火星18」です。この間Jアラー
トが鳴ったやつですが、これは試射でした。それ以外は、今年に入ってからほと
んど演習です。それも核運用部隊が演習していると彼らは発表しています。

 緊張がものすごく高まっています。しかし、今回ワシントンに行って、「ああ
やっぱりそうだったのか」と思ったのですが、アメリカの中で北朝鮮問題の関心
がものすごく低い。

 94年の核危機の時はクリントン政権が爆撃を考えていました。2016年1
7年の危機の時は、トランプ大統領が、金正恩暗殺作戦も含めて、軍事攻撃の圧
力を高めていました。

 ミサイルだけで言うと、その時と同じかもっと緊張を高めてもいいはずですが、
ほとんど関心がない。ワシントンの関心はまず中国、そしてウクライナです。た
だ米軍は北朝鮮の能力を計ってそれに対抗するための演習をしています。

 そして韓国は、北朝鮮が核攻撃の演習をしているわけですから、危機感を強め
ています。独自核武装を言ってみたり、核の傘を確認するために新しい協議体を
アメリカに行って作ろうという話をしています。

 しかしアメリカに関心がないので、そして北朝鮮が核実験だけはしないという
ことが理由の一つだと思いますが、近い将来米朝が核・ミサイルで話し合う見通
しはないのです。

(4につづく)

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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 岸田文雄殿

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