救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

令和5年 拉致被害者救出への展望3(2023/02/03)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.02.03)

■令和5年 拉致被害者救出への展望3

◆金正恩氏が人道支援を求める瞬間がくるか

 拉致問題と核・ミサイル問題が切り離されて、拉致被害者が帰ってくることに
対して食糧支援や医療支援をするという方程式が成り立つためには、北朝鮮が本
当に困らなければならない。

 少し前まで、北朝鮮から伝わってくる話は、「人道支援はあまり考えていない。
ほしいのは100億ドルだ。約束したのだから早く払え」でした。現金がほしい、
と。もちろん現金では渡さなくて、プロジェクトベースで港を造るとか、ダムを
造るとか鉄道を造るということに対して必要な支援をするという形ですが、北朝
鮮にとっては港もダムも鉄道も滅茶苦茶ですから大変ほしいものではあるわけで
す。

 しかし政府開発援助(ODA)は核・ミサイル問題と切り離すことはできないの
です。核・ミサイル問題はアメリカと北朝鮮が交渉するのです。米朝が進まない
時に日朝が先に進むということは、なかなか難しい。北朝鮮が100億ドルを貰
いたいと思っているのならそれは難しいという結論だったのですが、当面の人道
支援がほしいと思う瞬間に、日本と先に交渉するという局面が現われるというこ
とです。

 岸田総理がこういうメッセージを発しました。平壌に多分伝わりました。しか
しそれがどういう風に動いていくかというのが今年の課題なんです。そこに、ア
メリカがどう出てくるか、中国が援助しているのか、北朝鮮の内部が今どういう
状態なのか、ロシアとの関係は今どうなっているのか、韓国を北朝鮮はどう見て
南北関係はどうなっていくのか、こういう様々な変数の中で、日本から当面の、
自分たちの政権を維持する最低限の米と薬を金正恩氏が思う瞬間がくるのかこな
いのか。

 そして早紀江さんや有本のお父さんがいつまで元気でいられるのか。さまざま
な変数を含む連立方程式の中で、解決の瞬間を探さなければならない。だから、
「あらゆるチャンスを逃さず」と岸田総理が言っているのはその通りだと思いま
す。

◆2016年、17年に米朝が軍事的に緊張、2018年、19年に首脳会談へ

 では今朝鮮半島はどういう状態になっているのか。金正恩氏が日本からの人道
支援がほしいと思う瞬間があり得るのかという話をしたいと思います。

 去年の11月段階で「WILL」に書いた中で、過去を少し振り返ったのですが、
実は2018年から19年にチャンスが来ていたんです。ここでも申し上げまし
たが、トランプ大統領が金正恩委員長と米朝首脳会談をシンガポールで1回、ハ
ノイで1回やりました。その時は拉致と核・ミサイルを切り離して拉致だけ先に
進める解決ではなく、核問題が解決する時一緒に拉致問題も解決するというチャ
ンスだった。

 その時起きたことを今振り返ると、今の状況がどうなっているかが分かるとい
うことを書いたのですが、なぜ2018年から19年にかけて米朝首脳会談が実
現したのか。その直接の理由は2016年、17年に緊張が高まったことです。
トランプ大統領が金正恩委員長との間で戦争直前まで緊張が高まりました。

 それは2016年、17年に北朝鮮が40発の弾道ミサイルを撃ち、3回核実
験をしたからです。特に2017年の8月の終わりと9月の初めに、火星12と
言われる弾道ミサイルが北海道を越えたのです。あの時アラームが鳴りましたよ
ね。あれは通常軌道でした。

 北朝鮮のミサイル発射は2種類あります。実験発射、これを試射と呼んでいま
すが、それと演習。試射は軍ではなく国防科学院がやります。完成して軍に渡す
と演習になります。火星12は演習でした。火星12はグアムまで届きます。グ
アムの米軍基地を叩くことができる力を持った発射を、これ見よがしに金正恩氏
が見せた。

 そして核実験をやりました。その核実験は水爆級の威力がありました。160
キロトンの爆発力がありました。これは地震計で測れるのです。広島に落ちた原
爆は16キロトンでしたが、その10倍の威力のある核を持った。

 そしてグアムまで届くミサイルの演習をやった。次にアメリカまで届く弾道ミ
サイルをロフテッド軌道て撃った。これままだ実験発射です。アメリカとしては、
極東の小さな独裁者がいつでもアメリカを核攻撃できる状態であるのは危ない。
そこでトランプ大統領は強い軍事圧力をかけました。

 その時アメリカのCIA長官で、その後国務長官になったポンペオさんが手記を
出しました。ニュースになりましたが、緊張が高まった後、2018年に米朝首
脳会談がありましたが、その実現のためにポンペオさんは、CIA長官として平壌
を訪問して金正恩に会ったのです。

 その時金正恩が、にやにやしながら「あんたは俺を殺そうとしただろう」と言っ
た。ポンペオは、想定問答集にはそれがなかったのですが、「いや今でも殺そう
としています」と返事した。

 実際に「斬首作戦」という作戦があったのです。首を落とす作戦です。その後
明らかになったことですが、CIAは北朝鮮の金正恩のボディーガード部隊にスパ
イを送り、買収し、金正恩の別荘、特閣と言いますが、その警備を担当している
幹部のスマホに位置を知らせる装置をお金を払って入れて、スイッチを入れると
「金正恩がここにいます」という情報が衛星経由でアメリカは分かる。

 そういうスマホを護衛司令部という金正恩のボディーガード部隊に200台入
れたのです。それで護衛司令官が処刑された。そういう大事件があったのです。
日本ではあまり報道されていませんが事実です。そういうことをやっている親玉
が自分の前に来たから、金正恩が、「あんたは俺を殺そうとしただろう」と言っ
たのです。

 そういうやり取りがありながら首脳会談が実現した。その時に安倍さんは、ト
ランプ大統領と話をして、「核問題と拉致問題を一緒に解決せよ」と言わせたの
です。「アメリカは北朝鮮が核開発を止めても、制裁は解除するけれども大規模
な支援はしないでしょう」と。核を止めたといっても、あのような全体主義国家
にアメリカは政府開発援助を出せないんです。これは民主党政権でも同じです。

◆金正恩の嘘でハノイでの首脳会談は決裂

 「日本は韓国にやったのと同じような大規模な支援をする準備がある」と安倍
さんはトランプ大統領に言っているわけです。「但しその条件は拉致だ」と。ト
ランプ大統領が、「金正恩委員長の核・ミサイル開発を、軍事的手段を使ってで
も止めさせる」と言った時、「日本は全面的にそれを支持する」と言いました。

 そして安保法制ができていたので、「日本のイージス艦を使ってグアムに対し
北朝鮮のミサイル攻撃がされた時、日本がそのミサイルを撃ち落とすことができ
る」という国会答弁を安倍政権の小野寺防衛大臣が2017年秋にしています。

 日本への攻撃でなくても、「存立危機事態」に認定すれば自衛隊は武力行使で
きるという安保法制ができていたからです。そこまで一緒に戦うという姿勢を見
せたので本当に日本は同盟国だということになったから、トランプ大統領は金正
恩と会った時、シンガポールとハノイでの2回の首脳会談で拉致問題の解決を3
回訴えました。

 これは私たちが2019年5月にワシントンに行き、ホワイトハウスに行った
時、ホワイトハウスの高官が教えてくれたことです。シンガポールで1対1の会
談の時、金正恩は別の話題に振って拉致問題にまともに答えなかった。

 ハノイでも最初の1対1の会談、首脳会談ではこの1対1の会談が一番大事な
のですが、その貴重な時間をトランプ大統領は拉致に使ってくれました。しかし、
金正恩委員長はそこでも別の話題に振って答えなかった。その後の少人数の夕食
会で、もう1回トランプ大統領が拉致を出した。「その時意味のある答えをしま
した」とホワイトハウスの高官が私たちに教えてくれました。

 しかし、「具体的な言葉はいくら家族でも教えられません。シンゾー・アベに
は全部伝えています」と。安倍さんはあの時トランプ大統領に直接電話して、そ
の話を聞いていましたが、米朝会談があるとその直後に家族会・救う会を呼んで、
「今こうなっている」という説明を総理から聞いていました。

 安倍さんが言ったのは、「トランプ大統領が一般論で拉致を解決してください
と言ったのではない。安倍晋三の拉致に関するメッセージをトランプ大統領が取
り次いでくれたのだ」と言っていました。

 これを総合すると、トランプ大統領は金正恩委員長に、「核を止めたらあなた
の国は豊かになれる。明るい未来が待っている。しかし俺は金は出さないよ。で
もシンゾーが出すと言っている。シンゾーがお金を出す条件は拉致問題なんだ。
シンゾーは口を開いたら拉致のことしか言わないんだ」というような説得をして、
金正恩委員長が「意味のある答え」をした。多分「安倍総理に会ってもいい」と
言った可能性が高い。

 強い圧力がかかった時北朝鮮は動くわけですが、その時金正恩委員長は、核を
止めて100億ドルを貰う、あるいは止めたふりをして100億ドルを貰おう、
と思ったのでしょう。

 残念なことに、ハノイでの会談は決裂してしまいます。合意ができていたら多
分安倍さんは平壌に行かれたと思います。今回のポンペオさんとの席の中でも、
「決裂した理由は金正恩委員長が寧辺の核施設だけを廃棄することの見返りに、
ほとんどすべての制裁を解除しろと言った。だから釣り合いがとれなかったのだ」
と。これはポンペオさんの手記にも書いてあるそうです。

 つまり、トランプ政権は、「まずこれ以上核を作るな」と要求した。「持って
いる核を廃棄するのは後でいい。核工場は全部廃棄しなさい」と。核工場は2つ
あって、原子炉と濃縮ウラニウム工場がある寧辺のプルトニウム工場と、地下に
あると思われる濃縮ウラニウム工場です。寧辺は地上に工場があり、アメリカが
衛星で見えるところにあります。

 そして、「これしかありません。寧辺だけで核を作っています」と金正恩委員
長が言ったのですが、濃縮ウラニウムは地下でも作れるんです。原子炉は必要な
いんです。遠心分離機を回し続ければ、どんどん濃度が高くなって核爆発物質が
作れるんです。北朝鮮には豊富な天然ウラニウムがあります。濃縮装置さえあれ
ば、広島型の濃縮ウラニウムを原料とする核が作れる。作っているんです。それ
は寧辺以外の所にもある。

 金正恩委員長はアメリカはそれは知らない、ばれてないと思い、「これがすべ
てです」と言った。そこえトランプ大統領は、「あなたはまだ準備ができていま
せんね」と言って、ランチの約束もキャンセルして帰ってしまった。

◆日朝首脳会談を先に選んでもバイデン政権は理解

 その後安倍総理は、「条件なしで日朝首脳会談をしたい」と言い始めた。それ
までは「拉致問題解決に資するなら首脳会談をする」と言っていたのです。もう
首脳会談をすれば拉致問題が議題になって、金正恩委員長はトランプ大統領との
やり取りの中で、「拉致を返して100億ドルほしい」と言ったから、「話はつ
いているのだから条件なしだ」と安倍さんは言った。それが菅さん、岸田さんに
受け継がれた。

 強い圧力がかかった時だけ北朝鮮が動くということを考えると、では今どうい
う状況か。北朝鮮は実は去年1年で70発以上の弾道ミサイルを撃った。201
6年、17年は2年間で40発だったのです。地対空ミサイルを入れると90発
くらい撃っている。その時よりも高まっています。ただ核実験はしていない。

 特に11月18日には、アメリカまで届く火星12という巨大なICBMの発射実
験をして、それが青森沖に落ちました。1時間くらい飛んでいました。一度宇宙
に出て戻ってきた。多分実験は成功した。北朝鮮はものすごく緊張を高めていま
す。

 それで私は去年の11月時点で、「もう一度米朝の軍事的緊張が高まる可能性
が出てきた」と書きました。その場合、「バイデン政権がトランプ政権と同じよ
うに、緊張の後に始まる米朝会談で拉致と核を一緒に取り上げてもらおう」と。

 また小泉政権の時も軍事的緊張がありました。ブッシュ政権が「悪の枢軸」と
いう演説をして、金正日がやっていた核開発を止めようとしたことが背景にあっ
た。北朝鮮が軍事的緊張が高まった時に、それを避ける手段として米朝首脳会談
をしたこともあるし、日朝首脳会談をしたこともあるわけです。

 日朝首脳会談を先に選んだのなら、人道支援と核問題を切り離して、被害者を
返してくれるなら人道支援をしますよという準備をして岸田さんに平壌に行って
もらいたい。そのことをバイデン政権にも理解をしてもらっているのです。そう
いうことを「WILL」に書きました。

(4につづく)




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