救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

韓国新政権と拉致被害者救出?東京連続集会1(2022/07/04)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2022.07.04)

 令和4年7月1日、救う会主催の東京連続集会119が開催されました。今回
のテーマは、「韓国新政権と拉致被害者救出」です。

 今年5月に韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が発足しました。5年ぶ
りの政権交代でしたが、前左派政権の対北融和、親中路線から転換するのかどう
か。日米韓の関係強化は進むのか。東アジアの安全保障環境が極めて厳しい中、
拉致被害者をどう救出するかについて、久保田るり子國學院大學客員教授で元
「産経新聞」ソウル特派員に報告していただき、その後西岡力救う会会長と共に
議論しました。家族会の横田拓也代表、横田哲也事務局次長も参加しました。

 概要は以下の通り。

■韓国新政権と拉致被害者救出?東京連続集会1

◆「8人死亡は嘘」等重大な新聞記事について

西岡力(救う会会長)

 皆さん、こんばんは。3月に大統領選挙があり、5月10日に尹錫悦(ユン・
ソンニョル)新政権が発足しました。文在寅(ムン・ジェイン)政権の5年間は、
北朝鮮に甘い政策がとられていました。尹政権がどのような政策をとるのか、そ
れが拉致問題にどういう影響を与えるのかについて久保田るり子さんに報告して
いただきます。

 今も「産経新聞」に月回くらい大きなコラムを書いておられて、そこでも尹政
権について書いておられました。今日はまず、拉致そのものについて新しい報道
があったので、その解説をしてから本題に入りたいと思います。

 お手元に新聞記事のコピーがあります。「世界日報」という新聞が6月27日
に報道した記事「日本人拉致被害者とその子供 全員が平壌市内に居住」です。
私はこの記事が出たのを見てすごく驚きました。

◆北朝鮮の工作機関に26年間いたキム・グクソンという人

 このキム・グクソンという人が去年の秋くらいから話し始めたことは知ってい
て、この人はたくさんのことを知っているが、日本人拉致についてはまだ話をし
ていなかった。それ以外の北朝鮮の韓国に対する工作について大変詳しい人です。

 最初はBBCというイギリスのテレビ局に顔を隠して出たのですが、「韓国の大
統領府に北朝鮮のスパイが過去に入っていた」という障壁的な証言をして、韓国
政府は、「そんなことはなかった」と否定したのですが、彼は、「そのスパイは
エアコンの技術者だった」と。

 「金泳山政権の時にエアコンの技術者として入り込んだ」、「青瓦台の見取り
図を全部北朝鮮は持っている」と。尹政権は青瓦台から大統領府を引っ越しまし
たが。「有事になったらエアコンの噴出口から毒ガスを出してみんな殺せた」と
言っていました。

 その人の履歴を見ると、金策(キムチェク)工業総合大学卒業後、金正日政治
軍事大学に入っています。これは工作員養成学校です。金賢姫(キム・ヒョンヒ)
も安明進(アン・ミョンジン)もここを出ています。

 正確に言うと作戦部に所属し、戦闘工作員を養成する所で、安明進さんの時代
は6年教育でしたが、卒業するとテロをやったり工作員の案内人をやったりしま
す。その中で選ばれたエリートが招待所に行って、1対1で工作員になる教育を
受けます。とにかくそこを出ています。

 その後、対外連絡部、作戦部、35号室に勤務しています。これは僕たちから
すると、「すごい人だ」と思います。彼がある所で話しているのを見ると、対外
連絡部に6年いたと言っています。それから作戦部に10年、この時小泉訪朝が
ありました。その後35号室、昔は調査部と言いましたが、ここに5年いた。

 そして金正恩が出てきて、工作機関が再編成されて、軍の偵察局と作戦部・3
5号室が合併され、偵察総局になるのですが、そこに5年いた、と。全部にいた
じゃないかと驚きます。社会安全部、対外連絡部出身の工作員もいるし、作戦部
出身も、35号室出身もいます。私はそれぞれ韓国で会ったことがありますが、
3つにいたという人はいなかったので、逆に少し疑ったのです。こういうことが
あるだろうか、と。

 情報機関同士は仲が悪いんです。自分たちが一番だと思っていますから。なの
に移ることがあるだろうかと思って去年の秋以降取材したのですが、「彼は工作
員ではなくて、工作の戦略を練る幹部だ。そういう人の場合は移ることがあり得
る」という複数の元工作機関関係者が言っていて、彼らもキム・グクソンが話し
たのを見て、「この人は本物だ」と言っていたので、余計に関心が高まったので
す。

◆張成沢を殺す労働党政権は許せないと亡命

 彼がBBC放送に出た後、次に韓国の週刊誌「時事ジャーナル」にインタビュー
が出て、その後韓国保守のユーチューブ放送「ペン&マイク」で1時間くらいの
長いインタビューを受けています。それを私も繰り返し聴きました。

 そこには韓国に対しどのような工作戦略をたてたか、そしてあるい時期からも
う韓国には北朝鮮を支持する人たちがたくさん増えたので、「もう工作員を送ら
なくてもいい」ということになったそうです。「韓国を政治的な植民地にするこ
とが目的だった」とも言っています。

 これらのことと文在寅政権がやっていることが関係あるのではないかと私は考
えて、最近「韓国の大統領はなぜ逮捕されるのか(草思社刊)」という本を出し
ましたが、その本の中で今言ったキム・グクソン氏の証言を引用しています。

 だから自分が引用した人がいよいよ拉致について話し始めたということで驚い
たのです。彼は絶対拉致を知っているはずだと私は思ったので、色々な手を使っ
て何とか彼に連絡しようとしたのですが、なかなか連絡がとれなかった。

 但し、ここに書いてある通り、「2014年に亡命した。その理由は彼は張成
沢(チャン・ソンテク)と家族ぐるみで付き合いをしていて、張成沢が処刑され
たことで自分も危うくなるかもしれない、あるいは張成沢を殺すなら労働党政権
は許せないと思った」ということで逃げてきた。

◆金正恩がトップになり、「これからは俺がやりたいようにやるからな」と

 また彼は金英哲(キム・ヨンチョル)と親しかった。金英哲はトランプ大統領
が金正恩に会った時、ワシントンまで行って交渉した人です。今労働党の政治局
員です。少し前まで統一戦線部長でしたが外されたようです。今の北朝鮮の工作
機関のトップは金与正(金正恩の妹)さんです。その下にいるのが金英哲です。

 その金英哲と親しかったということですから、知っていることがどれほどある
だろうかということです。一つだけエピソードを。金英哲は金正恩が後継者に指
名される前から付き合っていたので、大変な側近だそうです。後継者になった後
も何回も呼ばれて、一緒に酒を飲んだりしていたということです。

 金正日が死んで、葬式が終わって、金正恩がトップになるわけです。そして幹
部たちを集めた。金正恩はまだその時20代だったのですが、幹部たちには60
代、70代がいるわけです。最初に言った一言は、普通なら「よろしくお願いし
ます」ですが、金正恩は「これからは俺がやりたいようにやるからな」と言った。
自分の父親や、祖父たちの老幹部の人たちに20代の若者がそう言った。

 そういう人だということをキム・グクソン氏は知っているわけです。だから何
としても連絡したかったのですが、なかなかこの人に到達できず、この人を知っ
てる人には会いました。そうしたらこのインタビューが出たわけです。

◆脱北者の話はまず履歴が正しいかから調べること

 脱北者の話を聞く時はまずその人の履歴を見ます。どこにいたのかについて本
当のことを言っているかどうか。脱北者の証言が出ても、「工作機関にいました」
という人の本も出ていますが、履歴を見ると工作機関にいなかった人だなと分か
ります。元山等の工作機関の連絡所はありますが、その前を通ったことがあるか
もしれないが中に入ったことがない人だなということが分かったりします。

 韓国の国家安全戦略研究院で研究委員をしていたと書いてありますが、この研
究所に入れたということは、履歴が嘘じゃないということです。韓国の国家情報
院が脱北者の調査をするわけです。今3万人以上になりますので、まずはライフ
ストーリーを徹底的に調べます。

 「どこで生まれたか」、「両親はだれか」、「近所の人は誰か」、「小学校の
校長先生の名前を言え」とか。3万人もいるので、同じ学校に通った人がいるわ
けです。嘘をついたらすぐ分かる。それで、「間違いない、幹部だった」という
人が、研究院に入る。名前を消して亡命している人が何人かいるのですが、それ
は別にして、一定程度名前を公開していて、最高位だった人はすぐここに入れる。

 韓国は自由の国ですから、入ってから喧嘩して出てしまう人もいます。キム・
グクソン氏も2019年に喧嘩して出た人です。「文在寅政権の対北政策は間違っ
ている」ということで意見が合わなくて出たそうです。しかし、この研究員にい
たということは、今彼が言っている履歴は間違いないということです。

 この研究院には20人くらいしかいないんです。その中で工作機関出身は3人
か4人しかいない。そういう人が話をしたという前提で、これは注目すべき情報
だと思います。

◆日本人被害者と家族全員が少なくとも2013年まで平壌市内に居住

 新聞は「世界日報」で、大手の新聞ではなく統一教会の新聞ではありますが、
「世界日報」は編集権はかなり独立していて、取材もきちんとするので、小さな
ことですがとくダネが時々あります。記事を書いた上田さんという人はかなり長
くやっている人です。小さな会社で人があまりいないので長くソウルにいるわけ
です。だから人脈も持っている。この人がキム・グクソンさんに実際に会ってイ
ンタビューしたという点でも注目されます。

 私が注目したのは2つあり、一つは「北朝鮮により拉致された日本人被害者と
その子供ら家族全員が、朝鮮労働党統一戦線部の“管理”の下で少なくとも20
13年まで平壌市内に居住し続けてきたことが明らかになった」という所です。

 彼は2014年に亡命していますから、「13年まで平壌市内に居住し続けて
きたことが明らかになった」とありますが、一体誰にそれを聞いたのか。彼は多
分管理の責任者ではなかったので、書類を見たのか、話を聞いたのか、何人とい
うことだったのかということを聞きたいのですが、しかし「2013年まで日本
人被害者とそそ子供ら家族全員が平壌市内にいた」とあります。

 また、「日朝首脳会談で北朝鮮側が発表した『8人死亡』について、キム氏は
『すべて嘘』と断言した」、「墓地が洪水で流されたと言ったり、被害者が精神
病院に入院したという話も全てデタラメ」とあります。2014年までかなりの
人が生きていて平壌にいたということと、「8人死亡は嘘だ」と言った。

 特に、「精神病院に入院した」というのはめぐみさんのことですが、めぐみさ
んが精神病院に入院して自殺したというのは嘘だと、工作機関の幹部が言ってい
るわけです。2002年に作戦部にいた人が言っている。これは重大な証言です。

 しかし、その根拠は言っていないので誰に聞いたのか。しかし、「8人全部が
嘘だ」と言っている。これはすごい情報だと思います。普通とくダネが出ると各
社も何とか彼に接触して記事にしようとするはずですが、後続報道は出ていませ
ん。

 私も彼と知り合いという人に、すぐ携帯電話をかけてもらったのですが、出な
いということで、これが出た後連絡が集中するので外部との連絡を絶っているの
かもしれない。日本の拉致問題対策本部にも情報部門がありますし、内閣調査室
も外務省もありますし、彼は韓国の情報機関に長くいたわけですから、そういう
人たちが今確認しているのではないかと思います。私もなんとか会いたいと思っ
ている所です。

 我々が言っていた通り、「8人死亡はでたらめだ。被害者は生きている」とい
うことが裏付けられたと思います。

 さらに、「平壌での生活は『食べる物、着る物などに不自由しないよう党が配
慮し、北朝鮮では極めて上流の生活』をしている」というのは蓮池さんたちが言っ
ていることと同じです。

◆被害者は、外部の人とは接触できず、外出も「集団で」車で移動

 一方、「外部の人とは接触できず、外出も集団で車で移動」している。「仮名
で地元の学校に通い、車で送り迎えしている」とありますが、「集団で」という
ところがポイントです。

 一緒に移動していたなら、「何人かの人だけ死亡した」と言って2人だけ返し
てくることはできなくなります。「共同通信」等が、「田中さんと金田さんの生
存情報を非公式で伝えてきた」と報道していますが、それが本当なのか嘘なのか
は別として、「田中さんと金田さん、めぐみさんと八重子さん」が一緒にいたと
すると、田中さんたちを返してしまうと、他の人と「一緒にいましたよ」という
情報が出てしまう。

 別々に管理しているのか一緒に管理しているのか、まだまだ聞きたいことはいっ
ぱいあるのですが、重要な情報が出てきたと思います。

 そしてこれも、彼が自由になって、活動ができるようになったから言えること
です。彼は去年の秋から、文政権の末期で少し統制が緩んできたから発言できた。
もし次の政権が李在明(イ・ジェミョン)氏になっていたら、彼はアメリカに逃
げたかもしれない。そういうギリギリの所で取材を受けたわけです。

 これからの久保田さんの話で、尹錫悦政権が北朝鮮に対してどういう姿勢をと
るのか、日本との関係はどうなっていくのかが話されます。日本との関係では歴
史問題がありますので簡単ではないと思いますが、そういう中で日韓の情報共有
が、あるいは韓国側から日本に対する情報提供がどうなっていくのか、その中で
キム・グクソンさんの位置づけがどうなっていくのか関係すると思っています。

 以上前置きですが、重大な新聞記事が出たことについて解説しました(拍手)。

(2につづく)




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