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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

膠着状況が続く朝鮮半島情勢のもとで拉致被害者救出を考える国際セミナー4(2019/12/19)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2019.12.19)

■膠着状況が続く朝鮮半島情勢のもとで拉致被害者救出を考える国際セミナー4

櫻井 ではパネル・ディスカッションに入りたいと思います。冒頭で申し上げま
したが、北朝鮮関係の情報には不透明なものがあります。拉致問題の解決のめど
が立っていないのではないかという、膠着状態の中にあります。この北朝鮮情勢
についてまず皆様から現状認識を聞き、そしてアメリカ及び中国、もちろん日本
もですが、北朝鮮とどういう関係にあって何をなさなければならないのかという
ところから始めたいと思います。

 冒頭、各10分くらいでお願いします。

◆金正恩自身あるいは金正恩政権の命運と重なってきた拉致問題

古森義久(ジャーナリスト、麗澤大学特別教授)

 私は長年ジャーナリストとしてワシントンに駐在していました。90年代は北
朝鮮が核開発をしたということでアメリカが対応したことなどをずっと追いかけ
ました。2000年代からは日本人の拉致問題で、アメリカと連携するようなこ
とがりました。その時に手助けをするようなことで拉致問題に関与してきました。
2つのことについてお話をします。

 一つは、今のアメリカが、特にトランプ政権が北朝鮮に対してどんな身構えを
しているかということ、二つ目はそういうアメリカの動きの中で日本人拉致事件
がどのように位置づけられているか、です。

 アメリカ全体の北朝鮮に対する身構えですが、3つくらいの特徴があります。
一つは、トランプ政権に限らず民主党も、ほとんどの問題でトランプ政権に反対
するのですが、この拉致問題に関しては反対が少ない。だから超党派のコンセン
サスに近いものがある。

 そのコンセンサスの内容は、まず北朝鮮というのはアメリカにとっても同盟国
にとっても危険な軍事的に危険な脅威であるという認識です。これは核兵器だけ
ではなく、通常戦力、日本にも届くような短距離ミサイルは韓国にとっても、日
本にとっても、米軍にとっても脅威だということです。

 次に、北朝鮮は人権弾圧がひどい国ということで無法国家という言葉をよく使
います。ローグ・ステイト(ならずもの国家)と言いますが、ならずものという
言い方は国際関係を論じるにはふさわしくなく、無法国家ということです。

 例えば、トランプ政権が6月末に発表したインド・太平洋戦略構想の中には、
北朝鮮ははっきりと無法国家とあり、危険だから対処していく必要があると書か
れており、その中には人権問題も入っている。

 この人権問題には、スネドン決議も入っている。スネドンという若者が200
4年に雲南省で行方不明になったが、平壌に連行された状況証拠がたくさんある。
だからアメリカ政府として調査をするという決議案を上院と下院で通した。これ
には家族会・救う会のインプットが非常に強い。日米連携が強い。

 アメリカは北朝鮮との対処においては人権が大事という認識が広がった。これ
をさらに爆発的とでもいえるほど広げたのがオットー・ワームビア事件というの
がある。27歳のアメリカの青年が平壌を訪れて、ホテルにあった政治ポスター
をはがして、持っていこうとしただけで捕まって、虐待を受けて、意識が半分こ
ん睡状態になって帰ってきて、そしてすぐに死んでしまった。

 数日前アメリカの裁判所は、ワームビアさんのお父さん、この人は非常に活発
で、大事な息子をなくしたということで言語明晰な活動をし、また北朝鮮に対し
訴訟を起こして5億ドルを賠償しなければならないという判決が出ました。これ
は北朝鮮の人権問題です。

 3番目は、北朝鮮がやろうとしている核開発をいかに止めるかです。この3つ
に関してはアメリカ全体の超党派の認識の一致があります。

 そこで、ではトランプ政権は何をやっているのか。これもいくつかの特徴があ
る。第一は北朝鮮の非核化。東アジアまたは朝鮮半島に関しては間違いなく最大
の目標で、これをいかに達成するかです。

 第二は、インド・太平洋戦略の中で北朝鮮という国家のアメリカにとっての安
全保障上の位置づけです。これもきちっとしたものがあります。

 トランプ政権が何をやっているのかについて日本の報道を見ていると、粗雑で、
終始一貫しないという認識が強いのですが、ワシントンで見ていると必ずしもそ
うではない。

 日本の報道もそうですが、アメリカの報道でも、民主党的な報道は、トランプ
政権については何でもたたきます。だいたいトランプ報道はニュースソース、情
報源は一つしかなく、ツイッターで言っていることがトランプのすべてだという
感じです。

 もう一つは日本風に言えばぶら下がりです。トランプが出てきて、記者が質問
をする。彼はエネルギーいっぱいの人ですから、必ず答えるわけです。それが雑
というか短絡的になって、それがトランプ政権のすべての政策だとして書かれて
しまう。

 実は色々な形の政策の文書や彼が署名した法律、北東アジア関連、朝鮮半島関
連、北朝鮮関連のものがありますが、そういうものを見るとトランプ政権の北朝
鮮政策は、決して粗雑ではない。

 まず非核化に関してトランプ政権はどうしようとしているかというと、最初か
ら打ち出している完全な非核化です。CVIDという言葉がありますが、完全か
つ検証可能で不可逆的な非核化のことですが、これは変えていない。

 トランプ政権はもうあきらめているとか、北朝鮮が今の核兵器を開発した状態
で凍結すれば核保有国として認めて、その上で新たに対応しようとしているので
はないかと。これはニューヨーク・タイムズの報道です。もうCVIDはなくなっ
てしまったというような書き方です。しかし変えていない。

 その例証として、トランプ政権のすべての代表、例えばランディ・シュライバー
という国防次官補とかデイビッド・スティルウェル、日本と戦った将軍の孫で空
軍の准将までやった人ですが、こういう人は完全な非核化CVIDは変わってい
ないと言っている。

 次に軍事オプションというのがあります。まぜ金正恩は憲法にまで核兵器を封
印しないと言ったのか。これは軍事オプションです。そこでトランプ大統領は
「完全な破壊」という言葉を使って国連で演説をした。

 その次の柱が経済制裁。これも日本ではあまり効いてないという人がいますが、
アメリカの認識はじわじわと効いているということです。だからこのまま時間が
経てば北朝鮮は不利になると。

 今のアメリカと北朝鮮とのやりとりを見れば分かりますよね。下手に出るのは
必ず北朝鮮です。どんどんエスカレートするけれども、一定以上にはいかない。
トランプ大統領がこの前、「追い込んだ」とちょっと言いましたが、ほとんど言
わない。アメリカに金正恩氏が約束した二つのことは、「核兵器を廃棄します。
アメリカに届く長距離の弾道ミサイルは開発しません」ですが、この二つに関し
ては触れていない。この二つに関してトランプが何かをやれば、虎の尾を踏むこ
とになります。そこまでいかない範囲で一生懸命訴えてきている。

 もう一つの柱は、これはトランプ政権らしくないことになるかもしれませんが、
人権問題の扱いです。北朝鮮の国民が抑圧されている。これをトランプ政権の高
官たちが言う。これは日本人拉致問題とも重なり合うものです。

 アメリカは今、これから経済制裁をますます強くしていかなければならない。
軍事オプションということもためらわずに、官民で言っている。軍事オプション
というと韓国と必ず全面戦争になると思われますが、今のトランプ政権は全面戦
争にならないで軍事的に制裁を加えることができる。

 例えば電磁波、レーダー、サイバー、あるいは事前に十分な警告をして、これ
は全面戦争ではないんだぞと言って核の拠点だけを攻撃する。そういうことが極
めて具体的なシナリオとして書かれます。北朝鮮もそういうことは分かっていま
す。

 こういうアメリカの流れの中で日本人拉致問題はどう位置付けられているのか。
これも三つくらいの特徴があります。一つは、日本人拉致問題と言うのは今トラ
ンプ政権の政策に完全に組み込まれたということです。

 大統領自身が言っていることに加えて、インド・太平洋戦略に基づく文書でも、
はっきりとアメリカの公文書で明文化され、アメリカは北朝鮮と交渉する時に日
本人拉致問題の解決を例示しているわけです。

 これは北朝鮮側から見ても、アメリカが言ってくることに日本人拉致問題を解
決せよというのがあるということです。拉致事件が完全な国際的課題になってし
まった。国連でも取り上げられるし、マスコミの場でもかなりひんぱんに提起さ
れる。だから北朝鮮もそう受け止めざるをえない。

 三つ目は、金正恩自身あるいは金正恩政権の命運と日本人拉致事件のゆくえが
絡み合ったことです。金正恩政権はこれからどうなるんだということで、日本人
拉致事件も左右される。例えば北朝鮮にとって本当に苦しい状態になった時に、
日本人拉致事件の解決で応じることで北朝鮮が窮地から抜け出せると金正恩が思っ
た時ですね。そういうことが想像されますよね。

 逆に、これをやればすごく得をするという時、北朝鮮にとって非常に大きな利
益が入ってくる時に、金正恩自身あるいは金正恩政権の命運と重なり合ってきた
ということです。それをどう活かすかが日本にとって大きな課題になります。

 ここでやめておきます(拍手)。

櫻井 次に中国から見た場合について矢板さんお願いします。

◆拉致問題を日中交渉の条件に

矢板明夫(産経新聞外信部次長)

 皆さん、こんにちは。私は2007年から約10年間、産経新聞北京特派員と
して北京に駐在しました。仕事の中には日中関係だけでなく、中朝関係もありま
した。これは取材しなければならない重要なテーマでした。

 私が赴任した頃は北朝鮮が核実験をやったりミサイル実験をやったりしており、
その度に中国が抗議し、国連での制裁にも中国は賛成していました。一見中国と
北朝鮮の関係が険悪になっているように見えるのですが、実際は全然違う特別の
関係だと実感したことが多々ありました。

 まず非常に印象に残ったのが、2008年に中国は改革開放30年というのが
あり、中国政府があちこちで成果を記者にみせるツアーがあり、私も参加したの
ですが、他にアメリカやフランス、それから韓国、香港、台湾の記者もいました。

 4〜50人で中国の色々な街を回るんですが、その中に北朝鮮中央通信の記者
が一人いました。私たちとはほとんど別行動でした。私たちの相手をしてくれる
のは地元の書記というような共産党の幹部ですが、北朝鮮の場合一人の記者のた
めにもう一人副書記が出てきて、ずっとその人が相手しているわけです。

 北朝鮮の記者と私たちはあまり対話をしないですし、食事も別の所に行くんで
す。終わってバスに乗って地元のちょっとしたお土産を貰うんですが、北朝鮮の
記者はお土産が大きいんです(笑)。それを見ていると、やはり特別だな、と。

 そもそも北朝鮮の記者はジャーナリストではなく、北朝鮮の外交官的な役割も
あったと思います。やはり中国と北朝鮮の関係は違うなと思いました。

 2010年から11年にかけて、北朝鮮の金正日という前のトップが、晩年の
1年間、かなり頻繁に中国に来ていました。半年置きに3回くらい来ていたこと
があり、本人も自分は最後だと思っていて中国に託したいことがあったと思いま
す。それを見てもやはり違うなと思いました。

 一つの国がこんな短期間によく来るなと思っていたら、金正恩になって7年間、
全く没交渉になるんです。中朝で何かあったのかなと思っていたら、やはりあま
り関係がよくないんです。

 またしばらくして、2018年、首脳外交が再開されます。するとまた1年に
3回も4回も来るようになります。やはり北朝鮮と中国というのは親子の関係で
すね。でもあまり仲のいい親子ではない。何か起きると頻繁に会わなければなら
ないのだけど、なぜ金正恩が7年間中国に行かなかったかというと、原因はたく
さんありますが一つは、金正男という金正恩の兄が中国にいたことです。

 金正男は北京にもマカオにも家があって、中国に長年住んでいて、中国共産党
幹部と非常に仲がいいんです。中国国内に金正男擁立論があった。その金正男が
生きていると、金正恩は怖くて中国に行けないんです。

 中国に行くと自分が軟禁されて、中国が兄を北朝鮮に連れてきて親中政権を作
るのではないかという疑心暗鬼が常にあり、金正男を殺すまでは安心して中国に
行けなかった。中国では殺せないのでマレーシアで殺害するんですが、それまで
中国では彼の安全を守っていたんですが、殺害された時は中国の警察官がだれも
いなかったのです。

 おそらく北朝鮮との間に何らかの合意があり、中国は金正男を見捨てたのでは
ないかという説もありました。確認はできませんが。結果として、金正男が殺さ
れて1年経つと、今度は中朝関係が劇的に回復するわけです。

 米朝首脳会談が2回ありました。2018年の米朝首脳会談の時に、彼はわざ
わざ飛行機に乗って中国に行った。自分の安全で100%中国を信頼して、中国
に行ったと言えるわけです。

 もう一つ米朝の事前交渉ですが、シンガポールで北朝鮮の外務省と労働党幹部
が行き、北朝鮮の幹部が時々北京に戻り、北京の北朝鮮大使館から本国に報告し
ています。

 中国は電話がすべて盗聴されていますので、自国の最高機密を中国に盗聴され
てもいいということで、中国を100%信頼しているというポーズなんです。2
回目の米朝首脳会談はベトナムでしたが、金正恩はわざわざ電車に乗って、あの
広い中国大陸を横断して、片道65時間かけて行くということは、自分の安全を
完全に中国にあずけるということです。

 これは飼い犬が飼い主に対してお腹を見せるようなもので、100%信頼して
服従しているということです。最近の米朝首脳会談で、北朝鮮が色々なことをし
たのですが動かない。

 理由の一つは、中国として北朝鮮をカードとして使って、今の米朝貿易戦争に
関して北朝鮮に影響力を行使して、「あまりアメリカの言うことを聞くな」と。
この2年間中朝が急接近して完全に北朝鮮が中国の影響下に入っていると言える
と思います。

 そこで私が思うのは、日本にとって一つのチャンスだということです。中国の
習近平国家主席が来年春に国賓として訪日することを希望していることです。中
国は今、米中貿易戦争や香港問題で内政も外交もうまくいっていない。そこで日
本に急に接近してきている。中国の方が頭を下げてきている。

 そこで日本は拉致問題の前進を中国との交渉の条件としてぶつけるべきだと思
います。私自身は「国賓」としての訪日には反対の立場を書いていますが、一般
の公式訪問なら隣国ですからあっていいと思います。そして今北朝鮮は中国の言
うことを聞いているわけですから、拉致問題の前進を条件としていいと思います
(拍手)。

(5につづく)



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