救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

米人拉致問題と米国の対北政策、衆議院拉致特報告?東京連続集会[2](2012/06/08)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2012.06.08-2)

◆次期政権要人候補と面会

島田 今回、誰に会うかを考えるにあたって、民間有識者に関しては、ブッシュ
政権前期に、非常に原則重視の外交をしていた時、中心的な人物だった人たちに
焦点を合わせて、日程を組みました。

 つまり、ミット・ロムニー共和党政権ができた場合には、また政権に復帰して
NSC(国家安全保障会議)や、国務省の重要なポジション、国防総省に入って北
朝鮮政策を担当するであろうような人たちに、しっかりアメリカ人拉致問題も含
めてインプットしてきました。

 そういう人たちですから、もともと我々と連携し、原則重視の北朝鮮外交をやっ
ていこうという気はある訳です。中でも、親玉的な存在のジョン・ボルトン氏は、
我々と会っていきなり、「ロムニー政権になったらアメリカの北朝鮮政策はがらっ
と変わりますよ」と、まるで自分が国家安全保障担当補佐官になる自信があるみ
たいでした。確かに、かれになればかなり変わると思います。

西岡 国務長官はどうですか。

島田 国務長官は上院の承認が取れないと。現在民主党が多数で、11月の選挙
では共和党は逆転まではいかなくても接近するかなと言われています。大臣と各
省庁の次官補代理以上の幹部人事は上院の承認がいりますが、大統領が任命した
だけではそのポジションにつけない。この辺は日本の首相には閣僚任免権があり
ますので裁量の余地があります。

 上院は院内規則で、100人の中で過半数は50で、同数の場合は副大統領が
最後に一票投じます。人事の承認は60人の賛成がいります。承認は過半数でい
いんですが、60人が賛成しないと議論が打ち切れないから、41人がまだ審議
不十分と言えば就任できない。

 ボルトン氏の場合は、ブッシュから国連大使に任命されましたが、57人賛成
で、審議未了となった。

 日本では、首相が任命すれば外務大臣になれますが、アメリカではあんなのは
だめとなる。6割の賛成が必要ですから。大統領制にしないと指導力を発揮でき
ないという人がいますが、閣僚の人事はむしろ逆で、日本の首相の方が裁量権は
大きいですね。

 だから変な人間が首相になると、無茶苦茶になる。しっかりした人間が首相に
なって思い通りの人事をやればすばらしい内閣が作れる。

◆衆議院拉致特で参考人証言と質疑

西岡 まだ、全く分からないんですが、実はブッシュ1期があったからこそ小泉
訪朝があったと先ほど増元さんも言いましたが、ブッシュさんは、ゴアさんとの
選挙で、フロリダの開票が遅れて、その票のごくわずかな差でブッシュさんになっ
たんですね。

 多分ゴアさんになっていたら、ゴア訪朝があって、拉致は解決しないのに日本
に米を送れと強い圧力がかかったという状況があったと思います。アメリカの大
統領選挙は、そういう点では国際政治にも大変な影響を及ぼします。

 しかし、増元さんが言う通り、それはそれでアメリカ人が決めることですから、
我々は我々で、やるべきことをやらなくちゃいけない。やるべきことをやってい
れば天も助けてくれるだろうと思います。

 そして韓国も12月に大統領選挙があり、北朝鮮に無条件で援助する盧武鉉
(ノ・ムヒョン)のような体制ができてしまうと、経済制裁も効かなくなってし
まうかもしれない。

 そういう流動的な中ですが、日本として何をすべきなのかということを、落ち
着いて話せる機会が今日の午前中にありました。衆議院の拉致問題特別委員会が
参考人審議をやりました。

 参考人というと悪いことをした人という誤解があるようですが、学識経験者な
どを呼んで話を聞くのも参考人です。私も3、4回呼ばれています。

 裏話ですが、実は自民党は問責をかけた閣僚がいるので、基本的に審議に応じ
ないという姿勢なんだそうです。そこで拉致特別委員会も開けないでいたけれど、
拉致問題だけはそういう政争を超えた問題だからということで、理事会で話をし
て、大臣は呼ばない、参考人の意見を聞いて、与野党の委員が参考人に自由に質
問する。そして官僚には来てもらって、具体的なデータなどについて質問すると
いう枠組みで今日の2時間半の委員会がもたれました。

 参考人で呼ばれたのは、飯塚代表、増元事務局長、私と島田副会長、特定失踪
者問題調査会の荒木代表と特定失踪者家族を代表して古川了子さんのお姉さんの
竹下玉路さん。特定失踪者としての認定を求める裁判をやられた方です。

 冒頭5分自由にしゃべっていいと言われ、その後は議員からのご質問を受ける
ということがありました。

 そこでどんなことをしたのかということについて飯塚さんから話をしていただ
きます。

◆時間との勝負という気概があるのか

飯塚 拉致被害者家族としての立場で思いをお伝えしたということです。まず、
こんなに長くかかっているのはなぜかという問いです。家族会結成から15年、
それから拉致問題対策本部ができたりと格好はつけていますが、それぞれがばら
ばらで、1回何か催し物をやれば、それで一安心ということで、つながってはい
ないんです。一体感もない。我々は時間との勝負だということを強く言いました。

 今朝のような特別委員会も何回もやっているわけです。各党の拉致問題対策委
員会とか色々やっていますが、すべてフォローがされていないのではないか、と
強く言いました。こうしている間も北朝鮮にいる人は待っているんです、と。

 結局、それぞれの立場、役割の人たちが、本当に時間との勝負という気概があ
るのかということです。色々な組織で動きはありますが、ベクトルが合ってない
というのが実態です。我々の会社では、計画すればその通り結果が出ます。行程
表のようなものを作って、それに対して今どうなっているのか、次どうやるか、
その結果こうなればこうするというような追いかけをしないと、1回やって安心
という感じが見受けられるのが非常にまだるっこいということを申し上げました。

西岡 増元さんはずっと強行軍で、昨日、5月31日、ベルギーから帰ってきま
した。家族会・救う会としては初めてですが、29日にEU議会に直接訴えること
ができました。

 これは2年くらい前から、当時拉致問題対策本部にいらした東副大臣などが主
導してEUでも訴える機会を作ろうとしてくださいました。たいていのことは我々
が主導でやってきたものが多いのですが、これは対策本部が主導で、そして外務
省が動いてくれて、EU議会の人権小委員会で増元さんが、EUの議員の前で陳述す
ることができました。

 そこで何を話されたのか、そして帰ってきて今朝どんな話をされたのか、2つ
の報告をお願いします。


◆ヨーロッパ議会で初証言

増元 EUでは、拉致の概要、北朝鮮がなぜ拉致したのかです。日本人を教師にし
てスパイを要請したこと、女性を拉致してアメリカ人脱走兵の妻にしたことが今
明らかになっています。

 その他、日本人は100人以上拉致されていると思われるが、それは北朝鮮の
兵器を作るために使われている可能性が高いということです。

 また、拉致が世界中に広がっていて、米兵の妻になったのはタイ人のアノーチャー
さん、ルーマニアのドイナさん、レバノン人のシュライテフさんで、拉致の疑い
の高い被害国として12か国あり、その中にヨーロッパの国々があることを言い
ました。さらにアメリカの若い男性が中国で拉致された疑いが非常に強いことで
す。

 そして拉致被害者の救出に、アメリカ、ヨーロッパの協力をお願いしたいとい
うことを言ってきました。

 その場には、金泰振(キム・テジン)さんという強制収容所問題をやっている
人も来て証言されました。

西岡 収容所に入れられていて脱北した人で、今韓国で北朝鮮政治犯収容所解体
運動本部という団体の代表をやっている人です。

増元 さらに、呉吉男(オ・ギルナム)さんが来られました。我々の集会には結
局来られなかったのですが、申淑子(シン・スクチャ)さんの夫で、デモンスト
レーション・テープのようなものが上映され、拉致問題についても言われました。
また、キング米北朝鮮人権問題担当特使が来られて発言されました。

 また、EU議会で北朝鮮への食糧支援を担当している方も来ておられ、議長から
その人たちの報告もありました。

 その中で私が一番最初に発言して、先ほどのようなことを述べたのですが、す
べて終了後に質疑応答がありました。人権小委員会の議員はEU各国から31人い
るのですが、ちょうど中国からEUに大訪問団が来ていて、中国と人権問題に関す
る話合いが同じ時間帯にあったため、そちらに行った方もおられました。

 資料を置いてきましたし、委員長にはちゃんと伝えられたと思いますが、質疑
応答では、どちらかというと北朝鮮の脱北者問題、そして国内での収容所問題や
人権抑圧問題の方が、彼らにとっては重要な問題であるような感じを受けました。

 支援をしているEUの方も、北朝鮮の人民がこれだけ飢えているので、やらなけ
ればならないというスタンスで話をされました。最終的に委員長が私と金泰振さ
んに、何か言うことがありますかと言った時に、本来ならば、「10年前に父が
娘に会えないままに死んだ。今日本にいる家族も高齢化していつ倒れるか分から
ない状況で、家族を早急に見つけたい」というつもりでした。

 しかし、その場で頭にきて、「EUでの北朝鮮に対する認識が甘い。だいたい北
朝鮮を国家として承認したこと自体がまちがいだ。韓国の憲法では北朝鮮は国家
として認めていないし、わが国も認めていない。EUのような認識があるから北朝
鮮の人権侵害を放置することになったのではないか」と言ってしまったのです。
EU議会は北朝鮮を国家として認めるな、というようなことを言ったのです。

西岡 フランス以外は全部国家承認しています。そして外交関係を持っている。

増元 そういう過激なことを言ったのですが、それに対しては反論はありません
でした。同じ時期にシリアの虐殺の報道が出て、日本代表部でNHKを見たら、EU
各国がシリアの大使をすべて召還したということです。

 私は前から思っているんですが、シリアも虐殺ですが、北朝鮮の強制収容所で
行われていることも虐殺です。これに対してなぜ同じスタンスをとれないのか。
北朝鮮の虐殺は、「見えない虐殺」です。でも、みんなが分かっている虐殺じゃ
ないですか。シリアの虐殺は目の前に死体が見えているのかもしれないですが、
これに対しては厳しい姿勢を見せる。リビアの時はEUは空爆までやった。

 しかし、北朝鮮の虐殺に対してはEU諸国は、国交を正常化して大使館まで置い
て、結局は甘い顔をしている状況で、非常に憂えています。今後はそういう点で
も強く申し入れなければならないと思っています。

 6月にキング特使が来られますので、私が言いたかったことを含めて、家族は
本当に会いたい、会うために協力してほしいというつもりです。またシリアに対
するダブルスタンダードについても伝えたいと思います。

西岡 ヨーロッパのことについて一言いいますと、北朝鮮の政治犯収容所の問題
もそれほど関心がなかったわけです。しかし、韓国を中心とする国際NGOがかな
り活発な活動をし、何回も民間レベルで国際会議を行い、北朝鮮の人権問題、特
に政治犯収容所の問題や脱北者の問題について一定程度の関心を集めることに成
功している、ということがあったと思います。

 我々はアメリカ、韓国について、また拉致被害者がいる国に対しては一定程度
働きかけをしてきましたが、力不足で、拉致については今回初めて増元さんがEU
で訴えることができたということで、EU議会もありますが、各国の議会、各国の
マスコミもあるわけですから、できればフランス人の家族がみつかる状況があれ
ば、フランスは安保理事会の常任理事国ですから。

 そのためには、フランスのメディアが、被害者がいると報道しないとなかなか
難しいわけですが、フランスの記者の記者を対策本部が日本に呼んだ時に、私も
インタビューに応じ、フランスの新聞で拉致のことが出たりはしましたが、後続
の展開がなかったのです。

 増元さんは強行軍だったと思いますが、一石を投じてくださったことは意味が
あったと思いますし、今年中に解決しなくちゃいけないのに、これからヨーロッ
パのことについて世論喚起をやるというのは、ある面で矛盾していますが、やれ
ることをすべてやろうということでは意味があったし、特に北朝鮮と国交がある
国に対しては、継続して関心喚起をしていかなければならないと思います。

 また、緊急事態になった場合に、イギリス大使館やドイツ大使館が平壌にある
わけです。そこに保護してもらえるよう政府として頼んでほしいということは、
安倍政権以降ずっと申し上げていることです。そういうことは水面下でやること
ですから、公開しない方がいいと言われていますので、それ以上追求していませ
ん。

 例えば、在平壌ドイツ大使は、東京に休暇で来た時、我々に会いたいといって
会ってくださったことがあります。一方、マカオから拉致された孔さんと蘇さん
の2人は、北朝鮮のスキを見て、平壌のインドネシア大使館にかけこんだのです
が、インドネシア大使館はその2人を北朝鮮に引き渡したということを、(元女
優で拉致された韓国人)崔銀姫(チェ・ウニ)さんは、孔さんから聞いています。

 もし日本人被害者が混乱時に平壌に大使館がある国に逃げ込んだ場合に保護し
てもらえるかどうかについては、日本の外交努力にかかっている面があります。

 そういう点でも、増元さんが「お前ら国家承認したからこうなった」というの
は、悪いとは言いませんが。しかし、訴えたというのは意味があり、継続して訴
えなければならないことだと思っています。以上がヨーロッパに関することの総
括です。

増元 ヨーロッパの方々は、極東というと遠い国の問題という感じで、さほど関
心を持っていないけれども、近くの中東の問題には敏感です。また人権という問
題では、アフリカの虐殺や人権侵害、その他色々な問題については動いています。

 ですから、今回の支援の問題でも、北朝鮮の人権問題については日本や韓国が
もっと敏感に反応しなければならないというのが私の感想です。

 先ほども言いましたが、「見えない虐殺」をやっている国の国会議員(北朝鮮
の最高人民会議の人民代議員)が日本にいるわけでしょう。それを本国に帰しちゃ
えばいいじゃないですか。

 大使を召還するくらいのEUの姿勢を日本もとるべきだと私は思います。それこ
そが本当に北朝鮮の人権問題を世界に大きく報道する姿勢じゃないでしょうか。

 日本、韓国、アメリカが北朝鮮の虐殺に対して何の意見もしないというのは、
やはりまちがいだと思います。今後は明確にやらなければならない問題ではない
かと思っています。

 アメリカに行って、EUに行って最終的に思ったのは、わが国が主体的にやらな
ければならないということでした。

◆どなたが責任をとってくれるんですか

 衆議院の拉致特で私が申し上げたのは、北朝鮮が拉致を認めて10年です。家
族会を結成した頃、国民の皆様に、私たちは拉致されているんですと訴えたけれ
どもなかなか信じてもらえなかった。

 拉致などやっていないという政党まであって、非常な障害になりました。20
02年に被害者が帰ってきてから、拉致があったことは知ったけれども、こんど
は「死んでいない」ということを国民の皆さんに訴えるのが大変だった。

 日本政府は一応、「生存」という立場でやっていますが、色々な方たちが「死
亡」ということを植えつけ、その「死亡」という言葉が潜在意識の中にそのまま
入っているから、この10年、国会の中でも審議がなかなかされない。

 私は政府が、国会の中で指針を示すくらいの議論をしてもらいたいんですと申
し上げました。北朝鮮に連れていかれた被害者が病気で死んだり、事故で死んだ
りしたら、どなたが一体責任をとれるんでしょう。

 日本にいる私たち被害者家族は高齢化しています。この方たちが亡くなった場
合、もう解決には至らないんですが、どなたが責任をとってくれるんですか。そ
ういうことも含めて、国会議員の皆さんには真摯に議論をしていただきたいと申
し上げました。


西岡 今日、どういうことを言ったのか、ヨーロッパ関連のことも含めて島田さ
んお願いします。

◆あくまで日本が主体でこそアメリカも使える

島田 今日の拉致特の審議については、衆議院のインターネット中継を見ること
ができます。私のブログでもクリックすればつながるようにしています。

 私は、先ほど述べたアメリカ人拉致疑惑の件を日本の国会議員にもインプット
しておく必要があると思って詳しく述べました。

 今回の訪米で、平沼赳夫・拉致議連会長が、一度大きな病気をされている体で
ありながら、1泊3日で、大変な強行軍で来られました。自分が行って全体を締
めなければいけないと思われたのでしょう。

 まさにあのような方がリーダーシップを持つ政治家だと思いますが、できるだ
け多くの政治家が同じような気構えを持ってもらうとかなり違うし、平沼さんが
首相になってくれるといいなと思います。

 拉致問題解決はもちろん日本が主体的にやらなければいけない話ですが、先ほ
ど増元さんも、アメリカはアメリカの国益で動くとおっしゃいました。そのアメ
リカの国益が何なのかに関して、アメリカという国は多様ですからかなり意見が
分かれています。

 だから、まさに北朝鮮のテロ支援国指定の解除が国益にかなうと思ったのがヒ
ルやライスといった人ですが、ああいうことをするのは国益にかなわないという
立場で反対したジョン・ボルトン国連大使、チェイニー副大統領等もたくさんい
ます。

 従って、アメリカの我々の同志的な人たちとの連携をできるだけ強めていけば、
向こうにとってもプラスになるんです。実際にテロ支援国指定の解除の方向にヒ
ルさん、ライスさんが動いた。

 しかしその時も、2007年11月頃と思いますが、平沼さんが団長で我々が
アメリカに行って、解除はとんでもないという訴えをした。それに対してアメリ
カの関係者から、「訪米団が来てくれて本当に力になった」と。

「とにかく、『日本との関係がおかしくなりますよ』というのが論拠として使え
たので、平沼訪米団が来てくれたお蔭で、指定解除が半年延びた」と、事情に通
じたアメリカ側の人が何人も言っていました。

 ところが同じ時期に、これは以前も問題にしましたが、岡田克也氏や前原誠司
氏が、当時野党でしたが、「テロ支援国指定を解除するかどうかはアメリカが決
めることですよ。解除してもそれで日米関係がおかしくなるという意見はおかし
いじゃないか」というようなことを言った。

 アメリカは、与野党逆転で、民主党が政権をとるかもしれないと思って、岡田
さん、前原さんの発言を注目しているわけです。そういう時に、彼らがまさに平
沼さんと同じスタンスで、「解除したら私だって怒りますよ」と言えば、我々と
同じ同志にとっては、それが弾になるわけです。

 今度政権を取るかも知れない民主党の前原とか岡田とか、こういう頼りない連
中でも「怒る」と言っているということを言えるわけですから、日本の有力な政
治家はアメリカでもせめぎ合いがある中で、自分たちの発言がアメリカの政策決
定に影響を与えられるんだという意識でしっかりやってもらわないといけない。

 あくまで日本が主体ですが、アメリカも使えるわけですから、こちらの主体的
な意思が大事だと思います。そういう意味でアメリカ人拉致問題が出てきたとい
うのは、どこの国籍の人であれ全員救出しないといけないという意識で我々も向
こうの家族を助けているわけです。

 だからアメリカが当事者意識を持って拉致問題に臨んでくれれば、これは戦略
的には大きいですから、そういう意味でアメリカに対する働きかけを今後も続け
るべきと思います。

 そういう意識を持って今日の拉致特でも話してきました。

◆朝鮮総連の副議長たちがお金を持ち出している

西岡 今朝の参考人質疑は、割に私に質問がたくさん来て、かなりの時間しゃべ
りました。あと、荒木さんが山本美保さんの問題で話しました。そちらは荒木さ
んのメールニュースで報告があると思います。

 私が拉致特で話したことは、配布資料にあります。冒頭5分間でこのメモに書
いてある3つのことを言いました。

 まず、拉致問題の現況について。議員の先生たちに頭の整理をしていただきた
いと思って、今の拉致問題がどういうステージにあるのかについて。

 拉致があるかないかの戦いには我々は勝った。金正日が拉致を認めた。しかし、
新たに2つの嘘をついた。それが、「拉致したのは13人だけ」、「8人死亡」
という嘘だと。

 彼らの論理では、13人しか拉致しておらず5人を返して8人死亡なので、2
002年9月に拉致問題は解決したと言っているが、我々はそうは思っていない。

 まず、「拉致したのは13人だけ」が嘘。日本政府は今17人認定している。
これだけで4人も違う。そして認定被害者以外にも必ず被害者がいる。寺越事件
等だ。

 そして2つ目に、「8人死亡」と言うけれども、死亡を証明する証拠が一切な
い。遺骨や死亡診断書はすべて偽物だった。それだけでなくここ数年間、確実な
生存情報がある。

 そして今の民主党政権に対して、1つは評価し、1つは批判をしました。評価
したのは、松原大臣がこのところ、どこに行っても同じことをおっしゃっていま
す。「家族が亡くなってから被害者が戻ってきても拉致問題の解決にはならない」。

「解決というのは今待っている大多数の家族が元気なうちに被害者と会えるとい
うことだ」と。

「家族たちが元気がなくなるのを待っていれば、日本の世論が落ちると思ったら
大間違いだ。被害者が家族に会えなかったら解決の定義に入らないから、日朝国
交正常化に、私は政治家だから体を張っても反対する。時間がないのは北朝鮮の
方だ」という言い方をされています。

 他方、「死亡とされた人が生きているということになったとしても、その時嘘
をついたという責任は問わない」とどこでも言っています。「早く返しなさい、
返すのが先決だ」と。「しかし、返さなければ北朝鮮にとってひどいことになり
ますよ」ということを松原さん流の論理で整理して言っています。
これについては、私は適切な訴えだと思うと言いました。

 一方で批判した部分は、今回のミサイル発射に対して、追加制裁が発動されま
せんでした。この間、自民党、公明党政権は、ミサイル発射・核実験、ミサイル
発射・核実験と2回あったわけですが、その度に少しずつ制裁を高めてきました。

 残念ながら拉致だけを理由にした制裁はこれまでされていませんが、ミサイル
発射・核実験の度に、「拉致も制裁の理由」と言いながら高めてきました。

 今回はミサイル発射があって、これは国連安保理決議の明確な違反で、日本も
それを公開的に非難したにも関わらず、追加制裁が未だになされていないという
ことは、間違ったメッセージになりかねない。拉致問題だけでなく、核・ミサイ
ル問題に対しても間違ったメッセージになりかねない、ということを批判しまし
た。

 そして今やるべきことは、お金の流れを止めることだ、と。朝鮮総連の副議長
たちは、月に1回程度訪朝している。南(ナム)という副議長は、昨年12月と
4月の2回訪朝しています。朴(パク)という副議長は、1月から2月まで屋台
を出しに1月くらい行って、3月にもう1回行っています。

 ●(ペ、●=褒の保を非に)という副議長は、2月に行っています。つまり、
副議長が12月から4月までの間に5回訪朝しています。そしてこれは財務省が
既に明らかにしていますが、12月から2月まで、少なくとも1億3千万円を北
朝鮮に運んでいる。

 今、日本から北朝鮮に渡航する際に、お金を持って行く場合、10万円以上は
届出をしなければいけないことになっています。正直ベースで届出したのが1億
3千万円です。届出してないものもあるかもしれない。9万9千円だったら届出
しなくてもいい。

 上限は青天井でどんどんお金が運ばれています。それがどこに行っているのか。
核・ミサイル開発の資金を担当している労働党の39号室にお金を持っていって
いるんです。

 (アメリカの)金融制裁がなぜ効いたのか。39号室に行く資金を絞ったから
です。なぜ日本はそれをしないんですかという点で民主党政権を批判しました。

 そうしたら、我々参考人は質問できないんですが、委員の一人である、自民党
の古屋圭司拉致問題特別委員長が、政府側に質問したんです。特にこの4月金日
成生誕100周年ということでたくさんの訪朝団が行ったけれど、持ち出し額は
いくらなのか、と。

 これは初めて明らかになったのですが、財務省の柴生田敦夫関税局長は、「4
月に194件2億1470万円が持ち出されている」と回答しました。12月か
ら2月まで1億3千万円だったのに、1月だけで2億円以上が持ち出されていた
ということです。

 関税局長は1月以降の金額を明らかにし、1月17件、3020万円、2月5
9件、6340万円。2月は金正日の誕生日がありました。3月42件、316
0万円でした。

 旅行するのに4億円もいるのかということです。そうではなく、国内で寄付を
募って持っていっているわけです。増元さんは国会議員を兼ねている国会議員を
追放しろと言いましたが、まだそんなレベルではなく、朝鮮総連の副議長が自由
に日本と北朝鮮を行き来し、お金を自由に持ち出せているんです。

 そして4月に行った南昇祐(ナム・スンウ)副議長を迎えたのは、225局
(旧対外連絡部)の康寛周(カン・ガンジュ、通名姜周一)です。康寛周は旧対
外連絡部の部長で拉致を担当した工作機関の一つです。その康寛周が出てきて、
南昇祐を出迎えて案内したと言われています。

 つまり朝鮮総連副議長は工作機関の下にいるんです。この南という男は、金正
日の葬式に行ったわけですが、葬式の日の夜に金正恩は出てきませんでしたが、
金英南という形式的なナンバー2が晩餐会をやったのですが、南昇祐はメインテー
ブルに座って彼の横には金養根(キム・ヤンゴン)という統一戦線部の部長が座っ
ていた。

 統一戦線部も工作機関です。そういう人たちから指令を受けている人間が自由
に北朝鮮と日本の間を往来できる。追放じゃなく、自由に往来できる。お金も自
由に持ち出せる。

 届出さえすればいいのですが、お金については、届出ではなく持ち出し額を制
限することが、現行法でできるのです。改正外為法にそう書いてある。日本の安
全保障上のことで、できると書いてあるのにまだ発動していない。

 但し、これを発動しても抜け穴がいっぱいある。つまり北朝鮮を持ち出し先と
するものだけ制限がかかるので、中国経由で行きますから、中国で投資をするた
め持ち出すと言われたらどうなるのか。あるいは、中国にある銀行に送金し、中
国でおろして北朝鮮に持ち出せば、問題がないことになる。

 やはり人の流れを止めなくちゃいけない。少なくとも朝鮮総連の役職について
いる人間が自由に出入りできるということはどういうことなのか。

 また朝鮮総連は、ここでも申し上げましたが、朝銀信用組合が破綻した時に、
朝鮮総連の名前の焦げ付いた借金があったわけです。600億円を、日本の政府
機関であるRCCは朝鮮総連を相手に、返せという民事訴訟を起こしました。それ
は最高裁で朝鮮総連が負けました。

 ところがお金がないと言って、返していないんです。そこでRCCは朝鮮総連中
央本部を差し押さえすると言ったのですが、朝鮮総連は、我々は任意団体で中央
本部の名義は株式会社だから、株式会社を差し押さえるのは違反だといって、そ
の裁判になっています。

 それも一審、二審で朝鮮総連は負け、今最高裁の判決を待っている段階です。
判決が出れば、中央本部が差し押さえられる直前まで来ています。600億円の
借金があるわけです。では、朝鮮総連の幹部がかばんに1億円入れていったら、
それを差し押さえできないのか。私はすこし乱暴ですが、そう思ってしまいます。

 ある会社が倒産してまだ借金が残っているのに、社長が1億円かばんに入れて
いこうとしたら、借金を返してもらっていない人は怒りますよね。日本政府は、
その600億円は既に預金者保護の名目で公的資金を入れているのです。合計1
兆4千億円を朝銀信用組合が破綻した時に入れているのです。

 その内600億円が朝鮮総連が返してない借金だと認定され、裁判所でも判決
が出ているのですから、金を返せというのは当り前のことだと思います。そんな
ことをしないで、せっせとミサイル資金を貢いでいることについて、なぜそのま
まにしているのか。

 ミサイル発射が日本の安全保障にとって重大な問題であれば、これは拉致問題
を越えて、ミサイル発射資金を日本から提供してどうするんですか。全くナンセ
ンスだと思うと、今日申し上げました。

◆拉致だけを理由にした制裁を

増元 途中で議員から質問があり、家族会の中でも追加制裁には異論があるよう
に聞こえていますがどうでしょうか、と聞かれて飯塚代表と私が申し上げました。

 確かに北朝鮮に対する圧力をかけています。核とミサイルで日本は制裁をかけ
ました。それに付随するように拉致も理由にいれてかけたわけです。世論の中で
は、北朝鮮に圧力をかけても拉致門外は解決しないじゃないかと。当り前です。
拉致で圧力をかけたことが1回もないからです。

 膠着状態が続いているけれども、拉致問題が解決しないのは当然だと私は思い
ます。だからこそ拉致問題で圧力をかけなければならないのに、メッセージが全
く送られていない。私はそう思いますと申し上げました。

 横田さんの、「めぐみへの遺言」という本を読ませていただきましたが、そう
いう論理で北朝鮮に対する圧力を日本はかけているでしょう。それでも解決しな
いのだから別の方法があるんじゃないかという助言をされている方がおられるよ
うですが、日本が圧力をかけているのは核とミサイルだけなんだということをもっ
と国民の人たちが意識しなければならないと思います。

 今日も委員の誰かが、ミサイル発射に追加制裁をとおっしゃいましたが、なぜ
拉致問題で追加制裁をという発想にならないのか、ということも申し上げました。

 膠着状態が続いている。そして拉致問題が解決しないのは、日本が意思を発信
しないからだと私は思います。その点で、拉致で圧力をかけていないということ
を知っていただかなければ、追加制裁に道が開けないのではないかという感触を
持っています。

西岡 飯塚さん。最後にご感想などを。

◆実際にどう動くかが今せっぱつまった課題

飯塚 私はいつも言うんですが、拉致問題を解決するために、取り巻くあらゆる
問題を解決しないと結果がでないとすごく感じます。今話題になっている問題は
すべてそうです。ですから、増元さんが言うように、取り巻くあらゆる問題には
国際社会を含めた問題が多いのですが、日本が独自に北朝鮮に当たって協議する
となると、かなり問題の量が減ってくる。そういったところにも目をつけていか
なければならないと思います。

 松原担当大臣が、いつも「時間との勝負」と言っていますが、本当に水面下で、
あるいは色々な手づるを使って、きっかけをつかもうと頑張っています。但し、
こうやります、ああやりますと公表してしまえば、相手もその裏をかくというこ
とにもつながってくるので、戦術戦略が難しいという感じを持っています。

 この問題は絶対に忘れないで、命がけで、全力でやってますという話は、私も
よく聞きますが、特に家族については、今こういうことを考えているということ
を直接言ってくれないんです。

 結果は出ていないですが、松原大臣が色んなことを考慮に入れながら、色んな
手を使いながらやってはくれてます。

 しかし、今の北朝鮮の状況を見ると、本当に簡単にはいかないと、誰しも見る
判断ではないかと思います。ではそういった状態の中でどうしたらいいのかとい
うのが、非常に難しい問題でとても私らには考えがつきません。

 だからこそ政府が一体となってということです。対策本部の中に7つの分科会
ができたり、総理はじめ各大臣がこの問題を何とかせよという号令はかけていま
すが、その一体化した動きが見えないというのが、私が一番懸念していることで
す。

 前大臣の中井さんも色々なことをやってますが、それもはっきりとした目的、
目標が分からない。考え方もまだよく分からない。しかし、何かをつかもうとし
ていることは事実です。そういう意味で、単なる意見交換とか、評論とかではな
く、実際にどう動くかが今せっぱつまった課題だと思います。

 私たちもしょっちゅう松原大臣とお会いしていますが、その辺を十分押し込ん
でいきたいと思っています。

西岡 遅れて、タイのアノチャーさんの救出運動をずっとやってこられた海老原
智治さんが来られましたので、タイにおける拉致問題の状況を説明してください。

◆タイ人被害者家族がタイ外相と面会

海老原 タイのチェンマイで、北朝鮮に拉致された人々を救援する会チェンマイ
というNGOをやっています海老原智治です。チェンマイに長く住んでいまして、
現地で支援団体をやっています。

 タイ人の拉致被害者が一人います。政府も認定はしていませんが、事実上認定
しているアノーチャー・パンジョイさんというタイ人女性の出身地がチェンマイ
です。私も偶然そこに住んでいたことから家族会・救う会と緊密な連絡をするよ
うになりました。また、飯塚さん、増元さん、また西岡先生などにもお世話いた
だいています。

 タイ人を振り返りますと、判明したのが2005年でもう7年目になります。
分かったのは、チャールズ・ジェンキンスさんが戻って、その証言の中にタイ人
女性がおり、10年近く、近所同士で密接な交流があったということです。

 その情報をもとに、タイ政府も間違いないことが確認できたとし、タイも北朝
鮮政府に対して、拉致被害者の帰還について交渉をしています。

 タイ政府の動きですが、当初は極めてすばやい対応をみせたのですが、200
7年の11月か12月に当時の内務大臣が北朝鮮に対して、タイ人拉致被害者の
照会をしています。北朝鮮は、「そういうタイ人はいない」、「北朝鮮で確認し
たが、そういうタイ人はみつからなかった」と回答しました。

 この北朝鮮の立場は、7年前から現在まで動いていません。その間、タイ政府
はどうしていたかですが、タイでは政争で混乱が起こり、2006年まで政権を
担っていたタクシンさんという元首相を中心とする政権で、その政権の外務大臣
が動き、2006年に外相レベルで北朝鮮外相とこの問題を交渉し、すばやい対
応を見せました。

 2006年7月に、タイ政府から北朝鮮に対し、タイ人拉致被害者について共
同作業部会を作ろうという提案を行ったというところまで来たのですが、200
6年9月に、当時のタクシン首相が追い出される軍事クーデターが起こり、政府
の人は追いやられてしまいました。

 その後は残念なことに、北朝鮮の拉致問題は政争の中で脇におかれてしまいま
した。しかし、幸いなことに、昨年以来タイが政治の安定を取戻してきて、今の
首相はタクシンさんの妹でインラックという40代半ばの人です。美人というこ
とで話題になっています。

 またインラック首相はチェンマイ出身です。パンジョイさんと同郷人になりま
す。またタイの外務大臣もチェンマイの人です。それで被害者家族も大きな期待
を持っています。今年1月には外相と被害者家族が面会し、外務省内部の取り扱
いのレベルを上げ、課長から局長レベルになりました。他の部門も集めて会議を
しようということになっています。

 これと同時に、タイに独立機関があります。国家人権委員会という国家機関で
すが日本の公取のように独立していて、政府に勧告を出します。タイ人拉致問題
が、国家人権委員会の正式なイシューとして早ければ6月中にも結論が出て、タ
イ政府に勧告する可能性があります。

 こういう状況が合わさりますと、日本人拉致問題にとっても大きな問題になる
と思いますし、日本とタイが連携してこれに当たることで、あるいはアメリカ、
韓国とも連携することで北朝鮮に対する大きな圧力になると思います。

 まだどういう状況になるか分からないのですが、戻りましたらタイの家族とも
話して対応していきたいと思います。

以上



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■野田首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
下記をクリックして、ご意見を送ってください。
[PC]https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken.html
[携帯]http://form1.kmail.kantei.go.jp/cgi-bin/k/iken/im/goiken.cgi

葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 野田佳彦殿

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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