救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

ミサイル発射予告をどう見るか?東京連続集会65[3](2012/04/19)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2012.04.19-3)

島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)

 お手元の資料は、国家基本問題研究所(JINF)が出している会員向け「今週の
直言」の最新号で、私の訪米報告です。レジュメ代わりに用意しました。国基研
は櫻井よしこさんが理事長、西岡さんや私も役員に名を連ね、日本再生のため活
動している新興シンクタンクです。

「直言」のタイトルは、「極めて深い『ハトヤマ』日本への侮蔑の念」、残念な
がらこれが、今回訪米して切実に覚えた感想の一つです。

 3月18日から10日間のワシントン滞在中、ちょうど桜が、通常の年より2
週間早く満開でした。今年は「桜祭り100周年」で、日本大使館が中心になり、
1か月以上という長期間にわたり様々な行事を行っています。

 私が帰国する日の便のみ早くから予約で満席だったそうで、聞くと、100周
年の一環として日本大使館が呼んだAKB48のメンバー3人の搭乗便で、日本か
らの「追っかけ」グループが一斉に移動したためのようです。

 有能な外交官たち何人もがAKBに張り付きさまざまな世話に当たった。大使館
の内部からも、こんなことに長い時間を割いていてよいのかと疑問の声が出たと
も聞きました。外交をするため外交官になったのに、社交ばかりではないかとい
うことです。

 大使館がAKBの世話をしている間、民間人の私が、アメリカの有力議員の政策
担当スタッフや北朝鮮問題・中国問題の専門家と最新情勢について意見交換をし
ていた。これは本来、逆であるべきでしょう。何も私はAKBの世話をしたくない
し、向こうも嫌でしょうが、日本政府において軽重の感覚がずれているのではな
いか。いくら社交に日時を費やしても、政策が「ハトヤマ」流のままでは、それ
は徒花に終わり、信頼感は崩れていくばかりです。

 日米で13年間もかけてガラス細工のように組み立てた在日米軍基地再編計画
をハトヤマが愚かにも反故にし、その後の首相も手をこまねくばかりという状況。
日本政治にリーダーシップは生まれないのか、というのが今回繰り返し示された
米側の疑問の声です。

 そこにおられる韓国保守派の雄、洪?先生(元駐日公使)などは、李明博は話に
ならないと一刀両断ですが、鳩山由紀夫や菅直人に比べれば李明博大統領など稀
代の大政治家でしょう。韓国では、済州島における海軍基地の建設や米軍基地の
最前線から平沢(ピョンテク)への移転などを、親北左翼勢力の抵抗を排除して
進めています。それに対し、沖縄でのあの見るも無惨な混迷と不決断は一体何な
のか、「韓国ができることをなぜ日本はできないのか」というわけです。

 ハトヤマ的体質から日本政治が脱却できなければ、なぜあんな連中しかトップ
に選べないのかと、遠からず日本人全体が軽侮を招くに至るでしょう。

 政治が限りなく頼りない分、われわれ民間が一層しっかり意思表示し、少しで
も日本人の名誉を回復する他ないとも強く感じました。

 さて、私の「直言」にある「ライス・ヒル外交と現在の類似」についてですが、
2005年9月、ブッシュ政権が北朝鮮の違法資金の洗浄に当たっていたマカオ
の金融機関に金融制裁を発動しました。内容的には、米銀に口座を持たせず、国
際業務から事実上閉め出すという形です。もっとも米政府は、この場合「制裁」
という言葉は使わず、「戦略的法執行(strategic law enforcement)」という
言葉を用いています。

 これは政治的配慮から言葉を薄めているわけではなく、違法行為に対し厳密に
法を執行することの方が、中国が守らない貿易などの経済制裁よりも実際上の効
果は大きいという認識に基づくものです。北朝鮮の背後にいる中国が嫌がる圧力
をいかに掛けるかが戦略的ポイントになると思います。

 この「戦略的法執行」は、まさに中国の銀行を標的にしたから効果があったわ
けです。バンコ・デルタ・アジアに加え、その他の中国の銀行が次の標的になる
ことを恐れ、北朝鮮との金融取引を一斉に見直したため、北の資金洗浄に重大な
支障が生じたわけです。

 この金融面での法執行を、日米中心に再発動できるよう、仕組み作りや北と関
係のある金融機関に関する情報収集を積極的に行うべきだと思います。残念なが
らブッシュ政権の金融制裁は、わずか1年余りで、北の核兵器開発を話し合い解
決できるという「ハトヤマ」的迷妄に陥ったライス国務長官ヒル国務次官補の主
導で解除されてしまった。テロ支援国指定の解除以上に愚かな、ブッシュ政権最
大の失態でした。

 問題は、当時との状況が似ていると指摘する専門家が何人もいたことです。

 金融制裁の解除にはチェイニー副大統領らは反対で、「せっかく効いているの
になぜやめる。このまま追い込め」という姿勢でした。

 ところが、イラク情勢が泥沼化の様相を見せる中、北朝鮮まで急変事態になれ
ばやっかいだという発想が政権内で高まった。調整役であるスティーブ・ハドリー
国家安全保障担当補佐官も、「イラクが大変な時に北朝鮮が崩壊すると困る」と
いう見識のない言い方をしたと聞きます。

 崩壊したら結構な話ですが、なぜか制裁を緩めごまかしつつ先送りする方向へ
行ってしまった。ブッシュも、イラクで大量破壊兵器が発見できなかったことが
トラウマになり、対応全般が消極的になっていったようです。

 現在もイラン情勢が緊迫するにつれ、北朝鮮の方はとりあえず問題に目をふさ
いで先送りしたいという発想が、国務省を中心にあり、それが本年2月29日の米
朝合意につながったと言えます。共同声明すらなく、それぞれが合意内容と称す
るものを発表し、直ちにズレが明らかになるというお粗末なごまかしぶりでした。

 米保守派は口を揃えて、「国務省がまた騙されたが、今回は(北のミサイル発
射宣言により)騙されたことが2週間で明らかになったのが救いだ」と言ってい
ました。

 国務省の考えていた食糧支援は、その中身も極めて問題です。商品名「プラン
ピーナット」という、ピーナッツバターにビタミンや蛋白質を加え密閉された栄
養剤は、アフリカで飢餓に面している子どもたちにNGOや国連機関が配っている
ものです。

 アフリカの難民キャンプなら、子どもたちがその場で食べ有益でしょう。しか
し北朝鮮に渡せば、当然工作員の携行食品に横流しされます。英語で軍の携行食
をMRE(Meal Ready to Eat)と言いますが、「MREに最適ではないか」と指摘を
すると、面談した米側の人々も「確かにそうだ」と言います。

 国務省から、「この栄養剤は日持ちしないから備蓄に適さない」と説明された
と語った人もいます。ところが「プランピーナット」を作るフランスのメーカー
のホームページを見ると、「2年間保存可能」と宣伝しています。だからサハラ
一帯のような酷暑の地にも持って行けるわけです。

 国務省はもう一つ、「北朝鮮のエリートの食卓には絶対上らない。エリートが
口にするようなものではない」とも説明したと言います。しかし、北のエリート
が食べないイコール飢えた子どもたちに渡るということにはならない。北朝鮮の
場合、間違いなく工作員の携行食になるでしょう。

 つまり、「実質的にテロ支援になる」と言うと、早速国務省の担当官を呼んで
問いただすと述べた人も何人もいるので、今後米議会でも問題になるかも知れな
い。

 なお、「アメリカでは、いま誰が対北朝鮮政策を動かしているのか」と聞いた
ところ、はっきりしないという答がほとんどでした。

 政権中枢の意思や責任者がはっきりしないとなると、勢い、国務省の官僚機構
のペースでことが進んでいく。すなわち、宥和政策に傾いていくわけです。

 ここでイラン問題に触れると、イランの核兵器で最も脅威を受けるのはイスラ
エルです。イスラエルは国土が狭く、人口も700万人くらい、東京よりずっと
少ない。破壊力の大きい核爆弾を3発落とされれば、文字通り国が消滅します。
だからイスラエルは、生死に関わる問題として、イランの核施設に対する空爆も
辞せずという態度をとっています。

 イスラエルは、サダム・フセインの核開発が明らかになったとき、空爆で建設
中の原子炉を破壊しましたし、シリアが北朝鮮の支援で作っていた秘密原子炉も、
2009年、空爆でつぶしました。今回もその構えを見せています。

 一方、北朝鮮の核の脅威を最も受けるのは日本ですが、日本政府は以前から、
差し迫った状況下では、敵のミサイル発射基地への先制攻撃は憲法上許されると
の解釈を示していながら、そのために必要な能力の整備を全くしてきていない。

 いま北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射実験に対し、軌道をはずれ日本に落ちて
きた場合の迎撃の話ばかりしていますが、今こそ、敵基地攻撃能力の整備に政治
家は乗り出さねばならない。

 北京まで射程に収める敵基地攻撃力を持つ構えを見せれば、中国も少しは真剣
に北朝鮮を押さえに掛かるでしょう。日本が北朝鮮に先制攻撃を掛ける事態もあ
りうるとなれば、アメリカも北朝鮮問題は先送りといかなくなるでしょう。

 ところが現状では、イスラエルは本気だが、日本は本気でないから、まずイラ
ン問題に力を傾注しようという雰囲気が米側に見て取れる。日本にとって自業自
得と言うほかありません。

 先ほど増元さんも触れたアメリカ人拉致疑惑、デビッド・スネドン氏のケース
もワシントンで常に話題にしてきました。アメリカにおいては、北朝鮮にとって、
日本人、韓国人を拉致して日本や韓国を怒らせても怖くないが、アメリカ人を拉
致してアメリカを怒らせたら大変だから、まさかそんなバカなことはしないだろ
うという、ある種傲慢な発想も見受けられます。

 にわかに信じがたいという反応が、従って、かなりありました。だからこちら
がまず答えたのは、この件は日本や韓国発ではなく、他ならぬアメリカ人の専門
家、チャック・ダウンズというアメリカ有数の北朝鮮問題専門家かつ拉致問題の
構造に非常に詳しい人物が、北による拉致の可能性を指摘している事例なのだと
いう点です。ダウンズからじっくり話を聞いてくれるよう、どこでも言い添えて
きました。

 スネドン青年の家族も、最近になって、拉致の可能性について声を上げようと
の姿勢になり、日本の家族会・救う会・拉致議連との連携にも期待を高めていま
す。

 具体的には、4月27日に両親と兄夫婦が来日し、28日午後2時から日比谷
公会堂で開かれる国民大集会に参加、その際、拉致議連の代表や松原拉致担当相
とも面談の予定です。家族としては、拉致問題で意識が高く、知識も豊富な日本
で自分たちが活動し、それがアメリカのメディアに逆輸入の形で載れば、米政府
もより真剣に取り組むだろうとの期待があるようです。

 デヴィド・スネドン青年(失踪当時24才)は2004年の夏に、中国の雲南省
で忽然と姿を消した。その数か月前に米議会が北朝鮮人権法を通していて、脱北
者の保護受け入れを進めるとの規定もあります。それに対し北朝鮮は、アメリカ
人が脱北を幇助した場合、報復する旨声明を出しています。

 スネドン青年は雲南省に行く前に、北京にいるアメリカ人の友人の部屋に数日
間泊まっています。その友人は中国内で人権運動に関与した廉で、中国政府から
強制退去を言い渡されていた。当然、中国の公安はスネドン青年の動きもマーク
していたでしょう。

 スネドン青年が移動した雲南省は、東南アジア諸国に接しており、脱北者の逃
走ルートに当たっています。

 北朝鮮の特務機関の人間も少なからず要路に張り込んでいると言います。脱北
者を助けていると思われるアメリカ人を車に押し込み、逆ルートで北朝鮮まで連
れて行くというのは、充分可能かつありうる話だとチャック・ダウンズは強調し
ています。

 デヴィドの失踪後、お父さんと兄弟二人が雲南省まで足を運び、ハイキング・
ルートでの事故などの可能性も考え、デヴィドの拡大写真を胸に掛けて村々を尋
ね歩いたり、中国当局に米大使館を通じて照会したりもしていますが、手掛かり
が得られなかった。

 スネドン家はユタ州の出身で、私も今回の訪米に際し、スネドン家からの依頼
もあり、ユタ州選出のマイク・リーという若手上院議員の事務所を訪ね、政策ス
タッフと話をしてきました。拉致議連の代表もまじえ5月にも再訪米する際、で
きればリー議員にも会いたいと思っています。

 なお、直接北朝鮮とは関係しませんが、昨日、衆議院第一議員会館に国会議員
有志60名以上が集まり、チベット亡命政権のロブサン・センゲ首相さん招いて
話を聞いた上、中国共産党の人権弾圧に抗議する決議案を採択しました。今後、
国会決議にもなるように努力するとのことです。

 平沼赳夫・拉致議連会長や安倍晋三・議連最高顧問がセンゲ氏のすぐ脇に座り、
そうした決議がなされたということは、今後訪米した際に、チベット問題には関
心があるが北朝鮮にはあまり関心がなかったという議員との連帯にも道を開くよ
い動きではないか。後ろの席で傍聴しながらそう感じた次第です。

(4につづく)


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