救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮を取り巻く国際情勢?東京連続集会60報告2(2011/08/09)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2011.08.09-2)

◆ロスレイティネンさんを日本に招聘

 7月13日午前にイノウエ議員と面談、午後3時半からロスレイティネン議員
に会ったわけですが、「先ほどイノウエ議員に会った。拉致問題で尽力を約束し
てくれた」と話すと、ロスレイティネンさんは直ちにスタッフに対し、「イノウ
エ議員と連携を図りなさい」と指示していました。

 訪米団の活動が、下院共和党の有力者であるロスレイティネン氏と、上院民主
党の有力者であるイノウエ氏をつなぐ効果を持ったとすれば、大きな成果と言え
るでしょう。

 もう一つ、マーコ・ルビオという共和党上院議員のスタッフとも会いました。
保守派が最も期待を掛ける若手議員です。ルビオはフロリダ州選出で、以前、や
はり同州が選挙区のロスレイティネン議員の事務所で働いた経験があります。そ
れゆえ、ロスレイティネン法案の話をすると、「ルビオも注目するはずだ。ロス
レイティネン事務所と連絡を取る」と前向きの反応が得られました。

 イノウエ氏は議会の重鎮ですが、何分86才と高齢のため、いつ引退してもおか
しくない。若手の議員にも、日本としてぜひ拠点を作らねばなりません。

 ロスレイティネンさんの日本招聘ですが、日本で合同記者会見などをやれば、
北に対しても、背後の中国に対してもインパクトを与えるでしょう。逆に宥和派
にとっては、イヤな動きであって、妨害も起こりかねない。拉致議連を中心に、
要所への働きかけを強めてもらいたいと思います。

 ちなみに、ロスレイティネンはキューバのハバナ生まれで、カストロ全体主義
政権の抑圧を逃れ、両親とともにフロリダに亡命して、後年、議員になった人で
す。

 迫害され、苦労した経験を持つから必ずしも人権問題で原則的立場を取るとは
限らない。例えば、マデリーン・オルブライト元米国務長官は、ユダヤ系のチェ
コ人で、親族の多くが、ヒトラーによる迫害につづいてスターリンによる迫害を
受けていますが、北朝鮮に極めて宥和的でした。根っから鈍感なそういう人もい
ますが、ロスレイティネン氏は筋が通っていると思います。

 ところで、日本の議員には日教組教育と左翼学生運動の洗礼を受け、カストロ
やチェ・ゲバラを英雄視している人が多い。実名はあげませんが、以前の訪米の
際、拉致議連のある有力議員が、日本キューバ友好議員連盟の会長であるという
理由で、ロスレイティネン事務所から、「同席を認められない」と言われたこと
があります。

 ロスレイティネン来日は、日本の保守派にとって、北朝鮮以外の全体主義体制、
人権問題について再認識する機会にもなると思います。

【北朝鮮を取り巻く国際情勢】

◆支持率を上げるための秘密交渉では困る

西岡 最近話題になっている2つのことについて先にご報告します。

 まず、中井元大臣の北朝鮮の宋日昊大使との秘密交渉問題です。宋日昊という
人は、実は私も会ったことがあります。2003年12月に平沢勝栄、当時の拉
致議連事務局長が、「北京で北朝鮮の大使が出てくる。秘密に会いたい」という
ことを言われまして、「平沢先生を一本釣りしようとする工作の可能性がある。
慎重にしてください。拉致議連の事務局長という立場で行くんだったら一人で行
かないで、超党派だから当時の野党の民主党の先生を連れていってほしい。そし
て通訳に西岡を連れていったらどうか」と申し上げた。

 そうするということになって向こうに提案したら、「西岡が行くのだったらだ
めだ」と1回なったんですが、それでも平沢さんが折れなかったら、「西岡がき
てもいい」ということになって、北京に一緒に行きました。

 民主党からは松原仁先生が行くことになったんですが、たまたま日程が合わな
くて1日目は松原先生が来なかった。

 間に入ったのが吉田猛という統一戦線部の工作員と思われる帰化した在日朝鮮
人です。統一戦線部の工作員だと私が言う根拠は、1995年に当時の加藤紘一自民
党幹事長が50万トンコメを送った時に、加藤紘一さんに直接取材して、「なぜ
吉田猛にあなたの事務所の名刺を持たせて窓口に使っているんですか」と聞いた
ら、「吉田猛は直接金容淳と電話ができるんです」と加藤氏が言った。貿易商を
名乗っている人が統一戦線部のトップと直接電話できるということは工作員だと
いうことです。

 私が宋日昊に会ったのは、実は吉田猛という工作員が間に入っていて、その時
平沢さんが私に言ったのは、「横田めぐみさんと田口八重子さんを生きていると
いうふうに北朝鮮の大使が言うと言っている。そう吉田猛が言っている」。それ
ならば北京に行く価値があると思いました。5人の子どものことだったら外務省
に任せればいいんですが、情報を取るという面で意味があると思って行ったとこ
ろ、座って話が始まったら、「死んでます」と言った。

 平沢さんに目配せして、「帰りましょう」と言ったのですが、平沢さんは立ち
上がらないで、「5人の子どもを返す時に日本側は誰が迎えに行けばいいのか」
とか、「子どもを返してくれれば制裁法案の審議をストップする」とか色んなこ
とを言い始めた。

 宋日昊は日本語がぺらぺらで、平沢さんに「何回も平壌に来てください」と言っ
て、終わった後、平沢さんの部屋に二人でいたら、ホテルの内線電話で宋日昊か
ら電話がかかってきて、「西岡抜きで晩飯を一緒に食べましょう」とか、そうい
うことをやった人です。

 平沢さんはその後結局宋日昊の携帯電話の番号を直接入手して、「東京から宋
日昊と何回も電話していた」と、私は平沢さんから直接聞いています。

 そしたら彼は、「横田めぐみさんや松木薫さんなどは死んでいる」と、次の年
くらいから色々なところで言い始めるのです。根拠は何かというと、「宋日昊か
ら電話で聞いた」ということしかないんです。そういう工作をしている人が宋日
昊さんで、もう一人、宋日昊の工作にあったのが田原総一朗さんです。

 テレビで、「死んでいる。外務省もそう思っている」と言ったのですが、田原
さんは、岩波の「世界」という雑誌で、「めぐみさんたちは死んでいると自分は
思う」と書いた。彼が書いた根拠は、宋日昊と確か十何時間話し合った。宋日昊
の話に説得力があった、と。

 しかし、話に「説得力があった」ことで生き死にを決められたら困る。「証拠
を宋日昊が示した」というならそれは事実ですから、その事実を持っているなら
家族には最低限伝えるべきだと思いますが、それをしないで、説得力があったか
ら死んでいると思った、と言った人ですが、田原総一朗さんのような人も説得で
きるくらい弁が立つ、工作にたけているのが宋日昊さんで、今回、中井さんが宋
日昊さんと会ったとフジテレビと産経新聞が報道したんです。

 中井さんは未だに「会ってない」と言っています。しかし、私も色々なところ
で色々な話を聞き、産経新聞の報道は間違いないと思っています。「会っている」
というのは間違いないです。

 そして産経新聞の報道によると、「北朝鮮は拉致問題は解決済みだと言った」
ということです。そして、「中井大臣はこれまで数度宋日昊と会っている」。そ
して今朝の産経新聞によると、「首相官邸と事前に打合せして行った」というこ
とで、少し前のめり過ぎるかなと思っています。

 交渉の中で、誰かが間に入って、「めぐみさんたちは生きている」と言われて
一度くらい行くのはいいと思います。行ってみたら、報道によると、「解決済み」
と北朝鮮は言っています。「解決済み」というのは、3年前に北朝鮮が「解決済
みではない」と言った水準にも達していないわけです。そしたら、それ以上、そ
のラインを使うというのはどういうことなのか、という率直な感じはしています。

 また、なぜ漏れたのかという問題があります。フジテレビは同じ飛行機に乗っ
ていたのです。全部知られていたことを本人は分かっていなかった。ではどこで
漏れたのか。色んな仮説があるんですが、北朝鮮側が漏らしたか、中井さん本人
が漏らしたか、着ついていった対策本部の専門家の筋から漏れたのか、相談され
た官邸から漏れたのか、4つくらい考えられます。

 北朝鮮と中井さんはまだ続けて交渉をしようと言っていて、秘密で交渉しよう
としていたんですからその二つのルートからもれたとは考えにくい。分かりませ
んが、あまりにも前のめりな交渉を、退任を言明している総理がやっているとい
うことについて、心配した日本国内の勢力がリークしたのかなという印象を持っ
ています。

 その点では、日本の関係部署の中にも大局を見ることができる人がいたのかな
と、後ろから見ていて思います。日本側はもちろん拉致問題を解決したいという
ことがありますが、全員生きていると北朝鮮が言うのなら、ばれないように秘密
で交渉をやってほしいと思いますが、交渉の中身が「解決済み」であるにもかか
わらず、自分の退任を延ばすために外交で点数を稼ぎたいとか、そういうことで
交渉されると大変困る。

 前回、前々回のこの集会でも言いましたが、北朝鮮側が困ってきて、日本に接
近せざるをえない状況ができつつあります。日本は困ってないわけです。菅総理
は支持率が落ちていることで困っているかもしれませんが。アメリカも韓国も国
内で様々な動きはありますが、拉致問題について明らかに敵対するようなことは
だんだんなくなってきています。国際包囲網は少しずつですが、できている。

 特に韓国が、過去10年間の左翼政権時代とは違って、一定程度原則を貫いて
無条件の支援をやめたというのが北朝鮮にとって大変なダメージになっている。
金正日が自由に使える外貨が減ってきている。あるいは枯渇しているかもしれな
いという状況の中で日本に目を向けてきていますが、その時、国民の世論の下で
制裁をし、国際連携しながら北朝鮮を追い込んできているという我々にとってよ
い状況を、自分の支持率を上げるというようなことで使ってもらっては困ると強
く思います。

 交渉はやっていただきたいですが、やるならきちんと筋を通して毅然とした交
渉をやっていただかなければだめですし、日比谷公会堂(5/8国民大集会)で皆
さんに配りましたが、日本政府は、北朝鮮が死亡と言っていることについて、
「違う」と全員について言っています。

 日本政府の見解が、「全員生存を前提にする」と言っているわけですから、そ
れについて「何人かだけでいい」等ということを、こちら側から言うようなこと
があるならばそれは背信行為で、政府が言っていることに対して政府が裏切って
いることになります。そんなことをするために拉致対策本部があり、担当大臣が
あるのではないと信じますので、きちんとした交渉をしていただけるのであれば、
状況は悪くはないと思います。

 ここで何度も言ってきたことですが、三度目のチャンスが来る、と。2回チャ
ンスがあったけど、日本はそれを生かしきれなかった。それが金丸訪朝と小泉訪
朝だったわけですが、それぞれ北朝鮮が困って日本に接近してきたわけです。今
回もそれに似たような状況が起きつつある中で、しかも3度目のチャンスでは対
策本部があり、担当大臣がいるという枠組みでことが起きる。

 小泉訪朝の時は安倍さんや中山さんは、副長官だったり参与だったりで政府内
の重職ではなかった。政府内には家族支援室しかなかったわけですが、今回は拉
致問題解決のための大臣がいて、事務局があり、予算がついている中で、話が来
つつある。

◆北朝鮮の指導を未だに受けている20人のよど号犯子女

 そういう中で一番心配なのは総理自身の問題です。そして出てきたのが献金問
題。まだよくは分かりません。なぜ市民の党に菅総理のところからあれだけの金
が出ているのか。市民の党の人たちが民主党の選挙を手伝ったことと関連がある
のは間違いないようです。

 その市民の党が三鷹市議会議員選挙に擁立した森大志という男は、北朝鮮で生
まれて、日本革命村というよど号グループが住んでいたところで自主革命党とい
う労働党に言われて作った革命政党の洗脳教育を受けて日本に戻り、パスポート
を得た。

 よど号犯の子ども20人が連絡を取りながら、多分北朝鮮との間で連絡を取り、
あるいは北朝鮮に行っている可能性が充分にある。未だに自主革命党として金正
日から日本革命をしなさいと指令を受けているのですが、そのことについて彼ら
は何もしゃべっていない。

 例えば、八尾めぐみさんという有本さんの拉致の実行犯の一人がいますが、そ
の20人の中には八尾さんの子どもも二人います。しかし、八尾さんは日本に帰っ
てきた子どもに会っていない。「お母さんは裏切った」と言って、お母さんのと
ころに来ないわけです。拉致のことを話したから、あるいは金正日が自衛隊の中
にスパイを作れと言われ、それをやっていたことを話したから裏切りということ
になった。

 もう一つ、福留さんの子どもも二人います。北朝鮮は福留さんが亡くなってい
ると言っていますが、事故死ではなく、もしかしたら粛清されたのかもしれない。
実の子どもが日本に帰ってきているけれども、お母さんはモンゴルに行きたいと
いったのだけど、だまされて北朝鮮に連れて行かれたということを子どもたちが
聞いていたのかどうか。その子どもたちも森大志の仲間の中にいて、自由にお母
さんたちのことを話すような状況ではない。つまり党活動を未だにしているので
す。

 朝鮮労働党の指導を受けているダミー政党である自主革命党の党員を市民の党
は候補者にした疑いが濃厚なわけです。その地下水脈でいったい何があるのか。
日本のよど号グループ、赤軍派という過激派と、市民の党をやっている、昔左翼
の学生運動をやっていた人たちの人脈的なつながりが充分あります。

 犯人の息子を擁立したからけしからんというよりも、北朝鮮で日本革命のため
に専門的に教育を受けていて、それが「間違っていた、日本で普通の市民になり
ます」と公開の席で一度も言っていない人がグループで活動している。そして北
朝鮮の指導を未だに受けているところに菅総理が多額のお金を流していた。

 そういう人が前のめりで交渉するということは、大変不安であるわけです。も
ちろん日本は言論の自由があって、野党もあり、様々な批判がされますから変な
ことはなかなかできないようになっていると思いますが、辞めるとおっしゃった
以上早くきちんと別の体制ができてほしいと思っています。

◆食糧支援は飢えた子どもの口には入らない

島田 6者協議再開への動きが出ていて、その絡みで対北食糧支援の話が浮上、
国務省は前向きという印象を受けました。国務省では7月11日にカート・キャン
ベル国務次官補と新しい6者協議担当特使クリフォード・ハート氏、さらに12
日にロバート・キング北朝鮮人権問題担当特使、つづいてビル・バーンズ次期国務
副長官と会いました。

 彼らとしても北朝鮮に食糧支援をした場合、家族会や拉致議連がどう反応する
のか知りたい面もあったようです。

 訪米団からは食糧支援には反対すると強調しました。理由は、食糧支援が飢え
た子どもの口に入らず、逆に抑圧側の秘密警察の体力維持に使われるため非人道
的であること。かつ北朝鮮が核・ミサイル開発に費やしているカネを回せばいく
らでも国際市場で買える以上、食糧支援は、間接的に核・ミサイル開発を支援す
るのと変わらないことなどです。

 ロスレイティネン議員は完全に同意を表明しました。食糧支援反対をいうと、
飢えた子どもたちを放置するのか云々の悪宣伝に晒されやすいわけですが、日米
有志の議員の連携は対抗する上で大きいと思います。

 ロバート・キング北朝鮮人権問題担当特使は、拉致問題に同情すると一般的な
話で終わろうとしましたが、食糧支援について具体的考えを再度聞いたところ、
「しっかりしたモニターが必要」、「まだ北朝鮮と合意はできていない」などと
語りました。

 その中で、「モニターでは、例えば子どもの腕の太さを食糧供与前と後で測っ
て、太くなっていれば実際口に入っている。そういうやり方がある」と言ってい
ました。

 これは誰が考えても子供だましで、北当局は、特定の子どもだけに食べさせる
といった操作を行うに決まっている。軍や秘密警察に回らない食糧支援など、金
正日が受け入れるはずがない。金正日が受け入れるということはごまかす算段が
付いたということです。

 ロスレイティネン議員の補佐官ハルピン氏は、短い立ち話の中ですが、「来年、
金日成生誕百周年があり、幹部の忠誠心を買うため食糧などを配らねばならない。
ところが食糧が底をついてきたためアメリカや韓国から騙し取ろうとしているの
だろう」と分析していました。

 マイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長は、「金正日は核実験
を考えているようだ。核実験すると食糧支援を取れなくなるので、その前に食糧
を掻き集めようとしているのではないか」と述べていました。

 現地での炊き出し方式で子どもたちの口に入るならまた別ですが、体制側に渡
る食糧支援は断固反対するという点でロスレイティネン議員とわれわれの意見は
一致しました。

 拉致議員のメンバーも、「こちらが言いたいことを、ほとんど先にロスレイティ
ネンに言われたね」と話していました。

 6者協議を、私は以前から猿芝居と呼んできました。そこにいる西村幸祐さん
などは「田舎芝居」と評していましたが、私は福井の田舎に住んでいるので「田
舎芝居」という言葉には抵抗がある。

 しかし今や、猿芝居であれ田舎芝居であれ、ばかばかしいが無害という印象を
与えるためやや適切を欠く。はっきり6者協議は有害無益と言うべきだと思いま
す。
◆北への食糧支援?日本はWFPへの拠出金を削れ

 北朝鮮問題のガンは中国です。今回、金融制裁を担当している財務省のグレイ
ザー次官補と面談しました。

 かつて北朝鮮は、違法資金のマネーロンダリングを、ほぼ集中的にマカオの銀
行バンコ・デルタ・アジアを通して行っていた。アメリカは2005年9月、ここを
ターゲットに制裁を発動しました。具体的には、バンコ・デルタ・アジアには今
後アメリカの金融機関に口座を作らせないというものです。アメリカの金融機関
に口座を作れなければ国際取引ができない。貿易業者を中心に、そんな銀行は使
えないというので、一斉に引き出しに走った。

 グレイザー氏は、驚くくらい効いたと言っていました。その年の内に、北朝鮮
をほぼ追い詰めるところまでいった。バンコ・デルタ・アジアのみならず、中国
銀行など他の疑惑金融機関も、恐れをなして取引をやめた。その波及効果が非常
に大きかったというのです。ところが、ライス・ヒル・コンビ(国務長官と次官
補)が、6者協議を進めるカードとしてこの金融制裁を放棄してしまった。

 これが6者協議の具体的な危険だと思います。つまり、最初は協議の呼び水に
食糧支援くらいはと、そこから始まるんですが、一旦始まると、「せっかく動き
出した流れを止めちゃいけない」となる。北朝鮮は事あるごとに因縁をつけ、協
議から離れるそぶりを見せます。食糧をただ取りされると、交渉担当者は責任問
題になりますから、もう少し追加援助することで次回につなげたいと思う。次第
に絡み取られていくわけです。ライス・ヒル・コンビもどんどん深みにはまり、
ニューヨーク連銀を北の闇資金送付に使わせるなどなりふり構わぬところまで行っ
た。だから早い段階で、ノーを突きつけておかねばならない。

 先日国会で、食糧支援に関する山谷えり子議員か塚田一郎議員の質問に対し、
中野寛成・拉致問題担当大臣は、アメリカの問題だからコメントできないと答弁
していました。中野さんはロスレイティネン招聘に積極的に動くなど、具体的な
部分で評価できますが、あの答弁は官僚的と言わざるを得ない。

 拉致問題担当大臣として、あくまで一般論と断ってもいいですが、北朝鮮への
人道支援は人道的でないし、核・ミサイル開発のカネを回して調達すればよいな
どとはっきり答え、対外的メッセージとすべきです。アメリカ政府の食糧支援に
異を唱えるだけでなく、同じ理由から世界食糧計画(WFP)などの対北食糧支援
にも反対すべきです。日本はWFPに相当資金を出しています。北に食糧支援をす
るなら日本からの拠出金を減らす、くらいの意思表示は当然です。

 国連も経済制裁の対象と位置づけるべきで、例えば米議会では、国連の行政改
革などを求め、たびたび拠出金を止めてきました。日本も大震災で財政が厳しい
今こそ、強く踏み込むべきです。

◆秘密接触は食糧支援と朝鮮総連への締め付け解除が狙いか

西岡 食糧支援のことがでたので、今も別のところで水面下の交渉があるかどう
か分かりませんが、日朝の色々な交渉が展開することを前提として、確認してお
きたいことがあります。

 北朝鮮が日朝交渉を仕掛けてくるとすると、2段階の目標をもってくると思っ
ています。一つは日朝国交正常化までいって、田中均局長が約束したと言われる
1兆円の金を取りにくるということです。しかし、日本側は拉致問題の解決を国
交正常化の条件にしている。世論も落ちていないという状況の中でどうするのか
ということですが、本当に1兆円がほしくて全員返すことを北の内部で検討され
るのかどうかを見なければいけません。もう一つ当面の目標がコメ支援と朝鮮総
連に対する締め付け緩和です。その当面の目標のために接触をしてくる可能性も
充分にあると思っています。

 島田さんはアメリカのコメ支援にも反対しなければならないと、そして今回の
訪米団もそういうことをやってきたのですが、一方で日本に対してもそういうこ
とがでてくる可能性があるので、それを確認しておかなければならないというこ
とです。

 今、日本政府は北朝鮮への人道支援をどうしているのか。日本政府は北朝鮮へ
の人道支援も止めています。これはアメリカよりも韓国よりも厳しいのです。
WFP等が北朝鮮への支援を決めたとしても日本は参加しないという姿勢です。

 その理由は2004年12月に、北朝鮮が提出した遺骨が偽物だということが
分かったことを初めとして、北朝鮮が死んだといって出してきたものが皆信用で
きないものであったということです。人道援助求めて現在に至っている。当時小
泉総理は2回目の訪朝の時に、人道支援25万トンの食糧支援を約束しました。
その半分12万5千トンは、再調査が始まる時に出してしまった。しかし、約束
した12万5千トンが残っています。出てきた回答があまりにもでたらめだった
ので、その12万5千トンの約束をこちらがキャンセルしました。あまりにも非
人道的なことをした、と。

 それは小泉政権時代に起きたことですが、その後安倍政権時代に、拉致問題に
関する6項目の政府方針が立てられた。その第2項に、「現在、政府としては、
北朝鮮に対して、人道支援の凍結措置(平成16年12月28日発表)(略)等を講じ
ているが、今後の北朝鮮側の対応等を考慮しつつ、更なる対応措置について検討
する」と「人道支援凍結」が明記されています。12万5千トンは、北朝鮮が約
束を破ったから臨時に止めているということから、安倍政権時代の6項目方針で、
「北朝鮮が拉致についてきちんとした対応をとらないので制裁をかけている。そ
の制裁の一つとして人道支援を凍結している」ということが明記されたのです。

 ところが民主党政権になってその6項目が廃棄されてしまった。しかし、菅政
権になって、中井大臣が代わった後、柳田大臣時代に準備されていたものが仙谷
大臣の時に8項目となって、ほぼ同じ内容が復活しました。そこでも、「北朝鮮
側の対応等を考慮しつつ更なる措置についての検討及び現行法制度下での厳格な
法執行の推進」と明記されている。しかしそこでは人道支援の凍結を含む具体的
に今どの様な制裁をやっているかということは落ちている。

 今回色々な水面下の折衝の中で、例えばアメリカもコメ支援をする、韓国もす
るというようなことになった時に、日本に対しても、北朝鮮に直ではなく国際機
関を通じてやったらどうかという話が出てくる可能性は充分にある。

 その時に、民主党政府は、自民党時代に決めた人道支援凍結という制裁を解除
するのか。この制裁は偽の遺骨が出てきた時に決めた制裁です。北朝鮮が、あの
遺骨は偽物だったと認めないのにこれを解除したら、こちらが北朝鮮の「死亡」
という説明を認められないという主張が弱まってしまうことになりかねない。そ
の辺についてまず頭の整理を皆さんにしておいていただきたいと思います。

 それからもう一つ。朝鮮総連の問題ですが、実は今一番専門家の間で注目され
ているのは、いつ最高裁判所の判決がでるかということです。朝鮮総連の中央本
部が競売にかけられる直前まできているのです。政府機関であるRCC整理回収機
構が朝鮮総連を相手に民事訴訟を起こしています。

 朝銀信用組合がつぶれた時の不良債権の一部をRCCが引き継いで、お金を借り
た書類上の名義人は朝鮮総連ではなく、ペーパーカンパニーだったり個人なんで
すが、600億円分は朝鮮総連としか思えないといって、朝鮮総連に返せという
裁判を起こして、RCCが勝っているんです。しかし朝鮮総連はお金がないので中
央本部を差し押さえる。実はそれ以外の学校とかはすべて担保に入っています。

 担保に入っているところは裁判をしなくても差し押さえができますが、中央本
部は、朝鮮総連が担保に入れていなかったのです。担保に入れてなかったが朝鮮
総連が民事訴訟で負けたから差し押さえができる。すると朝鮮総連は、あの中央
本部は朝鮮総連の持ち物ではないと言った。株式会社○○で登記していると。

 しかし、登記はそうでも朝鮮総連の持ち物と見なすべきで差し押さえできるか
どうかの裁判が、今最高裁にいっている。朝鮮総連側は負けることを覚悟して一
部引越しを始めたという状況です。

 そこで例えば日朝国交正常化の時の資金で払うから差し押さえをやめてくれ、
というような交渉が水面下で行われる可能性があるのです。向こうはそういうこ
とをしたいと思ってくるでしょう。つまり、日朝国交正常化まで求める交渉の中
で拉致が動くのか、コメと朝鮮総連への締め付けを緩めてくれということで見せ
かけの調査委員会をもう1回作るとか、何人かの人を出すということでそういう
ものを取りにくるというシナリオも考えられる。

 そして何か一部進んだかのようにして自分の支持率を上げるために政治家が利
用するシナリオだってありえる。認定、未認定に関係なく全員を取戻すことにつ
いて絶対譲歩できないという世論と、そのことに同意してくれる政治家の力を結
集して水面下の交渉、そして実際の交渉に当たらなければならない。

 色々なくせ球を向こうは投げてくると思われますが、向こうが当面取ろうとす
るのは食糧と総連に対する締め付けを緩めるということではないか。実際、2回
目の小泉訪朝の時は、朝鮮総連に対する差別を改善するということを約束し、小
泉総理は日本の総理大臣として初めて朝鮮総連の大会に自分のメッセージを送っ
たのです。そして食糧支援を約束した。

 これに対し、北朝鮮は偽の遺骨を出してきて終わりにしようとした。しかし、
それがばれたので食糧支援を凍結し、安倍さんが6項目の中で「人道支援凍結」
を書き込み、厳格な法執行も6項目方針に書き込んだわけです。朝鮮総連の違法
行為を厳しく取り締まる厳格な法執行は、鳩山政権で一度無くなりましたが、菅
政権になって厳格な法執行が復活する。

 最近、警察がかなり北朝鮮のスパイ事件をかなり挙げ、日本にはスパイ防止法
がないから軽い犯罪ですが、その人たちがどういうことをやっているかが産経新
聞によくリークされています。よくやってるなと私は見ていますが、その辺が北
朝鮮の痛い所で、そこがどうなるのかを息をのみつつウォッチしています。

 我々としては9月4日に星陵会館で集会を予定しています。「生きているのに
なぜ助けられない!政府は北朝鮮に『調査やり直し』約束の履行を強く迫れ!
9/4緊急国民集会」です。3年前に北朝鮮が調査のやり直しをする、拉致問題を
解決済みとは言わないと約束したのに、突然その約束をキャンセルしたのが9月
4日です。満3年にもなるのに「調査やり直し」の約束を果していない。石の上
にも3年じゃないか。対応がなければ追加制裁をしてほしい、と。

 6月のデモもそれを目的としてやり、それに対し菅総理が拉致対策本部の会合
を開いて、「北朝鮮に対して働きかけを強めよ」、「9月になっても何もしなけ
れば対応を検討せよ」という総理指示まで出ています。実際に9月まで何が起き
るのか。水面下での交渉が今起きているわけですが、何も動かなければ拉致を理
由に制裁を強めるべきだという声を9月4日に挙げて、政府にもう一度要請文を
持っていく。9月いっぱいを期限にして、それでも北朝鮮が何もしないのに3年
経っても追加制裁をしないのであれば、8項目方針に違反しているじゃないかと
言って集会やデモ以上の行動も辞さない、具体的に言うと座り込みを検討してい
ます。

 もちろん何が起きるか分かりませんから、そこまでの間に事態が進展していれ
ばそれを見て判断したいと思います。運動方針で決めた運動を続けていきながら、
状況を慎重に見守っていかなければいけない。

 色々なことが同時多発的に起き、北朝鮮はアメリカや韓国にも触手を伸ばし始
めていますから、その中での連携も考えながら、拉致で日本は絶対譲歩しないと
いうことを発信しながら9月4日に向けて進んでいきたいと思っています。

 是非緊急国民集会にお集まりいただきたいと思いますし、これは家族会・救う
会・拉致議連3団体で主催したいと思っています。また櫻井よしこさんが司会を
してくださることになっています。

◆日本が納得できるまでは拉致問題解決と見なさない

質問 「全員取り戻す」ということだったが、特定失踪者の扱いはどうするのか。
米国と「全員」についての考えを共有しているか。

島田 ロスレイティネン法案では、「日本政府及び韓国政府が認定している拉致
被害者の問題が解決されるまでは米朝国交正常化してはいけない」という書き方
になっています。厳密さを要求される法案では止むを得ない面もあります。以前、
もう亡くなったヘンリー・ハイド下院外交委員長が、私や増元さんの働きかけも
受け、北朝鮮拉致非難決議を下院で通してくれましたが、その時は、「13歳で
拉致された子どもが二人いて、横田めぐみさんと寺越武志さん」と政府認定され
ていない寺越武志さんも入っています。法案より拘束力の弱い決議案なら、それ
も可能だったのでしょう。いずれにせよ、米側に一定の認識はあるので、問題は
政府認定を増やすなど日本側の対応だと思います。

西岡 表現のしかたについて、もう少し国際社会にアピールした方がいいと思い
ます。特定失踪者は可能性のある事案ですので、それを直接出すというのは限界
があります。そこで、「すべての拉致被害者を取戻すという点で日本は譲歩して
いない。ただ全員が何人かは日本政府は分かっていない」と言うべきだと思いま
す。

 外国人記者からよく質問を受けます。「一体何人ですか」とか、「500人帰っ
てこないと国交正常化しないのか。拉致でない人もいるのじゃないか。拉致を解
決するつもりはなく嫌がらせで北朝鮮を追い詰めようとしているように外からは
見える」とか。

 これに対し、「全員ということは譲歩できない。それは国際的にひどい要求で
はない」と答えます。そして例えばとして、6者協議の5か国は、「すべての核
物質の北朝鮮からの持ち出し」を求めているが、「すべて」が何キロか分かって
いない。北朝鮮しか分からないのです。6者協議の枠組みでは、北朝鮮が申告す
る。他の5か国がそれを調べて納得しなければ彼らに申告を出し続けさせる。我
々も同じだ、と答えます。

 何人拉致したか知っているのは北朝鮮だけです。だから合同調査は絶対にしな
い。彼らが申告してきたものについて、こちらが持っている情報で検証して、こ
れで全員だと日本政府が納得できるまでは拉致問題が解決したと我々は見なさな
い。これはアメリカ等が北朝鮮に要求している水準と同じです。国際法上無理な
ことを言っているわけではない。自国民が一人でも残っている限り解決だとは言
えない、と答えています。

 だから認定被害者の問題を解決するのではなく、すべての拉致被害者が帰るま
でとロスレイティネン法案を書き変えさせる努力は必要と思います。以上の点は、
斎木昭隆アジア大洋州局長(当時)と話をして、完全に一致したところです。

以上


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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 菅 直人殿

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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