救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

悪に対する憤りが救出をもたらす?連続集会47報告2(2009/07/29)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2009.07.29-2)

平成21年7月16日、救う会・救う会東京は第47回連続集会を開催した。
今回の講師は、韓国随一の拉致問題専門家である洪●(=榮の木を火に、ホン・
ヒョン)氏(早稲田大学客員研究員、元駐日韓国大使館公使)で、「流動化する
北朝鮮情勢 今何をなすべきか」というテーマで語って頂いた。また、来日中の
趙甲済氏(「月刊朝鮮」元社長)にも飛び入り参加をお願いし、コメントを頂い
た。

■悪に対する憤りが救出をもたらす?連続集会47報告2

西岡 洪先生は私の朝鮮問題の先生です。20年以上に渡って色々なことを教えて
いただいています。北朝鮮問題を考える時のABCのAとして、「金正日を悪魔
だと思うこと」と最初に教えてもらいました。事実関係をきちんと押さえるだけ
では北朝鮮のことは分からないということです。

◆金正日と北朝鮮に禁断症状が
洪●(=榮の木を火に、ホン・ヒョン) 最近の北朝鮮がどうなっているかにつ
いてですが、今の時代は総理大臣と普通に人々が知っている情報の差はほとんど
ありません。昔は権力者が情報をいち早くキャッチしたりすることがありました
が、今はそういうことはなくなりました。平壌でミサイル発射の気配があるとい
う情報は、直ちに報道されます。10年くらい前までは極秘情報でした。一部の国
を除けば、世界中の情報を誰もが平等に持つことができます。我々だけが知って
いる情報ということはもうありません。

最近は、金正日がすい臓癌にかかったという話が報道されていますが、これは
全く意味がない。ここ3年くらいの写真を並べてみると、常識的に考えて、すい
臓癌であれなんであれ、彼はあと1年くらいかということです。そのように科学
的に考えるべきで、細かい情報にふりまわされる必要はないと思います。では後
継者は誰なのか。皆さんは非常に関心を持っている。今まで顔も知られていない
息子が後継者に決まったらしい、とか。

私は、近代国際法上の主権国家の定義を変えなければならないと思っています。
指導者になる人の奥さんも家族も分からない。その子どもが何歳かも分からない。
そういう人が権力を継承すると国連が主権国家として認めるべきかどうかという
ことです。これは、近代国際法の矛盾だと思います。

今日おいでの趙甲済社長の勧めで、9世紀に慈覚大師圓仁が唐に渡った時の「入
唐求法巡礼行記」を読みました。改めて感じたのは、昔の人はみんなまともに生
きていたということですね。我々もテレビが出る前は、本を読んだり、頭で考え
る習慣がありました。今のように情報が氾濫すると、テレビの映像を見た瞬間、
それを事実と思ってしまう。段々考えなくなってしまう。金正日の問題でも毎日
テレビで映像が出ます。我々は集団的に洗脳されているのではないかという気が
します。

今、北では、「国防委員会」というのがあります。昔の労働党の政治局に相当す
るものです。中国共産党の政治局に相当するのが北朝鮮では国防委員会らしいで
す。これにすべての権力が集中している。ここに「偵察総局」というものが新しく
できました。私がここに関心を持つのは、拉致を行った工作機関である作戦部、
そして軍の偵察局などがここに集中しているからです。多分この偵察総局が先週、
韓国に対して初めてサイバー攻撃をしかけた。これは戦争です。今回は警告に過
ぎなかったと思いますが、私は、この攻撃の前に、西海岸の白?島(ペンニョン
ド)への攻撃が先だろうと思っていました。今回は、韓国政府の中枢部に対して
テロ攻撃、戦争が始まりました。もし、航空会社や、銀行などに向けられたら、
韓国ではしばらくは飛行機が離着陸できない状況になったと思います。つまり、
北は事実上戦争を始めたわけです。

何のために戦争を仕掛けたのか。簡単に言いますと、金正日は他の国の指導者
と比べて任期の制限がない。彼が権力をとってから、日本の麻生総理は20人目の
総理です。オバマ大統領は8人目、李明博大統領も8人目の大統領です。しかし、
今度は、オバマ大統領、李明博大統領の任期中に彼の「任期」が終わるのです。医
学的寿命が終わってしまう。彼はそれをはっきり意識している筈です。だから焦
りがある。自分が死んだらどうしよう、自分はどういう死に方をするだろうかと
気にする面があると思います。これが一つの要因。

もう一つは、韓国で政権が変わりました。金大中、盧武鉉は10年間、無闇に北
に支援しました。彼らは「民族共助」と言いますが、無条件的に支援してきまし
た。金正日はこれに完全に頼るようになりました。それが断たれた瞬間、ある意
味で、禁断症状を起こした。医学的な寿命の問題と、この10年間生き残れた最大
の秘密の延命策が断たれたということです。

◆情報組織のインフラを持っていたのは北朝鮮だけ
今日は拉致問題が大きなテーマですから、日本の外から見た拉致問題について
も話したいと思います。私は、拉致という国家犯罪を指揮してきた金正日以外の
他の人を批判するつもりはありません。もちろん拉致の実行犯の一部は許しがた
い罪を犯しているのです。が、大部分は北で生まれ、ロボットみたいに訓練を受
け、犯罪に加わったわけですから、許せない対象ではないと思います。

金正日が死んだ後、どういう体制が後を受け継ぐのか。それを我々が認めるの
か。その時、この問題をどう取り扱うかという問題のためには、拉致問題を客観
的に振り返ってみなければならないと思います。

朝鮮労働党の予算の3分の2は「対南工作」に使われたと言われています。脱北者
の話によりますと、労働党の中央本部は、昔は2,000人くらいだったが、金正日
時代になって10倍にふくれあがった。

南北の対決で勝負がつくのは、結論的に言えば、1948年です。韓半島の南では、
自由、民主主義と市場経済になります。韓半島の北では拡大再生産とは全く関係
がない独裁体制、計画経済になります。この時始まった南北の競争は、時間が経
つほど、差が開くようになります。これはどうしようもないことです。彼らは何
をもって挽回しようとしたのか。それが政治謀略工作で、韓国の体制を転覆する
ことです。朝鮮労働党の目的は、党の綱領にはっきり出ています。「韓半島の赤
化統一」です。朝鮮労働党がこれを変えない限り、また朝鮮労働党を解体しない
限り、これは変わらないのです。

北の工作というのは、我々が常識で考えるような情報収集ではありません。韓
国の中に、韓国を革命するための強力な地下の前衛党を作ることです。そのため
の工作活動は普通の工作員ではできません。長い訓練が必要です。1945年に南北
が分断されてからは、北の工作員が南に浸透する時は、「必ず誰かを連れて帰還
せよ」と命令されています。そして北が彼らを訓練し、使い物になれば、南の「
地下党」に派遣することになります。他の国の工作活動と北の工作活動が違うの
は、工作の目標が違うからです。北は、国ができる前の1945年から略取・誘拐を
行っていたのです。

また、いろんな証言や情報で分かったのは、1945年から日本と北との間には秘
密のルートがあり、人の往来があったそうです。ところが時間が経過すると事情
も変わってきます。昔は日本語を日本人と同じように話せる人が工作員として使
われることが多かったのですが、彼らが歳をとるとともに、新しい人が必要にな
ります。いわゆる人的資源がどんどん消耗しますからそれに合わせて、戦略や戦
術も変わるのです。

金正日が登場し、前の「革命一世代」を退場させ、北の党予算の3分の2を握る
対南工作組織を抑えることで権力の完全掌握が完成します。この時(1976年)、
彼は、ただ歳をとったからやめろではまずいので、対南工作の総括をします。そ
して対南工作が間違っていたとして辞めさせ、そして新しい方針を打ち出します。
労働党の存在目的である韓国の赤化統一のための重要な方針転換の一つとして打
ち出されたのが、「新世代工作員」の養成です。そのための外国人の拉致。このあ
たりは皆さんもご存知のことと思います。

1975年から今まで、金正日は北朝鮮労働党の組織指導部長など対南工作の重要
部署は自分が直接兼任しています。この34年間、それがどういうレベルの、政治
謀略でも、テロでも、すべて金正日の指導によって行われました。つまりこれを
終わらせるには、金王朝が変わらないと、路線が破棄される可能性は非常に少な
いということです。

もちろん、冷戦時代に、平壌だけが拉致をやったのかというとそうではありま
せん。色々な国がやっています。例えば、ナチスドイツのアイヒマンなどユダヤ
人虐殺犯を追跡したイスラエルが、南米からイスラエルに連行したなど色々な例
があります。日本では有名な金大中拉致事件があります。

しかし、冷戦時代の拉致やテロなどの全貌がすべて明らかになるのはまだ少し
早いです。多くは解明されましたが、平壌(金正日体制)が解体されるとものすご
い姿が明らかになると思います。金正日時代が終わるのを望まない人は、金正日
との関係で後ろめたいことがある人じゃないかと思います。例えば金大中。もし
金正日政権が崩壊してしまえば自分が困るので、金正日を助けるために必死に頑
張っています。国際社会でも、金正日を助ける国は自分たちが不利になることを
恐れる国だと思います。

平壌だけの独特の工作目標のためには情報組織のインフラが必要です。インフ
ラがうまくできると工作は成功します。北はそのために国のすべての資源を使い
ました。私は、金勝一・金賢姫が持っていったパスポート、辛光洙が持っていっ
たパスポートや他の色々な偽者のパスポートを見学したことがあります。韓国な
ら、そういう偽造の真似を企業はできるかも知れませんが、政府は絶対できませ
ん。価値観が違う国ですから。彼らはそこにすべての資源を注ぎ込んだのです。
自分が持っているすべてを投資したところで失敗しますと、すべてを失敗するこ
とになります。

北は、「背乗り」のためには日本人を拉致するしかなかったのです。実際にい
る人を拉致して成り代わる。例えば辛光洙ですね。しかし、日本に入国しない場
合は、拉致は必要ない。適当なデータがあればいい。例えば(大韓航空機事件の
時の)蜂谷真由美と蜂谷真一の場合は、金賢姫と金勝一が成り済ましました。二
つの方法があるのです。一つは日本人を拉致して日本人に化けた工作員。もう一
つは、別の形(外国人に成り代わる)です。私は、多数の北の工作員が日本に入っ
ていると確信しています。その事例が韓国に幾つかあります。アラブ人に化ける
とか。(金正日の長男の)金正男は、ドミニカのパスポートで日本に入国してい
ます。それが偽造パスポートだということを日本政府は知りませんでした。他の
国からの情報で、偽物だと分かったのです。(金正日の料理人だった)藤本さん
が日本に来てマグロを買った時、一緒に日本にきた人も、他国の偽パスポートで
堂々と日本に入国しています。日本人の役人がいる出入国管理の事務所では絶対
通じない偽日本旅券でも、外国ではだいたい通じます。

例えばの話ですが、北の工作員が中国人として日本に入国すれば日本では分か
りません。そして、中国人としての法的身分を得ることは、北朝鮮にとってさほ
どお金のかからないことです。冷戦時代は、アメリカでもソ連でも拉致はあった
と思います。しかし、情報組織の中に大量拉致のためのインフラを持っていたの
はおそらく北朝鮮だけだと思います。

第二次大戦後に、イデオロギーとして国が分断された国の代表的なものは、韓
半島とドイツとベトナムですが、革命の地下前衛党の問題では、北朝鮮はドイツ
よりベトナムに近かったと思います。西ドイツに吸収された東ドイツの情報機関
「シュタージ」の文書はほとんど破棄されましたが、破棄をまぬがれた部分があ
ります。本部のものは破棄されましたが、本部から色々な所に送った文書が残っ
ていました。それらを研究したものを読んで見ると、本当に恐ろしいものがあり
ます。しかし、シュタージでも、西ドイツの中に革命のための前衛党を作ること
は求めなかったようです。

◆日本を対南政策に利用

では、北は、なぜ日本人の拉致にこだわったのか。北としてもっとも馴染みが
あり慣れている国は中国、ロシア、日本です。中国は社会主義で陸続き、ロシア
は社会主義の宗主国でしたので、簡単には手が出せなかった。もちろんロシアや
中国からも、核開発の技術とか資材など色々なものを得てきましたが、非常に気
を使って手に入れたのです。そして、人的資源での繋がりは日本です。日本は韓
国の「後方基地」です。1950年の韓国戦争の時、日本列島がなかったら、韓半島は
共産主義圏の勝利に終わったと思います。自分たちが慣れている「敵区」の日本に、
「基地」が作れたら、韓国を落とせるということです。韓国の海への出口は日本列
島につながっていますから、失礼な表現ですが、北が日本を「宿主」にすることが
できれば、韓国は首が締められる状況になります。この韓国における日本の重要
性を一番よく理解していたのが、金日成と金正日です。

彼らの60年間の動きを見れば、日韓を離間させる、韓国威嚇に日本を利用する
のが第一です。(北にとって)ありがたくもですね、日本には強力な基盤を持つ
朝鮮総連があり、これが頑張ったのです。先ほど申し上げましたように、日本国
内にそういう巨大な拠点を作ることで、韓国を包囲して落とす。そのためには日
本からの拉致が欠かせなかったのです。

金日成、金正日から見れば、何があっても、日本を自分の庭のように活用する
ことが北の目標でした。日本政府がどう対応しているかは分かりませんが、実は
国際社会には偽の日本人が結構いるのです。偽のパスポートを持つ人です。闇市
場で(紛失した)日本のパスポートは一番の高値で取引されるそうです。やはり紛
失した韓国パスポートも人気があるということです。

しかし、本当に工作に利用するためには、偽造パスポートを獲得するだけでな
く、厖大な情報が必要です。日本人になるための、日本人を拉致するためのあら
ゆるデータです。今、拉致のことだけが問題になっていますが、実行犯やその支
援装置も問題です。厖大なデータを収集して彼らに協力した部分はどうなってい
るのか。氷山の上の部分でなく、水面下の大きな部分です。これに対し、対策を
やっているのでしょうか。

金日成も金正日も、スケールの大きなことが好きで、色々なことをやります。
ソ連の下請人となり、世界革命の前衛という妄想にかられるのです。彼らは全世
界にテロと暴力を輸出します。北の人民武力部の施設に記されただけで、1945年
8月から1994年の7月、つまり金日成が死ぬまでですが、彼らは、「4つの革命戦
争と53の国々に軍事協力をした」と言います。これは朝総連の機関紙に堂々と掲
載されました。94年4月までのことですから、その数は増え続けるでしょう。4
つの革命戦争というのは、中国の国共内戦、ベトナム戦争、シリアとエジプトが
イスラエルと戦った時の戦争です。これには、イラン・イラク戦争の時、イラン
側で戦ったことは含まれていません。

これは平壌の力だけではできません。ソ連の手先、中国の手先としての役割で
す。北から見れば、戦争をしかけても刑事事件としてしか対応しない日本はたい
したことのない国ということです。この他にも、最近は、ミサイルと核のコネク
ションがあります。ある国の原子炉を建設するとか、一緒に核実験をやるとか、
ミサイルを発射する時どこの国の代表団が参観したとか、色々なものがあります。
金正日は今も妄想をしていると思います。

◆テロは戦争?刑事事件で対応しても取り戻せない

冷戦時代に共産専制・独裁体制との戦いは、色々な側面がありますが、一番問
題となったのは、政治的には「人民の心をつかむ」戦いです。独裁国家ではメディ
アを独裁者が支配していますから簡単です。嘘の扇動でいくらでもメディアを操
作できます。問題は、自由開放社会の側です。こちらでは、嘘ではなく真実をもっ
て説得するしかありません。しかし、開放社会では、メディアは広告や収益など
に関心があります。拉致問題もこのことがずっと続きます。拉致問題で、なぜもっ
と早く対処できなかったのか。これから同じ失敗を繰り返さないためにも一度触
れなければならないと思います。

拉致ではまず初期対応に失敗しています。事実関係も十分分からなかった。事
実関係がはっきりしても、それが何を意味するのかは分からなかった。日本で拉
致がはっきりしたのは辛光洙事件です。この時、背乗りのための拉致が明らかに
なりました。85年です。これは国家テロの挑戦ですが、この時、日本はただの刑
事事件として対応します。その時点で他の背乗りはなかったのか。私は、誰かを
批判するつもりでなく、冷静な教訓のため言います。これは刑事事件ではなかっ
た。これは戦争だったのです。しかし、あくまで法治国家の刑事事件としてしか
対応しなかったのです。入院して診察してみたら癌なのに、風邪薬だけを飲ませ
てすませたようなものです。

次に、国家的な体制も不十分でした。これは韓国も同じです。韓国にはまた別
の事情もありましたが。日本では情報の共有、協力がなかった。政府と国民の間
だけでなく、政府当局の中でも情報が共有されなかったように見えます。もちろ
ん、同盟国との情報共有もなかった。もしかしたら防げたかもしれない後の犯罪
を防ぐことができませんでした。普通役人は、情報の出所が秘匿されないと責任
問題になるということで秘密にする癖があります。私も役人でしたから。しかし、
出所を隠しながらも、このような拉致をいくらでも国民に公開し、対応できた筈
だと思います。

例えば、金大中事件で、日・韓は冷戦が終わるまでの15年間、安保のための情
報共有、協力が途絶えました。私が知らないことがあるかもしれませんが、メディ
アの報道などを調べても、金大中事件以降、ソウル・オリンピクまで、冷戦の中
の一番大事な15年間、日韓の間では、安保協力、情報協力が途絶えました。平壌
がこれを見逃す筈がありません。

例えば、この時、どういう事件があったかというと、韓国で1992年発覚された、
北の「労働党」政治局の候補委員の李善実が韓国に来て工作を指導した「朝鮮労働
党中部地域党」事件というのがあります。典型的な「地下党」工作です。この時、
北の大物工作員は、日本に密航した上、韓国から密航した申順女だと日本当局に
偽りの自首をして、日本で合法的な在留資格を取ります。そして日本から韓国に
入ります。常識的に考えて、韓国人が密航して日本の当局に自首しますと、日本
政府は韓国の領事に、あなたの国の国民が不法入国し、保護していると通告する
のが当たり前です。そうすれば韓国ではすぐ偽物だと分かります。それで日本は、
彼女を逮捕するか追放するかできた筈です。しかし、情報共有がありませんでし
た。

金大中拉致事件の翌年(74年)、朴正煕大統領を狙撃した有名な「文世光事件」
が起こります。私はもしかしたら、平壌か金大中に追従するものが報復としてやっ
たテロだと思いますが、日本の国会で外務大臣が、「韓半島では北からの脅威は
ない」と答弁しています。私はありえないことだと思います。日米会談ではいつ
も、共同コミュニケで、「韓半島は日本の安全に重要」と出ます。当時は特にそ
うでした。韓国では1953年7月の休戦協定で、3年間の戦争が休戦になりましたが、
その後、冷戦を通じて犠牲になった人が、おそらく1万人を超えると私は推測し
ています。まだ公式に発表されたデータはありません。そう言えるのは、休戦直
前から、72年の「7・4南北共同声明」で、お互いに破壊工作をしないと合意します
が、その時までに韓国で犠牲になった軍人だけで7千人以上です。互いに特殊部
隊を送って撃ち合いになったり色々なことがありました。そういうことを考える
と、北によって強いられた韓国内での犠牲者は1万人以上になるはずだと思いま
す。なのに、日本の外務大臣は、「北からの脅威は一切ない」と言ったのです。
そして韓国は日本に、当時は日朝貿易が盛んでしたので、スパイ用や軍事用に使
われるものの輸出をしないよう求めるのですが、日本は、「法治国家だから輸出
を止める法律はない」と言いました。友邦間の情報共有が途絶えるとこういう恐
ろしいことが起きるのです。

私はまた、日本社会、日本文化に独特の弱点があるのではないかと思います。
さらに、日本の冷戦期の報道に問題があったと思います。戦後の日本社会の知的
風土の中で、主な風潮がいわゆるリベラルの思考だったのでしょうか。戦後の知
的風土は、演繹的思考と帰納的思考の健全な調和に失敗したではないか。外から
見ればそう見えるのです。これが問題だったと思います。共産圏のプロパガンダ
や謀略は狡猾で、自らの正体を隠して色々なことをやります。知能犯が捜査を撹
乱するように、時には事実を誇張し、時には事実を縮小します。場合によっては
何もないことを、捏造して宣伝扇動します。この時、日本社会の知的風土が共産
主義の攻勢に対応できなかった。いい面であったはずの日本の伝統も、弱点とし
て突かれてしまったということです。皆さんはどういうお考えなのか知りません
が、外から見ればそう見えます。特に、いわゆる日本の進歩勢力の一部は、利用
されただけではなく、積極的に共産圏のプロパガンダに協力しました。その協力
は、多くの人を汚染させました。

◆「平和共存」では悪に対抗できない

韓国も汚染されました。韓国で金大中政権ができるのは、アメリカや日本など
に留学した人々が、社会主義的観念論に汚染され、彼らがシンパとともに金大中
を大統領にしました。これまで、金大中を「民主主義の闘士」と言わないと、日
本では変な目で見られるようですが、私は、ここで断言しますが、もし、今も日
本社会が彼を民主化の闘士として受け入れる、そう認める限り、拉致の戦争は絶
対勝てません。金大中は、(日本人を拉致した)辛光洙を北に返した張本人です
よ。金大中は2年前も日本に来て、名誉博士号を受けました。こういうことに対
しての総括、反省なしには、拉致の戦いは難しいと思います。特に日本は、外か
ら見れば、戦後一番の平和国であることを自慢してきました。「平和主義」はい
いですが、独裁や野蛮に利用される平和主義は困ります。

私は、「平和共存」というのが果して価値があるのかと疑います。もし、私の
隣にとんでもない悪党が住んでいるとします。私ができることは、私が引越しす
るか、相手が引越しするようにするかしかないのです。悪党と一緒に住むのが平
和共存でしょうか。先ほども言いましたように、近代国民国家、主権国家の定義
を変えなければならないと思います。主権国家を名乗れば主権国家になるのか。
特に、金正日のような国家テロリズムを行うようなのを主権国家と認めるべきな
のか。外から見れば、日本のリベラルは、保守の政策は徹底的に批判します。な
のに、社会・共産主義に憧れ、テロや暴力、共産独裁とは戦わない。外から見れ
ば戦いを避けてきたように見えます。暴力や独裁を恐れ、逃げながら、彼らと協
力することが「平和共存」なのか、ということです。

我々が金正日を糾弾する理由は一つだけでも十分です。金正日は、2000万の人
民に、自分のための「銃爆弾になれ」と求めています。先軍政治という名で。国
が国民のために存在するのか、国民が国のために存在するのか、という問題です。
私はソウルで、失礼ながら日本に関してこう言ったことがあります。「明治憲法
の日本は、国民が国のために存在し、今の日本国憲法の日本は、国が国民のため
に存在するに変わった」と。金正日が死んだら次の権力者との関係改善を通じて、
もしかしたら日本の諸懸案を解決できると期待しますか。

ここで宗教のことにも触れざるを得ません。日本では、プロテスタントとカト
リックを合わせても、キリスト教徒は人口の0.5%くらいかなと思いますが、日
本では蔭の薄いキリスト教徒が、韓国に対しては「民主化」を働きかけ、政治活動
をしました。金大中政権ができるまで韓国の保守勢力や政権を猛烈に攻撃しまし
た。だが、彼らは金正日に対しては何もしていません。もちろん、韓国のキリス
ト教も7割か8割は同じです。こういうことを許していいのか。これが戦後の日
本の知的風土にはおかしいことがある、ということです。

では、韓国は拉致問題に対して何をやってきたのか。韓国も東西冷戦時代は何
もできませんでした。北が南の大統領を暗殺するため色々なことをやるのに、拉
致された人を返せなどそもそもできませんでした。韓国が拉致問題に対応できる
ようになるのは、ソウル・オリンピクが成功した時点からです。国連に同時に入
る時、北と「協定」を結ぶときに、拉致問題を初めて出せたはずです。しかし、
当時の韓国の指導層もリベラルに汚染されていました。それからまもなくして「
親北左派政権」が登場しては対応どころか、反逆に走ったのです。

しかし、めぐみさんの夫になったという金英男の場合は、日本で拉致が問題に
なるから、おそらく韓国でも少年少女を拉致されたのではないか、ということで
再調査が行われて、拉致が分かったのです。脱北者の話ですが、北は外国人に子
どもを産ませる作戦までやるそうです。どういう目的のためかは想像してくださ
い。

◆同情ではなく悪に対する憤りを

日本のバブル時代に、朝鮮総連の中にもすごいお金持ちらがいました。80年代
頃は、何億ドルもの資産を持つ人が結構いたのです。北側はそのお金持ちを平壌
に呼んで、北でも子どもを創るようにしたそうです。日本に家族がいるのに、で
す。北の目当ては、彼の遺産を狙ったとのことです(笑)。要するに「悪魔」な
のです。藤本さんの本を読むと、平壌で離婚させられて、「喜ばせ組」の若い女
性と結婚する場面が詳しく書かれています。

では、これからどうすべきかですが、最近この救出運動が、勢いが落ちている
と言われます。その理由は何でしょうか。理由は一つです。被害者に対する同情
心、被害者を救出しましょう、ということだけでは救出できないということです。
加害者に対する敵愾心、憤怒がないとできないんです。悪に対する憤りがないと
運動は必ず低下します。受身的な姿勢でやると、すべての運動はしおれてしまい
ます。悪に対する、積極的な、攻撃的な憤りなしではできません。2000万人民を
自分のための弾や爆弾に使うような、悪魔的な勢力に対しての憤り。これは金正
日のことだけでなく、世界でも同じことです。皆さんに申し上げたいのは、悪に
対する憤りをどのように盛り上げるかということです。これは難しくありません。
簡単です。神様も許さない巨悪に対して怒りを持つのは当たり前のことです。そ
れを世界中に知らせるために、日本政府が国連決議を通したように、世界中で船
舶検査をやればいい。それぞれできることをやればいいのです。それで十分でき
ると思います。

それから、内部告発。なぜこれをやらないんですか。北の活動に、直接、間接
的に協力した者が、国籍を問わず大勢います。彼らが自白するように、内部告発
するようにすればいいんです。一番強力なのは、我々のコメントや評論ではあり
ません。内部告発です。「自分は経験した」というのが最も説得力があります。
また、金正日のために協力した日本のリベラルは大勢います。大学教授も総連の
活動家もたくさんいます。うすうす情報を聞いている人も多いと思います。彼ら
が出るようにまず説得することです。それもできないとなると、その次の段階は
難しいと思います。

私は、日本人が、「金正日に拉致された北の2000万人民も救おう」と言ってい
ることをソウルでよく紹介します。金正日の悪政に死んでいく多くの人を救おう
という動きがあります。「我々は未来を日本と語り合える」、「日本と一緒に行
きましょう」、「金正日が死ぬのをきっかけに未来を日本とともに切り開きましょ
う」と言っています。櫻井よしこさんも、いつも国民大集会で、「拉致された日
本人、拉致された韓国人、拉致された外国人、そして拉致された北の人民を救出
しよう」と言われます。

私がこの運動を尊敬するのは、この運動は日本政府がやったことではなく、皆
さんがここまで盛り上げてきたということです。私はこれは歴史の教科書に記録
して教えるべきだと思います。「日本人の意識を変えたこういう運動があった」
と。それをやってこそ同じ失敗が繰り返されないと思います。

以上

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下記をクリックして、ご意見を送ってください。
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