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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

■≪解決せぬ日本人拉致問題≫ 『身代金』を支払った小泉首相の責任(2004/06/17)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2004.06.17)

 佐藤勝巳・救う会会長が現代コリア研究所所長名で「世界週報」(16.06.22号)に
書いた論文を掲載いたします。

■≪解決せぬ日本人拉致問題≫ 『身代金』を支払った小泉首相の責任
                        
なぜ家族会が怒ったのか
 5月22日拉致された蓮池・地村両家5人の子供達が北朝鮮から帰ってきた。救出
運動にかかわってきた者の一人として、心から祝賀しなければならないのに、なぜか
その気になれないでいる。
 子供たちが帰って来たその時、風邪をこじらせ、出迎えの現場には立ち会うことが
できなかったが、テレビはよく見ることができた。

 会談結果に、あの温厚な横田滋家族会会長が「考え得る選択肢の中で最悪のもの
だ」と声を震わせて言った。飯塚繁雄副会長は表情をこわばらせ、「子供の使いより
悪い」と言い放った。増元照明事務局次長は、「人間としてプライドがあるのか」と
小泉首相の交渉に批判の矢を放った。
 数年間、一緒に運動をやってきた人たちの無念さが一直線に伝わってくる。

 なぜ家族会が怒ったのかである。5人の子供は首相と一緒に帰ってきた。その代償
として「人道支援」という名の「身代金」に食糧25万トン(最も安い国産米でトン
当たり20万円として500億円相当)プラス医薬品11億円、合計511億円を支
払う。帰って来た1人につき約100億円相当の身代金ということにならないのか。
トウモロコシなら70億円。1人16億円となる。

 曽我ひとみさんの家族は、日本に帰さず第三国で面会させるとして、北京が候補地
に挙がった。しかしその後、曽我ひとみさんが家族再会の場を北京にすることに同意
せず、結果は流動的になってきている。

 安否不明者10名については、「前回の調査を白紙撤回して、再調査を約束した」
というものである。子供たちが帰ってきた2家族はうれしいことであろうが、安否不
明者の10家族は、内閣総理大臣が2度も平壌を訪問して、消息の一つも持ち帰らな
いとは、「何だ!」と怒りをぶつけるのは当然過ぎるほど当然なことだろう。テレビ
を見ながら私は、思わず「ひどい」と口走った。

 しかし、次に私の頭に浮かんだのは、平成15年7月31日「国交正常化交渉に関
する関係閣僚会議・専門幹事会(拉致問題)第7回会合」での決定である。

 この決定は「今後の多国間協議がうまく進めば、日朝の話し合いの糸口が生まれる
ものと期待しています。その際、当面、5人の家族の被害者のご家族、すなわちそれ
ぞれの被害者のお子様とジェンキンス氏の計8人の速やかな帰国の実現をはかること
を最優先課題として取り組むことにしますが、これは国交正常化交渉再開までに実現
すべきであり、これを実現する上で、北朝鮮側からあり得べき代償要求、例えば、拉
致問題の幕引き等々には一切応じないということを基本とすべきであると考えており
ます」というものであった。

 我々の目の前に現れた小泉訪朝の結果は、前述のように自らが決めた「代償」要求
に「一切応じない」という決定を平気で踏みにじって、1人最低20億相当「代償」
を支払うというのである。
 さらに日朝交渉再開前に曽我ひとみさんの夫ジェンキンス氏も子供2人も日本に取
り戻す決定であったが、実現していない。これも明白な決定違反である。


最も大切だったのは安否不明者の糾明
 加えて不可解なことは、小泉首相は、ジェンキンス氏説得に一時間を費やしたとい
うが、氏は、米国人であり脱走兵である。もし本当にジェンキンス氏が、日本に来た
ら当然のこととして同盟国米国は、氏の引渡しを要求してくるであろう。そうしたら
わが国政府は条約上拒否はできない。小泉首相は、何を考えてこんな言動をとったの
か改めて問題にせざるを得ない。

 首相が最も多く時間を使わなければならなかったのは、日本人である安否不明者1
0名の北朝鮮が示してきている出鱈目な「死亡」理由などの糾明であろう。これをや
っていたなら、結果はどうであれ、家族たちが怒るはずがない。子供が帰ってきた家
族も、そうでない家族も「首相はよくやってくれた」と拍手をもって出迎えたであろ
うことは断言できる。

 「その瞬間、小泉首相以下、テーブルを挟んで金正日と対峙していた7人は、蒼白
となった。
 首相が、『10人の安否不明者』の問題を持ち出した途端、金正日の顔色がさっと
変わり、そのまま、立ち上がった。
 仰天する日本側。金正日は会談を打ち切り、出て行こうとしたのである。
 『待ってください』
 この時、日朝会談の『最終決着』がついたのである。
 『首相は機嫌を直してもらって金正日にもう一度席に着いてもらったのです』と明
かすのは、ある政府関係者である。
 『もはや、10人の安否つまり横田めぐみさんがどうとか、有本恵子さんがどうと
か、そんな具体的なことを聞く雰囲気ではなかったのです。こちらが必死の様子に金
正日は、そこまでいうなら・・・と、前回の調査を白紙撤回し、再調査を約束した。
北朝鮮は、譲歩してやったのは自分たちだと本気で思っていますよ』」(週刊新潮6
月3日号)とある。


会談決裂で困るのは北朝鮮
 事実なら大変なことである。ここに書かれていることが事実かどうか、私は、自分
の人脈を使って調べた結果、事実に近いとの確信を得た。これは一体どういうことな
のか。

 安否不明者の家族が、小泉訪朝報告を受けて、怒り心頭に発したのは全く正しかっ
たのである。こんな出鱈目な交渉があるだろうか。考えてみるがいい。日本人の拉致
を認め、遺憾の意を表したのは金正日である。しかるにあれこれ難癖をつけて、帰国
した被拉致者五名の家族8名を2年近く人質にして、帰さなかったのも金正日である。

 10名の安否不明者問題で、相手が席を立ったら、こちらも決然としてどうして席
を立たなかったのか。会談を決裂させてどっちが困るのか。困るのは金正日である。
彼らは、困っているからこそ、昨年暮れから、札付きの北朝鮮工作員吉田猛を使っ
て、平沢勝栄衆議院議員に接近、更に、山崎拓氏に近づき、山崎拓氏と小泉首相の
「盟友」関係を利用し、日朝トップ会談に持ち込んできた。この流れを見れば明白な
ように、日朝交渉を急いでいるのは、金正日の方であり、日本が急がなくてはならな
い理由など何もない。

 家族のごく一部から「再度小泉首相はピョンヤンを訪問して拉致問題を解決すべき
だ」とか「我慢の限界に達している」などという声は確かにあった。その声を利用し
て、あたかも家族の要望を聞くポーズをとって、途方もない身代金が日朝間で動くの
である。

 地村・蓮池両家といえど確かに子供は帰ってきたが、あまり後味のよいものではな
いのではなかろうか。この後味の悪さを払拭するためにも、子供たちの帰国が実現し
た2組の両親は、人質(子供)が戻ってきて、もう北朝鮮を恐れることは全くなくな
ったのだから、拉致された20数年間の北朝鮮での生活を、包み隠さず、全てを国民
に知らせていただきたい。蓮池薫さんは、かつて、兄の透さんに「自分が知っている
ことを公表したら、北朝鮮はひっくりかえる」と言っていたと聞いているが、その事
実の公表を期待してやまない。


「平壌宣言」は既に順守されていない
 さて、被害者家族の立場を離れて、国家という立場で考えると、今回の小泉首相が
身代金を支払って、しかも自らの決定を無視した、最低でも1人20億円近い身代金
を支払い、5人を取り返したことの評価であるが、私は誤りと断定する。

 昨年11月の衆議院総選挙で家族会・「救う会」が実施したアンケート調査に、小
泉首相は未回答であったので、テロ政権に対する首相としての考えが分からなかっ
た。だが、回答を寄せた当選国会議員の99%(ただし書きを含める)は「拉致はテ
ロ」と認識していた。

 今回の訪朝で金正日政権に支払うことを約束した「人道援助」という名の「身代
金」は、国連を通じ、マネーロンダリングして金正日テロ政権を支援するものであ
る。これは「利敵行為」であり、国民と、そしてテロと激しく戦っている米国に対す
る背信行為以外の何ものでもない。

 一度こんなことをしてしまったら、後のたくさんいる拉致被害者を取り返す時は、
金正日政権は、同額か、いやそれ以上の「身代金」を要求してくるであろう。とんで
もない錯誤である。小泉首相の責任は極めて重大なのである。

 小泉首相はこれだけではなく、さらに、国民に対する重大な誤りを犯している。周
知のごとく、家族会・「救う会」は、拉致の解決手段として、前記衆議院選挙の全立
候補者に、経済制裁を科し、拉致を奪還すべきか否かとの質問をした。当選議員の回
答者の約3分の2以上が賛成と回答した(詳しくは「救う会」ホームページ参照)。

 この結果、今年2月9日に「外為法の改正」が国会を通過し、日本独自の判断で、
閣議決定により貿易、送金停止などを科すことができるようになった。続いて、万景
峰号など北朝鮮船舶の日本への寄港を禁止できる「特定船舶入港禁止法」が6月1日
衆議院の国土交通委員会で、圧倒的多数で通過、今国会成立は確実となった。

 流れはこうであるのに、5月22日の日朝首脳会談で、小泉首相は、金正日に対し
て「平壌宣言を順守する限り経済制裁の発動はしない」旨を約束した。

「平壌宣言」が締結された翌月、北朝鮮は、米国国務次官補に核開発を認めた。この
平壌宣言は、翌月から順守されていないのだ。ピント外れなことを言っては困る。制
裁法が発動されたら困るからこそ、金正日政権は、吉田猛、尹義重などの工作員や総
連の許宋万責任副議長などを総動員して、小泉首相に近づいてきたのである。

 小泉首相が信頼を置く、飯島秘書官と工作員たちがどんな話をしたのか知らない
が、国民の代表である国会議員が作った法律を「平壌宣言を順守する限り経済制裁を
発動しない」というのがその結論の一つであることは間違いなかろう。

 さらに、5月28日総連(日本における金正日政権支持団体)の定期大会に、小泉
自民党総裁は、甘利筆頭副幹事長を派遣して自民党総裁として初めてメッセージを代
読させた。

 6月2日付け産経新聞によれば、民主党小沢一郎氏は、この小泉外交を指して「売
国外交」と呼んでいるというが、野党からこのような発言が出ても決して不思議では
ない状況にある。



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