救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮の食糧農業2018/19



4.摩訶不思議な国連機関の報告


 国際支援を行う場合、食糧需要は本来人口増加率を反映して計算される筈であるが、国連機関の報告では人口増加率を反映していない。
 それだけでなく、FAOが作る需要には作為が見られる。収穫後ロスの算定等で北朝鮮当局との交渉をした結果、不足量を多めに出すこともあれば少なめに出すこともあったことを示している。
 当然、不足量を多くすれば、国際社会に食糧危機を訴えやすくなり、北朝鮮に有利であるが、いつもいつもそうするわけにもいかないのであろう。2017/18年度に至っては、人口が増えているはずなのに、需要量を前年度と同量とした。人口がまだ多すぎるとみて調整したためであろうか。国連機関の報告する数値は誠に摩訶不思議としかいいようがないのである。

 北朝鮮では近年餓死がある程度発生していると報道されているが、北朝鮮は否定しているので、需要は人口増加率0.55%ずつ増えるはずであるが、上記の表では需要の増減が人口増加率と全く比例しておらず、その年の国連機関と北朝鮮当局とのかけひき次第でさじ加減しているものと見られる。
 不思議なことに2013/14年度と2017/18年度は人口が0.55%ずつ増加している筈なのに、需要が減少しており、その翌年は前年度をカバーするためか、需要が伸びている。
◆非人道国家への人道支援は炊き出し支援で
 下記はFAOが報告した2018/19北朝鮮の食糧需給概要であるが、その項目の中身についてもおかしなことが多い。
 生産量は417万トンで、食糧需要は451.3万トンとあるが、調査時点での約束済国際支援はわずか2.1万トンで、北朝鮮政府が20万トンを輸入した場合の食糧不足は136.4万トンとなる。 食糧生産量と約束済支援量の合計は419.1万トンで、北朝鮮が自ら輸入せず、国際支援もない場合は、2019年の人口は2,570万人なので、年間一人当たり食糧は約163kgになる。食糧需要の451.3万トンが満たされれば、年間一人当たり約175kgになる。
 そして一人当たりの消費量は、米63 kg(精米)、トウモロコシ82 kg、小麦/大麦8.5 kg、その他の穀物6 kg、ジャガイモ10.5 kgおよび大豆5.4 kg(両方とも穀物換算)とされた。
 こんな報告では、特権層は米が主食で、一般人民はメイズが主食であるという実態が分からない。筆者はかねてから、「米よりご飯を」と訴えてきたが、国際社会からの食糧支援は、穀物を地域の人々に渡すと後で政府に回収されているのだから、調理したものを困っている人々にその場で食べてもらう炊き出し援助にすべきである。「配給のモニター」はモニターとはいえない。炊き出し支援のような、「消費のモニター」こそが非人道国家の支援には重要である。それができなければ撤退するというくらいの姿勢で支援に臨むべきではないか。 韓国のNGO「北韓民主化ネットワーク」が2011 年3 月末、韓国在住の脱北者500 人に調査したところ、78.2%が支援食糧を「受け取ったことがない」と回答している。
 2016年の日本では穀類(米麦等)、いも類、でんぷん、豆類の一人当たり消費量合計は132.8kgだった。穀物だけで比べると北朝鮮の163kgの方が多く、餓死者が出るとは思えない量である。実態は、生産量がその半分程度しかないので今も餓死者が出ているのである。
 国連機関が推奨しているのは一人当たり1日600gで、1年なら219kg、これに2019年度の人口をかけると562.8万トンだが、それだけの量が確保できた年は、国連機関が支援に入った1995年以来一度もない。これまでの年で一番生産量が高かったのは2014/15年度の508.2万トンだった。北朝鮮は戦前から農業には向かない工業地帯で、食糧は南(現在の韓国)から送られてきていたことを考えると、今後も需要を満たすことは考えられない。国際制裁の影響だけでなく、農業機械の劣化により生産は減少傾向にある。
 2016/17年度の報告によると、2014年の「調査」により米では収穫後ロスが15.56%発生するとしている。また、メイズは17%、大麦・小麦、その他の穀物は16.5%とされていた。
 今年度は米が20%、メイズが22%、麦類が21%、雑穀が15%、じゃが芋25%、大豆が10%と報告された。そしてその理由が初めて詳細に報告された。農業機械等劣化で収穫後ロスが増加している。その通りではあろうが、収穫後ロスの割合を大きめにすることで、不足量を多く見せることにもなる。
 収穫後ロスを多くした理由として、まず国際社会の制裁を挙げ、2017年12月に国連安全保障理事会(UNSC)による制裁は、決議文によると「北朝鮮の一般市民に人道的な悪影響を与えることを意図していない」とあるが、「農業生産に必要な燃料、機械、機器の部品の輸入が制限され、影響を受けた」と報告した。 北朝鮮側に代わって国連制裁を非難するような書きぶりだが、北朝鮮が2016、17年に3回の核実験をし、40発以上の弾道ミサイルを発射したことの是非には触れていない。
 次の理由として、「乾燥や猛暑、洪水の影響」を挙げている。しかし、独裁国家を維持し続け、軍事・治安に優先的に資金を回し、その分自然災害に強い農業環境の体質強化ができなかったことには触れていない。
 2019年9月7日午後から8日未明にかけて同国を通過した台風13号の影響で、「約4万6200ヘクタールの農地が浸水などの被害を受けた」と9日午前に、異例に早い発表をした。北朝鮮が被害面積をこれほど早く計測できるとは思えないが、今年度の食糧支援を呼び込むための緊急発表と思われる。
 収穫後ロスについては国連機関もお手上げ状態で、電気が一日4時間くらいしかこないので、穀物を適当な水分含有量にして保存することは助言できない。また、品種改良すれば、あるいは品種改良した種子を支援として持ち込めば、いもち病のない種子で米を栽培できるし、玄米を白米にするときひびが入っていて割れてしまう胴割れも出なくなるのに、勧めてはいない。
 今回のWFP/FAO報告では、北朝鮮では、米の種籾が97.5 kg / ha、メイズでで51 kg/ ha、小麦、大麦などの穀物で200 kg /ha、じゃが芋で500 kg /ha、大豆で60 kg / haと報告された。
 しかし日本では、作物の種類により種子量は異なるが、例えば米の種籾はこしひかりで29 kg/ha、飼料用とうもろこしで30kg /ha、小麦で130?150kg/ha、じゃが芋で180kg/ha、大豆で25kg?50kg/haといったところであろう。農家によってもまちまちだがだいたいの量として例示した。
  北朝鮮は金日成以来、政治も経済も農業もソ連の方式をまねをしてきた。農業については、3倍密植を今も行っている。同じ面積に3倍の種子を使うので、それだけ種子に無駄が出る。また、密植すると風通しや日当たりが悪くなる等収穫量で問題が出る。北朝鮮で著名な「主体農法」というのは、指導された通りにやるしか選択肢がないのである。
 にも関わらず国連機関は農業の専門家を派遣したとしながら、密植の弊害について指摘したとは思えない。毎回3倍の種子が必要という数値を計上し続けている。
 また、国際社会に食糧支援を依頼しておきながら、年に一度の最も詳しい報告では、要請に対してどの程度の支援があったのか、北朝鮮政府は何万トン輸入したのかの報告がない。結局、何万トン不足のまま終わったのかの報告もない。
 実は、北朝鮮にとって食糧統計を水増しすることは、特権層に有利になるのだ。まず統計上の収穫量に応じて特権層に配給すると、軍人や配給が必要な一般市民は食料が著しく不足してしまう。この特権層の一部の子弟がトンジュとなって、資本主義的な商売を始め、ある程度成功している。その上北朝鮮は、90年代後半の餓死者300万人を生存者としてカウントし、これにより一人当たり食糧を少なく見せ、食糧援助を国連機関に要請し続けている。国連機関の支援は、このからくりを無視して継続されてきたのである。
 なお、北朝鮮の市場で使われている貨幣は北朝鮮のウォンではなく、人民元になっている。デノミをやった後の価値のない北朝鮮のウォンには誰も見向きもしないが、党費を出す時はウォンでなければならないので、いくらかは必要ということである。
 そして、食糧の輸出入には制裁がかかっていないし、また中国の人民元経済になっているから、北朝鮮で例えば米が少し高く売れるとなると、中国から米が入ってくる。
 そのため国営市場では、米の値段などを値上げすることを禁止する処置をした。それに対抗して自留地や傾斜地等で生産した作物は、市場ではなく隠れて、高い価格で取引されるようになった。
 国連機関は、2017年の聞き取りで、農民700万人以外の「1,750万人(人口の71.5%)が配給に依存している」と報告したが、北朝鮮では配給が復活しておらず、計画経済は完全に崩壊したままなのに、一定の人々の生活は少しずつよくなっている。例えば中国からミシンと布を買ってきて服を作って売る。トンジュなら、製品は書類上国営工場で作ったものとするという。資本主義が少しずつ広がり、一部の民間人に富が集まるようになった。
 なお、2017年の人口は計2458万人とあるが、この数値と国連機関が報告した2514万人とはかなり異なる。
 韓国の政府系シンクタンク・統一研究院に勤務する脱北者は、「北朝鮮の市場経済化により個人手工業(個人事業)の生産規模が国の生産規模を上回った」と述べている(聯合通信2017.01.22)。そして、「個人手工業で生産される製品は食品や衣服、文房具、木工製品、履物、楽器、薬、野菜など徐々に多様化」しているという。
 北朝鮮の中での資本主義化にも注目すべきである。

以上

  
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