全被害者の即時一括帰国を!特別集会
◆大きな国際問題と今の拉致問題が絡んでいる
古森義久(産経新聞ワシントン駐在編集特別委員兼論説委員、麗澤大学特別教授)
言うまでもなく、拉致問題が今ほど国際化された状況はありませんでした。この国際化というのは2つの意味があります。
1つは、全世界が知っているということです。国連もアメリカも。これは皆さんのアピールの結果です。安倍首相のおかげかもしれないし、あるいはトランプ大統領、そして国連にはカービーさんという人がいました。これほど世界中が見つめる時はないわけです。
2番目の国際化という意味は、やはり拉致問題の展望は国際的な出来事、しかも非常に大きい東アジア、あるいは米朝関係をゆるがすような国際的な出来事と結びついてきたということです。
国際的な出来事、情勢がいかに変わったかは、米朝首脳会談の評価になりますが、やはり具体的な文言がなかったとか、人権問題なものがなかったとか、色々な批判はありますが、枠組みとして2つあります。
北朝鮮がこの首脳会談を求めてきたということです。なぜ求めてきたかというと、やはり恐怖にかられてというようなことがあるわけです。もう一つは核兵器の保有を絶対に変えない、朝鮮民主主義人民共和国の憲法にまで謳っていたものが、嘘にせよ瞬時にせよ、核兵器を捨てると言ったわけです。
捨てないかもしれない。捨てるかもしれない。もし捨てないということが分かって、アメリカが完全にだまされた場合にはトランプ大統領は、これまで通りのことを続けることはできない。
また、今経済制裁がこのまま保たれていますけれども、それまでちらつかせてきた、しかも金正恩自身を動かした最も大きな要因と見られる軍事的シナリオに戻らざるを得ない。何があるか分からない。
また逆に米朝があまりにも仲良くなって、北朝鮮という国が外部に対して開放した時に、これは普通の国になる。金正恩政権が普通の国の普通の政権になり得ると思いますか。全くならない。
ということは、金正恩体制が崩れる可能性がある。と同時に、不幸なことですが、軍事的な状況が起き得る可能性がある。韓国と北朝鮮との関係は一体どうなるか。あるいは日本と北朝鮮との関係がどうなるか。こういう分からないことだらけの中に、拉致問題解決の展望が成り立っているわけです。
ここではやはり、分からないことは何なのか、分かっていることは何なのかの区別をきちんとして、分からないことに対しては、分からないままに、ありとあらゆる可能性を考えながら、そして拉致問題一つ一つのシナリオというのがあるわけですから、分かっているシナリオ、分からないシナリオ、これが拉致問題解決にどう影響していくかということを考えなければいけない。
そうすると、段々出てくる答が歴然としてくると思います。やはり急速に前に進むことはできない。
また、日朝国交回復をしようじゃないかという人たちが出てきています。私もこの問題を長くフォローしていますが、かつて知的にも破綻をした人たち、政策的にも破綻をした、倫理的にも破綻をした人たちが、事実に認定においても破綻をしている。
どういうことかというと、こういうことをやっている人たちの中には、実は「拉致問題なんかないんだ」と言っていた人たちがいるんです。その次には、拉致問題はあるかもしれないけれど、拉致問題解決よりも国交樹立の方が大切なんだ、だから拉致問題なんかじゃまなんだと堂々と言っていた人たちがいる。
段々、真実と世論に押されて、拉致問題の解決が一番日本にとって大事なんだとなってくると、今度はやっと逃げて、逃げて、逃げる。この国交回復交渉をしながら拉致問題をはかればいいんだと言っているけど、これは全くの支離滅裂で、こういう人たちは破綻をしたゾンビ(死体のまま蘇った人間)なんです(拍手)。
自らを葬り去った人たちが、今墓場から出てきているんです。彼らに対しては、厳しく、「あなたたちは過去に何を言ったんですか、何をしたんですか」と、さかのぼらないと、今はみんな調子いいことを言いますからね。
絶対にまだ希望はあるんですから、大きな国際問題と今の拉致問題が絡んでいるということをまず念頭に入れて、前に向かって慎重に進んでいただきたい。そういうことをワシントンと東京の両方を見ていると感じる次第です。以上です(拍手)。