救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際シンポジウム「北朝鮮の現状と拉致被害者の救出」全記録



櫻井
政治家の皆さんがみんな荒木さんみたいに考えてくださればどんなに次回は変わるだろうと思います。次に家族会の横田さん、有本さん、増元さんにお話をお願いいたします。


2-2-5「拉致問題の解決なしに国交正常化はあり得ない」を貫き通して



横田 滋氏(横田めぐみさんの父、家族会前会長)

みなさん、こんにちは。大勢の方が足をお運びいただきまして、皆様方の拉致への関心の深さを心強く感じております。先ほどのブラウンさんたちのお話では、解決のためには圧力をかけることが必要だということが言われましたが、アメリカがテロ支援国家から北朝鮮をはずした時に、新聞なんかですと、これはもう大変だという感じだったんですけど、シーファーさん(米大使)にお話を伺いましたら、アメリカは北朝鮮が共産国だからとか、核実験をしたからとか、人権侵害とかいろんな理由で制裁というのが60以上あるわけなんですけど、その一つだけがはずれたのであって、そんなに影響はないだろうというお話でした。テロ支援指定をはずすと北朝鮮から見ればどんなメリットがあるかというと、テロ支援国から普通の国に戻ったということぐらいです。それと、テロ支援国家に指定されているとアメリカの国内法で世界銀行とかアジア開発銀行から融資を受ける場合にアメリカは反対をしなければならないということなんです。

ですから、それが取れたということは国際金融機関からお金を借りる道筋ができたということなんですけど、しかし、日本が、先ほどの古屋先生のお話にありましたように、北朝鮮人権法を昨年6月に改定しておりまして、北朝鮮をテロ国家と指定すれば自動的に日本がそういうところへの融資に反対する仕組みになっているそうなんです。それで世界銀行はアメリカが一番大口の出資者で、2番目が日本なんです。アジア開銀の場合は総裁も日本から出ていまして、日本が一番大きな出資者です。先ほどのIMFもアメリカが一番ですけども、以前日本が出資しようと思ったら大国のアメリカを抜いて1位になるのはまずいということでその時はしなかったこともあるんで、もし10兆円を出資すれば日本は非常に大口の出資者になる。確実に2番目にはなると思います。そうすると、これはそれぞれの国が1票ずつ権利を持っているのではなくて出資比率に応じて権利を持っていますから、アメリカを説得する必要もあると思いますけれども、日本が協力に反対すれば今までと同じように事実上借り入れは不可能ですから、あまり心配することはないんでないかと思います。

やはりアメリカに支援を頼むということは、国際世論のためには大事なことで、今回の6者協議でも、日本は拉致問題に進展がなければエネルギー支援をしないということにしてあるものですから、北朝鮮は、そんな国は参加する資格がないなんて言ったわけです。代わりにオーストラリア等が出すわけなんですけど、しかし外の国がみんな日本の立場を支持してくれて、北朝鮮に拉致の解決を促してくれるということがありますから国際世論というのは非常に大事なことですけど、やはり基本的には日本が拉致問題の解決なしに国交正常化はあり得ないという小泉総理が日米首脳会談でおっしゃったのがずっと今でも引き継がれておりますから、これを貫き通せば、北朝鮮は日本を必要としておりますから最後には先方から折れてくるんではないかと思っています。そのためには国内世論が、同胞を救出しなければという強い支持がなければ政府としても力を入れてくれないと思いますので、引き続き関心を持って見守ってくださいますようお願いいたします。


2-2-6 北朝鮮は約束を守らない国



有本明弘氏(有本恵子さんの父、家族会副代表)

私が言いたいことは、今、6か国協議というのがついこの間開かれて、これももう決裂のようになったということが新聞報道にあります。恐らくそういうふうになる可能性はあったと思います。そのことに関して核とミサイルは、核協議の中でアメリカが一番関心を持ってアメリカが主導でやっている問題であります。その中で、核とミサイルの問題を進展をさすためにテロ支援国家指定解除をするんだと、そういうふうなことを私たちは始めに耳にしたと思います。

テロ指定を解除すれば、赤軍派と関係のあるよど号の犯人たちを北朝鮮が匿っているからこれを釈放さすということは、ヒルさんが外務省にも通告しておるんです。私たちはその話を外務省からお聞きしました。そんな話があったんかいな、というような中で忘れ去られておるんです。これは大変な話であって、ヒルさんというのは日本記者クラブで記者会見して「よど号犯」を釈放することに関しては北朝鮮も同意しているとか言った。その話は外務省の説明の中で、北朝鮮が「引き渡しに協力する」と言ったと聞いていた。ところがテロ指定解除したとたんに話がかみ合わんようになって、北朝鮮にみな拒否されてしまう。

アメリカも何遍もその手を食っておるんですよ。もっと大きなこととなったら、核の開発をしたらいかんといって重油をずーっとやり続けて、挙句の果てに核実験までやられてしまった。北朝鮮はそんな国なんです。次はオバマさんにこの問題を引き継いでもらわなくてはあかんので、オバマさんは大変なご苦労があるとは思いますが、私は、日本の国も遠慮せずにこの問題に関してはオバマさんに言うべきことは言っていかなければならないと思っています。以上です。


2-2-7 拉致被害者に希望を与えるラジオ放送を



増元照明氏(増元るみ子さんの弟、家族会事務局長)

みなさん、こんにちは。今日はブラウンさんと張さんの話を聞いて、結局日本は独自で拉致被害者を取り戻したことは1回もないんだなということを改めて感じました。政府は、1988年に北朝鮮が拉致しているという疑いがあると言いましたが、認定はしなかったんです。そして、北朝鮮が初めて拉致を認めてから、私たちの家族は政府に認定されました。その後に田中実さんが認定され、安倍さんの政権になってようやく松本京子さんが認定されました。この二つが日本政府が初めて認定したものではないでしょうか。あとは北朝鮮が認めてから認定した
ものなんです。

張さんの話を聞くと、結局2002年の平壌での首脳会談。あれは北朝鮮がなんの気まぐれかわからんけれども、5人生存ということを発表したということから始まったのではないでしょうか。日本政府は結局、拉致を認めたら100億ドルやると言っていたんだという話だったら、今まで日本政府が積極的に拉致被害者をすべて返せと言ったことが1回もないということですね。こんなことでは絶対に解決しないでしょう。わが国が外交にもっと強い発信力を持たなければならないのではないでしょうか。

私は今、6者協議の中でヒル氏が公然と外の国に肩代わりをされる方策を考えているとワシントンで言ったらしいのですが、そのワシントンでその話を聞いて斎木さんは何の反論もしなかったということを報道で知りました。なぜ言わないんでしょうか。6者協議の中で話し合っている日本がエネルギー支援をしないというのはそれだけの理由があるわけでしょう。その理由をなし崩しに薄めてしまうような肩代わり説になんで文句を言わないのかということが僕は本当に残念です。そこまで日本を軽視するのであれば6者協議から脱退しますよとヒル氏に言えばいいんです。6者協議で日本がそこにいる意味がないじゃないですか。何の意見も無視されるような6者協議で、なぜ私たちは粘り強くやっていかなければならないのかということを残念に思っています。

あと、6億円の政府のお金(拉致問題対策本部予算)ということですが、昨年8月に、今政府の短波放送「ふるさとの風」で、解説に伊豆見教授を使っているのですが、伊豆見さんを使うんだったら荒木さんや西岡さんを使えばいいんじゃないですかと申し上げたんです。ただ、当たり障りがなくて朝鮮半島に詳しいということで使われております。その時、家族はみんな、やっぱりそれはまずいよ、いやだよとおっしゃっていたのですが、契約もありますからと言っていたので今年の春になったら代えるのかなと思ったら代えないんです。

だから私は、じゃあもう私の家族は、向こうにいる被害者に安穏とした気持ちを与えるかもしれないし、なんか日本が救出を本当に真剣に思っているのかどうかわからないような放送をしている方と同じ放送の枠ではしゃべりたくないと言って、今拒否しています。できれば荒木さんのところの調査会は苦しいですから、伊豆見さんに払う金があったら荒木さんに払って出ていただきたい。西岡さんにも出ていただきたい。隔週でやっていただければいいんですが。荒木さんも放送の中で金正日政権打倒という話だけはちょっと慎んでもらって。これは調査会存続のために必要なことです。ただ向こうに行って被害者を必ず奪還します、いろいろな策を練っていますという希望を与えるような話をしてもらったほうがいいと思うし、お金を無駄遣いしないで済むと思っているので、政府の皆さんには、この辺は考えていただきたいと思います。

先ほど言ったように、日本の外交はもっと発信力を持つべきだと思っていますし、毅然と、斎木さんももっとしっかりとやっていただかなければならないと思いますよ。今アメリカが、北朝鮮が核の保有国として国防省が発表しましたけれども、韓国はすぐにそれに反応して、それは認められないと言ったけれども、日本の政府に認められないと言った人はいるんですか。日本政府もそのようなことにすぐ、はっきりと反応すべきじゃないですか。すぐ反応しないから、いつまで経っても日本が本気でこのことを問題視しているということをわからないんだと思います。外交力のなさとか発信力のなさには本当に希望を失いそうですが、政府がやらないんだったら私たちでやりましょう。声をあげましょう。そうしてください。有難うございました。

櫻井
最後に救う会の副会長として島田さん、よろしくお願いします。


2-2-8 10月の米朝合意を日本は認めてはならない



島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)

私が用意していたことを半分、増元さんが言われたので、増元さんの補足の形で少し発言します。先ほど北朝鮮の実態を誰よりもよく知る元労働党幹部の張哲賢さんが、北朝鮮にはとにかく圧迫だけが効くんだとおっしゃった。日本政府は、拉致問題、核問題、あらゆる問題、あらゆる局面をとらえて北朝鮮への国際的な圧力が強まるよう働きかけねばならない。逆に圧力を緩めようとする動きがあればそれに反対はもちろん、必要に応じて妨害もしていかねばならない。増元さんも触れられましたが、昨日終わった6者協議での日本政府の対応を見ていて大いに疑問を感じました。日本政府も一応各施設のサンプル採取を明記しろという点で踏ん張ったというように見えますが、実に危うい外交であったと思います。

つまり、あくまで自己申告施設に限ったサンプル採取ということなら、北朝鮮としても、誤魔化しきれると考え同意してくる可能性が十分あったし、今後もあると思います。そうなれば国際社会から北に、エネルギーその他の支援が流れ続けることになる。その分、圧力が弱まるわけです。ご承知の通り、10月の米朝合意は、北の自己申告外の疑惑施設に関しては、検証に当たって北朝鮮の拒否権を認めている。北朝鮮の自己申告なるものがいかに信用できないかは、われわれ拉致問題を知る人間にとっては自明のことです。したがって、サンプル採取うんぬんが明記されようがされまいが10月の米朝合意を日本は認めてはならない。ここが基本だと思います。

例えば、「国連の一機関である国際原子力機関(IAEA)が必要と認めれば申告外施設であっても北は査察を受け容れる」といった対案を日本は出すべきだと思いますが、何もしていない。IAEAの事務局長が米朝合意発表の直後に、これはおかしいと言っているんです。そういう発言のタイミングをうまくとらえて今言ったような対案を出すべきだと思いますが、全然動いていない。非常に怠慢だと思います。

第一、北朝鮮が提出する核申告書は「完全かつ正確」でなければならないと6者間で合意されている。それおよび「無能力化」と、エネルギー支援その他がバーターになっているわけです。ところが、北が出してきた申告書はどう見ても完全かつ正確ではない。今年5月9日、松原仁議員の質問に対し、当時の高村外相が、例えば核爆弾製造施設の場所が入っていないような申告書は完全かつ正確とは言いがたいと国会答弁している。北朝鮮が出してきた申告書には核爆弾製造施設の場所などは入っていません。日本政府としては当然、これは完全かつ正確な申告ではないと明言した上、突き返さねばならない。ところが、今に至るまで黙ったままです。大変おかしな対応だと思います。

古屋代議士、中井代議士が言われたような制裁強化を速やかにやっていただきたいが、たとえば中井議員がまとめた案が1か月以上経っても民主党内で動かないままというのは、反対する議員がいるからに他ならない。誰が反対しているのか明らかにしていく必要があると思います。

今年7月に加藤紘一氏が、帰ってきた5人を北朝鮮に送り返すべきだった発言しました。私は、ああいう発言をして恥じない議員は直ちに除名すべきだと思います。田母神論文と加藤発言の一体どちらが問題か、常識ある人間には明らかでしょう。また、北朝鮮と経済取引する国にはODAを出さないといった対応も当然取るべきだと思います。来る総選挙では北朝鮮に宥和的態度を採る議員はできる限り落選させる必要があります。そのことによって金正日のストレスも高まるでしょう。彼のリハビリを妨害しないといけなせんから、次の選挙は非常に大事だと思います。


2-2-9 拉致問題を解決できるような日本国に



櫻井(総合司会)

どうも有難うございました。今日は長い時間、専門家の皆様方による国際シンポジウムに続いて、家族会の皆様方の訴え、さらに専門家による分析、政治家の方々の力強いメッセージを聞いて参りました。本当に長時間ご一緒してくださり、有難うございました。今日のセッションで分かったことは、今更ながらではありますけれども日本国は国家としての意思を前面に打ち出して、拉致問題について強力に北朝鮮に、そして国際社会に相対峙したことは恐らくなかっただろうということです。

これは西岡力さんが指摘しましたが、蓮池さんたちが拉致された時に日本の警察は既に知っていた。しかしそれを10年間黙っていた。警察が発表した時に、今度黙ったのは政治とマスメディアであった。そして横田めぐみさんが北朝鮮にいるということがようやく分かった時に初めて家族会が立ち上がりました。私たちは当時、どうにかしてほしいと、多くの政治家に頼みました。すると少なからぬ政治家たちは、どこに証拠があるのかと問うたわけです。

拉致問題を解決しようという運動は、被害者の家族の側から、その家族を応援する国民の側から、そして日本国がもっとしっかりした国家でなければすべての問題を解決することができないと憂える、この国を愛する人たちの側からの働きかけと努力によって、拉致問題はここまできたのです。

もちろん政治家といって一括りにすることは公平ではないと思います。多くの心ある政治家たちが本当に一生懸命に北朝鮮と闘ってくださったことは確かであります。けれども、わが国政府として本当に拉致問題を最優先して、ブラウンさんがおっしゃったように予算を割り当て、人員を確保して、戦略を立てて、国家として、北朝鮮に対するだけでなく、中国に対しても、アメリカに対しても、国際社会に対しても働きかけるということがあまりにもなかったわけです。

今政界は大混乱の中にあります。混乱の時こそ一つの改革を成し遂げるチャンスでありますから、私たちは各政党、各議員に力強く訴えて、この拉致問題を解決することができるような政治を日本国で実現していきたいと思います。

皆さん、長時間本当に有難うございました。
  
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