救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

一国平和主義の呪縛を解き放て(2006/10/01)
?.提言
一国平和主義の呪縛を解き放て

平田隆太郎(救う会事務局長)

1.一国平和主義の呪縛を解き放て
「自衛隊を保有し、日米安保を維持すれば、戦争に巻き込まれる」と主張し続けた議会
における社民勢力は、既に弱体化した。その主張は何よりも日本が戦争に巻き込まれなか
ったという事実をもって有権者から退けられた。現在の日本人の大多数は、日米安保体制
を支持し、「自由民主主義」を支持している。
しかし、外国、例えば北朝鮮や中国の圧政や人権侵害を見て見ぬふりをする一国平和主
義の呪縛からは未だに多くの人々が解き放たれていない。これまでも日本人の一国平和主
義は、米軍という圧倒的な軍事力による保護下で、国際紛争に無関心・無責任を通してく
ることができたし、また安全保障を米軍に依存してきたことも忘れて無責任な日米同盟批
判が多数行なわれてきた。
一国平和主義は、他国の圧政や人権侵害について見て見ぬふりをしつつ、他国を刺激す
る主張には恐れを抱き、また他国の国内問題であることを理由として一切非難せず、内政
不干渉を名目に正当化してきた。これは圧政や人権侵害の黙認と同じ行為である。
また、一国平和主義は、脅迫に弱い。隣国の「歴史的犯罪」との脅迫に対し、歴史的事
実を直視せず、平謝りに謝った上で、ODAや人道支援という外交手段の一部を悪用し事
を収めようとしてきた。相手を刺激しないことで、取合えず自国だけの平和を確保しよう
とするこの卑劣な外交姿勢は、いじめられっ子の心理に共通するものがある。しかし、い
じめられっ子はいくら謝っても、毅然とした姿勢を取り戻さない限りいじめられるもので
ある。
この一国平和主義は、外国における人権侵害ではなく、日本人の人権と日本国の主権が
侵害された重大事態に対してすら、長期間に渡り見て見ぬふりを続けた。北朝鮮が拉致を
認めたにもかかわらず、未だに拉致を理由に単独制裁を発動できない点に象徴的に現われ
ている。国民には自明の理に政府はいつまで目を塞ぐのか。
いじめられっ子がいじめられなくなるためには、自信を取り戻し、毅然と対応できるよ
うになるしかない。日本人も、一国平和主義といういじめられっ子的な心理的呪縛を一国
も早く解き放つべきである。国民の人権侵害や日本国の主権侵害に対しては、毅然とした
対応を取るとの強い国家意思を示し、毅然たる対応を実施すべきである。また、時代の変
化に見合う抑止力を強化することで、結果として平和と安定を保つことができる。どのよ
うな国内政策も、平和と安定の下にのみ存在しえるものである。この積極的な平和主義こ
そが今、日本人に問われている。
「PKO協力法」が制定され、ほとんどの日本人が限定的ながら自衛隊の海外派遣を認
めるようになった。また平成15年7月に、家族会・救う会が「制裁の発動」を訴えてか
らわずか1年で、世論と立法府の3分の2以上が制裁支持となった。民意は大きく変化し
ている。しかし、行政府だけが対応できないでいる。この民意の変化がさらにしっかりし
たものとなれば、日本の平和と安定の基礎が確立される。
その上で、現在朝鮮半島で起こりつつある、劇的な変化を直視すべきであることを提言
したい。
2.集団的自衛権の発動を可能に
日本の抑止力を高めるために、制度的法的側面で真っ先になすべきことは、集団的自衛
権の正当化である。国連憲章は、自衛権とともに集団的自衛権を国家固有の権利としてい
るが、日本政府は、「権利は保有するが行使はできない」との奇妙な国会答弁を続けてきた。
朝鮮半島の不安定化を目前に、首相は今こそ集団的自衛権の解釈を変更し、政府をあげて
日米同盟の強化をはかるべきである。
集団的自衛権は、自国が直接攻撃されていなくとも、同盟国等外国に対する武力攻撃に
共同で対処する権利である。日本が主権国家である以上当然有しているが、「憲法9条の制
約から行使はできない」という内閣法制局の解釈は、一国平和主義に呪縛された典型的な
事例と言えよう。
首相が「従来の解釈は間違っていた」と一言認めれば、予算も、国会の議決も、憲法改
正も必要とせずに抑止力が飛躍的に増大する。そして、軍事的分野での協力も含め日米同
盟が大きく強化される。抑止のための「能力」に加え、国家としての「意思」を明確にす
るだけで、日本の抑止力が飛躍的に増大するのである。また、主権や人権が侵される場合、
日本は毅然と対応する国だと宣言することこそが、新たな国際的不法犯罪を未然に防止す
ることにもなる。今後、首相、防衛庁長官、関係閣僚を始め、閣僚に就任する人々は、主
権や人権への侵害に対して、毅然とした対応を取ろうとする国民意識を背景に、日本の平
和と安全を確保することが最大の福祉政策であることを自覚し、非常事態への対応も想定
しつつ、覚悟をもって就任すべきである。
その上で、有事法制の整備、新たに必要な部署の設置、専門家の配置などを行なうと共
に、同盟国米国から重大な情報を得ても内部漏洩をなくすための、また内外の国益を害す
る工作活動を取締り処罰できる法律の制定など、防諜部署の強化を図らねばならない。ま
た危機管理能力を向上させ、国内のテロリストを封じ込める必要がある。今こそ朝鮮半島
の不安定化に対し抑止力の強化を行なうべき時である。
3.世界の自由と人権のための国家戦略を
日本は未だ平和と安全のための国家戦略を持ったことがない。外交政策は常に対応政策
で、主体的、積極的に自由と人権を守ろうとはしてこなかった。主体的、積極的な要素を
持つものは、ODAや人道支援のばらまき外交のみである。いわゆる「専守防衛」政策も、
「自国のことのみに専念」し「他国を無視」することになりかねない安保政策である。他
国のことについては、国連・国際協調主義に依存し、安全圏での支援だけを行なってきた。
このような一国平和主義では「国際社会に名誉ある地位を占め」られないばかりか、自国
の主権や人権も守れず、諸外国の悪意や一方的主張に譲歩を重ねるばかりとなる。
日本の隣国では、情勢報告にあるように、韓国が急激に左傾化し、圧政と人権抑圧を続
ける北朝鮮、中国に接近しつつある。このような変化に対し、無原則的な全方位外交や内
政不干渉という名の黙認外交では、日本の自由と安全が脅かされる。
このような時、日本人を初め世界各地から外国人を拉致し、自国民を300万人以上餓
死させ、国民から自由を奪い続ける北朝鮮の金正日テロ政権となぜ国交正常化する必要が
あるのか。「国交正常化」は、まともな国家が相手であってこそ意義のあることで、テロ国
家と国交すること自体が「悪」への加担ではないか。これは現実を直視すれば誰にも自明
なことで、日本の国家戦略としては現時点で金正日政権との「国交正常化」などありえな
いことではないか。
従来の対北朝鮮政策は、金正日政権との共存を前提とし、金正日政権を国際社会に関与
させることで民主化や国民の人権状況の改善を期待したものであったが、全く成果がなか
った。北朝鮮に対しては、国際的圧力で自ら変化せざるを得ない状況に追い込む必要があ
る。北朝鮮人民の自由と人権のためにも、日本は早期に制裁を発動すべきである。
そして、日本は、自国のみならず世界の自由と人権のための国家戦略を検討すべきであ
る。「国際紛争を解決する手段としての武力行使は行なわない」との前提のもと、どのよう
な手段で、どこまでのことができるのか、冷静な議論の上、早急に結論を得て、戦後初め
てのことであるが、国際社会に日本の国家戦略を明示すべきである。
4.日本は日米韓三角同盟を強化し、北朝鮮の自由化をめざせ
96年4月、橋本龍太郎・クリントン日米首脳会談において、「21世紀に向けた日米共
同宣言」が出され、日米同盟が再定義された。冷戦の終結(89年)、湾岸戦争(91年)、
北朝鮮核疑惑(93年)、北朝鮮によるテポドン発射(98年)などの国際関係の激動を受
け、99年、周辺事態関連法が成立し、自国の防衛だけに専念するのではなく、非戦闘地
域限定ではあるが、周辺事態のために自衛隊が行動できることとなった。
今後、日本が集団的自衛権の保有を宣言すれば、「軍事力の直接行使」はせずとも、戦闘
地域での協力も可能になる。朝鮮半島が危機的な情況となり、日本の安全保障が犯される場合は、同盟国である米国との軍事協力も可能となる。このことが、日本の抑止力を飛躍
的に高めることになる。それだけでなく、日米同盟が確固たる同盟関係になることで、不
安定化する周辺地域への無言の圧力となり、不安定化を防ぐ重要な基盤となるのである。
不安定化する朝鮮半島情勢への対応策は、既に述べたように日米同盟の強化であるが、
同時に、韓国の保守派と連携し、日米韓三角同盟を維持、強化することである。韓国では
情勢報告にあるように、保守派が巻き返しの運動を開始した。保守派は、韓米同盟の強化
による朝鮮半島の安定化と安定した国際環境の中での経済発展をめざしている。韓国保守
派の論客、趙甲済氏は、小泉首相訪朝に際して、「小泉首相はいかなる場合も、金正日政権
の生存力を強化させるような合意をしてはならない。東北アジアの冷戦終結と平和定着の
ためには、金正日政権という決定的な障害物を無力化させ、退場させねばならない」、「金
正日政権の排除が良識ある政治家の義務」と述べている(2002年9月15日、産経新
聞)。
日本は今こそ、韓国保守派と連携し、日米韓三角同盟を強化し北朝鮮の自由化を目指す
べきである。
5.北朝鮮を「悪」と認識し、単独制裁発動の発動を
このテーマについては既に提言したが、未だ実現していない緊急課題であるので、改め
て提言したい。
ブッシュ米大統領は、2002年1月の一般教書演説で、北朝鮮を「悪の枢軸」と断定
した。日本も北朝鮮を「悪」と認識し、対北朝鮮政策を確立すべきである。
本プロジェクトでは、平成15年3月の提言で、「時間は金正日の味方」として、崩壊を
引き伸ばすほど核・ミサイル開発が進んでしまうため、金正日政権を崩壊させた方が安く
つくこと、また、日本政府は、今後韓国政府による対北支援額を積算し、その分を、日本
が将来、北の崩壊時に行うであろう支援=「統一コスト」から差し引くと宣言すべきと提
案した。
他方、金正日政権を延命させる場合に「金正日コスト」が発生する。北朝鮮に時間を与
えれば与えるほど、核・ミサイル開発が進むことが大きな「金正日コスト」であるが、そ
の他北朝鮮国民を悲惨な状況に置き続けるのも「金正日コスト」である。「統一コスト」も
金正日政権が延命すればするほど高くつく。それほど高くつく「統一コスト」よりも、政
権延命による「金正日コスト」はもっと高くつく。もはや、金正日政権の一日も早い崩壊
こそが最も安価なコストになるとの考えが広がっている。時間を稼がせると金正日コスト
が増大する。例えば、最低でも2年間に5発の核弾頭が生産される可能性があるという金
正日コストに対し、早急に制裁をかけることが必要である。
北朝鮮は経済制裁を宣戦布告と見なすと日本を脅している。つまり、北朝鮮が経済制裁
に大きな効果があることを証明している。こちらが、強い姿勢に出て初めて、金正日政権も拉致に関して交渉に応じてくる。テロ国家との交渉の基本原則は、相手の恫喝を怖れず、
圧力なしの対話(取引)を行なわず、圧力をかけ、解決のために対話することである。多
数の拉致被害者を出し、北のミサイルの最大標的でもある日本が、いつまでも制裁カード
を使わないなら、北朝鮮に現状のままでいいという誤ったメッセージを発し、日本の外交
力を弱めることになる。
日本が拉致を理由に単独制裁をかれば、中国は拉致問題が完全に解決しない限り資金を
提供しないという日本の断固たる姿勢を理解し、核問題を巡る金正日に対する説得の中で、
拉致問題で日本を納得させうる対応をするように要求を追加せざるをえない。いくら核問
題で金正日が大きく譲歩しても、拉致問題が解決しない限り、日本は制裁を解除せず、資
金協力を行なわない。従って、中国は北朝鮮を説得せざるをえない。日本が拉致だけを理
由にして早期に制裁発動すること以上に、よい策はない。また、日本の最大の武器は経済
力である。金正日政権に経済協力金を払う必要などないが、彼らが日本からカネを取れる
と信じている限り、日本を攻撃するというシナリオはあり得ない。
また、日本が今、拉致を中心とする人権問題を理由に対北朝鮮制裁に踏み込むことは、
アメリカの良き部分を支える米国保守勢力との信頼関係を強化しつつ、共通の理念に基づ
いた、より強固な日米同盟の実現にも資するであろう。
そして、過去に関わる権力闘争に終始する韓国に、日本として忠告すべきことは、「統一
コスト」を怖れ、北朝鮮国民を餓死させ拷問にかける政権との共存は許されないというこ
とである。さらに、そのような北朝鮮を支援する国にはペナルティーを与える姿勢を、日
本政府は明示すべきである。
米国では、北朝鮮人権法が成立した。日本は、各党で検討中であるが成立はしていない。
脱北者を難民として認めるよう中国に圧力をかけると同時に、日本側でも最小限の脱北者
を引き受けねばならない。それが北朝鮮に対する強い圧力になる。制裁で締め上げると共
に、「脱北者を出すことで、政権を崩壊させることもできる」と圧力をかける必要がある。
拉致被害者保護のためにも制裁が必要である。現在、金正日に対する国民の支持は地に
落ちている。しかし、人民蜂起は難しい。政変が起きるとすれば、外圧が先行して内部矛
盾が高まる時である。政変で治安が乱れるような時、拉致被害者をどのようにして救出す
るか。それには、拉致を理由とした単独制裁が最も有効である。制裁により、日本人が拉
致を理由に激怒していることが政権要路、ひいては国民にまで伝わることとなる。そして、
拉致被害者を保護すれば、褒章を貰えることを伝え、危害を加えれば将来の国づくりに協
力しないことを知らせる。日本発の朝鮮語によるラジオ放送等でそのことを知らせるべき
である。拉致被害者の所在がまったく分からない状況で、被害者を保護するには、制裁を
発動し、日本人の激怒を伝えることが最も有効である。
最後に、独裁政権との交渉で政治家が注意すべきことについて述べておきたい。まず、政府であるが、日本では特に首相が、自らの責任において政治決断を下すことを避けてき
た長い歴史がある。拉致が発覚して以来、多くの首相が懸案を棚上げにしてきたのである。
人権、主権の侵害に対し、見てみぬふりをするような首相では、外国の侮りを受けるばか
りとなろう。国民を拉致されるというような人権、主権の侵害に対し、毅然と対応するに
は、自ら責任を引き受けることで官僚を動かさねばならない。それなしには、どのような
有能な官僚もその才能を全面的に発揮できない。
また国民の多くは、北朝鮮を「悪」と認識し、制裁をかけることを求めているが、各党
政治家が訪朝する場合、歴史問題でまず謝罪するという自虐的な姿勢が長く続いた。逆に、
拉致問題には目をつぶってきた歴史がある。これでは、相手に力量を見透かされてしまう
だけである。
孔子が弟子の子貢から「士(第一級の人物)とはどういう人が」と問われ、「四方に使い
して君命を辱めず」と応えた論語の故事があるが、政治家は国のために外国に赴いて使命
を果たすことの重大さを忘れるべきではない。毅然とした振る舞いこそが、相手にも評価
されるということでもある。その意味では、費用丸抱えでの独裁国訪問を受け入れるとか、
美人通訳に翻弄されるようなことは論外である。このようなことを提言に書かねばならな
いこと自体誠に悲しむべきことであるが、少なからぬ政治家が中国、韓国、北朝鮮を訪問
する際、「君命を辱めた」かのような噂が絶えないのも事実である。その結果、帰国してか
らも相手の言うなりにならざるをえないようなリスクは絶対に犯すべきではない。
また、独裁国との間で「日朝友好」、「日中友好」事業を行なう民間団体が少なくないが、
独裁国の人権問題を無視して友好関係だけを行なうことも相手の言いなりにならざるを得
ないリスクがあることに留意すべきである。
  
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