第49回「立民生方議員発言 どこが間違いか」
みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長西岡力です。今日で第49回になります。令和3年10月16日に収録しました。
今日のタイトルは、「立民生方議員発言 どこが間違いか」と題してお送りいたします。
◆生方議員のひどい発言
10月11日月曜日に私たち家族会・救う会は抗議声明を出しました。立憲民主党の生方幸夫衆議院議員がひどい発言をしたということを私たちが発見したのです。
そのひどい発言を紹介します。9月23日、松戸市民会館で行われた国政報告会で生方議員は、
*横田めぐみさんは生きていない。
*生きているなら帰すではないですか。帰さない理由は全くない。
*遺骨を送ってきて日本で鑑定をして当人ではないと言ったのですけれども、あの時の状況で遺骨からDNAを鑑定してそれが横田さんであるのかないのかというような技術力はなかったのです。
*日本から連れ去られた拉致被害者というのはもう生きている人はいない。
*日本国内から連れ去られて行ってあちらで教育を受けて日本語を教えるなどをしたというのは拉致被害者は、今は生存者はいないのだと思う」
*拉致生存者がいると思っている人はたぶん自民党でも一人もいないと思う。
*横田さんが生きているというとは誰も思っていないのです、自民党の議員も。
*小泉さんが行って話をして決まったことを守らなかったというのがいけないのであって。守らなかったという意味は、いったん拉致家族の方たちを帰すけれども、もう一回戻ってきてくださいよ、ということで小泉さんはOKしている。ところが、帰ってきたら全然戻らないまま、もうそんなの1回戻してきたらなんで返さなければいけないのだ、そんなの交渉の時に言わなければならない。
これらの驚くべき発言はすべて動画がネットで公開されていました。
◆立憲民主党は緊急声明を出してすぐ謝罪
これに対してですね、すぐ立憲民主党が緊急声明を出して謝罪をしました。
その中でですね、「我々は拉致被害者が生存していると信じています」と言われました。
またその日ですね、生方議員本人が救う会の事務所に来て、家族会・救う会に謝罪文を持ってきました。
その中でも、「今後私自身、拉致被害者の生存を信じて」という風に書いていらっしゃいます。
一方、「自民党議員も生きてる人はいないと思ってる」と言われた自民党はですね、9月13日に、「拉致問題に対するわが党の姿勢について」という声明を出しました。
そして、「立憲民主党議員による発言があった」、「これは、これまでの政府方針とまったく異なるものである」と、政府方針と異なると言っています。
◆日本政府の方針に反する生方発言?家族会・救う会の抗議声明
私たちは抗議声明でですね、「日本政府は被害者の『死亡』を裏付けるものが一切存在しないため、被害者が生存しているという前提に立つ」という基本的立場に立っている。この立場は生方議員が副大臣などで参画した民主党時代にも維持されていた」というふうに言いまして、自民党の声明が言っているように、生方議員の発言は、「信じる、信じない」の問題ではなくて、「今の日本政府の方針に反している」ということを言いました。
私たちの抗議声明では、「生方議員は人の命に関わる重大な人権問題について、日本政府の基本的立場を否定して、北朝鮮の主張に賛同している。その上、自民党議員を含む関係者が皆生存者がいないと思っていると断定して、関係者の名誉を著しく傷つけている。生方議員のこの発言は、すべての拉致被害者の救出のために心血を注いできた拉致被害者家族とその支援者また被害者自身の生命に対する重大な侮辱であり冒涜だ。強く抗議する。発言の取消と謝罪を求めたい」としています。この「また被害者自身の」というところは家族会の幹部が書き加えたものです。
ここで私たちがいう「政府方針」というのは何なのかと言うこと、なぜ生方議員の発言が間違ってるかということについて具体的に説明したいと思い、今日救う会テレビで発信することにしました。
◆北朝鮮側主張の問題点(政府パンフ)
このパンフレット(「すべての拉致被害者の帰国を目指して?北朝鮮側主張の問題点)があります。政府の拉致問題対策本部が出したものです。
2006年、第一次安倍政権ができた時に出されたもので、その後民主党政権の3年間があったわけですね。そしてもう一度安倍政権になり、菅政権、岸田政権となりましたが、ずっとこのパンフレットは使われています。
このパンフレットの1ページ目に、「北朝鮮による日本人拉致問題とは」とあり、その後、「北朝鮮主張の問題点」が出ています。日本政府はこのパンフレットで、日本政府として北朝鮮の主張に対して反論しているのです。北朝鮮が次のように主張してると書いてあります。
*8名は死亡、4名は北朝鮮に入っていない。
*死亡した8名については必要な情報提供を行い、遺骨(二人分)も変換済み。
*日本側は、死んだ被害者を生き返らせろと無理な要求をしている。
しかし、ここからが日本政府の反論です。
※しかしこうした北朝鮮側の主張は以下のように多くの問題点があり、日本政府は北朝鮮側の主張を決して受け入れることはできません。
以下は先ほども引用しましたが、
※被害者の『死亡』を裏付けるものが一切存在しないため、被害者が生存しているという前提に立って被害者の即時帰国と納得のいく説明を行うよう求めています。日本政府は決して無理な要求をしてるのでありません、となるわけです。
◆日本政府が、北朝鮮が提供した「死亡の証拠」なるものは全てでたらめ
これから具体的に説明しますけども、北朝鮮が提供した「死亡の証拠」なるものは全てでたらめだったんです。「全てでたらめだ」と家族会・救う会が言っているのではなくて、日本政府が言っているんです。だから、「『死亡』を裏付けるものが一切存在しない」と日本政府が言っているんです。
それは生方さんが与党で、そして副大臣として入っていた民主党政府もこう言っていたんです。政府の方針に反することを言っているんです。
じゃあどのように北朝鮮の死亡の証拠がでたらめなのかということについて、政府のパンフレットに従って説明したいと思います。
まず1、8名の「死因」には不自然死が極端に多いことに加え、これを裏付ける客観的な証拠が全く提示されていない。死亡の理由と年齢が書いてありますが、これは本当におかしいですね。みんな若くて、このような理由で死んでいるということを生命保険会社に計算してもらったら、「こんな確率はありえない」、「こんなことが起きたら、13人の内8人がこの年齢で死んだら、生命保険会社は全部つぶれてしまう」と言ってます。
そしてですね、(1)被害者の遺骸は一切存在しない。遺骨と称するものの内6人については、「墓地に埋葬されていたが豪雨で流出した」と言っている。2人分については、「本人らのものとは異なるDNAが入っている」と。それから、(2)死亡を証明する真正な書類が一切存在しない。
この中でですね、市川さん、石岡さん、松木さん、田口さん、原さん、増元さん、有本さんの7枚の死亡診断書を見ていただくと、形式が全く同じですよね。病院が同じなんですが、印影が同じゴム印ですが、透かして見ると重なっているんですね。
しかし、これを見て下さい。市川さんは79年江原道で死んでると言っている。石岡さんは88年に慈江道で死んでいる。松木さんは96年に咸鏡南道で死んでいると言っている。田口さんは86年に江原道で死んだ。原さんは86年に平壌で死んでいる。増元さんは81年に黄海北道で、有本さんは88年に慈江道。
つまり死んだと言ってる時期も場所もバラバラなのに、なぜ同じ病院から死亡診断書が出るんだ、と。
発行日は死亡した日か次の日になっているんです。医者がサインしています。「こんなのおかしいんじゃないか」と追及したら、「慌てて作って間違えた」と彼らが言ったのです。
それで政府の説明ですね。「2002年に提出されたもの。かっこ内は北朝鮮側説明による死亡日及び場所。死亡時期、場所がバラバラであるにもかかわらず、すべて同じ病院の発行で、印影も同じ。2004年になって、北朝鮮は、これら確認書は当時急遽作成したものであることを認めた」。
政府が認めたことを書いているのです。私が言っているのではないのです。
それから「交通事故記録」ですが、田口さんと松木薫さんについて、交通事故の記録が出てきたのですが、「いくつかの個所が塗りつぶされている上、『死亡者』の氏名を示す記述がないため、『田口さんが交通事故で死亡した』、『松木さんが交通事故で死亡した』との主張を裏付けるものとは到底言えない」。ホワイトで名前の所を消しているんです。こんなものは死亡の証拠ではない。
めぐみさんについてはもっとおかしなことがいっぱいあります。まず元夫がめぐみさんに出した手紙です。「幸せな家庭生活を送っていたところ、1993年に突然病気でめぐみを失うという不幸なことが襲ってくるとは、誰が想像することはできたでしょうか」。
その下ですね、「めぐみさんは93年に亡くなったとされているが、実際には、少なくとも94年まで生存していたことが確認されている」。これは蓮池さんと地村さんが、「一緒の地域に住んでいた」と証言しているんです。このことについて元夫は、「錯覚であった」と説明してる。
めぐみさんの死亡診断書だけ7人と違って精神病院で出されたと言ってるんですね。それも93年3月13日になっているんです。夫が「錯覚だった」と言っているのですが、では医者も錯覚するのかということになりますね。
そしてその病院から日本側に提供された「患者死亡台帳」のこれが表紙です。これは日本側が写真を撮ってきたんですが、よく見ていただくと、ボールペンみたいなもので線が引いてありますね。その線をちゃんと引けばいいのに字が読めるのです。元々なんと書いてあったかというと、「患者入退院台帳」と書いてあった。その「入退院」を消して、「死亡」と書いている。
精神病院で毎日毎日死亡者が出るというのはおかしいんですね。末期癌の病棟でもあるまいし。彼らは紙がないわけです。上から「死亡台帳」を作れと言われたけど、紙がないからしょうがなくこう作ったと思われます。表紙くらい新しく張り替えろよ、といいたいくらいです。こんなものは死亡の証拠にはならない。
めくってみて、「めぐみさんのページはここです」と示されたんです。通し番号が付いてるんですが3?239が二人いるんですね。
「横田めぐみさんとされる女性の欄は通し番号3?239となってるが、これは次の行の男性と同じ番号」です。こんなでたらめなんです。
◆大韓機爆破事件を隠したいから金賢姫と田口さんの関係を否定
あるいは田口八重子さん、原敕晁さんですが、「日本人を偽装して大韓機爆破事件を起こした北朝鮮工作員金賢姫(キム・ヒョンヒ)の証言から、拉致被害者田口八重子さんがこの北朝鮮工作員の教育係を務めたことが明らかになっているが、北朝鮮はこうした事実や事件そのものへの関与を完全に否定している」。
つまり田口さん拉致は認めたが、大韓機爆破事件はでっち上げ、金賢姫も我々と関係ないと今も言っているんです。「しかし、田口さんは別の拉致被害者、2002年に帰国した被害者に対して、『昭和56年(1983年)から58年にかけて、〈オッカ〉(玉花=金賢姫の別名)という名の女性工作員と共同生活したことが確認されている』」。
ですから、大韓機爆破事件をを認めたくないんですね。それで田口さんのことは拉致を認めたけれども、金賢姫のことはまだ認めていないということ等々ですね、おかしなことがいっぱいあるわけです。だから日本政府は先ほど言ったように、「被害者の『死亡』を裏付けるものが一切存在しないため、被害者が生存しているとの前提に立って被害者の即時帰国を求めている」と。
◆国内最高水準の研究機関でDNA鑑定
これが日本政府の立場です。生方発言はこの日本政府の発言を否定して、北朝鮮の主張を日本の中で国会議員としてしたということがけしからんということなのです。
「信じている、信じてない」とか、「家族が信じているから私たちも家族に寄り添って信じている」等、そういう問題じゃないんです。そこをまず強く言いたいということですね。
それからもう一つ、先ほどの生方発言ですが、生きていないことの根拠を生方議員は2つ上げています。一つはめぐみさんのDNA鑑定についてですね。先ほども日本政府のパンフレットで、他人のDNAが出たということを紹介しましたが、それについて、「そのような技術は日本になかった」と。つまり日本政府が鑑定を捏造したと言ったんですね。これも本当にひどい北朝鮮側に立つ主張です。当時のやり取りを警察庁の資料からまとめてみました。
平成16年11月9日から14日、平壌で実務協議が開かれて、めぐみさんの遺骨と称するものを日本側に提出した。警察は慎重に選定されたDNAを検出できる可能性のある骨片10片について、DNA鑑定の分野で国内最高水準の研究機関である帝京大学と警察庁科学警察研究所に5つずつ渡したんです。
その結果ですね、警察庁の科学警察研究所の革研究所では、高温で焼いていたためてDNAが出なかったんですが、帝京大学に鑑定を嘱託した骨片5個の内4個から同一のDNAが、他の1個から別のDNAが検出されましたが、いずれも横田めぐみさんのDNAとは異なっていました。
めぐさんはですね、生まれた時のへその緒が残っていて本人のDNAが分かるんです。そして確実に違っていた。それを12月25日、日本政府は北朝鮮に伝えました。それに対して12月30日北朝鮮は、「受け入れることも、認めることもできないし、それを断固排撃する」、「朝日政府接触にこれ以上異議を付与する必要がなくなった」と言ったわけです。
◆生方議員は北朝鮮側に立って発言
1月になったら今度は、「備忘録」なる文書を提出して、「めぐみさんの遺骨と称する鑑定結果は捏造である」と改めて主張した。「それを返せ」と言ってきた。生方議員の発言はどちらの側に立っていたか、これでよく分かりますよね。
2月10日、わが国は北朝鮮に、「北朝鮮側『備忘録』について」と題する文書を伝達、わが国の見解は、「厳格な手続きに従い、日本で最も権威のある機関の1つが実施した客観的かつ科学的な鑑定に基づくものである」と反論しました。そうしたら北朝鮮は、「この問題について日本政府と議論する考えはない」と。
それで日本が、「生存する拉致被害者の即時帰国と真相究明を求める」ということがありました。
このやり取りの中で生方さんはどっちについてるか。明白ですね。
もう一つ生方議員が言った死亡の証拠、根拠のあるものはですね、「生きているなら返します」と言ったわけです。5人は返して8人は返さなかった。「死んでいるから返さなかったんだ」と。これは全く根拠のない話ですね。
先ほど言ったようにですね、北朝鮮には隠したい秘密があるんです。その秘密に関わる人を一方的に死んだと言ったのです。これは私たちの主張ですが、先ほど日本政府も、大韓機爆破事件について北朝鮮は隠そうとしてると言いましたよね。その理由はですね、大韓機爆破事件の犯人の金賢姫さんは、「大韓機にテロをして115人殺せという命令は金正日氏の直筆のサインのある命令書だった」と言っているんです。
つまり主犯は金正日。北朝鮮の国で、最高指導者をテロリストにするようなことは絶対にできない。小泉訪朝の時拉致を認める必要があった。日本政府が調査を求めていた人たちについて何らかの回答をせざるを得ない。その中で絶対公開できないような秘密を知ってる人たちが死亡とされた。
その一つが大韓航空機事件に関係する人は出せなかった。だから「死んだ」とした。田口さんが帰ってきて、金賢姫と抱き合って、「あの時こうだったね」って言ったら、金賢姫が本物になってしまう。
そして実は、金賢姫はめぐみさんにも会っていたんです。金賢姫の同僚の淑姫(スッキ)という工作員がめぐみさんの教え子だった。そして淑姫と賢姫が一緒にめぐみさんに会いに行ったこともあったわけです。
だからめぐみさんが帰ってきたら、金賢姫と会って、「あの時一緒に歌を歌ったわね」というような話になる。そうすると金賢姫が本物だということになる。そうすると最高指導者がテロリストだったということが分かってしまうということで、当時北朝鮮は拉致は認めたが大韓機事件は認められないので、生きている人を「死んだ」と言ったという仮説が十分に成り立つわけです。
そういう仮説も十分成り立つのに、「生きていたら返します」と。ただ一点ですね。そして「日本政府の鑑定は間違っていた」と。
日本政府が死亡の証拠がないから生存を前提に全員助けると言ってるのに、「死んでるんだ。生きてないんだ。それは自民党も含めてみんな思っているんだ」と言い切った。だから間違っているということであります。
家族が諦めきれない。その家族に同情するから政府を信じると言ってるんじゃないんです。日本政府の方針、客観的に鑑定した結果、死亡の証拠はひとつもなかったということなんです。
◆日本政府は約束を破っていない
そして最後に一つだけ。「5人が帰ってきた時約束を守らなかった。それはいけないんだ」と彼は言っていましたが、日本政府は約束を破っていないんです。5人を返すということは、小泉さんと金正日氏が決めたことではないんです。
小泉訪朝が終わった後、最初5人は、「日本に帰りたくない。日本の家族が平壌に来てくれ」と言っていたんです。日本の家族がそれを拒否したら突然、一時帰国という形で来ると言った。
しかし小泉の訪朝の時に、日朝の赤十字が合意した文書がある。そこで、「生存者については本人の意思に従って扱う」と書いてある。
当初本人は、「子どもを置いて一時帰国で来たい」と言っていた。だから日本は受け付けて一時帰国が実現したんです。しかし本人たちが日本にいる間に、「日本政府が守ってくれるなら日本に残りたい」と言ったんです。その結果日本政府は残した。
しかし、北朝鮮には子どもたちがいる。人質として持ってる。そのことを公開しなかっただけで今はそれは公開されています。全く日本政府は約束を破ったのではなくて、拉致された人たちが「日本に残りたい」と言って、日本に残して何が悪いんだ、と。それを約束破りというのも拉致犯人の側に立っているとしか思えません。
つまり全ての発言が根拠が無く、そして一方的に北朝鮮の代弁をしてる。だから私は強く怒ったし、今も怒っています。今日は「生方議員発言 どこが間違いか」と題してお送りしました。ありがとうございました。
以上