第13回「北朝鮮権力中枢部に異変か-金正恩、与正対立説」
みなさんごきげんよう。救う会テレビ、救う会全国協議会会長西岡力です。今日は令和2年6月29日午後7時半です。
今回は「北朝鮮権力中枢部に異変か-金正恩、与正対立説」についてお話ししたいと思います。
◆韓国へのビラまきは突然中止に
皆さんもご承知の通り、そして前々回のこの救う会テレビでお話ししましたけれども、金与正氏が急浮上して2人目の首領になったという話をしました。その背景には金正恩の健康不安があるという話をしたのですが、また急展開がありました。
金与正氏はですね、南北連絡事務所を爆破した後、「これでは済まない」、「南朝鮮の人間は後悔するだろう」、「くずはゴミ箱に捨てなければならない」とかですね、「ビラとゴミそれを収集するのがどれほど厄介で気分が悪いことなのか一度はっきりと経験するだろう」と勝手を言ってですね、1200万枚もの韓国へのビラを準備して韓国に撒くと言っていたんですね。
そのビラの写真までですね北朝鮮は公開した。北朝鮮の印刷機という印刷機を動員してビラを刷っていたというのですね。全国で「脱北者けしからん!ビラを撒け!」という集会をしていたと申し上げましたよね。ところがそれが突然中止になったのです。
◆金与正の3回の談話、そして言わなくなった
いったい何が起きたのかということなのですね。ちょっと今この動きをおさらいしておきますと、6月に3回与正の談話が出るんですが、最初に6月4日の談話が出ました。
〈「脱北者」なる連中が前線一帯に現れて、数十万枚の反朝鮮ビラをわが方の地域に飛ばすならず者行為を働いた。人間の値打ちもないくずのような連中が、むやみにわれわれの最高の尊厳にまで触れ、「核問題」に言いがかりをつけて不作法に振る舞った〉
けしからんと言ったわけですね。韓国政府は慌ててビラ飛ばしを規制する法律を作ると言ったのですが、そんなものでは満足できないと言って13日にもう一度談話が出ました。
これについては前回も話しましたけども、驚くべき表現があったのですね。
〈私は委員長同志と党と国家から付与された私の権限を行使して〉と。対敵ここで韓国のことを「敵」と言っています。〈対敵事業関連部署に次の段階の行動を決行することを指示した〉と。この「指示」という動詞は首領以外は使えないと前々回言いました。
〈遠からず、無用な北南共同連絡事務所が跡形もなく崩れる悲惨な光景を見ることになるであろう〉
確かに3日後にそういう光景を我々は見ました。もうこれで終わりとは言ってないと、〈次の対敵行動の行使権はわが軍隊の総参謀部に手渡そうとする〉と、総参謀部にやらせるのだ、と。
〈わが軍隊やはり、人民の憤怒を多かれ少なかれ静められる何かを決心して断行すると信じている。くずは、ゴミ箱に捨てなければならない〉というように言って、そして爆破があり、爆破の後次の日与正がもう一回談話を出して、〈信義を裏切ったのがどんなに大きな代償を払うことなのか南朝鮮当局者は流れる時間の中で骨身に染みるほど感じることになるであろう〉、〈今総参謀部が準備している〉と予告をしたわけですね。
同じ17日にその総参謀部のスポークスマンが、4つの対敵軍事行動計画を準備していると発表しました。
〈1金剛山観光地区と開城工業地区に部隊を展開する。
2非武装地帯から撤収した監視警戒所を再び進出展開する。
3境界地域付近で軍事訓練を再開する〉と。
これらは南北軍事合意で止めることを合意していたのですね。この1、2、3をやると言っている。
そして4つ目に、〈4わが人民の対南ビラ散布闘争を軍事的に徹底的に保証する〉と言ったのです。つまり対敵的軍事行動の中に対南ビラ散布闘争が含まれているということを17日に言ったわけです。
そして〈人民軍総参謀部はこのような対敵軍事行動計画をより細分化して、早い日の内に労働党中央軍事委員会の批准に提起するだろう〉と言って中央軍事委員会に案を出すと言った。
◆ドローン数百台でビラを韓国に撒く
22日には先ほどのビラの写真が出た。朝鮮中央通信が〈1200万枚のビラを印刷した。三千余りある風船をはじめ南朝鮮の縦深深くにまで散布することのできるいろいろなビラ散布器具、手段を準備した。ビラとごみ、それを収拾するのがどれほど厄介で気分が悪いことなのかを一度はっきり経験するだろう〉と言ったわけです。
しかしこの時ですね、この話を聞いて一部の専門家あるいは脱北者の人たちはですね、「与正は頭がおかしいのか、合理的な考えが出来ないのか」と言ったのですね。
つまりここで風船を初めとして、と言って風船を使うと言ってるのですが、風向きが今逆なのです。夏はですね南風なのです。南から北に飛ばすのに適している。反対に冬は北風で北から南に飛んでくるので、今はいくら三千の風船を準備しても飛ばないのです。ゴミ掃除は北朝鮮の人がやることになるのです。
「(与正は)合理的に物を考えられないのか」とビラ飛ばしをやっている人たちや専門家は言っていたわけです。
しかし違ったのですね。私の聞いた情報では、ここで「いろいろ」なビラ散布器具、手段を準備したと言ってますけど、その「いろいろ」の中にドローンが入っていたのです。
ドローンを数百台準備して、韓国の大統領府青瓦台に集中的にビラを落とす準備をしているということをこの22日頃聞いていました。それでちょっと「これ大変なことなのではないか」と。
ドローンはつまりこれは軍がやるわけですね。軍総参謀部が人民の対南ビラ散布闘争を軍事的に徹底的に保障すると言って、風船では駄目だからドローンを準備してると。
そして文在寅に拾わせると言って青瓦台に落とすということのようなのですが、しかし青瓦台にドローンが数百機飛んできたらそこに紙のビラが付いているのか、爆弾が付いてるのか分かりませんから、これを落としますよね。これは軍事行動になりますね。
全部落とされてしまったら(与正の)メンツ丸潰れですし、あるいは(ビラが)届いたら今度は韓国軍のメンツも丸潰れになるし、ドローンが飛んできたらもうこれは軍事攻撃とみなして韓国が報復するかもしれない。大変なことになるのではないか、という風に緊張をしていました。
そうじゃなければ、風船飛ばしたら全部北に落ちるという恥をかくのですけど、与正のところには、つまりこれは人民軍の総参謀本部から「出来ます」という案があがってたのですね。それはドローンだった。
そうじゃなければ17日にこんな計画が発表されませんよね。私もその22日、この朝鮮中央通信の写真を見てですね、1200万枚も本当に刷ったのかと。北朝鮮は本当に今お金がないわけですね。紙も無いのです。それなのにこんな綺麗なカラー写真で刷った、と。
北朝鮮中の印刷所が使われたと言うのですが、しかしドローンが飛んできたらどうなるのだろうか。すごく緊張していました。
◆金正恩が登場して「対南軍事行動計画は保留」に
そしたら23日にですね、金正恩が党中央軍事委員会予備会議を指導したと発表があって、そして〈最近の情勢を評価して朝鮮人民軍総参謀部が党中央軍事委員会に提起した対南軍事行動計画を保留した〉と発表されました。
ここでですね、17日には「対敵」軍事行動計画となっているのが、「対南」軍事行動計画と、この表現が微妙に変わってるのですね。トーンを落としているいうことです。
このことが報道された後ですね、韓国や日本の大部分の専門家解説者は、「役割分担をしている」と。与正が緊張を高めて正恩が出てきて、それを鎮めたという解説がすごく多かったのですけど、私が聞いていたのはそうではありません。
ドローンを使ったらどんなことになるのかという危機感があって、誰かが正恩に報告を上げた、と。このそもそもですね、中央軍事委員会の予備会議というのは今まで1度も報道されたことないのですね。それもリモートで行われたのです。だから写真もないのです。
突然出席者を集める余裕も無かったからリモートでやったことにして、保留ということを決めた。一応与正のメンツを潰さないために。
「労働党中央軍事委員会の批准に提起する」と言っていたから、それを開いたことにして、正恩が保留にしたということなのですが、この後与正は談話を出していません。
平壌の幹部たちは、一体何があったのだ、与正と正恩が割れているのかという話で持ちきりだということです。そしてそれだけじゃなくてですね、今あの平壌ではいったい何が起きているのか。何が起きるか分からない。大変みんな不安がっているし、緊張が高まっているのですね。
◆平壌居住者でも3か月以上食糧不足?制裁とコロナ
6月に実はもう一つ重要な会議があったのですね。6月7日に政治局会議がありました。これは写真も出ているわけです。しかしですね、この政治局会議は金正恩が指導して与正も出席していたのですけども、この第2議案下の方に書きましたけど、第2議案には
〈首都市民の生活保障における当面の問題が討議された〉
〈平壌市民の生活保障の当面の問題が討議された〉
〈金正恩委員長は首都市民の生活保障において早急に解決すべき問題を具体的に指摘し、住宅建設を初めとする住民の生活保障に関する国家的な対策を強く立てることについて強調した〉
〈会議では、平壌市民の生活における問題を解決するための重要問題が討議された〉と言うのですけども、実はですね、平壌で今配給が止まっているのです。
平壌というのは特別扱いされていて、300万人が餓死した90年代の後半でも配給があったのです。
平壌とそれから党や軍の幹部たちと、そして治安機関の幹部たち等は配給で食っていたのです。あるいは人民軍の兵士たちもですね。中身は悪いけど一応軍隊の中で食えてはいたのです。今苦しいのは実はそういう人たちなのです。そういう人たちの配給が途絶えてきた。
一般人民には配給が90年代後半以降ないのです。みんな闇で食う食い方を覚えているので、闇で食えない300万人が餓死したということですけど、今生き残っている人たちはなんらかの形で食える方法を持ってる人たちなのですが、その大飢饉の時も配給をもらっていた人たちへの配給が今途絶えた。
特に平壌でだいたい3月ぐらいからですから、3、4、5、6、3か月ちょっと、特にコロナが蔓延し始めてから後中国との交易を遮断した後ということらしいですけど、配給が完全になくなったわけではないですけど、それでは食ってい
けないぐらいの量になってしまった。
それが政治局会議の議題にまでなっている。それでその理由を与正、正恩両方ともが、「文在寅が約束を守らないからだ」と。「2年前平壌に来た時支援すると言ったじゃないか」、ということで裏切り者ということになって、チラシというのを口実にして韓国との約束を全部破るということをやって、文在寅政権を圧迫しているわけですけども、文在寅政権は支援をしたいのですが、支援をするとアメリカがセカンダリーサンクション(二次的制裁)で(韓国企業・銀行の)ドル取引を停止するということがありますので、動けないということで包囲網ができている。
その包囲網+コロナの結果、正恩政権が大変追い込まれて、緊張を高めて、不満を外に向けようと与正は考えたのですが、一を知って二を知らなくて、風向きを考えないでビラを飛ばすと言ってしまったから、「やることはないのか!」って言うから、「ドローンがあります」、「それをやれ!」となったのです。
ドローンをやったら軍事行動になってしまう。そして軍の本音もですね、ドローンは戦争に使いたい。虎の子で買ったのですからチラシなんか撒いてゴミを掃除させて思い知らせるために使いたくないですよ。
それで正恩の名前でストップがかかった、ということですけども、与正からすると、私が指示したことを止めるのかということになりますよね。みんな与正についていた人たちは、「やっぱり正恩だろうか、与正の目は無くなったのか」と。皆どっちに付けばよいのかという風に今なっている。
正恩は出てこないから、与正にやらせたということで、健康が悪いのではないかと。本当に予備会議が開かれたのか。
◆政権の中枢部で異常事態が起きているかも
様々な噂が飛び交っているということですが、前回(拉致解決の戦略だと)申し上げましたけども、「先圧力」、「後交渉」という点で圧力が効いている。本当に政権の中枢部で異常事態が起きているかもしれない、ということであります。与正と正恩の間に何かが起きたのかもしれない。もちろん権力中枢のことは
これ以上分かりませんが、しかしこの流れを見ているとですね、23日に突然正恩が出てきている。はっきりしてるわけです。ここで断絶しているわけですね。
これの意味は何なのか。二人が示し合わせてやっていたという判断をしている(専門家が多いが)、北朝鮮の人間たち、権力中枢部の人たちは(そうは思って)いないです。これは私の分析ではなくて情報です。
まあ何が起きるか分からない。緊張した状態が続いていますので、拉致の全体像シリーズをやっていたのですか、ちょっとそれから離れて、お話をしていますけれども、圧力が効いてきているということは間違いない。
このチャンスを活かして、是非被害者を取り戻したいと強く願っています。
今日はここまでいたします。ありがとうございました。
以上