救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

第11回「南北共同連絡事務所爆破と拉致問題」



6月16日、第11回救う会テレビを収録しました。この日、北朝鮮当局が南北共同連絡事務所を爆破しました。これにつき西岡力救う会会長が解説しました。
 ごきげんよう。救う会TV 、救う会全国協議会会長の西岡力です。今は令和2年6月16日午後7時半です。
 拉致の全体像をやろうと思ってたのですが、今日ニュースが飛び込んできまして、北朝鮮が南北合意に基づいて作られていた開城(ケソン、開城工団地)の南北連絡事務所を爆破したというニュースがありましたので、このことの持つ意味そして今後の展開、またこれが拉致問題にどのような影響を与えるか、ということについてお話ししたいと思います。
 これはANN(テレビ朝日系)ですけれども、韓国政府が公開した爆破の映像をちょっとだけ見てもらいましょう。
 中央の建物が崩れてきますよね。ずぶずぶずぶと崩れていく、爆破して崩れていくということですけれども、これをやったのは金正恩ではなくて、その妹の金与正という人ですね。
 実は彼女は、平昌オリンピックの時韓国に来ていまして、今大変罵ってる文大統領と握手しているんですね(写真)。実は これは書芸なんですけども、「通」という字を書いていますね。この「通」という字を書いたのは、実は韓国の親北朝鮮地下政党の北朝鮮が作ったと言われてるんですけども統一革命党の元最高幹部、申栄福という人が書いた字なのです。
 申栄福氏は68年に統一革命党事件で捕まって死刑判決を受けたのですが、無期に減刑されて、そして出てきて、その後思想家あるいは大学教授として活躍していたのですが、文大統領は申栄福を尊敬すると言って、そしてその書芸を聖火台の壁に掛けて、その前に金与正が来た。統一革命党の幹部は朝鮮労働党の下にいるわけです。
 だから金与正からすると、遂に統一革命党を尊敬する人間が大統領になったのかと、「私の部下だ」というような印象になる写真なわけです。
 ところが文大統領はこの後平壌に行って演説して、「私は南側の大統領だ」と言ってですね、そして金正恩国務委員長に紹介されたことを「光栄だ」と言った。北に対して「国」という言葉を使って、自分のことは「南側」と言って、韓国の愛国者から「お前はどこの国の大統領なんだ」と責められていたのです。
 そしてそこで大規模な経済支援をすると約束をしたらしいのですが、国連の制裁がかかっていて、そしてその制裁破りをするとアメリカが厳しく韓国に対して制裁をかけるという枠組みができているので、文政権は北朝鮮を支援できなかった。
 北の中では「あの嘘つき野郎」というふうに文大統領についての不満が高まっていた。しかしこの4月の選挙までは、文は憎いけれども保守野党に勝たせるわけにはいかない、ということで刺激を避けたということなんですが、あの文政権の左派が大勝利しましたので、もう心置きなく文攻撃をすることができる。

◆文在寅政権を捨ててアメリカと交渉したい北朝鮮

 もう文を捨ててアメリカと直接交渉したい。アメリカを交渉の場に引きずり出すために、軍事緊張高めようとしてるんじゃないかと思われるのですが、直接のきっかけは実は5月の末に、北朝鮮の人権運動をしている脱北者の団体が風船にビラをつけて北朝鮮に飛ばしたことなんですね。
それに対して6月4日に、金与正の名前で「自ら災いを招くな」という談話が出たんですね。
<去る5月31日、「脱北者」なる連中が前線一体に現れて数十万枚の反北朝鮮ビラを、わが方の地域に飛ばすならず者行為を働いた。人間の値打ちもないくずのような連中が、むやみに我らの最高尊厳にまで触れ、「核問題」に言いがかりをつけて不作法に振る舞った。生まれた祖国を裏切った獣にも劣る人間のくずが人間の真似をしてみようとせいぜいすることがあの行為なのだから、汚い口をつぐまず吠え立てる連中に対して雑犬(犬だといってるのですね)と言わざるを得ない>
<雑犬、くずのような連中の行為に対する後始末をする準備ができているのかを南朝鮮当局者らに聞きたい。私はもともと悪行を働く者よりも、それを見ないふりをしたり、煽り立てるものがもっと憎い>
<家の中のくずからまともに捨てて掃除をするのが当然だろう>
<くずの茶番劇を阻止させる法律でも作り、この忌まわしいことをまた起こらないよう万全を期すべきであろう>
 と言いましですね、そして、
<南朝鮮当局が今回、自分のところで同族に対する悪意に満ちた雑音が出たことについて、応分の措置を伴わせないなら、金剛山観光廃止に続いて、無駄に見捨てられている開城工業地区の完全撤去になるか、あってもうるさいことにしかない北南(彼らは北南という)共同連絡事務所の閉鎖になるか、同じ北南軍事合意の破棄になるか、とにかく十分に覚悟しておくべきであろう>
 と言ってここで連絡事務所の閉鎖を予告しているんですよね。
 ここで法律を作れと言ったから文大統領は慌てて「法律を作ります」と言ったんですけれども、しかし与正氏の怒りは収まらなくて、4日に続いて13日にもう1回談話を出した。
<裏切り者とくずの連中の罪科を絶対に容認してはならない>
 と言ってですね、
<確かに南朝鮮の連中と決別する時になったようだ。我々は近く、次の段階の行動を取るであろう。
 裏切り者とくずの連中が働いた罪の代価をすっかり受け取るべきだという判断と、それに従って建てた報復計画は対敵部門活動の一環ではなく、わが内部の国論として確固として固まった>
 だから「報復はする」と言ってるのですね。

◆「次の段階の行動を決行することを指示した」と金与正

 そしてですね、この13日の談話でどうしても見落とせない表現が、追加で読む所なのですけども、
<私は、委員長同士と党と国家から付与された私の権限を行使して、対敵事業関連部署に次の段階の行動を決行することを指示した>
「敵に対する部署に次の行動を決行しようと指示した」と言ってるのですね。ご承知の方も多いと思いますけども、北朝鮮は個人独裁国家ですね。唯一指導体制というのがあるのです。唯一の指導つまり独裁者は一人だということなのです。
 北朝鮮では憲法と労働党との規約の上に「唯一指導体制確立のための10大原則」というものがあるのです。これは全員が覚えています。毎週土曜日に生活総和というのをやって、この10大原則に基づいてこの一週間自分たちは正しい行動をしてきたかどうかについて自己批判し、相互批判する。
 帰国した蓮池さんや曽我さんもこれをやってたと言うんですね。だからめぐみさんたちもこれを今でもさせられていると思いますが、その中にですね、「10大原則の中に、「首領様以外の幹部は指示を出してはならない」と書いてある。唯一指導体制ですから首領だけが指示を出せる、と。
 それ以外の幹部は首領の指示を実行する役割、ところが金与正は今回指示したと言ってるのです。もちろん「委員長同志から付与された私の権限」と言ってますけども、一応トップは正恩だと言ってますけれども、しかし指示したと言ってるのですね。
 そもそも唯一指導体制で権限の付与なんてないんです。10大原則違反なんです。しかし指示をしたと言って、「そして遠からず無用な北南共同連絡事務所が跡形もなく崩れる。悲惨な光景を見ることになるであろう」と13日に談話を出して、3日後の16日に跡形もなくなくなってしまった。ということをしたわけです。
そして、
<南朝鮮当局が気がかりでならないはずの次の我々の計画についてもこの機会に暗示するならば、次の対敵行動の行使権はわが軍隊の総参謀部に手渡そうとする。わが軍隊はやはり、人民の怒りを多かれ少なかれ静められる何かを決心をして断交すると信じている。くずは、ゴミ箱に捨てなければならない>
 と言っていますが、絡事務所の破壊の後、「軍に計画を実行することを命令してる」と言ってるのですね。これで終わりじゃないわけです。

◆金与正が第二の首領になったということを国内に示す

 そこでですね、なぜ与正がここまで出てきて、そしてこのような軍事挑発をしてるかということですけども、二つの理由がある。
 一つは今申し上げたようにですね金与正が第二の首領になったということを国内に示す。もうそういう時期になったことですね。何回か申し上げてきましたけども、金正恩は健康に不安があって、自分がこのまま10年以上独裁者として権力を維持することは難しいだろう。彼の息子は今11歳です。息子に継がせるのは難しいだろうと思ってる。
 そこで今年に入ってから与正に少しずつ権力を移譲してきたのですけども、今回完全に公開的に首領にした。我々の仲間である自由北韓放送の金聖●(王へんに文、キム・ソンミン)さんから聞いたのですが、彼が5月の下旬に平壌内部の情報筋から入手した特ダネ情報によるとですね、党の宣伝扇動部所属の作家や音楽家、芸術家たちに対して、「金与正のことを今後『党中央』と呼べ。そういう芸術作品を作れ」という指令が出てるのだそうです。
 いつ出たのわからないのですけど、少なくとも5月下旬の段階で出ているということが分かっている。「党中央」という呼び方はですね、1974年に金正日が後継者になって、80年に後継者になったことを公開するまでの間、「党中央」と呼ばれていたのです。
 まさにその「党中央」と呼ばれていた間の金正日が拉致指令を出したんですよね。その話を前回しましたけども、それと同じになった。金正日並に金与正は(後継者に)なったということです。
 親子だったら後継者ということはありますけど、兄弟で、同じ30代で後継者にするということは、やはり金正恩の健康はかなり悪いということですね。そして金与正がこのことを言った以上、絶対実行しなくちゃだめだ。
 今全国(北朝鮮)で脱北者けしからんという大集会が開かれています。その結果ですね、北内部から聞こえてくる情報によると、住民たちは「脱北者がそんな沢山いたのか。我々が抗議しなくちゃいけないくらい彼らは影響力を持ってるのか。大したもんだなぁ」という噂が広まってるのだそうです。でもそういうことが起きてるということです。
 つまりこのことを契機にして金与正の権威を高める。金与正が命令したことを
 みんなやるんだということを全国に示したということですね。じゃあ金与正は何でビラに怒ったのかということなんですけども、実はこれはねちょっと未確認情報なんですけど、面白い情報なんで紹介します。
 この写真はですね北朝鮮の温泉リゾートですね。平安南道(ピョンアンナムド)の陽徳(ヤンドク)郡のあるところで、金正恩が力を入れて作ったんですね。露天風呂もあるんですね。
 これは未確認情報なのですが、かなり有力な情報としてですね、「この温泉リゾートに金与正が来ていた」と。露天風呂に入ってた時にビラが落ちてきた。「この野郎!」ということになった」と。
「お兄さん、お兄さん、こんなのがあったわよ。私がケリをつけるから」。それで「やれ」と言ったという説があるのですね。そしてそのビラに書いてあった内容が何かというとですね、与正は白頭の家系だ。白頭の血筋だ。白頭山っていう山がありますね。白頭山で抗日武装闘争をしたという嘘を彼らはついているのです。
 その血筋だから後継者になれるんだというふうに宣伝してるわけですけども、そのビラによるとですね、「白頭の血筋は嘘だ」と。「金正日は白頭山に生まれたじゃなくてソ連のハバロフスクだよね。そして金正恩のお母さんの高英姫は抗日武装闘争の家系じゃなくて、日本生まれの在日だ。それもダンサーだ。だから正恩も与正も白頭の家系じゃない」と書いてある。
 そして今国家保衛部が血眼になって探している国内の反体制組織が撒いたビラがあるんだそうです。その中にはですね、「正恩或いは与正のお父さんは金正日じゃなくて日本の料理人の藤本だ」と書いてあるだそうです。
 自分たちの家系について誹謗中傷している、けしからん、それが飛んでくる。自分が風呂入ってる時にそれを受け取ったら頭にくる、と。ま、この風呂に入ってる時に落ちたというのはまだ断定はできないのですけども、脱北者に聞くとですね、ビラが風向きで陽徳郡によく落ちるんだそうで。結構な可能性がある話ということです。

◆次はアメリカを北朝鮮に向かせるため白★島の軍事占領か

★=令へんに羽
 もう一つはやはり、文大統領が約束した通りに経済協力をしない。アメリカの顔色を見てるということで、文にはもう期待しない、と。次の政権でまた極左を立てて、そこでアメリカを追い出して連邦制まで行きたいということですけれども、アメリカにもう一度譲歩を迫るために今彼らはトランプ大統領が立場が弱くなってると思って、もう少し軍事挑発をして、そしてアメリカをこっちに向かせて経済制裁を緩めたり支援を貰おうと思ってる可能性がある、ということですね。
 内部の情報でですね、今後予想される軍事緊張が三つあります。この中のどれかをやるんじゃないかと言われてまして、第一がSLBM潜水艦発射の弾道ミサイルの発射実験ですね。既に潜水艦発射弾道ミサイルを詰める大型潜水艦は完成してるということです。去年必死で作ってまして完成した。
 二つ目はアメリカの東海岸まで届くICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験。前回行った時はですね、大気圏に突入する弾道部分が三つに割れてしまった。だから検証が済んでないわけです。やりたいわけですね。
 三つめは白★島(ペンニョンド、はくれいとう)という島。これは西の海に、我々の言う黄海にあるのですが、(38度線より)北の方にあります。朝鮮戦争の時米軍が占領しそのまま韓国に渡したわけです。これを軍事占領して海の休戦ラインを南に引き直すということについて、数年前から金正恩はずっと準備をしてる、と。
 今、62狙撃旅団など三つの特殊部隊の旅団が集結している。その白★島の対岸にですね40隻のホバークラフトも配備されてるということです。
 金正恩ではなくて、与正が破壊すると言ったら破壊したのですね。そして「それだけで終わらない、次の行為がある」と言っているわけです。
 次の行為がこの三つになるかもしれないと。どれかになるでしょう。何かやるでしょう。国内でやると言ってやらなかったら権威が下がりますから。権威を上げるためにやってるんですからね。国際的にも自分が第二の権力者になったことを示したいと思ってるのだと思うのです。

◆北朝鮮が自ら圧力を高める方向に今動いている、日朝も可能性が

 じゃあここで拉致問題との関係をお話して終わりますけれども、与正氏が拉致についてどういう認識を持ってるのか、日本との関係をどうしようとしてるのか、是非そういう情報を取ってほしいと思います。与正氏が東京五輪に行きたがっていたという情報を去年私は聞いたことがあるのですが、それ本当なのかということも含めてですね。
 そして、与正氏もアメリカと戦争しようと思っていないわけです。話し合いをするために一時的に軍事的緊張を高めて、もうこれ以上やらないからその褒美をくれという彼らのやり方をしようとしてるわけですけど、それはトランプ大統領には通じないと思います。
 SLBM、ICBMをやったら軍事的緊張が高まって、もう1回斬首作戦、爆撃の準備とか始まると思います。女性の与正がそれに耐えられるかどうかですから。白★島の軍事占領が一番有りうるシナリオだなと。その場合に韓国軍が武力で抵抗しなくて軍事占領されてしまったら、アメリカは何もしません。これは韓国の問題だから。そうすると与正の権威が上がる、ということが起きるかもしれません。
 しかし、軍事占領したところで外貨が入ってくるわけじゃないのです。外貨がなくなっている。そして中国との貿易はまだ再開していません。再開するために中国に使節団を送ったというのですけれど、中国共産党の方がですね、北の中には今ウイルスが蔓延してると、だから嫌だと言って、今度は中国側が遮断してるのだそうです。出口がないのですね。
 出口に安倍総理は、トランプ大統領と話し合いをして核ミサイルを全部止めなさい、拉致被害者の全員返しなさい、そうすればあなたたちも生き残ることができるよ、と言ってるわけです。
 彼らがそれを決断するか、あるいは軍事的緊張を高めて内部矛盾がどんどん高まってくる、政権がもたなくなるかもしれない。政権が保たなくなるかもしれないというところまで追い込まれない限り、一度死んだとして公表した、それも唯一指導体制の中で先代の独裁者が決めたことを改竄することは難しいのです。
 圧力を強くかける方向に北朝鮮が自分から圧力を高める方向に今動いている。いよいよその結果として、日朝首脳会談が開かれることもありうるかもしれない。その前に北朝鮮の内部では何か起きるかもしれない。緊迫した情勢の中でやはり情報を集めておくことが何よりも必要だというふうに思っています。
 今日は予定を変更いたしまして、南北連絡事務所爆破、その後に何が起きるか、そして日本は拉致問題解決のために今何をすべきなのか、ということについてお話ししました。ありがとうございました。

以上


  
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