救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

国際シンポジウム「北朝鮮の現状と拉致被害者の救出」全記録




1-5 討論



西岡 このシンポジウムはただの学術シンポジウムではなくて、被害者を取り戻すために何をすればいいのかというシンポジウムですから、今までのお二人の報告とお二人のコメントを受けて、報告者のブラウンさんと張哲賢さんに、言い足りなかったことも含めて、どうすれば取り戻すことができるのか、私たち日本国民は、そして家族会、救う会、拉致議連は今後何をしていけばいいのか、日本政府は何をすべきなのかという点について外国の観察者としてのアドバイスをいただければと思います。

◆強い意思で救出を
ブラウン 意思の問題だと思います。日本にしっかりした専門家はいっぱいいます。意思をつくれば、それを利用すれば、ちゃんと効くと思います。まず「しょうがない」という現象を何とかなくしてください。救出が目標ですから、その目標に行く計画を立てて、強い意志としっかりした日本人の価値観を使って、できると思います。アメリカに頼るとか、もっと悪い平壌に頼るとか、これは全く意味がないのです。そのぐらいの問題は自分の問題ですから、これは日本の心にまでつながる問題です。国の基盤がかかっています。日本人のしっかりした価値観と、家族会の30年もやってきた経験、その気持ちをしっかりした政治の意思として使ったらどうでしょうか。

◆ラジオ・ビラで拉致被害者を北の住民に探させる
張哲賢 拉致問題解決のために、まず第一に必要なのは、日本政府が北朝鮮と日本との関係において確固たる原則を守るということです。相手に流されることなく堂々と言うべきことを言って強く要求するということです。

第二に朝鮮総連に対する問題です。朝鮮総連は日本と北朝鮮との関係の中で深刻な被害を与えた組織です。今、朝鮮総連はほとんど瓦解したと聞いています。金正日自身も朝鮮総連を諦めたというふうに聞いています。金正日は小泉総理との会談の後、「もう朝鮮総連はだめだと、第二の朝鮮総連を中国につくれ」という命令を出したと聞いています。しかし中国はそれを歓迎できませんでした。したがって金正日は在日朝鮮総連にいまだに未練を持つしかないのです。

三つ目に政府レベルですること以外にこのような民間のNGOレベルでできることがあると思います。まず金正日が拉致の犯人です。したがって金正日を犯人として手配しなければならないと思います。ラジオを通じて、またビラを通じて日本人拉致被害者がいるということ、そして彼らを守ってくれて情報を出してくれれば賞金がくるということを広く知らせるという対北心理戦を続けなければならないと思います。そのようにして北朝鮮政権が隠そうとしている拉致被害者を北の住民に探させるようにしなければなりません。必ず効果があります。


西岡 続いてコメンテーターの惠谷さんと洪さんにお願いします。

◆情報をとるための予算が必要
惠谷 先ほども言いましたけれども、拉致問題解決を最優先にするという政府の方針であれば、来年度の予算を増やして形に表すことが一番だということがブラウンさんの話の中で痛感したしだいです。ですから、日本人から見れば、少なくとも私個人は5年、10年前よりは政府は予算を組んでいると思っていたのですが、そんなレベルではダメだ、もっと情報を取れるレベルに予算を増やしてい
くということが一番だろう。逆に言えば、家族会、救う会はもっと大きい声で、そういう形で見せていただきたいという申し入れをすべきではないかと思いました。

個人的には、そういう運動をやるよりは情報分析のほうが専門ですから、先ほど言いそびれたことを少し追加しますと、北朝鮮が発表する写真、これは金正日の「活動報道」と言います。

なぜそういう「写真統治」が可能なのかということを簡単にお話します。北朝鮮の報道というのは、5W1Hと言いますか、いつ、どこで、誰がという報道をしてきませんでした。ですから金正日同志が○○軍部隊を視察した、と言うだけで済むわけです。何日に視察したということを言いません。

5年以上前は何日に視察したということを報道していましたが、何日に視察したと言うと、その日の偵察衛星で、こういう動きをしていれば金正日がいるんだということが分析されます。したがってそういう発表をしなくなりました。

ですから今回の、金正日がどこに行った、どうしたという写真は、恐らく嘘ではないと思いますが、しかしそれは何か月も、あるいは何年も前の話であって、少なくとも10月、11月、12月に行ったはずはありません。動けないと思います。今後また写真が出てきても、それは、その場所、部隊の名称は嘘ではないのではなかろうかと思いますが、11月、12月に訪問した事実はありません。

もう一つ付け加えると、北朝鮮のテレビニュースは、金正日が動く映像を一度も流していません。元気な時もスチール写真を流していました。ですから「写真統治」ということが可能なのです。これは金正日が意図したわけではないと思いますが、結果的に現在、国民をずーっと騙すことができるわけです

◆2月16日の報道と賓客報道を注目

毎年北朝鮮は、2月16日の金正日の誕生日には、朝から晩まで金正日のドキュメンタリー番組を流します。昨年将軍様はこんな活動をなされたとか、いろんな番組ができます。そこで明らかに8月以降の動く映像があれば、恐らくあるはずがないと思うのですが、その時に初めて金正日が現在どうかということを確認できることになると思います。

もう一つ、外国からの賓客訪問での面会がない限り、どんな発表があっても金正日の実態というものはわかりません。私個人的には、もう動く映像は出てこないのではないかと思います。


病状だけで言うと脳卒中が再発する可能性もあります。しかし、現在のところどういう病状か全く情報がありませんから何とも言えませんが、例えばレーニンは同じように脳卒中で倒れて2年後に死にました。スターリンも同じように倒れましたが、彼は10年生きました。そういう過去の事例を見ると、何とも言えませんが、再発してあっという間のこともあり得れば、このまま10年わけの分からない時代が続くかもしれません。それまでに別の意味の事件その他が起きるとは思いますが、現状はそういうところだと思います。


例えば1月1日、金正日は必ず大晦日の深夜に錦繍山記念宮殿という金日成のミイラが飾ってあるところに行きます。恐らく今年もその発表があるでしょう。しかしその時は過去の事例も含めて写真は出ません。恐らく行ったという発表があるでしょうが、行けるはずもないし、好意的に考えれば車椅子で行く可能性も考えられますが、いずれにしろ2月16日までははっきりしたことは分からないと思います。逆に言うと、2月16日に今年の8月以降の映像がないということは、現在発表されている報道が嘘だったということが言えると思います。

◆拉致問題の本質は戦争、刑事事件化して証拠主義にこだわるな

洪 私は、拉致問題の解決は、この戦いの本質を忘れてはいけないと思います。ここには被害者の家族のみなさんもいらっしゃるのですが、ある意味では、北朝鮮の2千万人が金正日に拉致されたような状況です。日本ではみなさんは、こちらにいらっしゃるのも自由、これに無関心なのも自由です。

でも、何でも自由がいいのかという問題あるのではないかと思います。日本ではあまり意識されていないことですが、実は非ヨーロッパ文明の中で自由民主主義の先進国は日本だけです。ここで言う先進国とは、ここ数百年にわたって民衆の闘争によって勝ち取られた個人の自由と安全の拡大が先進国です。日本では、自由民主主義を空気のように、あまりに当たり前の、ただのものと思っています。でも、果たしてそう思ってみんな先進国になれたのかというと、未だ日本の次に先進国は現れていません。


北朝鮮の金正日体制は個人の自由と安全の拡大という歴史の方向を否定する、歴史の反動の共産主義独裁の変種です。だから、今の金正日体制は、ある意味ではスターリンと毛沢東の遺産であって、これは歴史の反動です。ですからアジアの他の国々が自由民主主義国になる最大の邪魔になるのが、そういう野蛮な体制です。自由の敵は自由を破壊する自由、自由を破壊する勢力を放置してもいいというような自由までが含まれると、自由は守れないと思います。要するに自由が破壊されるのを見ていながら、それに無関心なのが実は自由の敵だと思います。

先ほど申し上げたように、金正日が権力を取ってから日本の総理は21人目に代わりました。その間、短期間の実績などのために、彼らは、自由民主主義の原則を諦めることを現実主義だと言う。多くの専門家やメディアは、権力を持った側に、原則を貫くよりは現実主義的に妥協を求めるということです。これからも権力はそうなる可能性があります。その権力を自由の敵にならないように牽制するのか、それが救う会とかみなさん、良識のあるメディアとか、そういうところが監視すべきだと思います。

現実的に妥協すると、例えば拉致は一種のテロ戦争です。ある次元では刑事事件ですが、本質は刑事事件ではありません。本質は戦い、戦争です。でもこの戦争を都合のよいことに刑事事件化して証拠主義になると、それは金正日が望むとおりになります。これからそうならないようにするためにはどうするかという覚悟をここで改めてする必要があると思います。

今までは核をつくっていないと言っていた北が、いつの間にか自分たちを核保有国として認めなさいというように変わりました。それで2日前に北は勝利宣言をしました。平壌の放送が、いよいよアメリカが我々を核保有国として認めたと言いました。こういうことをいつまで許していいのかということです。

◆無関心は、独裁とテロの共犯
まず自由を失った人、安全を奪われた人に対しての無関心は、独裁とテロの共犯だと思います。

韓国で政権が代わってから、北の国家保衛部の女性スパイが逮捕されました。約2か月前に懲役5年の刑が確定しましたが、彼女は法廷で、1999年9月に中国を訪問した韓国人、尹(ユン)某氏を拉致したと具体的に言っています。豆満江ホテル何号室に連れて行って拉致したと具体的に言うのに、拉致家族団体のほうからは実は、彼も救出の対象としてリストに追加する動きがないのです。韓国国内のことですが、非常に残念に思います。

こういう無関心を一番望んでいるのは、実は金正日ではないか。我々を諦めさせるということです。そういうことに負けてはいけないと思います。

西岡 張哲賢さんにお聞きしたいのは、ブラウンさんは金正日の健康が悪い、少なくとも金正日独裁政権の力は弱まっているという発表をされ、惠谷さんもほぼ同じようなトーンで発表されました。そのことが拉致問題を今後解決するために、どう役立てればいいのか。

我々は金正日の悪魔的な悪辣な交渉術に翻弄されてきた部分があるわけですけれども、しかし、独裁体制の独裁者が弱まっているということは独裁統治の力が落ちているということです。逆にこちらは代わりがいっぱいいますが、向こうは代わりがいない。

すべての情報が金正日に集まって、金正日がサインしなければならない体制の金正日が、例えば1日3時間しか働けないというようになったらどうなるのかということを今後我々は有利な状況として使っていくべきだと思っているのですが、2004年にこちらに来た後も北朝鮮を分析している立場から、金正日の健康をどう見るのか、そして北朝鮮の政権の将来をどう見るのか、お話いただけないで
しょうか。

◆拉致問題は日朝問題というより独裁体制の問題

張哲賢 拉致問題は日本と北朝鮮の問題よりも、北朝鮮内部の問題、つまり北朝鮮の独裁体制の問題です。私は金正日政権が終われば拉致問題の解決も可能だと見ています。北朝鮮が拉致問題の解決を長引かせているのは、それだけ北朝鮮が暴露されては困るような多くの犯罪を犯してきたからだと言えます。

ですから金正日が死ねば大きな変化が北朝鮮に訪れると思います。北朝鮮は枝に付いている林檎の実のようです。金正日という蔕(へた)が枝から離れてしまえば林檎の実は落ちます。金日成の死亡の時と金正日が死んだ時との大きな違いは、金日成の死亡の時期にはすでに金正日の独裁権力があったわけです。ですから北朝鮮は変わらなかった。しかし金正日が死ぬ時は代わりの権力体制はないのです。だから北朝鮮は変わらざるを得ない。

金正日個人独裁制度は金正日の独裁を維持するためには大変よく利用されましたが、逆に金正日がいなくなると権力の空白を生まざるを得ないわけです。ですから、金正日が死ねば、核問題も拉致問題も解決するのではないかと期待しています。

洪 一つだけ、金正日は我々がこの問題を諦めることを待っているのです。逆に我々は金正日がこれを遅らせることは不可能だと思わせること、金正日を絶望させることが必要だと思います。金正日が望んでいるようにこちらが先に疲れて諦めないで頑張ればそんなに時間はかからないと思います。


1-6 総括


西岡力(救う会会長代行 東京基督教大学教授)

◆黄長亡命に激怒した金正日が呉益済拉致を指令

 私が言おうとしたことを洪先生に言われてしまいました。お配りした資料に触れた後、まとめをさせていただきたいと思います。参考資料として、救う会で用意した資料ですが、張哲賢さんが韓国の雑誌『新東亜』に出した論文の要約を準備しました。先ほど洪先生は1999年9月に尹(ユン)某氏という方が中国で北朝鮮保衛部のスパイによって拉致された事件が韓国の法廷で確定されたという話をされました。

またこの張哲賢さんの論文によって1997年に金正日が、黄長が亡命した時に怒って、黄長を殺せというテロ命令を出して、それに失敗したので、次に黄長とだいたい同じぐらい影響力のある人間を南から拉致して亡命したというふうに偽装発表しろという命令を出した。すると、先ほどの独裁体制があるので、労働党の四つの工作機関の部長とか第一副部長とかが合宿して拉致計画を立てて拉致をしたということについて、この論文に具体的に書いてあります。金正日はその拉致計画書が批准のために上がってきた時にサインして、この計画が成功するかどうかでお前たちの今後の評価をするというふうにサインをして降ろしている。

ですから、統一戦線部や作戦部、調査部、対外連絡部という工作機関の部長たちも結局、金正日の家来の側近なのです。金正日に命令されると家に帰らないで合宿して、拉致対象者の呉益済の家族が北にいるので、その家族の名前で嘘の手紙を書いておびき寄せて、中国で会うことにしたのに、中国に入れないからと言って列車の中に入れて再会させているうちに列車をスタートさせて北に連れて行き、騙して記者会見で拉致ではなく亡命だと言わせたということがありました。

◆なぜ韓国政府は韓国人拉致問題を六者協議に出さないのか

先ほど洪先生は、李明博大統領は今まではうまくやっていると言いましたけど、私はもう一つ、六者協議で日本だけが拉致問題を出してけしからんと言われているわけですけれども、韓国で具体的に韓国人が拉致されたという証拠が上がってきているわけです。裁判記録でも尹某さんという人が拉致されたということで有罪になっているのに、なぜ韓国政府は六者協議に出さないのか。私たちは韓国にものを頼むつもりはない。悪に対して一緒に戦いましょうとずっと言ってきたわけです。アメリカに対しても一緒に戦いましょうと言ってきたわけですけれども、ぜひ韓国で、勇気ある証言でこのようなことが判ったわけですから、一緒に戦うことができればいいなと思っています。

◆金正日は追い込まれている−追加制裁で3度目のチャンスを活かせ

最後に、何をすればいいのかということについて、先ほど洪先生がおっしゃったのと同じ事ですが、今日のシンポジウムのまとめとして私から申し上げたいのは、張哲賢さんのお話の中にヒントがありました。北朝鮮は日本が必要なのです。今まで過去2回、日本に接触してきた時がありました。金丸訪朝の時と小泉訪朝の時です。その時、日本は準備ができていなかった。

金丸訪朝の時は、拉致問題を取り上げもしなかったのです。金丸さんは金日成に会ったのに拉致のラの字も出さなかったのです。だからアジア太平洋平和委員会という工作機関を窓口にして、工作機関にやられてしまったわけです。

そして小泉訪朝の時は、今日の張哲賢さんの証言で明らかになりました。誘拐事件が起きて、誘拐犯に対して、本当は自首しろと要求したいのですが、自首しろと要求するのが無理であれば人質を釈放しなさい、そしたら身代金を渡しますよと交渉すべきなのに、日本の外務省の田中局長は、「人質を捕まえていることを認めなさい、そしたら身代金をあげます」と言った。だから金正日は拉致を認めたのだと、労働党の幹部たちは講演資料で勉強したということになります。彼らにとっては工作の成果だったわけです。日本が、きちんとした要求を掲げていなかったから金正日に誤解されてしまった。拉致対策本部がなくて、外務省だけが秘密交渉をしたからそういうことになったわけです。

つまり我々が今やらなくてはならないのは、金正日が病気で弱まっています。ポスト金正日政権になるかもしれないし、金正日政権が彼らの必要で日本に接近してくるかもしれません。そういう時期は近い将来あり得るわけです。その時に、過去2回失敗したようなことをしないように全員取り戻すということについて絶対に日本は譲歩できないという、先ほど飯塚さんが挨拶の中でおっしゃっていた日本全国で怒りの声を上げるということです。

怒りの声が上がるのか、こちらが疲れてしまうのか、それが勝負ですけれども、彼らは今苦しいんです。金正日の健康も悪くなった。餓死者も出て経済も苦しい。中国との関係も先ほど説明があったように良くないのです。金正日は本当に苦しいところまで追い込まれている。こちらも苦しいですが、向こうも苦しい。怒りの声を上げ続ければ向こうが弱音を吐くことがあり得る。しかしこちらが一歩でも先に譲歩してしまったらおしまいだ。胸突き八丁だと思いますが、ぜひ強い声をあげていきたい。具体的には、第2部の政治家の先生方にお願いいたいのは、ぜひ追加制裁を、今こそ日本が譲歩しないという意思表示のためにしていただきたいということを第1部の中間的なまとめとします。
  
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国民大集会「もう我慢できない。今年こそ結果を!」
「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
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日比谷公園1-3