救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮の食糧農業2016/17



 2017年7月25日、FAO(国連食糧農業機関)が、「北朝鮮の食糧需給概要2016/17」を発表した。このデータを紹介しつつ、北朝鮮の食糧事情について報告したい。
 近年、北朝鮮の核・ミサイル実験に対する国際社会の批判が強まり、国連機関を通じた国際社会の北朝鮮への支援は低いレベルに留まっている。もし北朝鮮が、核実験やミサイル連射にかかる費用を穀物輸入に回せば、相当量の食糧を購入できることは明白である。にも関わらず、国連機関はそのことには一切触れず、北朝鮮への食糧支援を「人道支援」として継続している。
 一方、国連の安保理はこれまで北朝鮮のミサイル発射に対して報道声明で対応してきたが、2017年8月29日の北海道上空を通過したミサイル発射に関しては、より強い措置である議長声明を即日採択し、安保理として発射を容認しない姿勢を国際社会に強く示した。議長声明では、ミサイル発射を「言語道断な行為」と厳しく批判した。
 また、9月3日の核実験に対しては、わずか1週間で、全会一致の決議を採択し、北朝鮮に対する原油の輸入量に上限を設け、繊維製品を禁輸とし、北朝鮮の海外派遣労働者に新規の就労許可を与えないことを加盟国に求めることとなった。北朝鮮からの繊維輸出の禁止で年8億ドル、出稼ぎ労働者の雇用制限で年2億ドル、計10憶ドル程度の資金源が断たれることになる。
 しかし、同じ国連機関でもFAOは、「世界の食糧生産と分配の改善と生活向上を目的とする国際連合の専門機関の一つ」であるが、人道が行われない国への人道支援の妥当性、有効性をきちんと説明せず、北朝鮮のような非人道国家への支援を継続してきた。独裁国家であろうと、多数の外国人を拉致し、国民を飢えさせ続ける非人道国家であろうと、ひたすら「人道」支援を続けることを正義としていることに矛盾を感じざるをえない。
 また、国連機関は、北朝鮮が食糧統計を水増ししてきたことを理解しないまま北朝鮮の食糧統計を公表してきた。食糧統計を水増しすることで、特権層にまず統計上の収穫量に応じて配給すると、一般人民に配給する時には、食料が著しく不足してしまうのである。その上北朝鮮は、90年代後半の餓死者300万人を生存者としてカウントし、食糧統計水増し以上の割合で人口を水増しし、これにより一人当たり食糧を少なく見せ、食糧援助を国連機関に要請し続けているのである。国連機関の支援は、このからくりを無視して継続されてきた。
 FAOは今回から自留地の生産量を報告しなくなった。北朝鮮では農民の自宅回りの農地30坪は農民が自由に耕していいことになっている。しかし、実態は約20坪しかないが、生産性は抜群に高い。しかし国連機関はかつてから自留地の生産性は低いと報告し続けてきた。そして、なぜ今回初めてこれを計上しなくなったのか。おそらく北朝鮮当局に譲歩して、国際社会に訴える不足量を多く見せようとするために、こんな微調整でも行わざるを得なかったからだろう。
 働いても報われない共同農場と異なり、自留地については労働意欲が全くことなる。それは収穫が確実に自分のものになるからである。自留地を10倍にするだけで、北朝鮮の食糧問題は大幅に改善されるのではないかと思われるほどであるが、北朝鮮の持つこのような根本的な問題には国連機関は何の助言もしていない。
 さらに北朝鮮が、命令型の非主体的な「主体農法」を止め、家族農に転換できれば、食糧問題は解決するだろうが、国内の政治問題には目をつむり、人道支援にのみ邁進してきたのがFAO等の国連機関といえよう。
 
 では、FAOが公表した北朝鮮の食糧需給概要2016/17について報告したい。2016/17の意味は、2016年11月から2017年10月までの収穫を意味している。従って秋の収穫は予測値となる。人口はその年央値を使い、5月1日現在である。これで不足分を算定したり、次年度の需要を予測したりする。
 報告はいつも11月頃に行われてきたが、2017年の報告は7月15日であるため、9割の収穫量となる秋作が予測値になっている。これにより大半の結果が不明のまま、今年の4〜6月の少なめの降雨量だけを根拠に国際社会に危機を訴えたことになった。また、4月から6月後半までの少雨の時期は主要期の作付が含まれるだけに、秋の収穫が危惧されており、主要期の予測値が相当落ち込む可能性もあるが、報告値ではわずかな増としている。
 FAOは、このデータを発表した数日前に声明で、「北朝鮮で2001年以来最悪の水準となる干ばつが発生する見通し」(CNNニュース)等としているが、表1のように、昨年度よりはわずかに高い収量で予測している。しかも、2016/17の生産量は毎年計上してきた自留地分7.5万トンが抜けている。北朝鮮の意向に合わせ、不足量をなんとかひねりだした報告と言えよう。しかし、北朝鮮の意向を汲みつつも、予測値を増やして意地を見せてもいる。

 2016/17では、食糧生産見込量を、精米後で515万トンと報告した。しかし、需要が560.8万トンで、不足量が45.8万トンあるが、北朝鮮政府が独自に20万トンを輸入するだろうと見越して、不足量を25.8万トンと見積もり、国際社会に支援を訴えた。
 しかし、上記表はまず需要の増減がおかしい。国連機関は2016年の報告から人口増加率を0.55%としている。北朝鮮は人口増加率について、2008年10月1日時点で、1994年以降の人口増加率が0.85%を超えたと嘘の人口センサスを発表した。しかし、国連機関は、0.85%は多すぎるとして0.7%としてきたが、北朝鮮は近年これより低い0.6%にしてくれと頼み、さらに翌年0.55%に変更してくれと頼んできた経緯がある。従って、人口増加率の分だけ食糧需要が増えるはずなのにそうはなっていない。
 近年も北朝鮮では餓死が発生しているが、北朝鮮はないと主張している。従って、需要は人口増加率0.55%ずつ増えるはずであるが、上記の表では需要の増減が人口増加率と全く比例しておらず、その年の国連機関と北朝鮮当局とのかけひき次第でさじ加減しているものと見られる。
 食糧については、各品目別に後述する。
 種子にもおかしなところがある。北朝鮮では、金日成時代に導入された3倍密植農法が今なお続けられている。そのため3倍の種子が必要になる。3倍の密度で苗を植えたり、種子をまくと、2/3の種子は無駄になる。密植すると、風通しや日照が悪くなる等で収穫が落ちるのに、農民は「主体農法」に従わざるを得ない。
 上記の表のように、2016/17では種子がすべてで25.2万トン使われるとされるが、前年度に比べ増えた理由が不明である。また、米・麦・メイズだけで食糧になるべき約数万トンが無駄に植えられることになる。これも恐らく、今年は不足量を多めにしたいということで、数値を増やしたものと思われる。
 収穫後ロスは最もさじ加減が使われるところである。今年は上記同様に、不足量を多めにするため、数値を増やしたものと思われる。
 例えば米では収穫後ロスが15.56%発生すると報告されている。これは2014年の「調査」で判明したものと報告された。メイズは17%、大麦・小麦、その他の穀物は16.5%とされている。
 これで、米の収穫量は167.4万トンから141.4万トンに減少する。収穫後ロスは倉庫に保管中のロスで、虫やネズミに食べられたり、頭の黒いネズミに盗まれれたりする。北朝鮮では倉庫の管理人などの特権で、かなり食糧が盗まれているらしいが、これはロスではあるが食べられるロスである。
 さらに北朝鮮の食糧倉庫には冷凍設備がなく(あっても電気が1日4時間程度しかこないので使えない)、倉庫内で自然乾燥させている。穀物が倉庫に運ばれても水分を多く含んでいるため、自然乾燥では、むれてかびが付いたり、腐ったりしてロスが出る。
 さらに今期は、主要期の収穫量が予測値のまま食糧危機がアピールされた。しかし、このようにして不足量が作られた数値でしかない。
 次に、各作物ごとの食糧生産量を見る。

【米】
 2016/17年度の米は、食糧生産見込量を、米の籾付重を含む量として計586.66万トン、精米後で515.1万トン、と報告した。国連機関の見積もりは、北朝鮮当局の報告に若干手を入れただけで、常に過大である。
 日本や韓国では籾殻付を玄米に脱穀すると重量が約80%になり、玄米を精米すると玄米重の約90%になる。従って籾殻付を精米にすると72%重になる。国連機関は脱穀機や精米機の劣化などで66%重としている。これで253.64万トンが167.4万トンになる。さらに既述の収穫後ロスが米では26万トン発生すると報告された。
 世界の米の貿易では、質が劣化しないよう、玄米量で計量、輸出入される。統計も玄米重でなされる。北朝鮮の米の収穫量が精米後の数値で計上されるのは、人道支援を行うだけに、実際に人々の口に入る量が目安になるからだという。
 北朝鮮の米の生産量を玄米で示すと、籾付き253.64万トン×80%で約202.9トンになる。10アール当たりの反収は433kg。ヘクタール当たり4.33トン。日本の2016年産米の反収は531kgなので約82%に相当する。日本はヘクタール当たり5.31トン。
 しかし、北朝鮮米で一般的な品種「統一」を日本の農業試験場でかつて栽培した際は日本の半分しかとれなかった。北朝鮮と比べて、土壌、気温、日射量、肥料等あらゆる面で最高の条件が整った日本で栽培しても2分の1しかとれないということは、同じ品種を北朝鮮では栽培すれば日本の3分の1程度しかとれないはずである。従って、4.33t/haは著しく虚偽の数値と考えられる。実態は2トン/ha弱程度と考えられる。
 北朝鮮の農民は稲束を稲架(はさ)にかけて自然乾燥すらしない。稲架にする竹や木材もないのだが、それよりも乾燥するとノルマを達成できないから水分を含んだまま出荷するので重量が多くなる。

【メイズ】
 メイズ(デントコーン種)とは飼料用のとうもろこしだが、北朝鮮ではメイズが一般市民の主食になっている。メイズは本来なら穂軸が40cmになるが、北朝鮮では25cmくらいにしかならない。しかし、スイートコーンを植えるともっと穂軸が短く、収量が減るので、人々は金日成時代から、おいしくもない飼料用とうもろこしを主食として食べさせられてきた。まさに主食は餌であり、人間の楽しみを奪う人権蹂躙である。
 逆に、特権層の脱北者は、収穫期等の農場への強制応援の時以外は、米しか食べたことがないという。北朝鮮の人が「米を食べたい」と言うのはこういう背景があるからだが、国連機関は一日一人何gと内訳も実量も確認なしで平均値で報告するから一般市民の苦悩は分からない。
 2016/17年度のメイズの生産量は、239.8万トンと見込まれている。反収は4.0t/ha。その内、飼料に11万トンが使われ、種子に7.4万トンが使われる。メイズも3倍密植するため、種子の3分の2はロスになる。メイズの収穫後ロスは17%とされるので、40.8万トンがロスとして失われ、残りが180.6万トンとなる。
 しかし、収穫時のメイズの半分以上は水分だが、乾燥することなしに計量され、倉庫に入れられる。しかも、軽量時にノルマ達成のため穂軸や葉も若干入れられる。実際の収量ははるかに少ない。さらにメイズは粉末化して食べるので国連機関はかつて製粉化すると重量が85%になるとしていたが、最近はしなくなった。食糧となる重量は100万トンくらいにしかならないだろう。
 
【じゃが芋】
 じゃが芋の2016/17年度の収穫は、52.36万トン。内、飼料に2万トン、種子が8.9万トン、収穫後ロスが7.9万トン発生し、食料になるのは33.6万トンとなる。
 じゃが芋は穀物ではないので、穀物換算率を25%としている。カロリー面でも25%の換算率が妥当と報告している。しかし、国連機関の表では、これまでずっと、精米前も、精米後も同じ数量で示されてきた。実際には数値の4倍の210.4万トンの重量があったということである。
 反収5トン/haとあるので、収穫時重量は反収20トン/haになる。20トン/haというのは日本の中で比較的反収が多い地域とほぼ同じ収量になり、日本全国の半分以上の地域よりも多い収量になる。これはとうてい信じられない。
 筆者は90年代後半に、北朝鮮農業科学院のじゃが芋の専門家から、「北朝鮮では土壌にウイルスがあるので、10トン/haしかとれない」と聞いた。実態はもっと少ないだろう。
 
【北朝鮮への食糧支援について】
 国連機関は20年以上にわたり北朝鮮の人道支援に関与し続けてきた。モニタリングはしていると主張しているが、それは配給のモニターのみで、消費のモニターではない。配給された食糧がほとんど回収されていることは報告していない。
 独裁国家への人道支援は、食糧不足の時期ほど、支援された食糧は、権力者側の生存維持、そして独裁政権の維持に消費されてしまう。従って、非人道的な国家への支援は、食糧ではなく直接食事を配ることが重要である。筆者は以前から「米よりご飯を」と主張してきたが、その場で消費される形での食糧支援以外には、北朝鮮では配給はできないと知るべきである。それを受け入れないのなら、支援はすべきではない。
 また、国連機関はこれまで毎回自留地のデータを20.5万ヘクタールで7.5万トンが収穫されていると報告してきたが、今回は初めて自留地のデータを削除して不足分を減らし、その分も含めて緊急支援を訴えた。
 中国では改革開放政策に転じてから農地の使用を家族単位で認め、収穫量が一気に急増している。中国は以前から耕地面積の約5%が自留地だったが、北朝鮮では1.2%でしかなかった。自留地が一番生産性が高いのだから、自留地の面積を少し増やすだけで、今期国連機関が訴えた25.8万トンなどすぐに改善できる。
 問題は、それだけでは北朝鮮の食糧問題は何も改善しないということだ。なぜなら、国連機関の報告は実際の生産量よりはるかに多い量を、北朝鮮農業省の報告のままに公表しているだけで、実際にはその半分くらいしか収穫がないことに全く触れていないからだ。
 北朝鮮で家族単位の農業が実現すれば、北朝鮮の食糧問題は大幅に改善される。北朝鮮をそのように仕向けることこそが、北朝鮮人民への真の人道支援なのではないか。

 2017年9月12日記
 平田隆太郎
  
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「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
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