救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮食糧問題最新事情(2016.06.07)



 2016年4月27日、FAO(国連食糧農業機関)が、「北朝鮮の食糧需給概要2015/16」を発表した。国連機関(FAOとWFP)は1995年以降、「北朝鮮の穀物および食糧安全保障調査団特別報告」という長文の報告を毎年続けてきたが、近年は国連機関を通じた国際社会の北朝鮮への支援が少なくなり、その分北朝鮮との関係も薄くなった。その結果本格的な支援ができず、報告も短文で概要のみとなっている。また、国連機関の報告は北朝鮮の報告をほとんど訂正なしに報告してきており、常に疑問が多い。
 農業年度は、11月から翌年10月までを指す。人口は年央値を使い、5月1日現在である。これで不足分を算定する。レポート15の主たる収穫は15年秋であるので「レポート15」と表記する。
 本文はまずFAO報告の概要を示し、その中で説明やコメントが必要なものは随時※で追加する。

★「レポート15」概要

 北朝鮮の2015農業年度(2015.11〜16.10)の全食糧生産見込量は、米の籾付重を含む量として計542万トン、精米後で480万トン、と報告した。
※これまで韓国政府の農村経済研究院で北朝鮮の食糧生産量を見積もってきた権泰進氏(現GS&Jインスティテュート)は、2015/16年の食糧について、「北朝鮮の食糧の最低所要量540万トンに対し、来年は100万トン不足する」と分析している(「聯合」15.10.29)。従って生産量を440万トンと見積もったことになる。国連機関よりは厳しい見積りであるが、実態はもっと厳しいと思われる。
 降雨量の減少等により、全収穫量は2014年度に比べ9%減少する。降雨量の減少のため、栽培作物の面積割合が、米からそれ以外に移った。また、全栽培面積はわずかに増えている(前期分は北朝鮮食糧問題最新事情2015.03.26参照)。2015年度は米が26%減、メイズも1%減。耐乾性のある大豆や雑穀は増加すると予測。
※メイズはスイートコーンではなく飼料用とうもろこしであるが、北朝鮮ではこれを一般人民の食糧として栽培してきた。穂軸が40cmにもなる品種だが、北朝鮮では25cmとスイートコーンくらいにしかならない。もちもちしていて甘味がない。北朝鮮では、これを人民の主食として栽培してきた。
 FAOの予測によれば、2015農業年度の食糧需要は549万トン(精米後)。不足量は約69万トンだが、内30万トンは北朝鮮政府が輸入することを見込んでいる。純不足量は、39.4万トン。
 人口は昨年度のみ0.5%増で、今年度は0.55%増に戻したと説明。国連機関の報告は基準がいつも変更される。北朝鮮は人口増加率について、2008年10月1日時点で、1994年以降の人口増加率が0.85%を超えたと嘘の人口センサスを発表した。しかも、その後国連機関に今後は0.6%にしてくれと変更を依頼している。
 国連機関は、0.85%は多すぎるとして0.7%としてきたが、北朝鮮はこれより低い0.6%にしてくれと伝え、さらに0.55%に変更したという経過がある。
 本来人口増加率の分だけ食糧生産が増えていけば食糧不足はないことになる。前年度は人口増加率が0.5%、不足分はわずかに4万トンだったので、支援を呼びかける必要はないはずなのに、別の需要を作って支援を呼びかけたことがある。
 北朝鮮の生産量の報告値がもともと多すぎるので実態は大幅な不足であり、それは国連機関も分かっていたはずである、また、不足がないとなると国連機関も出番がなくなるということになる。
 国連機関が報告した新たな人口は以下の通り。

※農業年度の人口は年央人口を使用。11月から翌年度10月が1年なので年央は5月1日現在となる。2013年度末の人口は2,488万人。増加率は0.55%。2008-13年と同じ。2014年は0.5%。2015/16農業年度の人口は2509万人(2016.05.01現在)。一人当たり食糧を計算する場合はこの人口を使用する。
※米の生産量は128.4万トンだが収穫後ロスを差し引くと108.4万トン、人口は2,509万人なので、年間一人当たり消費量は43.2kgとなる。日本人の年間一人当たり米消費量は56.9kg(平成25年度)。北朝鮮では食品の廃棄はほとんど考えられないが、日本では可食食糧の廃棄量が年間500〜800万トンもあるので、おそらく北朝鮮とそれほど変わらない消費量になる。
 しかし、北朝鮮から聞こえてくる声は、「米が足りない」、「米を食べたい」である。米の年間一人当たり消費量43.2kgは到底信用できない。
 2016年7月以降、配給量が低下している。配給を受ける人口は1800万人で約70%相当と報告。農民は収穫量の一部を受け取る。2014年度は、10月から7月まで平均で400g/一人/一日、8月約275g、9月約250gを配給したが、2015年度は10月以降4月まで375g前後の配給が続いている。
 一人当たり食糧需要は年間175kg(一日1640kcal相当)と報告。これは過去5年間のデータを勘案した数値とされるが、人にとって働かなくても必要な最低量である。農業省の供給希望値は207kg。それを実現するには110万トンの輸入が必要と報告。
 年間175kgの内151.3kgは報告データ(下記表)から摂取。その他は魚肉、鶏肉、牛豚肉、さつま芋、野菜、果物、耕作地以外で取れる山菜や果実などから補給している。

【表の説明とコメント】

  1. 上記のコメから大豆までは2015年秋に収穫済。冬小麦からじゃが芋2までは2016年6月までの収穫物の予測値。


  2. コメの反収
  3.  4.2t/haは籾付重量。日本や韓国では籾殻付を玄米にすると重量が80%になり、玄米を精米すると玄米重の90%になる。従って籾殻付を精米にすると72%重になる。国連機関は脱穀機や精米機の劣化、保管中のロスなどで66%重としている。
    ※日本の2015年産米(玄米)は反収5.17t/haであったので、籾付なら反収6.46t/haで、北朝鮮産米4.2t/haは日本の約65%、2/3の反収があったことになる。しかし、北朝鮮米で一般的な品種「統一」を日本の農業試験場で栽培した際は日本の半分しかとれなかった。北朝鮮と比べてあらゆる面で最高の条件が整った日本で半分ということは、土壌が劣化し、品種改良がなされず、肥料も不足している北朝鮮では日本の1/3程度しかとれないはずである。従って、4.2t/haは虚偽の数値と考えられる。実態はこの半分くらいと考えられる。
    ※北朝鮮の農民は収穫目標値を超えないと罰則があるので、十分に乾燥しない、籾殻や砂を入れるなど、あらゆる努力をして計量をごまかしてきた。特権階級もそれを黙認してきた。実際の収穫より多くとれたことを前提に、特権階級から配給すれば、下層階級に配給する食糧は極端に少なくなる。軽量のごまかしを敢えてさせているのである。収穫量が急減した年でも特権階級は困らず、下層階級で餓死者が出るという構造的要因がここにある。

  4. メイズの反収
  5.  メイズ(デントコーン種)の2015年度反収は4.1t/haとなっている。メイズは水分が75%くらいあるが、外皮をはいで自然乾燥すれば水分が25〜30%まで減らせる。しかし、北朝鮮では乾燥すると収量が減るので乾燥しない。従って、そのまま袋に詰めてしまう。北朝鮮の農場には計量器はなく、1袋何kgと計量する。そうしないとノルマが達成できないからである。加えて袋の中に穂軸や外皮をまぜたりするので、実際の収量はこの半分にもならない。
     また、特権階級だった脱北者は、メイズはほとんど食べたことがないと言う。つまり、特権階級には米中心の配給が行われ、下層階級に配給されるのはほとんどメイズとなる。北朝鮮の人が「米を食べたい」と言うのはこういう背景があるからだ。これが実情だが、国連機関は一日一人何gと内訳も実量も確認なしで報告している。

  6. じゃが芋の反収
  7.  じゃが芋の報告は大変奇妙である。米は「食糧生産量」では籾付重量で、「食糧需給概要」では精米の重量で記載している。豆類は「食糧生産量」では現物重量で、「食糧需給概要」では高カロリーだからと20%増し重量で記載している。かつてはメイズは換算値が85%であったが今は100%に変更している。
     しかし、じゃが芋は穀類ではないので重量を穀類に換算する時、1/4にすることは理解できるが、「食糧生産量」でも、「食糧需給概要」でも1/4換算重で記載している。「食糧生産量」が現物重になっていない。
     これらはじゃが芋を食糧として報告に記載する時に、農業省と協議して妥協した結果ではないだろうか。国連機関の報告は毎年さじ加減があり、報告基準がころころ変わる。国際社会に不足量を多めに訴えようとする場合に、不足量を多めに見せようと変更する場合が多い。
     反収がメインシーズンで5.2t/haということは、実際は20.8t/ha取れたことになる。日本では福島県や熊本県と同じくらの好成績だ。日本で一番に反収の低い和歌山県や滋賀県では11〜12t/haしかとれないのに、さらに栽培条件の悪い北朝鮮でその2倍もとれるとはとうてい思えない。じゃが芋は90年代末の餓死者が発生した時期に、国連機関が二毛作を奨励し、種芋を持ち込み、生産を奨励したものである。だから農業省の報告を鵜呑みにする妥協をしたと思われる。
     なお、筆者が北朝鮮で農業科学院のじゃが芋の専門家に取材した時は、「北朝鮮では土壌にウイルスがあるので、10トンしかとれない」と聞いた。また、「肥料があればもっととれるが燐酸が少ない」と。「レポート」はこれらの報告と大きく異なる。

  8. 傾斜地と自留地
  9.  傾斜地と自留地は国連機関が計上したもので、農業省は耕地面積に含めていない。傾斜地というのは、山林の傾斜地を人民が勝手に耕してとうもろこし等を植えているものである。上に政策あれば下に対策ありで、古い時代から人民が特権層の搾取に対し、自己防衛として行ってきたものだ。
     そのため、北朝鮮の山は、北部の高山地帯を除き、ほとんど木がなくはげ山になっている。またどこの山でも、山肌には縦横の線が見える。縦は水が流れた後で、横は土止めをしている線で、何本もある。
     この傾斜地にはほとんど土壌がなく生産性は極めて低いが、それでも生きるために止めるわけにはいかない。このはげ山の風景は6,000年前からのものだそうである。
     農家の各戸の前にある自留地は、一家族に30坪と決められているが、実際は20坪くらいしかない。ここだけは何を植えてもいいので、栽培物の種類が多く、反収も多い。自留地の土壌は見ただけで肥えていることが分かる。共同農場の土壌とは大違い。自留地は農民が本気で農業をしているところであるが、国連機関は反収を低く見ている。
     自留地に小粒のかぼちゃを植え、そのつるを上に持っていき、屋根にはわせているところが多い。これならわずかな土地で収穫できる。キムチ用の唐辛子は、二毛作で育てている。メイズは一番いい種子を来年用に保存している。肥料も豚や鶏の糞等を使い可能な限りいい肥料にして使用している。つまり、生産意欲がみられる唯一の場所である。この自留地面積を10倍にし、すべての生産品の市場での売買を自由にするだけで、北朝鮮の食糧問題は最低限のレベルではあるが解決するだろう。
     「主体農法」なる非主体的な農法を放棄し、農民の自由に任せるのが最良の策なのであるが、それができないのが個人独裁政権の弱みである。

  10. 人口統計と食糧統計のからくり
  11.  北朝鮮が人口統計を水増しする理由は、一人当たり食糧を少なく見せて食糧支援を訴えるためである。そのため現在も非合理的な数値を出し続けている。人口を多めに公表すれば、一人当たりの配給量が少なくなる。また、食糧生産は多めに報告せざるを得ない構造になっているため、人口を実態通りに報告すると、一人当たりの食糧が多くなってしまう。国連機関は北朝鮮が提供する情報をそのまま受け取ってきたが、この人口統計と食糧統計のからくりを踏まえ、正確な情報発信を行うべきである。
     2015/16農業年度の人口は2509万人と発表されたが、実際の人口はこれより約300万人少ないと考えられる。


◆食糧需給表

  1. 国連機関の報告はさじ加減が多い
  2.  需要は、人口増加率に伴い増減するものだが、国連機関の報告はさじ加減が多い。「レポート13」では人口増にも関わらず需要が減っている。「レポート15」では増える割合が少ない。
     収穫後ロスは、なぜか「レポート13」から急増している。増やさないと不足量がでないからであろう。そうしないと仕事がなくなる。現場の人民に接していれば、食糧統計がでたらめで食糧が極端に不足していることは分かっているはずだ。しかし、北朝鮮当局の報告を拒否はできない。独裁国北朝鮮への食糧支援はそういう難しさがある。
     本来、独裁国家への人道支援は非人道的行為であり、家族農業を認めない国家には人道支援を行うべきではない。その無理がこのような形で表れている。既に述べたように、自留地の面積を広げさせること、農民の自由度を増やさせることが正道だ。

  3. 収穫後ロス
  4.  収穫後ロスは、収穫後の運搬、保管に関するロスである。北朝鮮では農民が刈り取った稲が、運搬されずいつまでも放置されていることがよくある。運搬に必要なトラックやトラクター、それに必要な燃料が不足するため、牛に頼ることになる。そのためにすべてを回収するまでに2か月くらいかかることもある。刈り取られた稲束が田んぼにそのまま放置されてしまう。その間にかなりのロスが発生する。
     また、北朝鮮の食糧保管は冷凍設備がなく、倉庫内で自然乾燥させるだけのものである。穀物が倉庫に運ばれても水分を多く含んでいるため、自然乾燥では、かびが付いたり、腐ったりする。虫害、ねずみの害もあり、時には頭の黒いねずみも勝手に持ち出すらしい。これは食糧倉庫管理者の特権になっている。
     従って、日本などでは考えられない量のロスが発生している。2015/16年度は、適切な割合を出すための調査も行われたと報告された。収穫後ロスの75.4万トンだけで、不足量69.4万トンを上回っている。適切に運搬、保管がなされれば、また公表値通りに収穫があったのなら、食糧は不足しないことになる。

  5. 種子
  6.  北朝鮮では、金日成時代に導入された3倍密植が今なお続けられている。3倍の密度で苗を植えたり、種子をまくと、2/3の種子は無駄になる。密植すると、風通しや日照が悪くなる等で収穫が落ちるのに、農民は「主体農法」に従わざるを得ない。3倍密植のため、米・麦・メイズだけで約10万トン無駄になっている。
     加えて、メイズ等多くの作物を毎年同じ土地で連作しているため、比較的連作障害に強いメイズでも、40cmになるべき穂軸が25cmにしかならない。土壌の状態が非常に悪化しているのである。

  7. 中国に支援依頼
  8.  核実験とミサイル連射で国際社会から厳しい制裁を受けた今年、北朝鮮は、国連機関の報告以上に、相当深刻な食糧難を予測しているようである。そこで、中国に頭を下げて、100万トンの支援を依頼した。
    「李洙●(=土へんに庸)朝鮮労働党副委員長と共に中国訪問中の党代表団が、中国側に100万トンの食糧支援を要請し、中国側は50万トン以下なら応じるとの考えを示した」という(「産経」16.06.02)。これは韓国の「中央日報」が「消息筋の話」として伝えたもの。
     中国は久しぶりの北朝鮮幹部の訪中を受けて、メディアに対し北朝鮮批判禁止の通達を出した。中国も核実験とミサイル連射に怒り、貿易やエネルギー等で締め付けを行ったが、ここにきて関係修復を模索し始めている。
     北朝鮮はこのところ、核実験とミサイル発射を続けてきた。今後しばらく休み、援助の取り付けに動いたと見られる。独裁国のすることは外部には分からないことが多いが、独裁者たちは合理的な判断をしていると思ってやっている。そこをきちんと見分ける必要がある。


以上
  
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「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
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