■ 単独制裁で独裁者金正日に

正しいメッセージを送れ 


研究の経過と総合的報告

提言1.制裁で北朝鮮の

対日政策を変えよう

提言2.制裁を発動しても

ミサイルは飛んでこない

提言3.制裁が北朝鮮人民を救う

提言4.米国を中心とした制裁論議

提言5.金正日に

正しいメッセージを送れ

提言5.金正日に正しいメッセージを送れ

平田隆太郎(プロジェクトリーダー)

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1.平壌宣言違反を指摘すべき

平成16年5月22日、小泉首相は、日朝首脳会談の場で金正日に、「平壌宣言を順守していくかぎり日本は制裁措置を発動しない」と述べた。この発言は、日本は「8人死亡、2人未入境」との北朝鮮側の拉致問題解決のシナリオを受け入れ、国交正常化交渉に踏み込む用意がある、との誤解を与えかねない発言だった。被害者家族は、拉致救出運動がこれで終わりになると強い危機感を抱いた。
その直後の、6月22日、小泉首相は、「金正日総書記はのどがかれるほど米国とデュエットしたいと熱望していた」、とシーアイランド・サミットの際の日米首脳会談でブッシュ大統領に伝えた。北朝鮮は米朝二国間協議を熱望しており、金正日の希望をブッシュ大統領に取り持ったのである。この発言は、日本が北朝鮮のメッセンジャーを務めることで、北朝鮮の対日政策を受け入れているとの誤解を与えるものだ。ブッシュ大統領は、無表情で「あいつらは駄目だ。信用できない」と一蹴した。

小泉首相等の間違ったメッセージ

16.05.22 平壌宣言を順守していくかぎり、日本は制裁措置を発動しない(金正日に、日朝首脳会談)
16.06.08 金正日総書記は「のどがかれるほど米国とデュエットしたい」と熱望していた(日米首脳会談、ブッシュ大統領に)
16.07.21  日朝平壌宣言が履行されれば1年以内の国交正常化も可能(日韓首脳会談で盧武鉉大統領に)
16.11.15 北朝鮮側の努力のあとはうかがえる(第3回実務者協議、首相)
16.11.15  今の段階で経済制裁は考えていない(第3回実務者協議、細田官房長官)
16.11.17 将来の国交正常化に向けた一つの段階とみている(第3回実務者協議について(民主党の岡田代表との党首討論)
16.12.08 調査が虚偽であったと断じざるを得ず、日朝平壌宣言の精神に反することは明らか(鑑定結果判明で北朝鮮に通告)
16.12.08 対話と圧力だから、両面を考えていかなければならない。拉致被害者家族のためにも交渉を打ち切ってはいけない(鑑定結果判明で首相)
16.12.24  経済制裁については「あらゆる選択肢を残しておきたい(首相)
17.01.26 今後も引き続きこのような対応に終始する場合には、厳しい対応の可能性を検討(外務報道官)

その翌月行われた日韓首脳会談で、小泉首相は盧武鉉大統領に、「日朝平壌宣言が履行されれば1年以内の国交正常化も可能」と述べた。日朝首脳会談以降の一連の発言を北朝鮮側から見れば、日本は北朝鮮が日朝平壌宣言に違反しているとは考えていない、と受け取れる。そして、「8人死亡、2人未入境」との北朝鮮側の拉致問題解決のシナリオを日本が受け入れ、国交正常化交渉に踏み込む用意があると判断し、後は曽我ひとみさん家族の処理だけだと受け取ることになる。
平壌宣言で北朝鮮は、「関連するすべての国際的合意を順守する」と約束したが、翌10月、米国ケリー国務次官補が訪朝した際、北朝鮮は濃縮ウランの核開発を行っていることを認めた。また、北朝鮮は平成15年1月にNTP条約(核拡散防止条約)を脱退すると宣言した。いずれも平壌宣言違反である。米国のパウエル国務長官は、平成14年10月28日、欧州記者団とのインタビューで、「北朝鮮は、ほんの数週間前に小泉首相と金正日主席がサインしたばかりの平壌宣言にさえ違反した」と述べた。日米首脳の認識はこれほど食い違っている。日本は平壌宣言違反を指摘し、「いつでも経済制裁を発動できる」と公表すべきである。

2.対日政策責任者に言い訳を与えるな


平成16年11月の第3回実務者協議の中で北朝鮮側は、2年前の小泉訪朝の際に提供された8人の死亡診断書、1名の患者死亡台帳が捏造であったことを認めた。このことが代表団より報告された時点で日本政府は、拉致問題解決を含め、「日朝間に存在する諸般の問題に誠意を持って臨む」ことを約束した北朝鮮に対し、「日朝平壌宣言が遵守されていない」として強い意思を表明すべきであった。しかし、小泉首相は、「北朝鮮側の努力のあとはうかがえる」として、経済制裁などの強硬措置はとらず、実務者協議の継続を示唆した。また、細田官房長官は、「今の段階で経済制裁は考えていない」と述べた。これらのメッセージは北朝鮮に従来の対日政策を変えなくてもよいとの誤解を抱かせることになり、北朝鮮の対日政策責任者に言い訳を与え、続投を支持する結果となる。
12月8日、第3回日朝実務者協議で北朝鮮が出してきた物証の中で最も核心的な物証とされた「骨」について、「骨は横田めぐみさんとは別人のもの」との鑑定結果が公表された。この結果を受け、わが国政府は、12月8日、在北京日本大使館から北朝鮮に対し、「調査が虚偽であったと断じざるを得ず、日朝平壌宣言の精神に反することは明らか」と電話で抗議した。日本は、「平壌宣言に反する」と伝えず、平壌宣言の「精神」に反すると曖昧な表現を使い、北朝鮮への厳しい非難を避けた。これも誤解を与えるメッセージである。さらに、小泉首相は、経済制裁の発動について「対話と圧力だから、両面を考えていかなければならない。拉致被害者家族のためにも交渉を打ち切ってはいけない」と述べ、被害者家族の制裁要請を敢えて誤解し、政治決断を回避した。この時点で、小泉首相は、「日朝平壌宣言はもはや無効である」、「すべての生存者を返せ」と伝えるべきであった。誤ったメッセージを送るだけでなく、伝えるべき時に沈黙したり、伝えるべきメッセージを送らないことも大きな問題である。

3.トラウマを乗り越え毅然たる対応を


12月24日、政府は、「『8人死亡、2人未入国』との説明を裏付けるものは皆無だった。全く受け入れられない」とする精査結果を発表した。小泉首相は、精査結果について「極めて遺憾」としつつ、経済制裁については「あらゆる選択肢を残しておきたい」としか述べなかった。世論においては、日本と日本人を侮辱するこのような北朝鮮の対応に、もはや対話の選択肢はなしとして、制裁論が噴出した。多数意見に支持されずとも、国益と信じて敢えて官邸が毅然たる態度を貫くべき時もあるが、本件は世論無視の官邸外交と言わざるをえない。
平成17年1月25日午後、1か月沈黙を続けていた北朝鮮が、北京の大使館ルートを通して、拉致被害者の再調査結果への日本の抗議に対する回答を伝えてきた。北朝鮮は1月24日に、「日本の遺骨鑑定結果は徹底した捏造」、「責任ある者を厳重に処罰すべき」等と「備忘録」なるものを公表していたが、その文書を伝達するとともに、「遺骨」の返還要求を行った。翌日26日、高島外務報道官は、「今後も引き続きこのような対応に終始する場合には」、と前提条件をつけ、「厳しい対応」の可能性についてより具体的な検討を行う、と述べた。この前提条件も、日本が北朝鮮の不誠実な対応を許容するとのメッセージとなる。
平成17年2月2日、衆議院予算委員会で、鳩山由紀夫民主党議員が、北朝鮮が「鑑定結果は(日本の)捏造」とし、「また2週間前の労働新聞で金正日は、日本帝国主義は100年の敵、と言っているのに日本はなぜか沈黙していると見られている」と質問したのに対し、小泉首相は「粘り強く、関係各国にも働きかけながら、拉致の問題も含めて正常化に努力していかなければならない」と答弁した。小泉首相が繰り返し「正常化(交渉)」に言及することで、北朝鮮は「小泉は大丈夫」と思い続けることになる。

日本は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」できない時にどのように対応すべきか、「国際紛争を解決する手段」としての「武力を放棄」する代わりに、どのような解決手段をとるべきかにつき、思考を停止してきた。しかし、話合いでは解決できない相手だと日本人は認識した。今こそ小泉首相は、現実を直視し、戦後のトラウマを乗り越え、粛々と制裁を発動すべきだ。制裁を通じて、日本人が拉致問題に対する北朝鮮の不誠実な対応に激怒し、拉致被害者の早期返還を要求していると、正しいメッセージを送ることが求められている。逆に、小泉首相が本気で国交正常化を考えているのならば、なぜテロ国家・金正日政権と国交正常化しなければならないのか、その理由を公表すべきである。

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