■ 単独制裁で独裁者金正日に

正しいメッセージを送れ 


研究の経過と総合的報告

提言1.制裁で北朝鮮の

対日政策を変えよう

提言2.制裁を発動しても

ミサイルは飛んでこない

提言3.制裁が北朝鮮人民を救う

提言4.米国を中心とした制裁論議

提言5.金正日に

正しいメッセージを送れ

提言3.「制裁」が北朝鮮国民と在日朝鮮人を救う

李 英和(関西大学助教授、RENK代表)

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1.北朝鮮産魚介類の輸入停止で北朝鮮の子どもと妊産婦を救え

 北朝鮮政府による魚介類輸出は典型的な「飢餓輸出」(Starvation Export)である。外貨不足を補うために国民の食糧を取り上げて輸出するという貿易に名を借りた非人道的行為である。これを停止させることは、「経済制裁」よりも「人道的措置」と呼ぶのがふさわしい。同時に、飢餓輸出の根絶は国際社会の責務でもある。とりわけ輸入国(日本政府)は、輸出国(北朝鮮政府)と並んで、相手国の国民(北朝鮮国民)に対する責任(人道上の罪)を負う立場にある。言い換えれば、人道上の罪で両国政府は「共犯関係」に立つ。したがって、輸入国(日本政府)は飢餓輸出を停止させる(輸入禁止する)措置を緊急に講ずる責務がある。

通常、食糧需給の逼迫した国の食糧輸出は、貿易を通じた食糧品の交換で自国への供給量の増大を企図するものである(例えばコメ1kgを輸出して半額のトウモロコシ2kgを輸入する)。このような場合は「飢餓輸出」と呼ばない。ところが北朝鮮の魚介類輸出は食糧生産が減少し、食糧導入量(援助+輸入)も減少するなかで輸出が強行されてきた。その輸出代金は主に北朝鮮軍と軍需産業、および特殊単位(特殊工作・情報機関)の収入とされてきた。このことは、RENKが昨年入手した北朝鮮内閣の公文書からも明らかである(「財政省指示第72号 水産資源増殖場使用料納付規定細則」2004年9月23日)。特記すべきは、300万人以上(総人口の10%以上)の犠牲者を出した大飢饉(1996年〜98年)の最中にも、従来どおりの規模で魚介類輸出をした事実である。

飢餓輸出が始まる70年代中盤から、北朝鮮国民の間で栄養不良、とりわけ蛋白質不足が深刻な問題となってきた。それまでは、北朝鮮の子供たちは、チューインガムの代わりに棒鱈の裂き身をポケットに入れて食べたほど、豊富に魚介類を摂取できた。ところが、飢餓輸出の進行とともに、栄養不良のせいで子供たちの発育不良が年々進む。そのあげくが上記した90年代の大飢饉発生である。国民の飢餓状態は2000年頃から一時軟化傾向を示したが、昨年より再び悪化しはじめ、最近では飢饉再発が真剣に憂慮される。昨年、「155cm以上、45kg以上」へと入隊基準(17歳標準)が下げられた事実は問題の深刻さを十分にうかがわせる。最近、世界保健機構(WHO)や医療NGOが、北朝鮮における妊婦の流産増加や妊娠可能期女性の不妊症増加に警告を発している。これも蛋白質をはじめとする深刻な栄養失調のせいである。筆者の北朝鮮留学(1991年)の際にも、「一度でいいから生臭いものを食べたい」という妊婦の哀訴の声が聞かれた。

大量に輸入する国がなければ、飢餓輸出は成立しない。北朝鮮魚介類の輸入国の筆頭は日本である。北朝鮮当局は、1972年頃から魚介類輸出を急激に増やし始めた。北朝鮮が債務不履行問題で事実上の「破産国家」となる1982年から現在まで、主力輸出品の座を占める(輸出品目の第1〜2位)。輸出先の筆頭は日本である。なお、2003年度の北朝鮮産魚介類(アサリ、ズワイガニ、ウニの三品目)が日本の対北朝鮮輸入に占める比重は全体の約33%(約66億円)である。日本は飢餓の国=北朝鮮から30年以上にもわたって漫然と魚介類を輸入し続けてきた。この恥ずべき事実をいまこそ真剣に反省し、日本政府は北朝鮮産魚介類の輸入を停止すべきである。同時に、原産地表記の徹底を含め、近隣諸国からの迂回輸出を阻止する強力な監視体制をつくるべきである。
北朝鮮産魚介類の輸入停止や不買運動はけっして北朝鮮国民に打撃を与えない。むしろ輸入を続けることのほうが深刻な打撃を与えることになる。北朝鮮産魚介類を買って食べることは、北朝鮮の子供たちの健康を食べてしまうことであり、北朝鮮でこれから生まれようとする新しい生命の芽を摘み取ることになる。輸入停止と不買運動は、北朝鮮軍部をはじめとする独裁機関に対するピンポイントで直撃する経済制裁となる。同時に、飢餓と栄養失調に苦しむ北朝鮮国民への強力な人道支援となる。いまこそ輸入停止と不買運動で、北朝鮮で採れる栄養豊富な魚と貝を、北朝鮮の子供たちと妊産婦に返してあげよう。

2.万景峰号入港禁止は親族訪問の負担軽減と利便性向上を実現する

 北朝鮮政府と朝鮮総連は万景峰号の入港禁止問題に関して「重大な人権侵害にあたる」と声高に主張する。これに同調する日本のマスコミや識者も一部に見られる。その論拠は次の一点に尽きる。万景峰号の運航が「人道主義的事業」であり、その運航停止によって「唯一の親族訪問のルートが閉ざされる」というものである。しかし、入港禁止は、「重大な人権侵害」に当たるどころか、新たな親族訪問ルートを拓くことで多大な人道上の貢献を果たす役割が期待される。
 万景峰号が「唯一の親族訪問のルート」なっているのは、日本政府ではなく、北朝鮮政府と朝鮮総連による措置のせいである。親族訪問に使えるルートは他にもある。北京経由での飛行機便ルートである。朝鮮総連の幹部や商工人は主に航空機ルートで北朝鮮に入国している。実際、有力なコネを持つ一部の在日朝鮮人は、親族訪問の際、復路に飛行機を使う特権を認められている。これが「特権」となるのは、航空機ルートは費用が妥当で、なおかつ快適性と利便性が高いからである。したがって親族訪問の在日朝鮮人の大半が飛行機の利用を望んでいる。しかし北朝鮮政府と朝鮮総連はこれを認めない原則を今日まで固守している。
 その理由は二つに大別できる。ひとつは、密室状態の万景峰号以外では親族訪問の在日朝鮮人を完全統制できないこと。航空便では外国人や他団体の在日韓国・朝鮮人との接触を完全に禁止するのが不可能なせいである。同時に、往路と復路の両方で北京その他の諸外国でトランジットの必要性が生じ、この場合も緘口令や禁足措置などの統制が利かないせいである。もうひとつの理由は、航空便ルートを許可すれば、万景峰号の運航が経済的にも政治的にも困難になること。親族訪問業務を独占することではじめて、船便としては高額の料金設定が可能となる。また、高収益と人道事業の看板を利用して貨物輸送や船内指導などの政治工作活動を実施する定期運航が保障される。
 万景峰号の運航が停止されれば、北朝鮮政府と朝鮮総連は親族訪問で飛行機便ルートを認める措置を必然的に取る。そうなれば、親族訪問の在日朝鮮人は貨客船での長旅の肉体的苦痛から解放され、高速大量輸送の飛行機のおかげで利便性が大いに高まる。その結果、親族訪問の機会が増す効果も生まれる。また、親族訪問の目的とは無関係な言動統制と監視の心理的圧迫が軽減される。以上、人道的観点からも、万景峰号の運航停止措置は総じて効果的で副作用がない。

3.完全な監視活動を欠いた人道援助はかえって北朝鮮国民を苦しめる

 先ごろ米国で可決・成立した米国「北朝鮮人権法」は、将来ありうるべき制裁措置から人道援助を除外している。「食糧を武器に使わない」という米国流の良心と理念である。しかし、これにも条件が付く。「援助物資はきちんと配達、分配、監視されるべき」であり、「それが政治的報酬や圧制の手段となってはならない」(第2条202項)と。
だが、日本を含む国際社会の対北人道支援は、まともに「配達、分配、監視」されず「政治的報酬や圧制の手段」と化している。現状の援助は、米国流の良心と理念に照らしても、無効であり有害ですらある。この現状が根本的に改善されないかぎり、人道援助は即刻中断されるべきである。
95年以来、食糧であれ医療品であれ、実施継続されてきた人道援助物資は大規模に横流しされ、年を追うごとに横流しの構造が組織的かつ体系化してきている。「救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク」(RENK)によって2003年8月の一般市場(旧ヤミ市場)横流しのビデオ映像(2003年8月撮影)が初めて公表され、2004年7月の映像も近日中に公表が予定されている。さらに韓国の仏教系NGO(良き友達)が北朝鮮当局の定めた物資横取りの仕組みを詳細に暴露した。援助物資の引き渡し先は、50%が軍隊、10%が軍需産業、10%が戦略企業(一級企業所)、そして残り30%が糧政事業所(国営食糧卸売り業者)という原則が立てられている。糧政事業所は安価(国定価格)で穀物を国民に供給する建前だが、実際には行政、党、検察、秘密警察、一般警察の順番で供給され、一般国民には事実上販売していない。さらに、上記の横取り先の幹部が物資を一般市場に横流し(高値で転売)する。人道援助食糧は無償で住民に分配されるべきであり、国定価格であれ決して売られるべきものではない。ましてやコメ1kgが庶民の給料の5分の1で売られるなど、人道に対する犯罪というべきである。

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