■ 単独制裁で独裁者金正日に

正しいメッセージを送れ 


研究の経過と総合的報告

提言1.制裁で北朝鮮の

対日政策を変えよう

提言2.制裁を発動しても

ミサイルは飛んでこない

提言3.制裁が北朝鮮人民を救う

提言4.米国を中心とした制裁論議

提言5.金正日に

正しいメッセージを送れ

提言2.制裁を発動してもミサイルは飛んでこない

惠谷 治(ジャーナリスト)

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1.ミサイル発射は金正日政権の終焉となる


 昨年12月15日、北朝鮮外務省は「もし極右勢力の策動によって、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁がついに発動されるなら、我が方はそれを我が国に対する宣戦布告と見なし、強力な物理的方法によって即時に対応することになるであろう」という声明を発表した。 この声明の「強力な物理的方法」とはいったい何なのだろうか。
 周知の通り、北朝鮮は核開発とともにミサイル開発をおこなっている。
元来、ミサイルは命中精度が低いため、目標を外れても確実に破壊するため弾頭に巨大な爆発力のある核爆弾を搭載して、その欠陥をおぎなってきた。つまり、核弾頭とミサイルの開発は車の両輪のような関係であり、いずれが未完成でも「強力な物理的方法」とはいえないのである。
 韓国の軍事筋によれば、北朝鮮はすでに日本のほぼ全土を攻撃できる射程1300kmのミサイル「ノドン」を、100〜200基ほど実戦配備しているという。一方で、北朝鮮は長崎に投下された5tほどの核爆弾を数個保有していることはほぼ確実とみられている。しかし、ミサイルの弾頭に搭載する核弾頭は、1t以下の小型核爆弾でなければならず、これまでのところ北朝鮮は核弾頭を完成させているという情報はない。つまり、現在の北朝鮮は日本を攻撃できるミサイルを実戦配備していても、「核ミサイル」は配備していないと考えられる。
 合理的な思考ができる金正日は、核ミサイルが完成していない現在、日本に「ノドン」を発射することはできないと考えているだろう。というのも、ミサイルを日本に発射すれば、日米安保条約が即座に発動されることになる。そして、日本の世論も激昂して「防衛出動」が発令される。その結果、米軍の空爆が開始され、金正日独裁政権は終焉してしまう。そのことを一番怖れているのは金正日自身であり、金正日が発射命令を下すことはあり得ないのだ。
 しかし、何らかの特殊事情で「ノドン」が日本に向けて発射される可能性は完全には否定できない。
 現在、実戦配備されている「ノドン」には通常のTNT火薬が最大1t搭載されていると思われる。「ノドン」が発射され、日本に着弾したときの被害を予測する上で参考になるのが、ナチス・ドイツが第2次大戦末期に完成させた「V2」ロケットである。「ノドン」はソ連製「スカッド」ミサイルを改良したものだが、実は「スカッド」は「V2」ロケットを改良したもので、「V2」の弾頭には「ノドン」と同じくTNT火薬1tが積載されていた。
 ナチス・ドイツはイギリスに向け1944年11月から7か月間、「V2」ロケットを合計1115発発射し、うち517発がロンドンに命中した。その被害総数は死者2754人、負傷者6523人で、1発当たり平均の死者は5.3人、負傷者は12.6人という計算になる(Lesser Known Facts of WWII.、V2ロケット - infogogo.comによればイギリスには1402発が着弾し、うち1358発がロンドンという)。つまり、日本の都市部に着弾したとしても、5人前後の死者と10数人の負傷者がでると推測される。「ノドン」の命中精度は、100発発射すると50発が目標から半径2500m以内に着弾すると推定されている。つまり、例えば市谷を狙っても新宿と神田の間のどこかに、半数しか当たらないということである。このようなミサイルを怖れることこそが、金正日の思うつぼなのである。
   

2.ミサイル試射はあっても軍事的暴発はあり得ない


 2000年6月の金大中大統領訪朝による南北頂上会談以降、韓国と北朝鮮の関係は劇的に変化した。朝鮮戦争以降、50年にも及ぶ北朝鮮の対南工作の成果によって、現在の韓国はまさに「赤化」寸前なのである。かつての南北会談で「ソウルを火の海にする」といった発言にとらわれ、朝鮮人民軍による「南侵」の可能性もあるという解説は噴飯ものである。今の韓国は金正日から見れば、わざわざ戦争などしなくても「赤化統一」できるほどの状況になっていることを知るべきである。南北衝突以外の軍事的暴発は考えられず、日本が制裁をおこなったとしても日本に対する軍事攻撃は、ミサイル発射と同様、日米安保条約の発動につながるためあり得ない。
 制裁を発動すると、もっとも可能性の高い北朝鮮の「対応」はミサイルの試射である。これが北朝鮮の主張する「強力な物理的方法」ではなかろうか。日朝平壌宣言で凍結していたミサイル実験を再開することは十分に考えられ、一度しか試射したことのない「ノドン」の実射実験をおこなうかもしれない。また、アメリカ向けのミサイル「テポドン」は開発途中であり、その試射も予想される。しかし、ミサイル実験に対して、日本が極度に反応する必要はないのである。
 制裁発動によって、日本海における日本の船舶や航空機に対する軍事的挑発という「対応」も考えられる。日本の漁船や民間機は北朝鮮の海空軍による威嚇を受ける可能性はあるものの、危害が及ぶことはないことを認識しておくべきである。さもなければ、金正日の術中にはまってしまうことになる。危害をくわえれば日米安保条約が発動されることを怖れているのは金正日であり、日本人が怖れる必要はない。
 しかしながら、もっとも警戒しなければならないのは、国内で発生する犯人の顔が見えないテロ事件である。しかし、日本人が北朝鮮による卑劣なテロには屈しないという覚悟があれば、テロの危険性は少なくなる。テロに過剰に反応するがゆえに、テロが効果的だとして頻発するからである。
 安明進委員は「日本には北朝鮮から送り込まれた数百人の工作員が潜伏しているが、彼らは金正日の虎の子的存在であり、その存在が発覚すればそれで終わりなので、金正日が工作員を使うのはよほどの危機的状況に陥った場合か、あるいは戦争に勝てるという計算があった場合だけである」と証言している。
 いずれにせよ、金正日が心理戦を仕掛けてくることは疑いなく、制裁が発動されれば、その心理戦に打ち勝つという気構えが必要である。
  

3.日本の最大の武器は経済力である


 現在の日本の世論は、拉致問題の解決を求めて経済制裁をすべきだと主張しているだけであって、日朝国交正常化交渉が成立すれば、金額は別としても経済協力金は払わなければならないと、大半の日本人は考えている。そうした日本に対してミサイル攻撃やテロを実行すれば、経済協力金を払う必要などないという世論が盛り上がることは疑いない。
 日本は戦争を放棄したため、宣戦布告することはできない。拉致被害者を救出するため特殊部隊を北朝鮮に送ることもできない。しかし、不況とはいえ未だに強力な経済力を維持しているのであり、日本の経済力はどんな場合にも「武器」になるということを再認識すべきである。
 金正日は日本からの経済支援を期待して、拉致問題を認め謝罪したのであり、経済協力金を払う用意があるという日本人をミサイル攻撃すれば、その努力が水泡に帰してしまうことは認識しているはずである。金正日政権に経済協力金を払う必要などないが、彼らが日本からカネが入ると信じている限り、日本を攻撃するというシナリオはあり得ないと考えられる。
 つまり、経済協力金を払う用意があるという日本の世論と経済力がある限り、ミサイルは飛んでこない。今の日本の世論自体が、日本の安全を保障しているということを忘れてはならない。

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