救う会全国協議会

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
TEL:03-3946-5780 FAX:03-3946-5784 info@sukuukai.jp

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

最近の北朝鮮情勢と拉致問題 東京連続集会84 全報告



◆3年間の延命を目的として日本に接近

西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授) 2月のこの集会でもお話ししたのですが、去年からの流れを振り返って、今後どう展開していくだろうかということについて私が考えていることを申し上げたいと思います。そして明日、総理がどういう話をされるのか大変注目していますが、具体的にこういうことをしてほしいということを一つ、提案として皆さんに申し上げ、明日機会があれば申したいと思っています。
 去年、北朝鮮が日本に接近してきたのは外貨が涸渇してきたからです。朝鮮総連からの不法送金がかなり少なくなっている。外貨が一定程度ないと、金正恩の統治資金がなくなって、独裁統治ができなくなる。
 しかし、その外貨の枯渇状況というのは、2017年12月に、韓国で大統領選挙が行われて、そこでもう一度親北派の政権ができれば、問題は解消してしまう。朝鮮総連からの送金が第一次安倍政権以降、かなり止まっていたにも関わらず、金正日、金正恩政権が一定程度延命してきたのは、金大中・盧武鉉時代に多額のお金が韓国から送られていたからで、李明博政府が調べたところ、10年間で70億ドルの金と物が行っていた。それは政府が送ったもので、民間から行ったものを合せると計100億ドルくらいが10年間で行っていた。
 それが彼らの独裁統治を支えていたわけですが、李明博政権になってそれがかなり切れた。朴槿惠政権でもそれが継続しています。じゃあ3年間どう生き延びるか。
 今、米朝関係のことが島田さんから話がありましたが、私も最近ソウルでアメリカの情報関係者から聞きましたが、「実質的話し合いはしていない」ということです。
 それはアメリカとすると、北朝鮮が核開発をやめることを議題にしない限り話し合いに応じないということです。金正日は、核開発をやめることを議題にすることは認めたんです。そして実際は核開発を続けていたんですが、やめることを議題にすることは認めた。
 これは詐欺です。だましながら支援をもらう。しかし、金正恩は核保有国であると憲法に書いちゃったんです。核開発をやめることを議題にするためには憲法を改正しなければならない。
 彼らの要求は6者協議を再開することですが、それは北朝鮮を核保有国として認めろということなので、6者協議について様々な裏交渉がされていますが、再開できないんです。
 韓国も核についてはアメリカと同一歩調です。そして北朝鮮の核開発は、小型化が完成したか、その直前まできているということで、韓国の安全保障上の危機が近づいているわけです。だから簡単に支援はできない。
 日本は、もちろん核・ミサイルの問題もありますが、拉致という別の問題がある。それが一定程度解決すれば、国連の制裁以上に厳しい制裁をしている部分については取引ができる。彼らから見て、日本は御しやすいと見る状況が出ていて、3年間の延命を目的として日本に接近してきたんだろうと見ています。
 だとすると、彼らにとっても時間稼ぎはそんなにプラスではないはずです。そして彼らが考えたことは2段階で、去年交渉を始める段階の第1段階では、拉致を動かさないで、遺骨問題、残留日本人問題で取るだけのものを取る。その上で、拉致について何らかの回答を出す。そして3年間生き残れるだけの外貨を日本から取る、ということだったろうと思います。これは推測だけではなく、内部からの情報も含めて私はそう見ています。

◆被害者をDNAのでない「遺骨」にする案があった

西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授) しかし、拉致を動かして日本から物を取る場合に、日本の世論の状況を正しく見れば、認定被害者についてゼロ回答で何かが取れるということはない。2002年に金正日が「死亡と報告せよ」と命令した人たちは、北朝鮮にとって出すことが大変困難な秘密を知っている人たちで、その人たちを「もう一度調べたら生きていました」という決断をして日本との交渉を始めたという情報や兆候は一切ない。
 8人についてはゼロ回答で彼らがほっと一息つけるほどの物が出るかと言えば、それは出ないだろう。そういう論理的な枠組みで考えると、新たな死亡の証拠を捏造するのではないかという疑いが大変高まりました。
 第1段階で何か取るだけでなく、拉致で何らかの勝負をしようとしてきている。それは我々が望むような方向ではない可能性もある。少し具体的に言いますと、去年の初め、私のところに複数の情報が入りました。
 統一戦線部は、数年前から日本のDNA鑑定能力を詳細に調査している、と。そして、これは2007年に脱北者出身で韓国の情報機関要員からの話ですが、日本のDNA検査技術で死亡の時期がどの程度分かるのか教えてくれと、質問してきたそうです。
 つまり、前回横田めぐみさんのものとされる「遺骨」、松木薫さんのものとされる「遺骨」が出てきましたが、大変高温で焼いていた。多分1200度ぐらいだったと推定されています。
 北朝鮮は、1200度ぐらいで焼くとDNAが抽出できないだろうと判断した。鑑定不能になるだろうということで「遺骨」を出してきたんですが、帝京大学のミトコンドリア法という技術で、1200度ぐらいで焼いた骨からDNAが出た。めぐみさんのものではない二人分のDNAが抽出されたということで、めぐみさんの死亡はその「遺骨」からは証明されないという結果が出た、ということがあったわけです。
 そこで彼らとしては、日本の鑑定技術を調べる必要が出てきたわけです。日本の技術では、その骨が誰のものかだけではなく、いつ死んだのかも分かるということを、私はこの10年間、公開の席で繰り返し言っていたんですが、そうしたら彼らは、「本当に日本は死亡時期まで分かるのか教えてほしい」という調査を始めていたということです。
 そして2012年には、ヨーヨッパのある国の病院で、遺骨を高温で焼いてDNAが出るかどうかの実験までした。ある温度で焼いたら、死亡の原因や年度は判別不能になるが、その骨が誰の物かは分かる。そういう温度帯があるということを実験したと、かなり確実な内部の情報源からの情報がありました。
 それで、政府に、それはどうなっているのかという話をしたら、「日本の技術はヨーロッパの病院よりすぐれている。ヨーロッパで分からなかったからといって、日本で分からないということではない」ということでした。帝京大学の吉井先生は今、警視庁の科捜研の副所長です。
 そういう話を聞いて、日本の技術を甘く見たら大変なことになりますよ、ということを繰り返し言ってきたわけです。
 (遺骨にする)案があったことはほぼ間違いないと思いますが、実行はされていない。しかし、その案が完全に廃棄されたかどうかは分かりません。北朝鮮の内部で、「いつかは情報が漏れる、漏れた場合日朝関係は大変なことになる」との反対意見が強まったとも聞いています。

◆国連で金正恩が刑事訴追されないよう抑えろとの指令

西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授) とにかく彼らは2段階で何かを取ろうとしてきた。そして最終段階では「死亡」という方向で終わらせようとしてきたのではないかと見て、緊張しながら、彼らが何を出してくるかを去年見ていたわけですが、9月になって報告が遅れた。
 彼らが外貨がほしいと思っていたとすると、時間稼ぎは彼らにとってもそれほどプラスではない。それなら調査をしなければいいんです。「拉致は解決済み」と言い続ければいいわけです。それはしないで、何か目的があって調査をしたのに、時間稼ぎをしてきたというのは、別のことが出てきたということです。
 それが国連です。国連で金正恩が刑事訴追されるかもしれないということになって、「すべての外交力量を使ってそれを抑えろ」という指令が出た。
 今、アメリカのシンクタンクが北朝鮮人権問題でシンポジウムを開いたら、北朝鮮が「爆破する」と脅した。これは初めてのことです。この2月に、アメリカ以外にヨーヨッパでも、カービー委員長の報告が出て1年ということで、いくつかの集会が開かれたんですが、「それを止めろ」という妨害は、日本以外の地ではたくさんあったのです。
 さすがに我々のところに、「集会をやめろ」という妨害は来ないですが、日本に対しては、「拉致問題は安倍政権と話し合って、誠実に調査をしています」と国際社会に宣伝していますから、「集会をやめろ」というのは逆宣伝になるのでやらないのではないかと、私は分析しています。
 しかし、彼らにとって、国連でどういうことが議論されているのかということは、関心が高いわけです。

◆エボラ熱に異常な警戒

西岡 力(救う会会長、東京基督教大学教授) もう一つ聞こえてきたのが、夏くらいからですが、「話が違うじゃないか」と。「安倍さんは当初は、4つの分科会を併行して行うと言ったのだから拉致以外のもので何らかのものが取れると思っていた。ところが拉致を最初に出さなければだめと言っている。話が違う」と北朝鮮が言っているという話です。
 それらのことがあって、多分国連のことが第1優先順位だと思いますが、時間稼ぎになった。私は、12月、1月の集会で、「年が明けたら動くかもしれない」と申し上げたのですが、1月、2月は、また別の要素があって動かなかった。
 エボラ熱です。金正恩は異常にエボラ熱を恐れて、北朝鮮人が海外に出張し、戻ってきた場合に20日間隔離されます。エボラ熱に感染していないかを見るまで、北朝鮮の他の人と接触させないんです。外国人が北朝鮮に入国した時も同じです。党の最高幹部までそういう対応をしたそうです。
 崔龍海という労働党の常務委員が、今は常務委員から降ろされましたが、ロシアを訪問して帰ってきた時も、20日間隔離されたそうです。住民の健康なんかは心配していませんから、自分に会うかもしれない人を厳しくチェックするわけです。
 口コミですが、北朝鮮の中では、エボラ熱はアメリカのCIAが作った細菌兵器だと思っているようです。それで金正恩が、「俺を暗殺しようと思っている」という噂が流れたそうです。しかし、異常な恐れ方です。中国で感染者が出たという話はないのに、中国から入ってくる人たちにもやっている。
 例えば、宋日昊大使が日朝協議のために出国して、伊原局長に会って帰ると、20日間誰にも会えないという状況だったのです。様々なことが止まっていた。それが3月になって動き始めました。それはおかしいんです。細菌というのは寒い時にはあまり活発ではなくて、暖かくなると活発になるはずなのに、酷寒の1月、2月にそういうことをしていて、3月に解除するというのもやり方がおかしいのですが、ともかくファクト(事実)としてそうだったようです。今は出入りが自由になりました。
 様々な工作機関の人間も、中国に入ったり、出たりしていますし、外交官も出入りしているようです。

  
■ サイト内検索 ■


■あなたにも出来る救出運動■
あなたにもできること

 ■ アニメ「めぐみ」 ■ 

■ 書 籍 ■