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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

家族会・救う会の新運動方針と米朝首脳会談4(2019/03/13)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2019.03.13)


■家族会・救う会の新運動方針と米朝首脳会談4

◆追い込まれたトランプは外交で成果を狙い譲歩すると北が誤解

島田洋一(救う会副会長、福井県立大学教授)

 今回の米朝首脳会談の前、そして会談中のアメリカの主流メディアの報道、そ
してそれを受け売りしている日本のメディアの報道を見ていると、一致して、い
わゆるロシアゲート等で国内的に窮地に追い詰められたトランプ大統領が外交で
成果をあげようと変な譲歩をするのではないか懸念されるというもので一色でし
た。

 これは北朝鮮の外務省あたりも、そういう報道をそのまま受け取って、これは
トランプに対して相当ふっかけても受け入れるのではないかと思って、かなり無
茶な球を投げたと思われます。

 一方トランプ氏の方は首脳会談で、北朝鮮の疑惑核施設を写真、地図を見せて、
こっちはきっちりつかんでいるぞ、ごまかしはできないということを言った。一
昨日当たりからアメリカのメディアも、特にCNNが詳しかったですが、政府高
官2人と関係者1人からとった情報だと言っていますが、トランプ氏が席を立っ
て決裂になった。

 その後崔善姫(チェ・ソンヒ)という北朝鮮の外務次官が慌ててアメリカ側の
宿舎にやってきて、「こちらの要求をちょっと落とした案を持ってきたので見て
ほしい」として、解除を求める制裁の水準を少し緩めたものを提示してきた。

 それに対してアメリカ側が、「ところで廃棄すると言っている寧辺の施設はど
れなのか」と。ウラン濃縮施設、プルトニウム再処理施設等色々あるのですが、
「これら全部なのか一部なのか」と聞いたところ、崔善姫が「確認してきます」
と北朝鮮側の宿舎に戻って、また慌ててアメリカ側にやってきて「すべての寧辺
の施設を廃棄します」と言ったそうです。

 この報道が正しいとすると、間違った反証は出ていないので正しいと思います
が、北朝鮮も最初に無茶な球を投げたけれども、その後少し落としたBプラン、
Cプランを出そうと考えたのではないか。

◆安易に米国が経済制裁解除に行ってしまう可能性も残っている

 ところがトランプ氏の側から、他の疑惑について写真などを突き付けられて、
金正恩としては対応しようにも判断をしかねている間に、もう決裂だということ
になってしまって、Bプラン、Cプランを出すタイミングを失ってしまった。

 それでも手ぶらで帰るのはまずいということで崔善姫がアメリカ側に働きかけ
てきた。従って北朝鮮が制裁解除で要求水準を下げてきたのがどういうものか現
時点では分からないのですが、Cプランを前提に今後米朝の話し合いが続いてい
くのではないか。

 従って、日本から見るとかなり安易な経済制裁解除に行ってしまう可能性はな
きにしもあらずです。今回、我々が一番信頼しているジョン・ボルトン安保補佐
官が米朝会談に出ていましたが、特徴的なのはボルトンの前の席が空いていまし
た。これは異例のことで同じ人数を揃えるわけです。

 ボルトン氏はベネズエラ問題に今忙殺されていて、ハノイにいる間の彼のツイー
トを見ると、ほとんどベネズエラに関するもので、北朝鮮に関するものはほんの
一部でした。

 従って、ボルトン氏も緊迫する中米情勢が忙しい中でハノイに飛んできて首脳
会談にも同席したが、彼の身体は一つしかないので、今後ベネズエラやイランが
同時にややこしい状況になってきたら、北朝鮮にほとんど精力を割けないという
可能性もある。

 事前の関係者の証言を見ると、ビーガン氏(北朝鮮担当特別代表)、彼は国務
省の人で宥和派が多いのですが、彼がやっている北朝鮮との実務協議でどうも譲
り過ぎるのではないかとボルトンが不安を感じて牽制にかかった。

 しかし、ベネズエラに忙殺されていて困ったな、と。保守派の間からも「ボル
トンは絶対ハノイに行け」とせっつかれて彼は行った。まず釜山に寄って日本の
外務省の担当局長、谷内さんですね、それと韓国のカウンターパートと協議をし
て、それからハノイに乗り込むという話でしたが、釜山での会談はキャンセルさ
れた。

 ポンペオ氏(国務長官)については、彼がどこまでしっかりしているのか分か
らない部分があるのですが、ボルトン氏の場合はブッシュ大統領(長男)の時の
国務次官で大量破壊兵器担当、その後国連大使の時に北朝鮮に対する制裁決議を
まとめる役割をしていましたし、イランの核問題もずっと担当していた。まさに
核問題の専門家なんです。

 ポンペオ氏はそういう経歴がないので、国務省の宥和派に取り込まれる恐れも
なしとはしない。今回ポンペオ氏は事前にハノイに入って、北朝鮮側のカウンター
パートである金英哲氏(キム・ヨンチョル、労働党副委員長)と会談した。その
下の事務レベル協議がまとまっていないから、いわゆる外相レベルで詰めようと
いう申し入れをしたらしいんですが、北朝鮮側が結局応じなかった。

 これはおそらく金正恩が事前にやらせずに、首脳会談の場で自分がいきなりト
ランプ大統領に鎌をかけて取れるだけのものを取ろうと思ったから外相級の会談
には応じなかったのではないかと思われます。

◆民主党の一部と主要メディアは「首脳会談は失敗」と決めつけ

 従ってあまり楽観していてはよくないということですが、トランプ氏は北朝鮮
の地図をみせながら、「俺は不動産王だ。北朝鮮の西海岸地帯は大リゾート地帯
にできる。俺が金を出すよ」というような話をした。「だけどアメリカからお金
を出すのは議会が人権問題等で厳しいから無理だ。投資を得ようと思ったら日本
しかないんだから拉致問題を解決しろ」と、そういう持っていき方をしたと聞き
ます。

 そしてトランプ氏が今回決裂させたということを、アメリカでは超党派で「正
解だった」と言っていますが、但し野党民主党と民主党に近い主要メディアは軒
並み、「今回の首脳会談は失敗だった」と決めつけています。

 やはり、事前の調整もなしにアメリカの大統領たるものがあんな独裁者と会っ
て、何の成果もなく帰ってきた。アメリカの権威を傷つけたから失敗だと決めつ
けています。

 そういう中で日本にとっては、先ほど家族会の方も言われたように、金正恩に
対して直に拉致問題をしっかり出してくれたということは、我々としては感謝す
べきことです。

 そしてトランプ氏がやってくれた拉致に関するメッセージ、あれに感謝してい
るんだということを、日本政府はもっと世論に向けて発するべきではないかと思
います。

 トランプ氏は今、ロシアゲートなどいわれなきハラスメントを受けています。
私はロシアゲートは全く根拠のないものだと思いますが、彼は日本のためにやっ
ているわけですから、そこは日本が彼をバックアップすべきではないかと思いま
す。

◆人権問題が相手の姿勢を見る上での評価基準

 まだ色々ありますが、一つだけ言えば、トランプ氏が今回の首脳会談について
最も慌てた局面が一つだけありました。それは直後にオットー・ワームビア氏の
両親が発したメッセージです。

 ワームビア青年は、いうまでもなく北朝鮮で拷問を受け事実上殺害されました
が、その両親が首脳会談直後に、「歯の浮くような賞賛をいくら投げつけようが、
金正恩の体制にオットーを殺した責任がある。そして無茶苦茶な人権抑圧の責任
がある。この事実は動かない」と。

 記者会見の場で、オットー・ワームビアの件をどう思っているんだと質問した
のはワシントンポストのデビッド・ナカムラという日系の記者です。我々もワシ
ントンで彼の取材を1時間近く受けたことがありますので、デビッド・ナカムラ
という人は拉致問題をよく知っている記者です。

 もっと時間があったら彼が(拉致問題を)聞いてくれたかもしれないんですが、
アメリカのリベラル派はもちろんのことですが、「人権問題をトランプはしっか
り出さなかった」と。

 同じく決裂に終わった1986年10月のレーガン・ゴルバチョフのレイキャ
ビク会談では、2日目の午前の1対1の会談でレーガンは人権問題にちょっと触
れる予定さったのですが、レーガンが北朝鮮の人権抑圧の事例をずらっと書いた
リスト、釈放を要求する政治犯の名前を書いたリストをゴルバチョフに突き付け
て、一人ひとり説明させてもらうと言った。

 ゴルバチョフがそれに反論して、激論になって、70分以上人権問題でやりあっ
た。ゴルバチョフはその場では言質を与えなかったが、2か月後、最も有名な人
権活動家で物理学者のアンドレイ・サハロフを釈放した。

 レーガンはその時に、「我々の間で核問題で何を取り決めようが、人権問題で
顕著な進展をみせなければ議会が認めない」と。「だから人権問題で顕著な措置
を取れ」と繰り返しゴルバチョフに言っています。

 それでゴルバチョフの方も、人権問題で何らかの措置を取らなければいけない
ということで、田舎の方に軟禁していたサハロフをまず解放し、次々に政治犯を
釈放していった。

 それでアメリカ側も、政治犯を釈放するんだったら本当にゴルバチョフは改革
意思を持っているなということで、翌年ゴルバチョフの訪米大歓迎となりました。
ゴルバチョフなら色々取り決めをしても大丈夫だという方向に行った。

 やはり人権問題でしっかりした措置を取るかどうかが、相手の姿勢を見る上で
の評価基準、メルクマールなんだという意識をレーガンはしっかり持っていた。
トランプ氏はこの点、若干意識は薄いと思いますが、日本が人権問題の一つでも
ある拉致をしっかり助けてくれということを常に言っている。

 アメリカでもオットー・ワームビアの両親は相当な影響力が今ありますから、
その両親が声を上げるということで、今後アメリカとしては拉致も含む人権問題
をこれまで以上に取り上げざるをえなくなると思います。その分我々にとっての
チャンスも広がってきます。

◆元々焦って合意にいくはずはなかった

西岡 私が言った「なぜ決裂したのか」では、アメリカは降仙について確実な情
報を持ってないと北朝鮮が誤解していたためという意見を出したのですが、島田
さんはもう一つ、アメリカの中でトランプ大統領が追い込まれていたことを挙げ
ました。

 コーエンという弁護士の公聴会が、ちょうど米朝首脳会談に合わせて議会が開
かれて、トランプが追い込まれた。だからハノイで成果が必要なはずだから高い
要求をしても呑むだろうと誤解した。しかし呑まなかったわけです。

 こんな球を呑んでいたら、逆に大失敗だと非難されるわけでから、そもそも北
の考え自体が間違いで、島田さんが言ったように合意文にサインしなかったこと
は正解だったと与野党で言っている。そもそもハノイに行ったこと自体失敗だっ
た、と民主党側は言っているわけだから、焦って合意にいくはずはなかった。寧
辺だけで制裁を全部解除するようなことは。

 しかし、アメリカの反トランプの報道メディアだけ見ていると、追い込まれて
いると誤解された。日本の解説者もだいたいアメリカのメディアを見ていますか
らそういうことを言うんですが、その弁護士のことについてもう少し解説してく
ださい。

◆米国マスメディアを信じて強く主張してしまった金正恩

島田 これはまさにトランプ氏がハノイで首脳会談に臨むという時にぶつけて、
下院で多数をとった民主党がマイケル・コーエンというトランプの弁護士だった
人の公聴会、オープンなものを開いた。

 トランプ氏も記者会見で言っていました。「忙しい中で全部は見ていないが断
片的に見た。コーエンは嘘ばかり言っていたがただ一つ正しいことを言った」と。
それがいわゆるロシアゲートで、ロシアとつるんで選挙干渉をやったのではない
かという疑惑ですが、「トランプの選挙対策本部が直接ロシアと接触したことは
知らない」と。ロジャー・ストーンという男が、軽い人ですが、これがウィキリー
クスと接触していて、どうもウィキリークスがヒラリーに損になるような情報を
出すらしいということをトランプ選対に連絡してきた。そういうことはあったら
しい。

 「ロジャー・ストーンという人物は、トランプ選対ではなく独自に活動してい
た」ということもコーエンは言ったわけです。ワシントンポストですら、その直
後に、「今回の証言はむしろトランプにとって有利な内容だった」という総括記
事を載せています。

 北朝鮮側にしても、中国の外務省もそうだと思いますが、ニューヨークタイム
ズやワシントンポスト、そして三大テレビ局、CIAのケーブル放送、これらは全
部民主党支持で、なんとかトランプを引きずりおろしたい。

 だからトランプ氏がロシアゲートで追い込まれているというのは希望的観測な
んです。それをそのまま受け取ってしまう。ニューヨークタイムズやワシントン
ポストは権威がありますから。

 日本の外務省についても、現役の外務省の人たちはしっかりしていると思いま
すが、OBの宮家邦彦さんなどは、そういうアメリカの受け売りで、「トランプは
アメリカ国民から見放されている。だからあの政権はつぶれる寸前なんだ」と、
2年近く、ずっと書き続けています。

 これが外務省の有力OBということですから、北朝鮮の外務省も大して変わらな
い水準だと思います。トランプ氏の政治的状況を見誤っていた。

 マイケル・コーエンの公聴会を見ると、共和党の議員は、「コーエンお前こそ
嘘つきだ」と徹底的にトランプ擁護です。だからトランプ氏にとって、自分の支
持基盤は全く揺らいでいない。

 しかもコーエンの証言は、肝心のロシアゲートについては、「自分は知りませ
ん」と言う内容です。むしろトランプ氏としては、首脳会談中に、これま益々大
丈夫になったと、意気軒昂にやったのではないかと思われます。

 それを金正恩が分からずに高い水準の要求を続けたので、決裂になったのは当
然と思います。

(5につづく)


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