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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

緊迫する米朝関係と拉致問題?東京連続集会報告4(2017/08/02)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2017.08.02)

■緊迫する朝鮮半島情勢下での救出戦略?東京連続集会報告

◆「アメリカに届かなければ日本に届く核を持ってもいい」

西岡 ゲーツさんはCIA生え抜きの人ですが、ニューヨーク・タイムズの記者
とか、反戦運動をやっていた人ではない。そして国防長官を民主党、共和党政権
でやっている。情報と軍の専門家が、アメリカまで届くミサイルさえ北が持たな
いならばという条件で、国家承認と、平和条約と、事実上の米軍撤退までやれと。
北朝鮮が望んでいることそのままですね。そこまで譲歩してもいいと言っている。

 こういう方向に行くと、拉致問題も棚上げになるだけでなく、日本に届く核・
ミサイルを北が持ってしまったのにアメリカはそれを容認する。そして、北朝鮮
がそもそもアメリカまで届くものを持たないという約束を守るのか。ゲーツ氏と
もあろうものが、強制力がない約束を北朝鮮が守ると思っていること自体話にな
らなくて、そこはあまりにも甘いと思うんですが、しかし、一つだけ今の話を裏
打ちする情報があります。

 前回ここに来てもらった宋允復(ソン・ユンボク)さんがこの壇上で言ったい
くつかの情報の一つ。今年3月に北朝鮮で秘密の政治局会議が開かれた。そこで
金正恩は、「核弾頭は持つ。しかし大陸間弾道弾はアメリカとの交渉の対象にし
てもいい」と言った、と。これは分析ではなく情報です。

 ゲーツ氏は情報のプロですから、分析だけではなく、CIAにそういう情報が
入って、そこを落としどころとして交渉ができると踏んで、あるいは金正恩に対
して、「アメリカはそれをやってもいい」と示すためにゲーツ氏を使って、CI
A等が裏交渉を進めるために言わせた可能性もありますね。

 そこはより注視しなければなりませんが、しかし分からないのは、北朝鮮が約
束を守るとなぜ思うんですかね。

島田 ゲーツあたりは、そこは中国に責任を持たせると言うんですが、なぜ中国
が信用できるのかという話になります。アメリカに届くICBMとなると、かな
り大きいですね。この間北朝鮮がICBM実験に成功したと言ったのは、その前
にやった大きいものの半分くらいの長さしかない。従って、実際に核弾頭を積ん
でアメリカに届くようなICBMは使えないのではないかという議論もあります。

 ポイントは、アメリカに届くICBMはものすごく大きいですから、これを造っ
たら衛星情報等でキャッチできる筈だ、と。そういう前提で言っている。日本に
届く核・ミサイルはもっと小さいものですから、いくらでも隠せる物ですから、
日本に届く物は約束を守らず、50発、100発持ってもアメリカは関係ないと
言う発想があるんじゃないでしょうか。アメリカに届くICBMは偵察衛星で発
見できる、と。

◆米朝裏交渉が行われている?

西岡 それも断定的なことは言えないので、惠谷治さんにここに来てもらった時
の惠谷さんの見解は、彼らが北極星と言っているものは長く、火星と言っている
ものは短い。惠谷さんは北極星は人工衛星を打ち上げるもので、あれは長くて衛
星で発見しやすいから、あれを大陸間弾道弾とは呼んでいないのではないか、と。

 北極星については、人工衛星の発射に成功しているわけですから、金正恩が今
年1月に、「大陸間弾道弾の実験準備が終わっている」と言ったのは、北極星系
統ではなく、火星系統が完成したという意味ではないか、と。

 今回やった火星13、アメリカで言うとKN13と思われる物は去年も燃焼実
験をやっていました。そういう有力な解釈もあるのに、アメリカの安全保障を考
える人が、甘い方だけを取るというのはちょっと解せない気がします。もしかし
たら、裏でそういう交渉が行われている危険性もありますね。

島田 西岡さんが今指摘した解せない面が色々ありますが、ゲーツという人は風
向きを見るに敏な人で、だからブッシュ、オバマ政権と続いて国防長官をやって
いるし、去年の大統領選挙では当初トランプ氏のことを「修理不能な男」と言っ
たり、「軍の最高司令官にふさわしくない人物だ」と言っていた。

 ところがトランプは当選した直後、ティラーソンの国務長官指名について、真っ
先に大声で賛成したのがゲーツでした。そういう調子のいい男でもあるんです。
そして現在トランプ政権との関係は悪くないと言われている。そういう人物の発
言で、かつ先ほども言った通り、ウォールストリート・ジャーナルは、「これは
スマートな案だ」と言っている。そういう議論が現にあるので警戒すべきでしょ
う。

◆アメリカが再び北朝鮮に騙される可能性も

西岡 わがボルトン大使が安保補佐官に入ってくれることを強く望みますが、拉
致の観点から言うと、アメリカが譲歩してしまうのはまさに94年型で、強い圧
力をかけた時金日成が出てきて「核を凍結する」と言った。しかし、だまされて
たわけです。

 解せないのは朴槿惠政権の時、去年1月北朝鮮が核実験をした後、習近平にい
くら電話をしても出てこなかったりして、やはり頼りになるのは日米韓の同盟で、
北朝鮮に圧力をかけなければならないという方向に戻ってきて、北朝鮮に対して、
「核開発を止めないならレジーム・チェンジをする」と宣言した。そして様々な
圧力をかけた。

 その一つが高位層の亡命を促すことで、かなりの高位層が秘密裏に亡命してい
ます。その中には作戦部の副局長をしたパク・スンウォンという将軍もいた。彼
はアメリカにも行って情報を提供している。北朝鮮の核開発の状況、あるいは軍
事戦略についても、アメリカはこの数年間かなりの情報を入手している筈なのに、
北が、アメリカまで届く核・ミサイルを持って韓国を赤化しようとしている時に、
それをあきらめさせる。

 北朝鮮からしても、アメリカが韓国から撤収するということも口約束ですから、
本当にアメリカが守るかどうか。守らないのなら、核・ミサイルを持ってしまっ
て、アメリカが介入したら撃つぞと脅すことで撤収させようと思っていたのに、
口約束で撤収を信じられるかどうかは、まだ様子をみないといけない。

◆米・中情報部同士の関係は深い

島田 これは裏の話ですが、ウォールストリート・ジャーナルがもう一つ主張し
ていることは、中国の情報部とアメリカの情報部がしっかり話をして、中国に金
正恩を無力化させる。無力化には暗殺からうまく亡命させることまで色々ありま
すが、そうすれば北朝鮮の今の地域に傀儡政権を作ることを認める。

 そういう条件で中国が北朝鮮地域に軍事基地を持つこともアメリカは認めよう
じゃないか。その代わり中国は責任を持って今の政権をつびしてくれ、と。こう
いう方向で話を進めるべきだとウォールストリート・ジャーナルがさかんに書い
ている。

 そしてずっとCIAにいた人物が言ったことですが、「アメリカと中国の情報
部同士の関係というのは、日本との関係よりはるかに深いんだ」と。CIAは同
盟国であるはずの日本には教えないような情報を、実は中国には教えている。

 どこからそういう関係が始まったかと言うと1979年にソ連がアフガニスタ
ンに侵攻した。アフガニスタンでソ連を泥沼状態に陥れて、いわばソ連にとって
のベトナム戦争にする。そういう意図のもとに、中国とアメリカの情報部が組ん
で、アフガンゲリラを支援して、ソ連に対して国際法違反の攻撃をした。これは
実際にやった担当者のマイケル・ピルズベリーという人に直接聞きました。

 その内容は「月刊正論」に対談の形で載せたんですが、ピルズベリーは「中国
は100年マラソンということでアメリカを凌駕することを狙っている」と。自
分の体験を書いて2、3年前にベストセラーになった男です。

 ピルズベリーは、「現場でまさに中国情報部とやりとりした人間だから知って
いる」と。例えば、アフガニスタンのゲリラに武器を与えて、ソ連領内に入って、
ソ連の発電所を攻撃させた。これは米中が組んでやった、と。アメリカは上から
様々な偵察衛星の情報等をゲリラに教える。中国はアメリカの金で買った武器を
ゲリラに渡す。

 これは要するに中米は協力関係を越えて、共犯関係だ、と。お互い共犯者です
から。アメリカと中国はソ連に対して宣戦布告していないのにソ連の発電所を破
壊するのを手伝った。これは完全な国際法違反です。だから表立っては一切言え
ない。

 そういう共犯関係にある同志だから、日本なんかに教えられない微妙な情報も
お互いに教えあってきた、と。実は米中の情報機関というのはそういう関係にあ
るんですよ。私はその中心にいたから知っています、と言っていました。

 そういう関係がずっと続いてきている。ゲーツなんかもそれを知っているわけ
です。だから裏で米中の情報機関がどういう話をしているのか。細かい話は一切
出てきませんが、表では「20、30発を持っていいよ」という話をしながら、
裏で中国と組んで金正恩体制をつぶす話も同時に進行させる。そういう感じかな
と思います。

◆北朝鮮は中国を味方だと思っていない

西岡 先ほど私はアメリカの金融制裁をするかどうか、チャイナ・バンクまでや
るかどうか。その後軍事制裁するかどうかという話をしましたが、金融制裁と軍
事制裁の間に、レジーム・チェンジをしかけるというのがあります。金正恩政権
を何らかの形で倒すという秘密の、これは表向き言えないことですが、そういう
ミッションもある。

 これはなかなか100%というわけにはいかないでしょうから難しい。北朝鮮
はそれをものすごく警戒している。中国は味方だと思っていません。中国の専門
家の人たちは、トランプは習近平にだまされているとずっと言っているわけです
が、私は、北朝鮮内部の話を聞くと、中朝は本当に悪い。

 金正恩は、去年1月に核実験をしました。その後習近平が怒って、国連の制裁
決議に反対しなかった時、「上海と北京に一発ずつ核を落としてやれ」と言った
という話を聞いていました。本当かなと思ったんですが、「デーリーNK」とい
う民間の北朝鮮専門の通信社が、北朝鮮の内部で幹部を集めて行われている講演
資料を入手して、それを公開しました。

 「産経新聞」が一部書きましたが、「核の暴風で中国の内政干渉を爆殺せよ」
というタイトルで、国内で幹部たちに講演をしていた。そして去年の5月には
「労働新聞」が初めて、中国を名指しでけしからんと批判した。今年になってか
ら名指しの批判が増えています。

 金正男暗殺も、金正男を中国が使うのではないか、あるいはそこにアメリカが
かんでいるのではないか、と。マレーシアで金正男氏はアメリカの情報関係者と
会っていたという情報を、「朝日新聞」のマレーシア支局の特派員が書いた。多
分ファクトは正しいんでしょう。

 金正男は北朝鮮の国内ではほとんど影響力がないんです。彼のお母さんは人妻
の有名な映画俳優です。彼女が結婚していることはみんな知っていた。それを金
正日がとってしまった。ですから絶対公開できない。公開したら有名な映画俳優
をとったことが知られますから。だから金正男の存在自体が秘密だったのです。

 それを知っていて、他人に言ったというだけで政治犯収容所に入れられるとい
うような人です。金正日が弟の金平一に対してライバル心を持ったのとは全然違
うんです。金平一は、一時期金日成が金正日より可愛がっていた。金平一のお母
さん、金聖愛が金日成の横にいて、「うちの息子を宜しく」と言っていた。金正
日はお母さんが早く死んでいて、継母を「お母さん」と呼ばないで、仲が悪くて、
学校に行く時も車に乗らないで歩いて通っていた。

 その不遇だった金正日のところに付いていたのが、崔龍海と呉克烈だから、二
人は金正日政権になって可愛がられていたわけです。一時みんな金平一の方に付
いたわけで、金平一派がたくさんいた。そういう人たちが収容所に入れられたり
しました。

 しかし、金正男派はほとんどいないんです。そもそも存在が知られていないん
ですから。それなのに恐れて殺した。それは中国の影を見たからです。張真晟と
いう御用詩人と言われて本を出した統一戦線部の元幹部がいます。ここに何回か
来てもらいました。張真晟は金正男に平壌で会ったことがある。

 直接、金正男の口から、「改革開放をやらなくちゃいけないんだ」、「これか
ら俺は親父から経済を任されてやるんだ」という話を聞いています。しかし一緒
にやろうとした人間が保衛部につかまったりして、彼は父親から怒られた。「改
革開放をやるというのは、一を知って二を知らない。経済はそれでいいかもしれ
ないが、政治はそれではもたない」と怒られたそうです。

 中国からすると、改革開放をやって金正日と一定の緊張関係があった長男が中
国にいる。それを政権を交代させるとき、使いやすい駒として持っている。それ
を見張っていたらアメリカとも接触しているということになったので、殺すこと
になったわけです。

 自分がレジーム・チェンジの対象になっているのだから。彼は自分のことを本
当に考えるんです。今年の4月、テレビ等が色々言っていた時に、「斬首作戦」
という言葉が出ました。本当はテレビで言っていたのとは意味が違うんですが、
とにかく「斬首作戦」という言葉が出たことに金正恩は大変神経を使いました。

 もしその命令が下ったら、報復をするということで、この4月、まだ核は完成
していないので、化学弾頭で報復をする。それからテロをする。韓国、日本と在
外の米軍基地でやる準備をした。自分に手をつけたらやるぞと。そういう中で中
国とアメリカが組んで自分を倒しにくるのではないかと非常に恐れている。

 そういう緊張関係があるからこそ、アメリカまで届く核・ミサイルを持ってか
ら話し合いをしたいと思っている。従って、ゲーツが言うようなところが落とし
どころになるかどうか。そもそもアメリカの大多数の国民が納得できるような検
証ができるのかどうか。なかなか難しいとなると、まだチキン・レースは続くと
見た方がいいのではないか。

◆日本は情報機関がなく、当事者意識もないから教えられない

島田 アメリカのCIAが中国の情報部に教える情報でも日本に教えないと言い
ましたが、それはピルズベリーも言っていますが、「日本は情報機関を持たない
でしょう。だから教えないんだ」と。

 アメリカのCIAは4部門から成っています。分析部門、テクノロジー開発部
門、管理部門、そして秘密作戦部門。秘密作戦部門は他とは別枠の存在です。今
アメリカでは、外国の指導者の暗殺はしてはならない。これはジェラルド・フォー
ド政権の時にそう決めたのですが、「但し、国家安全保障上やむを得ない場合は、
その限りではない」ということになっています。

 いつでもCIAの秘密作戦部門は、暗殺作戦をやれるんです。中国側もそれを
知っていますから、自分らだけにやらせてアメリカは手を出さないというのでは
なく、いざとなればアメリカも一緒に共犯になるという感覚を持っているでしょ
う。

 ドローンによる攻撃も、オバマ政権の時は例えば、CIAのドローンがテロリ
ストを発見したとして、それに対して攻撃する場合にはCIAから国防総省に連
絡して国防総省が攻撃する形だったのですが、トランプ政権になって、CIAが
自己完結的に、発見したら即攻撃してもいい。だからCIAはドローンから攻撃
する権限まで持っていて、半分軍事機関なんです。

 日本の場合は、情報機関は分析部門ですら持たないと言っているわけですから
話にならない。拉致被害者の救出を最重要課題とし、様々な工作活動によって金
正恩体制をつぶすことを、アメリカなどと分担しながらしないといけないのです
が、アメリカがしたいと思っても、日本側には受ける機関がないわけです。とな
れば、アメリカ側としても、日本を無視して中国と話をしようということになり
ますね。

 その中で拉致被害者の問題が無視されることがないように、日本政府がいくら
アメリカに言っても、当事者意識がない政府だということで相手にされない可能
性が強いということで、日本の現状は情けないと思っています。

◆朝鮮半島は今南北同時レジームチェンジが進んでいる

西岡 それでも今言ったようなチキンレースの中で、安倍政権が集団的自衛権の
一部行使が憲法に違反しないという安保法制を通したわけですが、それさえもな
かったら、日本は日本を守るために何もしないということになる。

 アメリカが北朝鮮に対して軍事攻撃をする場合に、日本が直接攻撃されていな
いから何もできないということを言い続けるのか。あるいはアメリカにまで届く
ミサイルを、日本のMDが撃ち落とせる能力を持っていても、憲法上はできない
という解釈だったわけです。

 そういうことをトランプが聞いたら、これはもう日本のために何をするのかと
いうことになりますから、少し前に安保法制に反対していた人たちが、今の国際
情勢をどう見るのか。国際情勢に合わせて日本の政策を変えていかなければなら
ないが、それは島田さんが言う通り情けないことになりますが、方向として変え
ようとしていることも間違いないと思います。

 それすらも反対だという勢力がいて、この人たちが今獣医学部の話ばかりして
いる。獣医学部の話をするなら、獣医の需給関係だけを話せばいいわけで、違法
行為があったかどうかということ以外にやらなくても。やりたければ文教委員会
か何かでやってもらってもいいですが、閉会中審査でやらなければいけないこと
なのか。

 非核三原則を維持して、日米同盟で核抑止力を持つという、戦後日本がとって
きた安保政策の根本が、もしかして北朝鮮の核・ミサイル開発が成功することで
揺らぐかもしれないという重大な危機を目の前にしているのに、危機を危機だと
思っていない人たちがあまりにも多い。

 私は、朝鮮半島は今南北同時レジームチェンジが進んでいると思っています。
分断の固定化時代は終わった。韓国の状況もなかなか大変です。話が長くなるの
でやめますが、北朝鮮もまた安泰ではない。

 核・ミサイル開発だけは着々と進んでいますし、対南工作は成功していますが、
国内は本当に不安定です。そういう中で日本が一体どうするのかという議論にな
らない。

 古代朝鮮時代は、百済が滅ぶと新羅等の勢力が半島全体を支配する。新羅等の
連合軍が日本に攻めてくるかもしれないと思って、出兵したんです。戦争に負け
ました。

 負けたら、関東からも、徒歩で兵士を九州に送って防人をやったわけです。新
羅がこの後唐と戦争をして唐の属国になることを拒否したということがあったの
で日本は遠征軍を出しませんでしたが、危機を危機と見る能力はあったわけです。

 当時の日本人よりも、今の日本人の方が危機を危機と感じる能力がないのでは
ないか。それが一番心配でならないですね。

(5につづく)


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