救う会全国協議会

〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
TEL:03-3946-5780 FAX:03-3946-5784 info@sukuukai.jp

北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

北朝鮮の韓国砲撃に抗議し拉致被害者救出に万全の備えを求める緊急集会報告(2010/12/07)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.12.07-2)


■北朝鮮の韓国砲撃に抗議し拉致被害者救出に万全の備えを求める緊急集会報告


「北朝鮮の韓国砲撃に抗議し拉致被害者救出に万全の備えを求める緊急集会」
の概要を送ります。参加者及び決議文についてはメールニュース既報(11.28)
をご参照下さい。

緊急集会では、北朝鮮の砲撃で亡くなられた韓国の兵士2名、民間人2名への黙
祷も行われました。

【主催者挨拶】
◆強い姿勢が必要
飯塚繁雄・家族会代表
いつもありがとうございます。23日に北朝鮮が韓国の島に砲撃しました。私た
ち拉致被害者は日頃から北朝鮮に注目していましたが、このような蛮行に対して、
非常に強い怒りを感じています。この問題について専門家から色々な指摘がなさ
れていますが、私たちとしては、これから拉致問題がどうなっていくのかという
観点から心配しています。

今回の事件があった直後、日本政府はそれなりのコメントを出していますが、
私が見た感じでは、拉致問題を抱えた中での判断がまだ弱いと思います。韓国の
対応を支持するというだけで、日本はどうするのかという姿勢が見られなかった
のは残念です。

前から我々がお願いしていることで、北朝鮮の混乱時にどうやって日本人を助
けるのかということについて、実際にはそれに対するシミュレーションや戦略は
全く示されていません。従って、強力な姿勢を示すべきです。拉致被害者を助け
るために日本はこうするぞということを含めた強い姿勢が必要ではなかったかと
思います。

北の動きは非常にしたたかでシビアで、他国の被害はまったく考えず、自国の
利益だけを追求します。そして北が主張することはすべて嘘です。今回の砲撃に
ついても、先に韓国が砲撃したので、報復したと言っています。これも嘘です。
こういう有様をみて、本当に被害者を助けられるのかと心配しています。

日本政府の態度も弱腰という印象を受けましたが、日韓米で協力するのは当り
前です。特に、日本政府は韓国と綿密な連携をとって、混乱になった時の奪還を
考えておいてもらいたい。また、政府は中国に対しては何も言っていない。北朝
鮮の考え方にしても、中国がバックにいるということは誰が見ても明らかです。
その点にも、政府として強い意見を言ってもらいたい。

このような他を無視した暴力的な蛮行に対しては、今後もし続くなら、追加制
裁を課していただきたい。経済制裁だけでなく、日本の自衛隊を含めたあらゆる
国力を示して、北朝鮮にはっきりとしたメッセージを出していただきたいと思い
ます。

家族会としては、事件の行方に注目しながら、その対応については、意見を述
べていきたいと思います。

【来賓挨拶】
◆心ある朝鮮総連の人々は北朝鮮と、朝鮮総連に糾弾の声を
韓在銀(ハン・ジェウン)在日本大韓民国民団中央本部副団長

大韓民国民団は、本国に350人が集まり会議を開きました。ちょうど砲撃があ
りましたので、緊急集団会見をして、声明や決議文を採択しました。「政府は、
この蛮行に対して断固たる措置をとってほしい」という要請をしました。しかし、
このことで日本の拉致被害者の家族の方々に心配をかけるのではないかという心
配もしました。実は、憲法を変えてくださいというお願いもしました。

私たちは同じ民族として恥ずかしい。日本の人には本当に申し訳ない。犯罪テ
ロ組織は、全世界から抹殺しなければならない。こういう気持ちでいます。一刻
も早く、核・ミサイル開発、脅かす行為は絶対だめです。

私も朝鮮総連に何回か抗議に行きましたが、彼らは聞く耳を持たない。朝鮮総
連は金日成・金正日から直系の指令を受けています。自由民主主義の世の中で、
腹立たしい思いをしています。

本日私がこのような場で挨拶することは、ありがたく、また同じ民族としても
どかしさを感じます。鄭進団長のメッセージを朗読させていただきます。

本日、「北朝鮮の韓国砲撃に抗議し、拉致被害者救出に万全の備えを求める緊
急集会」を開催されました「拉致家族救出の会」の皆様に、在日本大韓民国民団
を代表しまして、心からの敬意を表するとともに一言、連帯の挨拶をさせていた
だきます。

日本に居住します在日韓国人の私どもは、さる3月26日に韓国の哨戒艦「天安」
号に対する魚雷攻撃に引き続き、またもや北朝鮮によって引き起こされました蛮
行に憤りと哀しみに震えております。しかもこのたびは、皆様方もご承知の通り、
韓国領土「延坪島」に対する無差別砲撃であり、1950年の韓国戦争以来の出来事
であり、韓国軍と民間人に多大な被害をもたらしました。

わたくしたちは、このニュースを私どもが韓国で開催する拡大幹部会議に向か
う前日に知りました。今年が、韓国が日本の植民地となった年から百年という年
にあたり、また、韓国が解放されて65周年、韓国戦争から60年、韓日国交正常化
から45年という節目の年ということで新たな百年を期そうという事で開催する会
議でした。

私たちは11月25日9時、会議の劈頭に、緊急糾弾大会の開催を決議し、北朝鮮
のこのたび軍事挑発行為を激しく糾弾し、次のように決議しました。

まず最初に、延坪島に対する北朝鮮の砲撃は休戦協定に反し、南北間基本合意
書、国連憲章に反する軍事挑発行為であり、反平和、反民族、反統一的な行為で
あること。そして、この行為の責任者の処分を求めました。

私たち在日本大韓民国民団は、世界平和と東北アジアの平和と安定のために韓
半島の平和統一を何よりも願ってまいりました。今回の北朝鮮の蛮行に対し、昨
日、朝鮮総連は北朝鮮の発表をオウムのように繰り返しました。私たちは驚きと
哀しみをもって受けとめました。引き続き、心ある朝鮮総連幹部とその傘下の人
々に対し、このような蛮行を繰り返す北朝鮮と、朝鮮総連に対し、糾弾の声をあ
げるよう求めていく所存です。

私たちは今後とも皆様方とともに東北アジアの平和と安定を願う行動をとって
まいります。そして北朝鮮に拉致されたご家族の安全と一日も早くご家族のもと
にお帰りなるよう願い、ご協力していくことを誓いつつ、重ねて本日の緊急集会
に対しまして敬意と感謝の言葉を申し添え、連帯のご挨拶とさせていただきます。

11月28日
在日本大韓民国民団 団長 鄭 進

【拉致議連挨拶】到着順
◆金正日に一切の妥協はしてはならない
松原 仁・拉致議連事務局長(11/1の国際拉致解決連合ソウル大会にも参加、民
主党衆議院議員)

今回の北朝鮮の砲撃は非常に許しがたいものであり、国会では拉致議連も働き
かけをして、衆参両院全会一致で、「北朝鮮による韓国・大延坪島砲撃に関する
決議」を採択しました。

その中で、「本院は、今般の北朝鮮の砲撃を強く非難するとともに、北朝鮮が
核兵器の開発も含め、あらゆる軍事的な挑発行為を放棄し、拉致問題の早期全面
解決も強く求める」ということを明確に出しています。

また「よって政府は、今般の北朝鮮の軍事的暴挙に対し断固として非難を行い、
韓国政府の立場を支持し、国際社会と緊密に協調しつつ、北朝鮮に対する新たな
制裁措置等を検討するとともに、北朝鮮に対する国際的な圧力を高めるため、韓
国及び米国を始めとする関係各国との連携強化に一層の努力を尽くすべきである」
としました。

言うまでもなく、私たちは北朝鮮による拉致問題の解決をしなければなりませ
ん。我々が一貫して主張してきたのは、彼らに対して、いわゆる「アメとムチ」
のアメは有効ではないということです。北朝鮮が核開発を中止する、その譲歩と
してかつては軽水炉建設にお金が使われたり、食糧支援をしたことが政府によっ
てなされました。私たちはそういう経験を踏まえ、北朝鮮は左手で握手をしなが
ら、右手でげんこつを握って殴りかかってくる、断固として信用してはならない
ということを訴えてまいりました。

先般は、北朝鮮に対し制裁の緩和(テロ指定解除)は、ヒル国務次官補が行っ
たことです。我々は断固として行うべきではないと主張しました。彼は今、大学
で教授をやっているそうですが、「自分は間違っていた」と言っているそうです。
今頃気がついてもどうしようもない、と言いたいところですが、要するに北朝鮮
に対して善意の手を差し伸べた人間は全員間違ったわけです。

我々議連が訪米して、ワシントンで議論をしました。その時、脱北者が北朝鮮
のことを色々話しました。するとアメリカ人の一人が立ち上がって、「今年の冬
は極めて寒い年で、北朝鮮に対して飢餓が発生するだろう。北朝鮮に対して食糧
支援をする必要はないか」と脱北者に聞きました。

脱北者は、「北朝鮮は今厳しい環境にある。しかし、そのような支援はだめだ。
結果として金正日政権を強くすることになる」と。そのアメリカ人が再度脱北者
に言いました。「北朝鮮は今、食糧を必要としている。我々の人道支援が必要だ」
と。すると脱北者は、「私たちは食糧がほしい。しかし、北朝鮮の体制が続く限
り、北朝鮮に置いてきた人たちの喜びはない」と。

これは大きな話だと感じながら聞きました。「飢餓を考えるならば、一粒の米
でも送りたい。しかし、それを送ることで金正日が強くなる。従って不幸が永続
する。我慢をしながら彼がそう言ったことを考えると、今回の砲撃は、まさしく
北朝鮮の本質を明らかにしたものであり、そこにおいて一切の妥協はしてはなら
ないということが事実となりました。

我々議連や、家族会・救う会の活動で明らかになったことは、横田めぐみさん
の遺骨は偽物だった。死亡診断書も偽物だった。その中で、外交を知らない、ヒュー
マニズムで騙された人たちは、支援が必要だという。しかし、先ほどの脱北者が
言うように、支援は北朝鮮の住民には届かない。

今回我々は、国会で議決をしました。この北朝鮮に対して、我々は断固として
制裁措置を強めます。一過性のものではなく、国会で決議をしたわけですから、
この決議がきちんと行われるよう、議連としても、平沼会長、古屋幹事長ととも
に全力をあげて取り組んでまいります。

◆専守防衛を考え直すべき
長尾 敬・拉致議連メンバー(11/1の国際拉致解決連合ソウル大会にも参加、民
主党衆議院議員)

みなさん今晩は。大阪14区選出の長尾敬(たかし)です。先般、韓国にご一緒
いたしました。私は1回生議員ですので、敢えて申し上げますと、2002年から大
阪ブルーリボンの会の1会員として、活動させていただいた時、政治家は何をやっ
ているんだという思いがあり、お国の怒りが少し小さすぎないかと思っていまし
た。今私は、その怒りを皆様から受ける側にいます。

本来であれば、この際、専守防衛を考え直すべきだと思います。しかし、集団
的自衛権すらも入れることができない。憲法改正ができなかったことを、今私は
政治家でありますが、憤りを感じています。

また、そこに自衛隊があれば、何とかなるという時代ではないと思います。い
わゆる自虐的な防衛力という考えから脱却して、抑止力を充実させるべきである
と、つまり空、海の動的な抑止力を考えるべきです。今までこれができなかった
ので、これをやっていきたいと思います。

武器輸出三原則の問題についても、佐藤内閣の時の原点に立ち返るべきで、福
田内閣の時の、いわば全面輸出禁止がわが国の防衛をどれだけ後退させたかわか
らないと思っています。

今私は、「もっとお前しっかりやれ」と非難を浴び、怒りを受ける立場です。
まずは、今回の砲撃事件を期にというと、亡くなられた4名の方々には大変失礼
な話になるかもしれませんが、これは彼らが与えてくれた好機であると思うなら
ば、今日ここにお集まりいただいた皆さんと一緒に、目の前にある危機を脱却し
ていくということをお誓い申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。

◆自衛隊法の改正を
小池百合子・元拉致議連副会長(元防衛大臣、自民党衆議院議員)

皆さんこんばんは。私は、以前拉致議連の副会長をしていました。今回の延坪
島への砲撃は、なぜこの時期にということも色々分析されていると思います。こ
こに来て、この砲撃問題が注目を集め、拉致問題が後まわしにされてしまってい
ます。

昨日、フィリピンのアキノ大統領が、砲撃事件を受けて、「在韓フィリピン人
5万人を日本に移動させる」という話をしましたが、自国民を守るとのメッセー
ジを出しました。いい、悪いは別にして、わたしは素晴らしい方ではないかと思っ
ています。

北朝鮮は既に拉致問題を認めているのですから、どさくさで救出できなくなっ
てしまったら大変なことになります。既に、大変苦しい思いをさせているわけで
すから、救出できないのは恥ずべきことです。

そこで、どのように救出するかですが、先日「しおかぜ」の録音をさせていた
だきました。緊急時には、どこかに集まっていただくようなメッセージを出すべ
きではないかと思います。このことを、どのようにすれば本当に伝えられるのか。

一方で、これまで北朝鮮がやってきたのは脱北者が中国側にかけこみをすると、
それを北朝鮮に知らせて、返って危険にさらされるようなことでした。例えば、
教会のようなところにかっこむと、むしろ向こうがそれを待っていて、また送り
返され、その後生命がどうなったのかも分からないということがあります。だか
ら、どうやって知らしめるかということを、考えなければならないと思います。

自衛隊法の改正案は既に作っています。問題は、どこか1点に集まってもらう
というところです。例えば空港とか。あるいは大使館ですが、日本の大使館はな
いですから、早急に措置を決めなければなりません。

この課題を越えなければなりませんが、民主党が乗ってこないとすれば、早く
辞めろ、と言いたいです。自国民の生命と安全を守れない政府は、さっさとお引
取り願うのが急務ではないでしょうか。

世論調査で、菅政権の安全保障への取り組みについて聞くと、もう80%、90%
がノーと言っています。「1%の支持でも頑張る」と言うのはやめてください。
99%がノーと言っているわけですね。とんでもないことです。

北朝鮮が今、新しい状況に入った。拉致被害者が今、どういう所で、どのよう
にしているのか、なかなか分かりにくいですが、ありとあらゆる方法で、「日本
が守りますよ」というメッセージをまず出すべきです。そして、法的課題を整え
ておくことが我々の課題だと思います。

先ほど、中国が6か国協議の提案をしましたが、双方にいい顔をしようとして
いるようです。しかし、中国が音頭とりをしようとしても、これは「ちゃんとやっ
ていますよ」というメッセージを出しただけではないかと思います。

最近、北朝鮮の食糧事情が改善されたという情報が入ってきました。工場が動
かないから電力も余っているということです。私たち立法府もさらにしっかり対
応していきたいと思います。

【メッセージ】
山谷えり子・拉致議連副会長(自民党「影の内閣」拉致問題担当副大臣、自民党
参議院議員)

本日お集まりの皆様の拉致問題究明と解決へのご尽力に対しまして、深甚なる
敬意と感謝を申し上げます。

本日は出張のために出席がかなわず誠に申し訳ありません。北朝鮮から全ての
拉致被害者を奪還し、被害者の皆様が一日も早くご家族の皆様のもとに帰り、故
郷で自由の日々を取戻せるよう私も微力ではございますが、全力で取り組んでい
くことをお誓い申し上げます。



【家族の訴え】
◆日本人拉致被害者を救出できるのは自衛隊以外にない
増元照明・家族会事務局長

緊急集会に多くの皆様が来ていただいたことに感謝します。実は砲撃のあった
23日に、埼玉で集会があり、そこで一報を受けました。この国はどうなっている
のかという思いです。

今年に入って、金正日は2回も訪中しましたが、中国がこの砲撃をどう見るの
か、どうするのだろうかという思いで居りました。また、突然の砲撃により、延
坪島で亡くなられた4人の方に弔意を表したいと思います。また、政府から拉致
被害者の帰還について強く申し入れていただいたことに感謝申し上げます。

私は、11月25日に、朝鮮学校への補助の問題で、飯塚代表、西岡会長、平田事
務局長と救う会埼玉の竹本代表とともに、上田埼玉県知事に面会し、支出を考慮
していただきたいと要請しました。そして、その後打合せをし、今回の砲撃に対
して何らかの意思表示をすべきということで、急に今日28日に緊急集会を開かせ
ていただきました。

その後事務所で報道チェックをしていたら、いきなり、「朝鮮学校無償化の手
続きを停止する」という記事をみて唖然としました。これまで、拉致被害者救出
は国家の最優先課題と言っていたじゃないですか。だから、朝鮮学校への無償化
はできないだろうと思っていましたし、北朝鮮にお金が渡る可能性もあるのでや
めてほしいと、また拉致被害者を返さないことを理由に追加制裁を政府にお願い
していました。

ところが、「今回の砲撃を受けて追加制裁を考えざるをえない」と言ったので
す。何を言っているんだろうと思いました。あまりに腹立たしくて、熱を出して
しまい、今も少し風邪気味ですが、では拉致被害者救出はこの国で問題ではない
のか、ということです。韓国に対する砲撃は大きな問題でしょうが、わが国にとっ
て大きな問題とは一体何なんだ。

我々は拉致被害者救出のために追加制裁をしてほしい、朝鮮高校への国庫補助
はやめてください、と申し上げたにも関わらず、「拉致問題はあるけれど教育の
問題は外交問題とは関係ない」として補助しようとしながら、今回の砲撃で考え
直すというのです。

拉致被害者の命を助けることは、わが国にとってそれほど重要な問題ではなかっ
たのですか、ということで腹が立ったのです。何を考えているのか、ということ
です。今日緊急集会にかけつけてくださった先生方もいらっしゃいますが、結局、
国会議員の先生方の認識が甘いとしか考えられません。

わが国の最重要課題と考えて、被害者を救出するのが優先と考えるのであれば、
いかなる方法でもやるべきだと認識されて然るべきです。ところが、韓国への砲
撃をもっと重要な問題だととらえることが私には理解できないのです。国民の命
がかかっている問題を優先して考えなかったのか、何を考えているのかと怒って
いました。

拉致の問題は長い時間が経っていますので、結局切羽詰った問題と捉えられて
いないのではないでしょうか。家族は8年間苦しんでいるのです。実際は30数年
間苦しんでいます。金正日が拉致を認めた後、北朝鮮で大きな混乱があったら、
被害者もそれに巻き込まれるのではないかという思いで、いつもびくびくしなが
ら生きているのです。その思いを全く感じていない人たちが、今の国会に大勢い
らっしゃるので拉致問題が解決しない。拉致被害者を早期に取戻さねばならない
との強い思いを持っていないから、こんな状況にあるということではないでしょ
うか。

私は、無償化手続き停止の問題は妥当だと思っていますし、追加制裁も妥当だ
と思っています。しかし、なぜ追加制裁が拉致被害者救出のために使われなかっ
たのかということです。なぜこれまで、拉致被害者救出のために追加制裁をしな
かったのか。なぜ、拉致被害者救出のために朝鮮高校への無償化はできないと判
断しなかったのか。それが腹立たしいのです。国会議員の方が何を言おうと、現
実がこれなんです。結局は、何も考えていないのか、被害者を救出するために、
もっと泥臭くやってもいいじゃないですか。それが見えないから私たちも、国民
の苛立つのです。

山本一太先生が国会で質問したら、財務省は、今これ以上やる方法がないとい
うことでした。やることはいっぱいあるんです。財務省がやりたがらないだけで
す。申し訳ないですが、在日朝鮮籍の方たちが北朝鮮を訪問した場合、再入国を
全面的に拒否する方法もあります。北朝鮮への迂回送金も厳密に審査すれば、難
しいかもしれませんが、できる可能性があります。さらに、鳥取や舞鶴に入って
いるロシアや中国船籍の北朝鮮のチャーター船が北朝鮮に物を運んでいることを
把握すれば、入港拒否もできる筈です。やろうとしないからできないだけ、これ
が現実なんです。

拉致の家族は日本に何回見捨てられればいいんでしょうか。国会議員は何回見
捨てるんですか。総理は何回見捨てるんですか。政府が変わっても、政権交代し
ても、結局は家族に対して、「最重要課題」という言葉だけでにごして、何の解
決もしようとしない政府に腹が立っています。今後も、家族が全面に立たなけれ
ばいけない状況がまた続いていくのかと思うと本当に残念です。

この緊急集会で是非分かっていただきたいと思います。今も苦しんでいる同胞
がいるということを。そこに苦しんでいる北朝鮮人民がいるということを。これ
は口で言うだけで解決できる問題ではない。国がしっかりとした意思を示して、
国家の責任で解決していかなければならない問題であるということを。その国家
を動かすのも国民であるということを。私たちもその責任を持ちながら動いてい
かなければならないと思っています。

わが国がまずやるべきことは、国民を取戻すこと。そしてそれを安全にやって
いくということです。今現在も家族会、救う会では、国会議員の先生方にお願い
して、自衛隊法の改正を含め、北朝鮮にいる日本人を救出するために、法改正を
お願いしています。それが中ぶらりんになっています。なぜそんな状態になって
いるのか、これも拉致被害者の救出に対して、本当の人権意識を持っていないか
らでしょう。これから北朝鮮がどのような状況になるか分かっていない。私たち
も分かっていません。

しかし、本当に日本人拉致被害者を救出できるのは、日本の自衛隊以外にない
でしょう。韓国やアメリカの軍に頼んでも、優先順位が違うんです。韓国の軍隊
は、北朝鮮の混乱状態を治めるのが第1位です。米国は、北朝鮮にある核を確保
して、それを拡散させないのが第1位です。日本人を救出することを第1位に考え
るのは、日本の自衛隊以外しかないんです。だからお願いするしかないんです。
自衛隊が行って、動けるようにする法律を作っていただかなければならない。

中国は、中朝国境を越えようとする難民を受け入れませんから、国境に逃げた
ら撃たれる可能性が高いんです。だからこそ、自衛隊が行って日本人を救出して
もらわなければならない。「しおかぜ」でも、「ふるさとの風」でも、北朝鮮に
いる日本人に対して、「中朝国境にだけはいくな」という放送をしてもらわなけ
ればならない。そのことを分かっているのかどうか。報道を見ても、あまり感じ
ていないように思います。それは残念です。

この緊急集会で皆さんにお願いしたいのも、本当に今北朝鮮に危機がある。こ
れに日本としてどうやっていくのかということを早急に決めていかなければなら
ない状況にあるということを、ご理解頂き、一緒に声を上げていただきたいので
す。宜しくお願いいたします。

◆早急に専任の大臣を
本間 勝(田口八重子さん兄)

みなさん今晩は。今回の砲撃事件で亡くなられた韓国の被害者に心から哀悼の
意を表します。家族会は、北朝鮮の混乱が起きた場合、どういう戦略を立ててい
るのかを常日頃お願いしています。我々にはどうしても答えが出てこない。政府
では本当に心もとない、心配です。北朝鮮の混乱は間近です。砲撃による混乱以
上の動乱が起きるだろうと私は思っています。それに対しどうするのかを真剣に
考えていただきたい。

拉致担当大臣も先日替わりました。仙石官房長官が兼任となっています。しか
し、この官房長官は、自衛隊を「暴力装置」と言いました。動乱の時に果たして
動いてくれるでしょうか。自衛隊を使うことを真剣に考える政府を作っていかな
いと困ります。

また、官房長官が拉致問題を片手間でやってもらうようでは、到底この拉致問
題は解決できません。早急に専任の大臣を置いて、解決のめどをつけてもらいた
い。専任大臣のもとで戦略を作ってほしい。問題が多々あることは分かっていま
す。それを早くやってもらいたいと思います。

この問題は、事が起きてからでは動けない。韓国も真剣に戦いについて事が拡
大しないように抑えています。日本としてやるべきことをやってもらいたい。そ
ういうお願いをしたいと思います。


【来賓挨拶】
◆中国の「6者協議」再会提案に乗ってはだめ
三浦小太郎・北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会代表

これだけは言いたいということを二つだけ言います。まず、今回の中国の「6
者協議」再会提案ですが、あれに日本は絶対に乗ってはだめです。あれに乗った
ら、もう一回中国のペースになります。中国のペースになるということは北朝鮮
のペースになるということです。今回の北朝鮮の軍事的挑発を、中国は最大限政
治的に利用して、朝鮮半島と東アジアにおける自分のスタンスを高めようとして
いる。それだけです。それに乗ってしまったら、独裁者と妥協するわけですから、
これだけは乗らないように皆さんは日本政府に声をかけてください。

中国政府は現実に、北朝鮮から逃げてきた脱北者の人たちを捕まえているわけ
です。そして仮に北朝鮮の中で混乱が起きて、拉致被害者の人たちが中国へ逃げ
たとして、この方たちを中国が素直に日本に送り返してくれると思いますか。今
の段階では、むしろ人質にとって日本と取引をする危険性すらあるのです。北朝
鮮に送り返す可能性もゼロではない。脱北者も送り返しているのですから。

ここで中国に妥協したら、せっかく高まってきた北朝鮮の脅威に対する私たち
の怒りが、国際社会の怒りが、またトーンダウンします。それを中国は狙ってい
るのです。

次に、なぜこういうことを北朝鮮がやったかですが、私は専門家ではないので
分かりませんが、中国とロシアは天安艦事件のとき、北朝鮮に対する国際的な懲
罰に反対し北朝鮮をかばう側にまわりました。これが、北朝鮮は軍事的挑発をし
ても国際社会は動かない、中国とロシアを味方にしておけば大丈夫だ、そう思わ
せているのではないでしょうか。

また素人の考えですが、この前の尖閣諸島における中国の行動が北朝鮮にヒン
トを与えたと思います。そして北朝鮮による軍事的挑発を中国が利用していると
いう面が高いと思います。

今、日本政府にどうしてもして頂きたいのは、北朝鮮への追加制裁と同時に、
中国に対しての経済制裁です。中国がテロ国家北朝鮮を支援するのだったら、ア
メリカや他の国がどう出ようと、日本は中国の対しての経済支援や経済交流をあ
る程度抑えざるをえない。経団連の方々だけが日本国民じゃないわけです。そう
なったら少し苦しいけど、それを覚悟の上で、拉致被害者を助け出し、この東ア
ジアの二つのテロ国家、そしてロシアという3つの体制を、民主的にするために
はここが踏ん張りどころです。私は日米韓の連携というよりは、日米韓の同盟だ
と思います。今回もあの軍事演習に、日本の軍隊が参加すれば、もっと強い圧力
になると思います。

自由と民主主義は口先だけでは守れないのです。暴力装置であろうが、何であ
ろうが力が必要です。そのことを敢えて申し上げたいと思います。我々の敵は北
朝鮮と中国です。




【討論】
◆総連が「先に延坪島から北朝鮮側に撃った」と宣伝
西岡・救う会会長

先ほど、民団の韓副団長も言及されましたが、朝鮮総連の動きについて、私が
今日入手した資料をまず報告します。昨日、朝鮮総連の会員に向けてメールで発
送されたものです。「西海で起きた砲撃戦について」というタイトルがついてい
て、ハングルで書かれています。表紙を含め10ページの長いものです。

冒頭、こう書いてあります。「去る11月23日、南朝鮮好戦勢力は朝鮮西海の延
坪島から共和国側領海に実弾砲射撃を加える等、不当な軍事的挑発を敢行した。
共和国はこれに対し、断固たる自衛的措置を取った」。延坪島から北朝鮮側に撃っ
たと言っています。真っ赤な嘘です。

今韓国で問題になっているのは、延坪島から反撃した砲が6門ではなくて、3門
だったことです。別の3門は、北朝鮮側ではなく反対側を向いていた。また2門か
ら3門は故障していた、ということです。

総連資料の3ページを見ると、時間表があり、「13時南側第一次砲撃」とあり
ます。13時とし書いてないのは、嘘だから分は書けなかった。そして「14時34分
共和国第一次側砲撃」、「14時47分南側第二次砲撃」、「15時11分共和国側第二
次砲撃」、「15時25分南側第三次砲撃」となっています。13時については具体的
に何分と書いてない。何もなかったから書けなかったのでしょうが、こう言わな
くてはいけなくて、時間表を作ったということです。

その上で、資料では日本の言論を信じるなと書いてあるのです。テレビであれ
ほど報道していることを、「信じるな」と言わざるをえないくらい嘘があばかれ
つつあるということです。これを信じる人たちがどのくらいいるのか。延坪島側
から砲撃したと書いてあるのですから。

これはまさに、朝鮮戦争は南側が始めたとか、大韓機爆破事件は南のでっち上
げだとか、拉致事件について「反朝鮮人騒動」を繰り広げていると教科書に書い
ているのと同じです。

朝鮮総連の人たちに言いたいのですが、「こういう嘘が通じると思うのか」と。
実際に人が死んでいるわけです。今回は、多連層ロケット砲が使われたことが明
らかになっています。惠谷さんから聞いたのですが、これは目標を定めて撃つと
いうものではない。誤差が広く、いっぺんにたくさん撃つ。延坪島に無差別的に
被害を与えるために撃った。そしてロケット砲が民家に当たっています。民間人
も対象にした無差別な砲撃だったのです。そのことについて朝鮮総連の人たちは
どう思うのか。

先ほど増元さんが、「高木文科大臣は『外交と関係ない』と言ったじゃないか」
と言いましたが、そういう嘘の教育をしているところにお金を入れるということ
は、子どもたちが嘘を信じてしまうことで、日本人とも韓国人とも共生できない
ということではないかと思います。

私たちが8月29日、朝鮮学校への国庫補助反対の集会を行った時(メールニュー
ス22/09/06参照)、朝鮮学校で学んだ経験があるという高英起さんに来てもらい
ました。朝鮮学校には在日朝鮮青年同盟という組織があって、全員加入させられ
る。朝鮮学校の子どもたちは小学校4年生から青年同盟に入るそうです。「どう
いうことをやっているのですか」と私が聞いたのですが、高さんによると「放課
後集まって政治教育を受ける」ということです。例えば、高さんは大韓機爆破事
件が起きて、日本の世論が、「北がやった」と言っている時、「それは嘘だ。あ
れはでっち上げなんだ」ということを教わった。

今回も朝鮮学校で、こういう資料を使って、小学校4年生以上は、青年同盟の
学習会が開かれ、「最初に撃ったのは南なんだ。延坪島から撃った」と教わるの
です。そういうところに日本のお金を入れていいのですか、と前から言っていた
のに、やっと分かったのか、遅すぎるのではないか、というのが私たちの考えで
す。

そこでまず、この事件そのものがどういうものであったのか、惠谷治さんが追
跡されていますので、報告してください。

惠谷治・ジャーナリスト、救う会拉致問題プロジェクト委員

今、西岡さんが、「13時第一次砲撃」と言いましたが、韓国海軍は現場周辺の
海域で砲撃演習をしていました。23日という日付を決めていいのかどうか分かり
ませんが、ともかく北朝鮮が延坪島を砲撃する計画は早々と決まっていた。

新聞等でご存知と思いますが、延坪島北方の北朝鮮側は、朝鮮人民軍第4軍団
の管轄区域です。第4軍団長は、金格植(キム・ギョクシク)という男で、2年前
までは総参謀長、つまり軍のナンバー2の男でした。それが2年前に降格させられ
軍団長になったのです。金正恩の後見役とされる現在の総参謀長・李英鎬(リ・
ヨンホ)と2年前に交代させられたわけです。金格植の降格は、さほど失態があっ
たわけではない。金正恩体制ができつつある中での被害者です。この男が、点数
稼ぎのために、砲撃を立案したのは120%間違いありません。

第4軍団は、今年3月の天安艦撃沈事件に向けて、海岸砲による攻撃演習を盛ん
に行っていました。これは天安艦撃沈事件の陽動作戦でした。そのことが評価さ
れました。平壌に早く帰りたいと思っているのでしょう。

報道にあるように、21日に金正日が金正恩を連れて、基地の近辺でいわゆる
「現地指導」をしたことが写真にも写っています。韓国側が確認しています。そ
こで今回の砲撃作戦の最終決定をしたと思われます。公式には、近くの養魚場を
現地指導したことになっています。

西岡 養魚場に軍人の姿があったのは。

惠谷 その養魚場は軍の養魚場だということです。そういうものがたくさんあり
ます。

そして、金明国(キム・ ミョングク)という総参謀部の作戦局長、あるいは
偵察総局長の金英徹(キム・ヨンチョル)が実質的な作戦計画を立てたと思われ
ます。そして金格植第4軍団長。

西岡 偵察総局長というのは、実はアメリカが、犯罪行為、テロ行為に加担して
いるとして8月末に金融制裁の対象として個人名を公表した。世界の金融機関に
対し、アメリカはこの人物と取引したら制裁するとしたテロリストですね。

◆砲撃事件を金正恩の神話づくりの第一歩に
惠谷 そうです。これらの人物が会議し、金正日、金正恩とともに決めたと思わ
れます。金正恩はほとんど発言しなかったのではないでしょうか。しかし、4、5
年後には、「今回の砲撃事件は金正恩が指揮をとった」という風に書かれること
は間違いない。つまり、中央に返り咲きたい金格植から見れば、金正恩の神話づ
くりの第一歩を作ったという手柄になる。

次に、どういう砲撃だったか。23日に韓国側は計画通り砲撃演習を始めた。そ
れを捉えて、「通告があった演習を中止しろと言ったのに」というのが北朝鮮の
言い分です。演習というのは、日常的に行われていますので、北朝鮮から見れば
いくらでも口実は転がっている、ということです。それは、今後また起きる可能
性を秘めています。

韓国軍の演習あるいは今日から始まった米韓合同演習、この軍事演習というの
は当然、軍の練度を高めるためのものです。しかし、南北関係において韓国軍、
あるいは米韓軍の演習は、実は北の朝鮮人民軍を疲弊させるものでもあります。
どの国でも演習をやりますが、南北関係では、演習をやると北は準戦時体制にな
ります。この60年間北はそうしてきました。

そうするとそこで備蓄食糧が消費され、準戦時体制のための移動等でガソリン
を使う。また、最近はあまりないのですが、領空ぎりぎりの所までスクランブル
をかけると航空燃料を消費する。演習をやるとまたそういう資源が必要になり、
北は困るのです。

西岡 確認したいのですが、この朝鮮総連の資料には演習のことも書いてありま
す。「延坪島から実弾砲射撃をした」と書いてあります。

◆連続する爆発音に恐怖を感じるロケット砲
惠谷 韓国軍は現在のところ発表しておらず、確認がとれていません。しかし、
今回の演習は全国規模で行っていたので、延坪島から撃った可能性もまだ否定は
できません。しかし、海軍の艦砲射撃の演習だったと思います。延坪島から撃と
うが、いつも演習はするわけです。それが口実に使われるとなると、突如として
攻撃される可能性がある。これが23日以降の新しい局面だと思います。

事実関係を言いますと、第4軍団の第33師団の砲兵部隊の管轄下のケモリ海岸
砲基地は岬があり、そこは断崖になっています。その断崖を後ろからトンネルを
掘って、いわば人工的洞窟基地を作った。1メートル四方の窓の奥に砲を隠して
います。今回はそこを攻撃できなかったと思われます。なお、通常であればそん
な窓くらいわけなく命中させる技術はあります。こうした窓は北朝鮮の海岸線に
沿ってずっとできています。そこから発射したものと、岬の先にある茂島(ムド)
という島から発射したようです。まだ、韓国の新聞報道でしか着弾点が確認でき
ていませんので、皆さんにきちんとお話できる状況ではないのですが、いずれに
しても、ケモリと茂島から発射したことは間違いありません。

海岸砲というのは単純に言えば大砲です。これとは別に、ロケット砲を撃ち込
んできた。ロケット砲は写真でご覧になったと思いますが、私は本当にびっくり
しました。多連装ロケット砲は、40発を一瞬にして撃ちます。大東亜戦争が終わっ
たソ満国境でソ連軍が撃ってきた時の記録映像にもありますが、とにかくすざま
じい量です。

私はエチオピアで多連装ロケット砲の攻撃音を聞きました。安全地帯にいまし
たが、この音では戦闘員はたまらんなあ、と思いました。独ソ戦の時、ソ連軍が
使いました。ナチスが「スターリン・オルガン」と呼んで恐れたと言われ、連続
する爆発音に恐怖を感じる兵器です。こんなものを使ったのか、というのが第一
印象です。ロケット砲は40連装もあれば30連装もあります。どういう車両で持っ
てきたかはまだ分かりません。これは、結果的に無差別砲撃であることに間違い
ありません。

北側の海岸砲部隊がターゲットにしたのは、延坪島にある韓国軍海兵隊の基地
だったと思います。韓国軍の発表によると、北は170発撃って、80発が島に着弾、
90発が海上に着弾となっています。「90発が海上なら命中精度が悪いのか」とい
う質問もありましたが、そういうことはありません。海上に撃ったのは、韓国軍
艦艇の砲撃演習の所に撃ったのです。

そして80発を島に向けた。被害地を空撮のテレビ映像で見たところ、全部みた
わけではないですが、市街地だけで10発落ちています。島全体で見ると、9か所
に撃っています。1か所で何発かは分かりませんが、80発撃っている中で、民間
地域に着弾したのは20か所くらい、敢えて20発と言っていいかもしれません。す
ると80引く20で60発は海兵隊基地に撃っている。しかし韓国は、軍事秘密という
こともあり、軍事施設内での被害状況を見せていません。従って、全容はよく分
かりませんが、海兵隊基地を目標に撃ったものが当然外れたものがあるというこ
とです。

北朝鮮の砲はコンピュータ制御されていませんから、手動です。当然外れ弾が
出てくる。特にロケット砲は命中精度が悪い。もちろんある程度の所は狙って撃
ちますが、かなり広範囲に散らばりますから、それが不発弾になったと思われま
す。空撮で見た限り、ロケット弾による攻撃はよく分かりました。あのロケット
弾が飛んできた時は本当に怖かっただろうと思います。被害が少なかったのは本
当に偶然だったわけです。作戦計画の時に、当然目標は延坪島基地だったと思い
ますが、誤差で民間施設が被害を受けることは織り込み済みでゴーサインを出し
たと思います。結果的には無差別攻撃だったわけです。

西岡 朝鮮総連の文書では、「朝鮮西海の延坪島で共和国側領海に実弾砲射撃を
加えた」と言っています。共和国側領海に撃つということは演習ではないという
ことです。韓国軍の発表を踏まえても、これは嘘だと言えます。韓国側が通常の
演習をやっていた時に、砲撃し、無差別に民間人を殺したものです。今の話を聞
いていて、潮さんどうですか。

潮匡人・安保軍事問題専門家、帝京大学准教授
「領海」というと、北朝鮮と韓国はそれぞれ別の独立主権国家であることが前
提になりますので、これまでそんなことを言っていましたか、ということになり
ますね。

西岡 北朝鮮は韓国もすべて自分のものだと言ってきた。

潮 北朝鮮が(自国の)「領海」と言うことは、北朝鮮と韓国の間で、きちんと
国境線が引かれているということになりますね。

西岡 となると北が韓国政府を認めたことになる。

◆拉致被害者救出特別措置法の制定が急務
潮 そういうことになりますね。北朝鮮の砲撃を日本の法律用語で言い換えると、
組織的計画的な武力攻撃となります。日本の島や領土に、同じような砲撃が加え
られれば、法令上防衛出動が発令できる状態になります。実際には、閣議を経て、
自衛隊に対して防衛出動が下令されます。

しかし、南北ではそのようになっていない。撃たれた場合、それを受けて、ほ
ぼ自動的に応戦する。限られた時間ですが、その範囲で限定的な戦闘状態になり
ます。これは大きな違いだと思います。日本の場合、戦時と有事の境目が、防衛
出動が発令されるのか、まだ発令されていないのかで、大きく峻別されている。

しかし、実際の国際紛争は、少しずつエスカレートして緊張が高まっていく展
開が多い。明日以降、そういう状態に入っていくわけです。それに有効に対応で
きるためには、それぞれの状態に応じた形で、例えば軍が武器を使用できるとか、
日本の法令用語で言えば、武力を行使するという段階になっていきます。

しかし、今回の韓国軍は直ちに応戦をした。実弾を発砲した。これは明らかに
事前の許可、具体的にはROEと呼ばれる交戦規定ないし武器使用規定、武器使用
基準が各部隊に明示されている。それに従って粛々と対応した結果であると言え
ると思います。日本の自衛隊は、このROEが与えられていない世界でただ一つの
軍隊なのです。

もう一つの課題は、仮にあの島に、日本人がいたらどうなるだろうかという問
題です。それも多数の日本人がいた、とすれば、果たして多数の邦人の保護、救
出、あるいは自衛隊機による輸送ができたのかという疑問が起こるわけです。と
いうのも、今日報道で出ていますように、韓国は島の住民の方に避難命令を下し
たわけですから、この島は、今は安全な状態ではない。極めて危険な状態だとい
うことになります。

だとすると自衛隊機が邦人を輸送するために活動することができないという法
律の仕組みになっています。具体的には、自衛隊法という法律に根拠規定があり、
「当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めると
きは、当該邦人の輸送を行うことができる」(84条の3)という規定になってい
ますので、安全が確保されていない場合には、自衛隊は輸送活動すらできないの
です。当然の結果、邦人の保護や救出もできません。今後同様のことが起こるか
もしれないのに……。

似たようなケースで言うと、中国大陸に近い位置に、金門、馬祖(ともに台湾
領)という島があります。私も行ったことがあり、日本人も行くことができます。
台湾の方がその島で披露宴をしたりすることがあります。そこで同様の事態が起
きるかもしれない。

いずれのケースでも、自衛隊法を改正して、邦人保護の必要な場合は、自衛隊
機による輸送その他の措置ができるようにしなければなりません。今、自民党が
自衛隊法改正案を提出しています。民主党に異論がなければ通る筈です。なにし
ろ今は、自民党が最大野党なのですから、速やかに国会で必要な法整備をしてい
ただきたいと思います。

そうなると、北朝鮮の中にいる拉致被害者、邦人の救出が当然課題になってき
ますが、果たしてこれは、現状の自衛隊法の文言をいじることで済むことなのか。
済まないとなれば、拉致被害者救出特別措置法を制定するなどの対応が急務では
ないかと思います。

先程の多連装ロケット砲に関して言いますと、北朝鮮軍は240mm多連装ロケッ
ト砲を400門以上保有しているというのが防衛省の見積もりです。この射程は40?
60km。北は同様に、50kmの射程を誇る170mm自走砲を600門以上保有していま
す。合計1000門以上の長射程火砲があるわけです。しかも北はそれらの大半を
DMZ沿いに配備している。つまり、ソウルを含む韓国北部の都市が北の射程に収
まっています。1994年3月19日の南北実務者協議で北朝鮮側の首席代表が言い放っ
た「戦争が起これば、ソウルは火の海になる」との脅し文句は、残念ながら、必
ずしも誇張ではないのです。

このことが、アメリカ軍にとっても、いわゆる「サージカル・ストライク(外
科手術)」のような、核関連施設だけを狙ったピンポイント攻撃などを思い止ま
らせる要因の一つになっている。仮に米軍が攻撃したらどうなるか。間違いなく、
北朝鮮の長射程砲が火を噴く。ヨンピョン島に80発が着弾しただけで、大変な被
害が起きたのです。一門から発砲されるのは、一発ではありません。繰り返し発
砲するでしょう。もしソウルに、何千、何万の砲弾が飛んで来たら、とんでもな
い事態になるということを、我々は改めて確認すべきです。

西岡 これまで北朝鮮の砲撃に関する議論をしてきましたが、「拉致被害者救出
に万全の備え」の部分について議論をすすめていきたいと思います。今日(11月
28日)から、あの近くの海域で、米韓合同演習が行われています。三浦さんから、
「自衛隊も参加すべき」という発言がありました。来るべき北朝鮮大混乱の時、
米韓軍とともに、自衛隊は何ができるかということも我々は議論してきました。
この軍事演習と自衛隊の関係、そして被害者救出に自衛隊は何ができるかについ
て議論します。

◆集団的自衛権の壁を破れば自衛隊が貢献できる
潮 米韓の合同軍事演習に自衛隊も参加すべきだと私も思いますが、それができ
ない理由の多くは、韓国の側ではなく、日本の側にあります。この演習は、実は
以前から計画していた演習であり、しかも黄海付近で行う予定だったのですが、
そこにアメリカが空母を出そうとしたら、途端に中国が激怒し、大陸側から海に
向けて実弾を発射するなどの行動に出ました。「米空母がわが中国の玄関先に入っ
てくるなど許さない」という意思表示でしょう。そこでアメリカは中国に配慮す
る格好で、この夏、日本海上で大規模な演習が行われたわけです。

自衛隊はどうしたか、海上自衛隊の4名が「オブザーバー参加」をしました。
オブザーバーの訳語は傍観者ですが、日本は文字通り「傍観」したのです。

西岡 それは天安艦が攻撃を受けて黄海で演習しようとしたけれども、中国が反
対したので、日本海になったということですね。

潮 なぜオブザーバーであり、正式な参加ではないかというと、正式な参加とな
ると、その延長線上にいわゆる集団的自衛権行使の壁があるからです。国会でそ
う追及されないように、オブザーバー参加に留めたのです。これは自民党政権を
含め、戦後日本が一貫してとってきた政策です。今日、防衛計画大綱の見直しに
ついても話がありましたが、この大綱というのは、どの武器が必要か、買うかと
いう話であり、一番問題なのは「防衛政策の基本」と防衛白書に書いてあること、
根本的な問題は、日本国憲法第9条の政府解釈、その一つが集団的自衛権の壁と
いうことです。

これを破ることができれば、自衛隊はより大きな貢献を果すことができます。
私はそうすべきだと思います。ちなみに現状では、その壁があるために、目に見
える貢献ができません。防衛大臣の記者会見によると、海自の対潜哨戒機P3Cに
よる監視活動を増やしている、EP3という電子戦機も飛ばして電波情報を収集し
ているそうです。おそらくOP3という画像情報収集機も飛ばしているのでしょう。
防衛大臣は、「AWACSも24時間待機させている」と会見しましたが、逆に言えば、
その程度のことしかやっていないとも言えます。

西岡 日本海で黄海のことも分かりますか。

潮 国際法上は、相手国の領海、領空のぎりぎりの所まで公海ですので、法的に
は、そこまで行けるわけですが、自衛隊は一度たりともそのような軍事的行動を
とったことがない。中間線の近くまで行ったことは何度かあります。今回は、そ
うしたガラスの天井を破るべき事態ではないでしょうか。

あるいは現行法上できることとして、例えば、態勢移行訓練をかける。となれ
ば、基地の全隊員に非常呼集がかかり、戦闘機に燃料が搭載され、武器も搭載さ
れ、エンジンが回ります。要するに、いつでも全機出撃可能な状態になるわけで
す。北朝鮮にとっては、目障りな脅威となるでしょう。

拉致被害者救出に添って言えば、先ほどの特別措置法を制定するなどして、能
力を持っている部隊、具体的には、陸上自衛隊の中央即応集団の特殊作戦群の要
員などを必要に応じ投入できる枠組みが必要です。

また先ほど、拉致被害者がどこに逃げればいいか分からないという話がありま
したが、わが国と価値を共有できるヨーロッパ各国の大使館などがその拠点にな
るかもしれません。韓国が軍事的な作戦行動をする時には、共同作戦行動をとる
米軍を含め、きちんとした連携がとれなければ、友軍誤爆や同士討ちといった事
態にもなりかねません。だからこそ、事前に綿密な計画を立て、関係国間で訓練
しておくことが大切だと思います。

そのようなことを日本が粛々と準備しておけば、北朝鮮にとっては大きな脅威
となるでしょう。これらは、現行憲法の枠内でもできることだと思います。

一例だけ申し上げますと、防衛出動が発令されると、言わばフリーハンドのよ
うな状態になるわけですが、その一歩手前に治安出動があります。「武力の行使」
こそできませんが、「武器の使用」
  
■ サイト内検索 ■


■ メールニュース ■
2024/04/19
家族会・救う会が米国国連大使と面会
2024/04/15
日本維新の会が政府に「拉致問題に関する発出文書」提出
2024/04/12
国連総会が北朝鮮の人権侵害非難を決議
2024/03/18
家族会・救う会の新運動方針について4
2024/03/15
家族会・救う会の新運動方針について3

■過去のメールニュース■

  ■ 2024年
  ■ 2023年
  ■ 2022年
  ■ 2021年
  ■ 2020年
  ■ 2019年
  ■ 2018年
  ■ 2017年
  ■ 2016年
  ■ 2015年
  ■ 2014年
  ■ 2013年
  ■ 2012年
  ■ 2011年
  ■ 2010年
  ■ 2009年
  ■ 2008年
  ■ 2007年
  ■ 2006年
  ■ 2005年
  ■ 2004年
  ■ 2003年
  ■ 2002年
  ■ 2001年
  ■ 2000年
  ■ 1999年
■あなたにも出来る救出運動■
あなたにもできること

 ■ 映画「めぐみ」 ■ 

映画「めぐみ」

■ 書 籍 ■