救う会全国協議会

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北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会

拉致の起源は朝鮮戦争拉致−拉致問題で変化し始めた韓国(2010/11/15)
★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2010.11.11)

以下は、平成22年11月4日に開催した、「東京連続集会」の報告です。


■拉致の起源は朝鮮戦争拉致−拉致問題で変化し始めた韓国

司会(平田隆太郎事務局長) 訪韓報告とともに、今日は衆議院で拉致特別委員
会があり、ご出席の家族会の飯塚さん、増元さん、横田さんも参加されましたの
でその報告もしていただきます。またその後、西岡会長、洪?先生から訪韓報告
と最近の北朝鮮情勢についても報告をしていただきます。

◆自由北朝鮮放送で参加家族全員の声収録
飯塚繁雄・家族会代表 北朝鮮による国際拉致解決連合の大会は3年前に東京で
行われた後、韓国で計画をしていましたが、当時の事情で延び延びになり、今回
の第2回大会が11月1日、ソウルで実施されました。

目的は、国際連携によって拉致問題の解決をめざすものですが、今回は、「北
朝鮮による拉致−期限、拡大、解決」というテーマで各国から参加し、プレスセ
ンターで実施ました。

前日の10月31日の日曜日には、自由北朝鮮放送のスタジオで家族の声を収録し、
北朝鮮に向けて放送されます。今回家族は、私と増元さん、市川さん夫妻、斉藤
さん、平野さん、松木さんが参加しましたが、すべての家族が収録しました。自
由北朝鮮放送は今収入が厳しく、放送時間も短くなっていますので、今回は、家
族会、救う会、拉致議連が支援金をお渡しもしました。

日本では「ふるさとの風」や「しおかぜ」を放送していますが、自由北朝鮮放
送は視聴率が高く、それなりの効果が出ていると思います。

11月1日の国際大会は、日本語と英語の同時通訳で行われました。開会式では、
私と李美一さん、韓国戦争拉北人士家族協議会会長が挨拶をしました。李美一さ
んは、同会の努力で、今年3月に家族会を支援することが明記された「朝鮮戦争
拉致被害者名誉回復法」が成立し、9月に試行されたことが報告されました。こ
のことを韓国の家族会は大変喜び、救出はまだこれからですが、これまでの努力
が実ったと評価していました。武藤正敏大使や両国国会議員も来てくれました。

大会のことは後で西岡さんに報告してもらうことにして、大会の他、両国の議
員同士の朝食懇談会ではかなり具体的な論議が交わされたようです。また、国会
議長に面会しました。韓国は一院制ですから議長は一人ですが、日本の議員とと
もに意見交換しました。韓国も、ようやくと言っては失礼ですが、国会の中でも
動きが出てきました。今後日本との連携をはっきりおっしゃっていました。我々
も前からそう言ってきましたので、即、そのような連携体制がとれると思います。

韓国からも、日本の拉致問題対策本部のようなものを作ってほしいという要望
もありました。韓国は拉致被害者も脱北者も多く、色々な情報もあると思います。

11月2日には臨津閣(イムジンガク)という北朝鮮を目前にした所で、風船に
メッセージを付けて飛ばしました。私たちとしては効果が感じられる大会でした。

なお、今回行ったのは被害者の兄弟ばかりでした。親の世代は高齢化し、なか
なか行けないという状況の中で、早く救出ができればなあという感じを持ちまし
た。

今日の衆議院拉致特別委員会では家族会から3人が参考人招致という形で話を
してきました。それについても後で話があると思いますが、活発な質疑が行われ
ました。しかし、「まだ拉致特別委員会の役割や働きが見えない」と言ってしまっ
たのですが、議員のみなさんにとっては、初めて聞く話であったりして、勉強の
場という感じで、西岡さんの話や家族の話が、「参考になった」という場面もあ
りました。この問題では、「超党派でやる」という委員長の約束もありました。

◆非難も制裁もしなかったので拉致が続いた
増元照明事務局長 いつも関心を持っていただき感謝します。2003年に韓国で北
朝鮮の人権問題をテーマに会議が開かれました。それとくらべ今回は、韓国が拉
致の問題についてやや前進したのではという感触を持ちました。これまでは、拉
致のテーマでは韓国政府が関わろうとしなかったのですが、今回は政府が関与し、
運営にも協力してくれました。政府高官と面会を果したのは今回が初めてです。
家族のことを知っていただく機会が得られたこと、国会議長に、日韓だけでなく、
ルーマニア、タイ、中国からも拉致されている事実を知ってもらったことも大き
なことでした。実際、議長は知らなかったということでした。拉致被害者を抱え
る国としては、もう少し考える部分があるのではないかと思います。そういう情
報が国会議長や議員に知らされたことはよかったと思います。バンジョン・パン
チョイさんやブンベア・ガブリエルさんに来ていただいた成果だと思います(韓
国紙でも報道あり)。

大会があった11月1日は、姉のるみ子の誕生日でした。そういう日に、そうい
う場所で拉致の話をしたというのは、姉が、「早く救出して」という心が通じた
からかという感じを受けました。数年前、訪米して、チェイニー副大統領の外交
スタッフやクリスファー・ヒル国務次官補に会って、「テロ支援国指定は絶対に
解除するな」と言ったのは11月15日で、横田めぐみさんが拉致された日でした。

テーマの北朝鮮による拉致の起源について強く感じたのは、朝鮮戦争で拉致さ
れた人のことについて、休戦協定を結ぶ時に、韓国側の代表がいなかったため、
拉致被害者について明確な話ができなかったことが、その後の各国での拉致につ
ながったという点です。拉致しても非難も制裁もされなかったことが北朝鮮に甘
い考えを植えつけたのではないか、ということです。そしてその後も韓国政府が
なんらアクションを起こさなかったことが北朝鮮の暴挙を助長させることになっ
たのではないかということでした。

日本の拉致問題も、明らかになりました。(1977年、実行犯が逮捕された)久
米裕さんの拉致の時、日本がはっきり北朝鮮の責任を問い、被害者の帰国を実現
していれば、その後の拉致はなかったかもしれないと前から思っていましたが、
その起源が朝鮮戦争にあったということです。

今回日韓の国会議員の連携が始まりましたが、今後は日韓、そして日米韓の連
携ができるような状況になれば圧力が強まると思います。また、脱北者の中で工
作機関にいた人は、拉致問題についての情報を持っている可能性があるので、そ
ういうこともお願いしました。安明進氏の前に北朝鮮の情報機関にいた人の情報
があり、そして安明進氏からめぐみさん拉致の情報が来たことを考えると、まだ
まだ埋もれている情報があるのではと期待しています。今日の参考人招致でも強
く求めました。

朝鮮学校授業料無償化については、拉致特の一人の議員は、「在日の子どもを
いじめるのでなく、堂々と支援すべき」と言われました。私は、それはいかがな
ものかと思います。しかし、そういう人たちが国会の中にいるわけです。西岡さ
んも家族会も今日は反対の意見を述べてきました。気持ちとして分かってもらっ
た人もいると思います。

私の姉たちの犠牲によって明らかになった大きな人権侵害、これの是正のため
に国会議員が働くべきだという思いで、今日は少し強い表現で申しました。

◆ヘギョンさんには会いにいけない
横田滋 今日は家族会と、救う会の西岡さん、特定失踪者問題調査会の荒木さん
が拉致特の参考人として出ました。通常は委員が大臣などに質問する場ですが、
今日は参考人が一人5分ずつ話し、我々との間で自由討議がありました。25人の
委員の内、16人は民主党で、委員長も民主党です。1時開始予定でしたが、本会
議が入ったため3時開始予定となり、実際は3時33分開始でした。また今日は、代
表とかそういう立場ではなく、家族としてそれぞれが話をしました。参考人とし
て呼ばれたのは、マスコミの人から、「今日で4回目ですね」と言われました。

私は、娘が昭和52年に新潟の中学生の時拉致され、20年後の平成9年2月に北朝
鮮にいることが分かり、拉致された時は13歳だったのが今46歳であること、北朝
鮮に拉致されてから11月15日で33年になること、つまり人生の多くを北朝鮮に拘
束されているとお話しました。一日も早く解決してほしいということと、拉致問
題は人権問題であると同時に、わが国の主権問題でもあります。今尖閣列島付近
で海上保安庁の船に中国の漁船が衝突してきたことや、ロシアの大統領が国後島
を訪問して実効支配を強化することをしていますが、それに対し、「訪問は遺憾」
ではちょっと弱い気がしますが、駐ロ大使を召還しています。拉致問題について
はずっと何の対応もしていないわけです。

小泉さんの時は5人の方が帰ってきて、次の訪朝で家族が帰ってきてからは全
く動いていません。北朝鮮は福田総理の時に、「調査委員会」を作りましたが、
福田さんが急に辞めてからは、向こうは調査を先送りにしてしまった。麻生さん
がすぐに解散総選挙をすると思ったけれどしなかったものですから、麻生さんの
次の内閣を相手にしようということになった。その頃金正日が倒れたこともあり
ますが、その後1回も交渉が行われなくなりました。

我々は制裁も必要だけれど、交渉しなければ解決できないから進めてほしいと
頼みました。しかし、北は「解決済み」と言っているわけです。我々の家族は
「死亡」と言われましたが、あまりに若い時に亡くなっていることになります。
小泉さんが2回目に訪朝した2004年に、調査のやり直しをすることを約束させて、
その時は何回も交渉が行われたのですが、最後の11月15日にはめぐみの遺骨を持っ
てきて渡してくれましたが、それは鑑定の結果「別人のもの」ということで、北
の「死亡」には根拠がなく信用できるものではありません。

我々としては、一刻も早く解決してほしいということと、委員の方からも、
「(めぐみさんの娘の)ヘギョンさんに会いにいくか」と聞かれましたので、
「行けば、現われて私の子どもの時のことだから詳しいことは分からない。お母
さんは死にました」ということで、「そうですか。分かりました」と言えば、
「死亡」を認めたことになるし、「あなたは嘘つきだ」と言えば、向こうの立場
を悪くする。「なんでおじいさん、おばあさん」を説得できなかったのかという
ことになるので、行かない方がいいという話をしました。

短い話ですが、5分くらい話をして、委員の方からの質問がありました。専門
家である西岡さんがおられましたので、西岡さんへの質問が一番多かったです。
政府ではないので、「どうして解決できないのですか」と聞かれても答えられる
立場ではないので、どう思っているかを聞いて、政府に質問するために聞くとい
うのが今日の目的だったと思います。回答みたいなものは何もありませんでした。

司会 次に西岡会長と訪韓でご協力いただいた洪先生に報告してもらいます。

◆拉致問題で韓国が変わりつつある

西岡 韓国も変わりつつあることは間違いない。まだ足りないとは思いますが、
悪い方向ではない。2003年に家族会・救う会・拉致議連で訪韓し、日韓大会に参
加したとき、今回と同じように日本の国会議員にもたくさん行っていただいたの
ですが、韓国の政府関係者に会うことはできなかった。また、何人かの国会議員
は来てくれたが、国会議長に会うことはできなかった。今回の日韓の国会議員朝
食懇談会では、ハンナラ党の金武星院内総務が出てこられた。党内では代表委員
に次ぐナンバー2で、大統領も入れるとナンバー3くらいの人です。

また、日本からは議連の平沼赳夫会長を初めとし、自民党は古屋圭司、山谷え
り子、塚田一郎先生、民主党は松原仁、北神圭朗、長尾敬先生と、7人の国会議
員が行ってくださった。早朝7時からの懇談会で、我々はホテルに泊まっている
からいいが、韓国の6人の先生は朝6時とか5時半に起きなければならない。国会
が9時から開かれるということで、あまり時間はないが、日本から7人も国会議員
が来たということで、韓国側は6人来てくださった。

また、黄祐呂先生は、我々が日本にお招きしたことがあり、北朝鮮人権問題に
熱心な方で、ハンナラ党の重鎮です。さらに韓国の保守で、韓国版「立ち上がれ
日本」のような「立ち上がれ韓国」ですかね、そこの自由先進党代弁人の女性議
員で朴宣映先生が来て下さった。この先生は、初日の晩餐会、翌日のセミナー開
会式、その翌日の朝食懇談会に出ただけでなく、党首の李会昌氏、元ハンナラ党
議員で、大統領選挙に2回出た人ですが、「平沼先生が来ているから会った方が
いいですよ」とアレンジしてくれて、家族会が臨津閣に行っている間に、議員団
は李会昌総裁に会いました。そのように熱心に協力してくださった。

ただ家族に頼まれて来たというのではなく、早朝の会に自分から来るとか、今
回の関係行事に3回も来るというのはこれまでにないことで、韓国にも拉致問題
に熱心な国会議員が出てきたなと思いました。これは韓国の家族会が10年間運動
してきた成果です。韓国の戦争拉致の第2期家族会は2000年から運動を再開しま
した。第1期は1953年からです。

また、今回の大会は、韓国政府の一つ統一部が後援し、一部の予算を出してく
れました。これも初めてのことです。日本大使館も後援してくれましたので、日
韓政府が後援する公式の国際会議に、ルーマニアとタイからも来て、ソウルで開
催した。そして韓国の国会議員にも積極的な人が出てきた。韓国のメディアでは
朝鮮日報が後援しました。大きな記事を書くと約束して取材しています。また、
日本のチャンネル桜のような韓国のインターネットのテレビがずっと来ていて、
ソウル大会等をユーチューブで見ることができます。そういう点で、拉致問題に
ついて、少しずつですが、これは韓国の問題なのだという意識が高まり、韓国が
先頭に立って日本やタイ、ルーマニアの拉致も解決しなければならないという意
識が高まっているということを確認することができました。

今年3月、朝鮮戦争の時の拉致に関して、「朝鮮戦争拉致被害者名誉回復法」
が成立しました(救う会メールニュース2010.03.03)。その中に、「家族を支援
しなければならない」ということが入っています。そこで日本の先生方は、「韓
国でも拉致議連を作ってください、国会に拉致問題特別委員会を作ってください、
政府には拉致問題対策本部を作ってくださいと言い、そして連携しましょう」と
言いました。第1段階としては、今月(11月)末に東京で開かれる日韓議員連盟
の議題として、正式に拉致を取り上げる提案を韓国からするということです。こ
れまでは中井洽副会長(現会長代行)などが日本側から取り上げようと言ってい
ましたが、盧武鉉政権時代は、「取り上げる必要はない」ということでした。今
回は、金武星院内総務が韓国から提案すると言っていました。

もう一つは国会議長に会ったのですが、その時も金武星議員が同席しました。
その席で金武星議員から、日韓議員朝食懇談会の後、韓国側の韓日議員連盟の会
長の李相得さん、今の大統領のお兄さんですが、その人に会ってきて、11月末の
東京での総会で拉致問題を議題にしようと合意したとの報告があり、実際の動き
が出てきたことも大きな変化です。

我々が2003年にアメリカに行った時、上院の院内総務2人と下院の議長に会い
ました。今回は韓国で、院内総務と国会議長に会った。大統領には会えませんで
したが、2003年の訪米並みのことはできたと思います。

◆北による拉致の起源−朝鮮戦争時の拉致

大会の決議文(メールニュース2010.11.01)にありますが、「拉致問題の起源、
拡散、解決」を主題にしました。起源が朝鮮戦争の時の拉致だったわけです。民
間人拉致が10万人くらい行われた。その内、エリートの拉致と義勇軍の拉致があ
ります。

1950年6月に、北朝鮮の奇襲を受けて、3か月くらいソウル及び韓国の大半が北
の支配下に入りました。国連軍の参戦と韓国軍の必死の抵抗でなかなか釜山が落
ちなかった時、北朝鮮は、ソウルの街を歩いている若者を強制的に拉致し、北朝
鮮の軍服を着せて最前線に投入したのです。それが「義勇軍」という形の拉致で
す。そして、北の軍服を着ているからといって、国連軍が一部を捕虜として北に
返してしまったのです。李承晩大統領は抵抗したのですが、国連軍は、北朝鮮に
よる民間人拉致の実態を正しく理解しておらず、また休戦協定を優先することに
よって問題を解決しなかったのです。

休戦協定の交渉の時、国連軍は拉致という言葉を使わないで、失踪者に当たる
「失郷私民」という言葉を使ったのが間違いの元だったのです。日本も行方不明
者という言葉を使っておかしくなりました。言葉で妥協してはだめだということ
では同じだと思いました。本来なら休戦協定の時に、戦中に拉致された民間人の
返還を求めるべきだったのですが、それを国連側がちゃんとやらなくて、韓国政
府も力不足できちんと対応できなかった。その頃、最初の家族会ができました。
李美一さんのお母さんたち、被害者の妻たちが作った家族会が50年代、60年代ま
で活動するのですが、成果が上がらない中、むしろ被害者家族が連座制で監視さ
れるようになり、運動がしぼんでしまいました。その後韓国では家族会の活動が
なくなりました。

拉致は60年前の朝鮮戦争が起源で、金日成が戦争前から準備をしていて、集中
的で計画的な拉致が行われたのです。そして韓国の家族会が必死の努力を続けた
けれども、休戦協定で適切な対応ができなかった結果、被害者は抑留され続ける
ことになった。

◆制裁されなかったために拉致が拡大
そ して、大規模な拉致をしたにも関わらず、制裁を受けなかった北朝鮮は、休
戦後も漁船の拿捕や韓国の民間機ハイジャックなどで拉致を続けた。これが2番
目の拉致です。3番目は70年代後半に、「工作員の現地化教育のため現地人を連
れて来い」という金正日指令で拉致が集中的に、全世界で行われた。タイやルー
マニアもこの時期です。

それについても国際社会が何もしなかったので、その結果、大韓機爆破事件が
起きてしまったし、今も中朝国境で脱北者を助けている人たちが拉致され続けて
いる。韓国のパスポートを持って助けに行った脱北者も、朝鮮族も、韓国の牧師
も拉致されている。

そこで我々は決議文で、「戦わなければ被害が拡散する」としました。他人事
にしていてはならないのです。そして「共に戦いましょう」と確認することがで
きました。この決議文は、日本、韓国、タイ、ルーマニアの家族の合意した決議
文です。韓国の中では、朝鮮戦争中の拉致、戦後の漁船の拉致、大韓機のハイジャッ
クの拉致の会も合意し、我々救う会も、アメリカの北朝鮮人権連帯も合意したも
ので、これも成果だと思います。

私の評価は甘すぎるかもしれませんが、韓国の中で今、拉致問題はどうなって
いるのか、洪●(榮の木を火に、ホン・ヒョン)先生に説明していただきます。

◆史上初めての日韓政府後援は北への圧力

洪 今回大きかったことは、日韓両国が、拉致問題で北に対しての圧力をかける
大会になったことです。拉致問題で、韓国政府と日本政府が同時に後援したのは、
多分これが歴史上初めてだろうと思います。韓国政府は統一部、日本政府は在韓
日本大使館です。

実は明日まで、金剛山で南・北離散家族の面会が行われています。北がこちら
に合わせたのか、こちらが北に合わせたのか、これが偶然だったのか分かりませ
ん。北からは60年前の韓国戦争で戦死者として韓国当局の名簿に入っていた人が
4人出ました。北が曽我ひとみさんを日本に出したように4人を出したのです。実
は、韓国側から、今度60年前の戦争捕虜と拉北者26人の生死の確認を依頼しまし
た。すると一人は死亡、あとは確認不能ということでした。今まで北は韓国に、
「抑留した捕虜はなく、国軍出身者はいる」と言っています。

西岡 確認ですが、離散家族再会というのは3日間ずつで、韓国の家族が、「こ
の人に会いたい」と申請する。北側が韓国の中から約100件弱を選んで会わせる。
それが3日間続きます。関係者約400人が金剛山に行って会います。次に、北から
「この人に会いたい」と申請し、同じように3日間金剛山で会います。

最初の3日間の時に、韓国側のリストに乗っていない人が、「自分は離散家族
だ」と言って出てきた。韓国戦争で戦死とされた人が生きていたのです。本当は
韓国軍の捕虜です。返さないで、「北朝鮮はいい国だから自分は残った」という
人が4人出てきた。捕虜であれば返さなければならない。つまり、死亡とされた
捕虜がたくさんいるということが分かったのです。

◆拉致問題の解決なしに、韓国政府は休戦協定を結べない

洪 実は、韓国軍の捕虜の中には、1994年以来、79人が自分の力で脱出して、韓
国に戻ってきました。こういう人々の話を通じて、だいたい500人くらいの国軍
捕虜がいると考えられています。民間人ではなく捕虜です。

それから休戦交渉の時、なぜ拉致問題を落としたのか。当時の韓国政府を弁護
するわけではないですが、その時は色々難しい問題があった。韓国政府は入れた
かったが、戦略的な、戦争全体に関わる問題があるために、敢えて休戦調印に韓
国代表を入れなかったのです。国連軍は色々頑張りました。しかし、安保理常任
理事国だったイギリスなどが早く休戦協定を結べと圧力をかけたりしたのです。
その後、50何年経ってからの6者協議や核の交渉等色々な局面がありましたが、
50何年が経ってもその教訓を生かせない。今もできないことを、当時できなかっ
たのは失策だ、というのはややひどい話だと思います。今その教訓を生かしてで
きるかどうかが問題だと思います。

休戦協定後、自由社会は、共産主義との色々な交渉から教訓を得て、それを生
かしています。そういうこともあり、先ほどの戦時中の拉致被害者に関する法律
が作られました。

話が飛びますが、休戦協定を終戦協定、平和協定に変える場合は、戦時中のす
べての問題に対して両方が合意しないと終戦協定はできません。国軍捕虜やこの
拉致問題が、今回の大会を通じて、はっきり問題になりましたので、もはやこの
問題の解決なしに、韓国政府は終戦協定を結べないということを、日韓両国の家
族会などNGOが確実にしてしまったというのが、この大会の一番大きな成果だと
思います。

◆三代世襲安着には国際支援と国際認知が必要

ちなみ今回金正恩が三代目を世襲することになりますが、三代目が安着するた
めには、最低2つの条件が必要だと思います。韓国や中国などから支援物資を得
られるかどうか。同時にアメリカや日本、韓国等国際社会が三代世襲をつぶすの
ではなく、認知するかどうかが鍵になります。外からの支援と認知です。

終戦協定は平和協定とも言いますが、これは拉致問題の解決なしにはできない
仕組みができました。そして来年の1月からは、韓国戦争中の拉致問題の真相調
査をする事務局が国務総理傘下にできますので、これが事実上拉致問題対策本部
の役割をすると思います。

西岡 新たな事務局ができて国家が調査をするのです。8万7千名の名簿があるの
ですが、今、新たな名簿を作るということが法律に書かれました。調査委員会が
でき、地方自治体にもできます。そして家族の申請に基づき調査をして、名簿を
作る。事務局の中の諮問会議には家族会代表も民間専門家も入って審議します。
日本で言うと認定作業のようなことを大々的にやり、家族会や専門家の意見も聞
くことが決められたわけです。政府が作ったリストができれば、平和協定の時に、
同盟国のアメリカに対して、これが解決しない限り平和協定にはならないという
ことになる。そういうことを韓国の家族会は着々とやってきたのです。

◆中国の次期指導者習近平が「朝鮮戦争は侵略に立ち向かった正義の戦争」

洪 ここで一番の問題は、拉致問題の解決をいやがる金正恩とそれを支える中国
ということになります。日本ではあまり大きく報道されなかったようですが、韓
国では中国の次期指導者として決まった習近平の発言が問題になりました。10月
25日、北京で韓国戦争60周年の記念行事が行われました。この日は、ちょうど60
年前に中共軍が韓半島を侵略した日です。中国側はこれを義勇軍と言っています
が、明らかに中共軍で、中共が建国してわずか1年で侵略をしました。当時中共
軍は延べ200万人が参戦したと言われます。国連軍はアメリカが中心でしたが、
北側では兵力数から見れば圧倒的に中国軍が主力でした。この中国義勇軍が侵略
した60年目、習近平は1953年生まれですからまだ若い。休戦協定が結ばれる1か
月半くらい前に生まれた人ですが、「あの戦争は平和を守り、侵略に立ち向かっ
た正義の戦争だ」と発言しました。

これに韓国ではものすごく反発しました。それは当然です。「平和を守り、侵
略に立ち向かった」と韓国に向けて話したわけですから。そういう姿勢の中国が、
三代目の「王朝」を支えています。これが拉致問題とも関連してきます。解決のた
めには北をどのように変えるのかというのが鍵ですが、韓国では中国に対する警
戒心を呼びました。これが大会にとっていいタイミングになりました。

◆金正恩体制の安着は難しい−生い立ちの説明ができない

北についての話を続けますと、実はスターリンの娘はアメリカに亡命しました。
キューバのカストロの娘も同じです。北は金正恩を次の指導者にという動きをし
ていますが、金正日は知られている限り息子が3人います。長男の正男を生んだ
女性(成恵琳)はモスクワで死にます。その姉がヨーロッパに亡命しています。
金正恩の母とされる高英姫の死は今も謎です。病名もどこで死んだかも謎です。
高英姫の妹の高英淑夫婦がアメリカに亡命しています。

金正日の息子三人を産んだ二人の女性は兄弟が今、ヨーロッパやアメリカに亡
命しているのです。

西岡 確認しますと、正男のお母さんはモスクワで死に、お姉さんがヨーロッパ
に亡命中で、その息子が韓国に来て暗殺された。次男正哲、三男正恩のお母さん
は高英姫で、フランスで死んだと言われている。

洪 死因ははっきりせず、あと何年かすれば明らかになると思いますが、この妹
の夫がヨーロッパで金正日の秘密資金を管理していたのですが、この夫婦は今、
アメリカ政府の保護を受けています。金正日の妻の兄弟は二人とも似たような状
況にいます。

西岡 つまり金正日の秘密資金を管理していた人がアメリカにいて、アメリカは
その人から聞取りができている。今新たな金融制裁をしたことに、これが反映さ
れているわけですね。

洪 金正恩体制を多くのメディアが既成事実化しています。「三代目の将軍が誕
生した」と。しかし、それは難しいと思います。外からの物質的な支援と、外か
らの認知なしには体制の安着は難しいと言いましたが、金正恩はそれ以上に、北
の中で自分の生い立ちの説明ができません。

金氏王朝の神格化のために、金日成の場合は色々な説明がありました。金正日
の場合は、両親の出自ははっきりしていますが、それ以外は不明です。妻が何人
なのか、子どもが何人なのか、すべてが不明です。

◆北の人たちは、金正日の夫人が誰かということを知らない

西岡 金大中大統領が夫人を連れて平壌に行ったとき、晩餐会は夫人同伴が礼儀
ですが、金正日とともに誰が出てくるのだろうかを我々コリアン・ウォッチャー
は注目していた。出てきた人が正室だと。そうでない人は、いわゆる妾の扱いに
なり、長男といえども正式の子どもではなく庶子になる。伝統文化にはそういう
ものがありますから、誰が出てくるのかと見ていたのです。金日成の場合は、死
ぬ直前にカーター大統領が行った時、金日成は金聖愛を連れて出てきた。カンボ
ジアのシアヌーク国王が行くときも同じでした。そういう礼儀は守っていた。

ところが金正日は一人で出てきたのです。北の人たちは、金正日の夫人が誰か
ということを知らないのです。金正男の母親、成恵琳の友だちが韓国に亡命して
いる。私も知り合いですが、その女性が平壌である時、成恵琳と会うことになっ
て、「今度私は金正日の公邸に入ることになったの」と言われています。その後、
その人は何の理由も示されないで収容所に入れられた。色々賄賂などを使って出
ることができた時に、「出てからもそのことを他人に言うなよ」という命令を受
けた。それではじめて収容所に入れられた理由が分かったということです。そう
いうことを手記に書いていますが、つまり夫人が誰かということを知ったために
収容所に入れられるくらい金正日の私生活は秘密なのです。ところが今度は、金
正恩が息子だということを宣伝しなければならない。

洪 西岡先生が言ったその人の夫は処刑されたのですが、処刑されたのは有名な
(拉致実行犯の)辛光洙の密告によるものです。そして二人は粛清された。金正
恩の場合は、まず人民に説明をしなくても父は金正日だということはみんな分か
りました。顔がおじいさんに似ているし。問題は、母が誰かが説明できないこと
です。私も興味深く見ていますが、果たして平壌当局はこれから金正恩の母をど
のように説明するのか。生まれた場所は今聖地化しているという話があります。
さらに、新しい三代目の指導者は結婚しているのか。子どもがいるのか。すべて
について北は、説明のしようがありません。こういう指導者を人民が受け入れる
ことはありえないことです。

実際どういうことが起きたかというと、1か月前から、金正恩の太った姿を登
場させます。わざとやったのかどうか分かりませんが、彼らは祖父の金日成を連
想させる作戦でやっているのでしょうが、どういうことが起きたか。今、北では
今日の韓国ドラマが明日は見られるという時代です。韓国では、「太ったクマ三
匹」という童謡があります。北朝鮮の中学生が、韓国のこの童謡を歌ったら保衛
部に連行されました。中学生が政治的な意識で歌ったかどうかは分からないので
すが、「おじいさんグマ、おとうさんグマ」というような風に歌ったのです。そ
して厳しい取調べを受けたそうです。まだ子どもですから釈放されたと韓国では
報道されています。

◆これから本格的な粛清が始まる

金正恩は党中央軍事委員会の副委員長ですが、北朝鮮で軍内に私的な組織があ
るかどうかの厳しい検閲が始まったそうです。これから本格的な粛清が始まると
思います。つまり、今金正恩体制を作るためには、子どもの童謡にまで神経を使
わなければならない。軍では今、金正恩副委員長に忠誠を誓う集会が全国的に展
開されているそうですが、その結果は大規模な粛清につながると思います。

10月には労働党創建65周年記念で、特に金正恩の登場を祝賀する特別の配給が
ありました。いわゆる下賜品ですが、コメや肉や菓子の特別配給です。その直後、
多分備蓄が底をついたのか、南北離散家族の再会を続けたいならコメ50万トン、
肥料30万トンを出しなさいと言ってきました。

このすべての条件が満たされないと、金正恩体制が最終的に成功するかどうか
は分かりませんが、出発すら危うくなっているのです。

◆1回しか会えない離散家族再会、手紙もだめ、面会料一人7千万円

西岡 さっきの離散家族のことですが、日本人の常識では、離散家族が再会すれ
ば、その後手紙のやりとりくらいはできるだろうと思われるでしょうが、できな
いのです。再開して3日間会ったらそれで終わりです。住所の交換は許されない。
その後、誰かが亡くなったとしても、連絡できない。1回だけ会うだけで、ひど
い時はテレビ電話で会うだけです。それで北が費用を取ります。外貨稼ぎのため
に1回だけ会わせるのです。それも思想的に大丈夫と選ばれた人だけです。

以前は平壌とソウルでやっていたのですが、ソウルを見てしまうと、いくら思
想的にいい人でも動揺してしまうから金剛山でやることになった。金剛山の使用
料もドルで払う。1回会ったら終わりで連絡もできない。こんなのが面会と言え
るか。金大中以降の南北対話の成果とはこういうことです。

韓国政府は、拉致問題の方針は、離散家族の枠内で解決すると言っていますが、
離散家族問題も1回会うだけで解決しないのです。なぜこのようなことをするの
かというと、北朝鮮当局が、お金は欲しいけど情報が入るのは怖いということで
す。北の人民が動揺するのを抑えなければならない。ソウルを見てしまったら、
みんな金賢姫になってしまう。騙されていたことに気づくのです。そうでなくて
もみんな気づき始めている。ソウルに行ったらそこで脱北する人が出てくるかも
しれない。しかし止められないのは現金がほしいから。

洪 北のことを申し上げたのは、こういう事情が分からないと、例えば北は拉致
問題にどう反応したかを我々が把握しないといけない。

韓国政府が離散家族の面会で北に支援した代価は、一人当たり平均9億ウォン
です。7千万円くらいですね。1回だけの面会料が一人7千万円です。ただの1回、
動物園の檻の中の動物を見るような面会で一人7千万円払ってきました。

西岡 太陽政策以降の支援額÷面会者数ですね。

洪 そうです。まだ、今年3月の天安艦撃沈事件への報復がなされていないので
すが、ソウルの一部では、来週、金持ちの20か国(G20)がソウルに集まり、ま
た横浜に行きますが、金正日の配下が、天安艦撃沈事件の出口戦略として、離散
家族再会をやったのです。南北が離散家族面会を再開したから、天安艦のことは
終わったことにしましょう、ということです。その時期に丁度、国際拉致解決連
合のソウル大会が開催された。

◆韓国では拉致問題はまだ超党派になっていない、「戦争になる」と親北派

西岡 韓国政府は、統一部が後援を付けたのです。北を刺激して離散家族の面会
ができなくなると怖がってやらなかったかもしれませんが、もう「被害者家族を
支援する」という法律ができていることもあり、また国会議長や院内総務が会っ
てくれた。しかし、限界は、韓国の第一野党である民主党は誰も出てこなかった。
つまり、韓国では拉致問題はまだ超党派になっていないのです。民主党ともっと
左の民主労働党は拉致よりも対北支援が重要という姿勢を未だに貫いています。

洪 民主主義制度というのは、国会で議論した上での多数決です。第一野党の民
主党は議席の3分の1もないのですが、これが徹底的に物理的に抵抗すると、議論
ができない。その民主党を、金正日を支持する多くのメディアが応援する。例え
ば、2004年に盧武鉉大統領を憲法によって国会で弾劾しました。すると左翼のメ
ディアは「これは議会クーデターだ」と宣伝しました。

西岡 私もその時ソウルに行ってテレビを見ていました。国会で議員が投票する
と、野党の民主党の議員が前に出て、「国民のみなさんすみませんでした。また
クーデター勢力がこのように悪夢を呼び起こしてクーデターを行いました。街頭
に出てください」と言いました。しかし、議会を軍隊が占拠したらクーデターで
すが、議会で多数決をするのがクーデターだと言うのです。するとテレビが、
「クーデターだ、クーデターだ」と言って、「クーデターが起きた。だから投票
に行ってください」と言うのです。国会議員選挙の前でした。「投票に行ってハ
ンナラ党に鉄槌を加えてください」と言うのです。クーデターが起きたら選挙な
んかないはずですから、ただ選挙運動をやっていただけなんです。

洪 その時ハンナラ党がきちんと対応しなかったために、2か月後の選挙で野党
に転落します。「クーデターだ」と煽動した側が大勝利しました。ポピュリズム
とか宣伝扇動は恐ろしいものです。今の時代は有権者の投票行動が一番問題です。

西岡 もう一つあります。「天安艦爆沈は北がやった」と韓国政府が発表した後
に、統一地方選挙がありました。ソウルなど大都市の市長、道知事、地方議会を
一緒にやりました。従来の韓国の政治では北朝鮮が強硬なことをやると、ハンナ
ラ党系、つまり全斗煥大統領の流れを汲む与党が勝ってきました。例えば大韓機
事件の後は「意図的に与党側がでっちあげをしたので盧泰愚が勝ったのだ」と北
が言いました。従って今回もハンナラ党が勝つと思われたのに、韓国の政治史で
は初めて北が挑発をしたのに与党が負けた。

これはなぜか。「なぜ軍事挑発が起きたのか。太陽政策をやめたからだ。北朝
鮮が機嫌をそこねて挑発をしたんだ」と。つまり、「ハンナラ党政権が太陽政策
をやめると北は何をするか分からない。戦争になる。ハンナラ党には南北対話が
できない。北が拒否する。だからハンナラ党だと戦争になる」と言ったのです。
「戦争は嫌だ」と多くの人が騙されて、結果として負けた。北にやられたのに中
途半端にしかけしからんと言わなかったので負けたのです。

◆朝鮮学校の教科書は平壌の統一戦線部が検閲し、印刷する

洪 似たような現象は、今、日本が北に制裁措置をとっていながら、朝鮮総連の
高校に国庫補助するというのは、話にならないことなんです。教育の内容は見な
いということに賛成する方と反対する方は、日本ではどちらが多いですか。

西岡 今日の衆議院の拉致特別委員会に参考人として呼ばれました。資料を持っ
てきていいということでしたので、朝鮮高校の教科書に拉致問題がどう書いてあ
るか、大韓機事件をどう書いてあるかを配って紹介しました。これは萩原遼さん
が翻訳したものですが、拉致問題については金正日が認めたことを書かなければ
ならないわけです。それは書かず、「日本当局は『拉致問題』を極大化し、反共
和国、反総連、反朝鮮人騒動を大々的に繰り広げることによって、日本社会には
極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった」とだけ書いてあります。

拉致を認めて5人が帰ってきたのにこういう副作用があったと書いてあるので
はなく、日本政府が主語になっています。今日の拉致特別委員会には、与党の民
主党と、野党の自民党、公明党、共産党、社民党がいました。野党のすべてが質
問したのですが、共産党、社民党も含め、朝鮮学校に補助すべきという人はいま
せんでした。与党民主党の何人かの議員も、意見を聞きたいと言って、反対の意
見を言わせてくれました。

しかし、民主党の大阪出身の熊谷貞俊議員だけは、「朝鮮学校の子どもたちを
いじめちゃだめだ。北朝鮮打倒を言っていたら拉致被害者は帰って来られないの
だ」という話を堂々とされ、我々はどう思うかと聞かれましたので、「教科書を
みてほしい。日本当局が反朝鮮人騒動をやったと、日本当局が主語なんですよ、
と。日本当局が排他主義を煽っていると言っているんですよ。先生は与党でしょ
う。拉致問題特別委員会で拉致を議論したら排他主義を高めることになるんです
か」、「この記述が是正されないまま国庫支援をしたら、政府がそれを認めたこ
とになってしまうんじゃないですか」、「北朝鮮人権法には、政府は拉致問題に
関して啓発行事をしなければならないと書いてあるが、これと反するのではない
ですか」と反論しました。

さらに、教育基本法の第2条には、「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に
寄与する態度を養うこと」と書いてあります。金正日による日本人拉致をきちん
と書かないで排外主義と書き、国連でもテロと認められた大韓機事件をでっちあ
げと書き、一体「国際社会の平和と発展に寄与する」のか、「他国を尊重」する
ことになるのか、と言ったのですが、熊谷議員は委員会が終わった後にも、私と
増元さんに詰め寄ってきて抗議するのです。

熊谷議員について調べてみると、彼は工学の学者で民主党に担がれて大阪府知
事選挙に出て破れたあと、比例代表で大阪から衆議院議員になっています。履歴
をみると大阪経法大学の客員教授をしています。同大学は、週刊文春で「副学長
は北朝鮮のスパイだ」と書かれています。あの「拉致はでっち上げだ」と強弁し
ていた親北派で有名な吉田康彦氏もこの大学で教授をしていました。そして朝鮮
大学出身の在日朝鮮人学者がたくさんいます。

問 今、朝鮮学校への国庫補助について6割弱が反対で、38%が支持となってい
ますよ。

西岡 熊谷先生は、「あんたたちが煽るから。すべてのことを拉致と関係づける
から。日本人の民族感情を煽ってどうするんですか」と言いました。「煽ってな
んかいません。我々は教育内容を問うべきだ、と言っているんです。無条件で、
朝鮮総連だからだめというのではない。教科書に書いてある拉致の記述はそのま
までいいのか、と問題にしているのだ」と反論しました。

朝鮮学校は、愛知県と北九州では担保に入っている。破綻した朝銀信用組合に
は1兆4千億円の公的資金が入った。そのうち2000億円をRCC(債権回収機構)が
引き受けて、回収しようとしたのです。名義は色々なものがありますが、実態は
朝鮮総連が借り手だとしてRCC は総連に600億円返せという裁判を起こしている。
RCCは一審で勝ったのですが、その時調べてみると、朝鮮総連が朝鮮学校を担保
にしてお金を借りていた。返さないから朝鮮学校を差し押さえたのです。しかし、
政府は人道主義だから、学校を閉鎖するわけにはいかないので、仮差押えにした
のです。北朝鮮に送金したとの疑いが強い不良債権の担保にされているというこ
とは、朝鮮総連と一体ということです。

朝鮮学校の教科書は朝鮮大学で作っていることになっていますが、平壌の工作
機関である統一戦線部が検閲し、そこで印刷して持ってきているのです。統一戦
線部の建物の中には、朝鮮学校の教科書が陳列されてあり、「俺たちが検閲した」
と元幹部が証言しています。

◆李明博・金正日会談を狙う北朝鮮、応じなければ戦争に出ると脅す

洪 拉致問題と関係があることなのかなと思われることを長く説明したのは、北
は拉致問題を含め、ミサイルも核も、今圧力を受けています。また金氏王朝がい
つまで続くのか分からない。しかし、彼らは体制維持にため悪魔的な知恵を総動
員しています。生き残るためのありとあらゆる対策を必死にやっています。逆に、
悪を攻めるこちら側としては、弱点だらけの悪、矛盾だらけの悪を攻撃する姿勢
がない。日本は民間の拉致関係団体が中心になっています。

北は、金正恩体制が生き残るための2つの条件を満たすための最初の切り口は、
李明博・金正日会談です。北は、これから李明博・金正日会談の実現に向かいま
す。離散家族再会の雰囲気作りから、応じないと戦争に出るという脅し・挑発ま
で、あらゆることをやると思います。それを何があっても支援するのが中国共産
党です。

面白いのは、北朝鮮の2日前の発表です。「国防委員会検閲団の真相公開状」
で、「天安艦を撃沈したのは我々ではない」という調査結果です。ソウルの南北
首脳会談推進派が青瓦台(韓国の大統領官邸)の中にいるのですが、彼らは李明
博・金正日会談のためには、「天安艦撃沈についてはしっかりした姿勢を示さな
いといけない」と言います。これが最低の条件だとしたら、北は今ものすごく困っ
ています。物は得たい、国際的な認知もほしい。そのためには李明博・金正日会
談なしでは何もできないのに、これをどう乗り越えるか。もう一つは仮に、北の
妄動分子がやったということになれば、これまで北を支援してきた中国が困りま
す。中国は、「北がやったという証拠はない」と北の立場を支持し、国連の常任
理事国として制裁決議を霧散させたので、北の主張が変わると中国も困るのです。
こういうジレンマに陥っています。

拉致被害者を取戻すには、このすべての局面を見ながら賢く戦わなければなり
ません。そういう役割をしているのは、私が見ると、日本政府ではなく、拉致関
係3団体だと思います。それが今回のソウル大会での感想です。

◆北朝鮮を交渉の場に引きずり出す制裁と国際連携を
西岡 今日の参考人招致では、今の洪先生の情勢分析にもつながるのですが、こ
ういう流動的な状況では二つの戦略が必要と話しました。第一は、制裁と国際連
携の圧力で、北朝鮮を拉致問題での対話に引き出すこと。2002年から8年間、膠
着状態が続いていますが、それは2つの時期に分けられる。2006年までは、拉致
を理由に明記された制裁が行われていないのです。偽の遺骨が来るなど、「死亡」
として拉致問題を終わらそうという陰謀は色々ありました。

2006年に初めて、拉致も明記した制裁がなされた。そしたら2008年に実務協議
が2回開かれて「調査のやり直し」を言ってきた。制裁の圧力と国際連携の結果
です。その時アメリカは、金融制裁をしていた。テロ国家指定も効いていたので
す。我々も何回も言いに行きました。ヒル氏(国務次官補=当時)も「テロ国家
指定解除には、日本の拉致の進展が条件だ」と言った。

ところが、金融制裁も解除され、テロ国家指定が解除され、金正日が倒れたら
調査やり直し約束は反故になった。アメリカが制裁を緩めたので戻ってしまった。
これには金正日の病気等、北の内政の要因もあると思います。しかし2年経った
今、アメリカは新たな金融制裁を始めました。先ほどの、金正日の秘密口座を管
理していた高英姫の兄夫婦もアメリカは保護し、そこから得た情報なども踏まえ
た上で、党の39号室と軍の偵察局等を制裁の対象とした。党と軍の機関がテロ組
織、犯罪組織だとして、そこと取引する金融機関に対して米国金融機関が取引を
止めると脅す制裁を行っています。

そして韓国も「天安艦」事件で制裁をしています。人道支援も大部分止めてい
ます。貿易も止めました。まだ開城工団が残っているので問題ではありますが、
かなりカネの流れが止まり、日米韓が制裁で足並みが揃ってきています。北が困っ
てきているのは間違いない。制裁という国際圧力で拉致に関する交渉に引きずり
出す可能性は見えてきたと思います。向こうは3国の制裁での連携を崩そうとし
てきますが、この体制を崩さないようにしていかなければならないと思います。
彼らは今、金正日と李明博大統領との会談を狙い、裏で金をくれと言おうとして
いる。韓国が一番弱いと見ているわけです。

また、日本に対しては、去年から民主党政権は弱いと見て、必死の働きかけを
してきています。アメリカは中間選挙で共和党が勝ちましたから大丈夫だと思い
ます。来年また訪米しなければと思っています。今、日韓がルーマニアとタイも
含め、ソウルで連携できています。また、向こうが嫌がることをやろうと、日の
丸の旗と、韓国とアメリカの旗を立てて、毎月1回風船ビラを飛ばしています。
こういうせめぎあいの中でこちらのペースになってきました。

◆金正日政権崩壊後の混乱事態に備えを

もう一つは、金正日政権崩壊後の混乱事態にも備えなければならない。そのた
めには自衛隊を動かせるような法改正が必要です。なお、後継政権が全ての責任
を金正日にかぶせて拉致問題で動く可能性もあります。その際にも、制裁での国
際連携が絶対必要です。しかし、大混乱になったら交渉相手がいなくなります。
その場合、米韓軍が動くときに、自衛隊はどうするのかということも含め、韓国
との連携、その時の戦略的対話が絶対に必要です。

洪 西岡先生が報告されなかったので一つだけ補足します。今回拉致議連の先生
方とお会いした韓国の国会議員の中には左翼はもちろんいません。方法は二つに
なります。李会昌・自由先進党総裁は、一番右寄りの人ですが、こういう話をし
ました。「自分は最初から金大中の太陽政策は間違っていると思っていた。私と
金大中の違いは、一言で言うと、金大中は物をやれば北は(対南姿勢が)変わる
と言ったが、自分は(北に物を)やれば(北が)変わるようにすることだと考え
た」と。また、「一番近い解決法は金氏王朝を崩壊させることだ」という話もあ
りましたが、韓国政治家の中である程度常識的な方々の意見だと思います。

西岡 李会昌総裁は、相互主義が必要だと言っていました。「北朝鮮の人権状況
を変えるような譲歩案がない限り、無条件での支援はしてはならない」と。つま
り、物をあげるのは北朝鮮を変える手段としてしかやらないということです。先
にやれば向こうが変わるという考えは間違いだということです。やらないと南北
関係が膠着化する、緊張が高まると非難されても、そういう時には国民に対し、
「今は我慢のしどころだ。原則を守れば向こうが変わる。向こうは物がほしい。
こちらが先に与えれば、取られてしまって終わりだ。実際、太陽政策の結果、核
武装されてしまったではないか。かえって事態が悪化しただけで、韓国人拉致問
題も何も解決しなかったではないか。先に物をやるのではなく相互主義で、被害
者全員を返しなさい等、条件をつけてやるべきだ」と。我々と全く意見が一致し
ました。

洪 北は今、子どもの童謡にまで気を使わなければならない。国民を監視しなく
てはならない状況です。「拉致被害者を返したら物がもらえるのに」という童謡
が北で歌われたらいいなと思います(笑、拍手)。

西岡 今月号の「月刊正論」に、金正日政権の崩壊が始まった。変化の時を迎え
ている。変化の時はピンチでもあり、チャンスでもある。戦略的に対応すればチャ
ンスになるけれども、何もしなければ最悪のことも起こり得る、という分析を書
いていますので、ご関心のある方は、お読み下さい。

以上


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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 菅 直人殿

■救う会全国協議会ニュース

発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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「もう我慢できない。今年こそ結果を!」。2月2日に家族会・救う会合同会議で決めた今年の運動方針です。 拉致被害者家族の高齢化が進み、「生きている間に被害者に会えないかもしれない」という言葉が出るようになっています。経過はすべて説明して頂くことはないと思います。しかし、今年中にぜひ結果を出して欲しいということが、家族会・救う会そして心ある日本人の心の底からの叫びだと思います
2014年4月27日午後2時午後5時 日比谷公会堂
東京都
千代田区
日比谷公園1-3